タイトル:KVスタンプラリーマスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/07/29 22:57

●オープニング本文


 さて、ヨーロッパ戦線も落ち着きを取り戻し、それなりに普段の生活へと戻ったような気がするラスホプ。そんな中、通信機の向こうで、めそめそ言っているミクがいた。
「えぇ〜。だって、おじーちゃん大丈夫だって言ってたじゃないっ」
 いや、正確に言うと別に泣いているわけではなく、ほっぺを機嫌悪そうに膨らませているだけなのだが。
「いやぁ、俺も太鼓判も押したんだが、ロマンと話のわかんない奴ばっかでなぁ〜」
 相手はキャスター准将である。髪のない後ろ頭に手をやりながら、バツが悪そうに言うジジィに、ミクはじとーーっと疑わしげな表情で、指先を突きつけた。
「おじーちゃんの説明が足りなかったんじゃないの?」
「そんな事ないぞ。ただ、能力者前提な事と、航空能力が低い、搭載重量が少ない、サイズ的に武装が限られるのが問題って言われてだな」
 じじぃ、ふいっと目線をそらしてふんぞり返る。バイクらしく、搭載能力と大きさを求めなかったのが、あだになってしまったとの事。
「つまり、没ったわけだ」
「あうあー」
 ざくっと突き刺さった容赦のない一言は、とどめを刺すのに充分だったようだ。
「誤魔化さないでよ〜。えーん、皆にどう説明しよう〜」
「話は最後まで聞け。実は、ガッコのほうでアレをベースにパワードアーマーの開発をしようって話が出ていてな」
 が、数秒後には復活し、えぇんとしょんぼりしているミクに、そう言っていた。どうやら、完全に出てこないという話ではないらしい。ほらっと自慢げに手紙を見せる彼。そこには、カンパネラ学園の紋章と、『龍堂院聖那』と言う名前が書かれている。
「で、サンドリヨンはガッコ預けにするから、UPCから、今度は一般兵にもレベルダウンが可能な汎用向け試作機を開発してくれと言われてる」
 まだ開発は続けるつもりらしい准将。すでに新しい設計図は出来上がっているようだ。
「今度はどんなの?」
「輸送機だな。ガリーニンとは違って、ちゃんと戦える奴だ。あれは砲台こそついているが、自機だけでは戦えないんで問題と。きちんと自分達だけで、資材を運べて戦えるトラック系KVがほしいそうだ」
 サイズの桁が一個違っていた。どうやら、小さくしてすばやくすると一般人に使えなくなってしまうので、大きくしてスピードを落とし、その分他の部分を上げろといわれているらしい。
「すーぱー系?」
「サンドリヨンはリアル系だったからなー。あと、上がデータフォームを揃えないと通せないと抜かしてきやがったんで、イメージだけを伝えるのはNGだな。とりあえずたたき台だけ用意するから、肉付けしてってほしいとさ」
 ジジィとしては、バイク戦艦よりくろがねの城にしたいそうで。年の若い傭兵達にもわかりやすいよう、簡略化したスペック図を渡してくれた。
「おじー様、やる気ないなぁ。拗ねてるのかな、希望と違うから」
 だが、データを送るなり早々に通信きりやがったジジィに、ミクはげんなりしながら、そう呟くのだった。

 が、傭兵達の前ではそんないきさつなぞ欠片も出さず、ネギ飾りつきポインターをくるくるするミク。
「というわけで、ベースはこれだぉ」
 本部のモニターに、どどーーーーんと、普通じゃないサイズのS型がお目見えしている。見上げるような漆黒の体躯こそスタイリッシュだが、正直、S型にでっかいリュックと足元に加速用のタイヤがついたようにしか見えない。
「とりあえず試作機として、S型の装備力を400まで上げてみたぉ。問題はぶっちゃけ輸送機なんで、実験しようにも運用が難しい事だぉ」
 ただの壁にはしたくないそうではあるが、武器は既存のS型のままだ。そのガタイと比べて、ナイフくらいにしか見えなくなっているのが悲しい。せめてガリーニンの半分くらいは、人員を運べるようにしたいのか、搭乗人員は6人までOKのようだ。
「とりあえずこれ用意してきたぉ。どう言うルートでたどるかは自由だけど、チェックポイントを通過して、記録に収めてきてほしいぉ」
 そう言って、まるでスタンプラリーに酷似したカード型シートを渡すミク。
「って。どこでスタンプを‥‥」
「行ってみてのお楽しみだぉ」
 だが、スタンプのある場所は、かつての戦場。バグアに奪還されたイタリア沿岸部三島。正直、スタンプが残っているかどうかも、怪しい状況だった。

 ところが。
「あー。うちに来るなら、途中にいるワームをどうにかしてくれ。地中海、まだメガロドンがうろうろしてて、偵察どころの騒ぎじゃない」
 対岸にある町に駐留しているUPC軍から、そんな連絡が入った。一周して帰ってこようとしたのだが、動物型ワームが警戒をしていて、普通の戦闘機では、手が出しづらいそうだ。
「あちゃあ‥‥。やっぱり目の前横切られて、黙ってられないってことか‥‥」
「どうしよう。うち、イカしかないよ?」
 もっとも、UPC側も、水中用の武器には乏しい。
「覚悟と護衛、募るしかないと思うよ」
 そんなわけで、傭兵達の出番となるのだった。

●参加者一覧

藤森 ミナ(ga0193
14歳・♂・ST
翠の肥満(ga2348
31歳・♂・JG
鈴葉・シロウ(ga4772
27歳・♂・BM
ルシフェル・ヴァティス(ga5140
23歳・♂・EL
夜羽 ハク(ga8230
24歳・♀・DF
森里・氷雨(ga8490
19歳・♂・DF
ユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751
19歳・♂・ER
憐(gb0172
12歳・♀・DF

●リプレイ本文

 とりあえず、配置図マップがないと、目的のブツがどこにあるかわからないので、森里・氷雨(ga8490)はカタログと言う名の報告書を片手に、先の欧州攻防戦での偵察画像その他を入手していた。
 それによると、メガロドン型は潜水艦代わりに使われる事も多く、ヘルメットワームやタートルワーム、アースクエイクともども、その形状に沿った使い方が行われているようだ。
「損壊状況は酷いが、今の所目立った動きはなさそうだな‥‥」
 報告書から区域把握をしようとしていた森里、そう呟く。監視体制は強化されているし、配備状況は今すぐにでも討って出れそうな状態だが、今のところ積極的に攻撃を仕掛けてはいないらしい。それは、対岸に位置するUPCも同じだった。
「この状態だと、消耗品は現地でも何とかなりそうだなー」
 休憩時間を計算して、まるで勤務シフトを組み込むように、時間割表を作る森里。この辺、ミクに任せても良さそうなもんだが、その間彼女は別の作業に従事していた。
「コクピットは普通なんだねー」
「ここはそうそういじれないもんー。人数は乗れるけど、最低2人で出来るようになってるぉ」
 藤森 ミナ(ga0193)に言われて、コクピットまで案内しているミク。どうやら、動いて喋る説明書代わりになっているようだ。
「設計図あるー?」
「簡略化した奴でいいなら。本物はおじーさまが金庫にしまっちゃったし」
 そう言って、簡単なサイズ表を手渡すミク。車のスペック表に似たそれは、本来の設計図を参考に、ミクが書いたものだろう。さすがに本物は機密扱いなので、研究所からそう簡単に持ち出せないに違いない。
「構わないよー。ふむふむ、こんな感じだね」
「あんまり強化しない方がいいと思うが‥‥。機体アクセ使うか?」
 それを見て、積み込む兵装を選ぶミナに、森里が自分のKVを指し示す。そこから装備を引っぺがしてつけようかと言いたいらしい。
「ナポリの方で駄目だったらお願いしたいかなぁ。えぇと、とりあえず魚雷と爆雷、それに長距離バルカン、フレームが決まってないなら、ステルスフレームを‥‥」
 水中にいるメガロドン型の排除を手伝ってくれと言う依頼もある。その為の装備を、リストに組み込むミナ。
「少しばかり強化された兵装を提供して頂けると心強いのですが‥‥出来そうですか?」
「ごめん、多分無理。あんまり強化すると、普通の人が使えなくなっちゃう」
 ルシフェル・ヴァティス(ga5140)がリストを見ながら、強化してほしいアクセにチェックを入れている。だが、ミクはそれは出来ないと、首を横に振った。
「重量計算を考えると、こんな感じだな。大きいし、スロット数は「改」並みに兵装で4つ欲しい。ついでに積載量も450くらいあると、ギガブラスター積めて砲台として機能できそうなんだが‥‥」
 それに加えて、重量計算までしているユーリ・ヴェルトライゼン(ga8751)。傍目には難しい計算表が並んでいるように見えたそれだが、ミクは一瞥すると、「報告書に書いておくぉ」と頷いていた。
「どっちにしろ、バルカンは最低条件ですね」
「搭載量400じゃ‥‥足りない‥‥。簡易版バイパー並に‥‥」
 大雑把な装備品は一致している。しかし、憐(gb0172)はそれよりもっと積み込みたいようだ。すぐに落とされる『ワンショットライター』では困るし、回避時に中身が壊れては、元も子もない‥‥と言ったところだろう。
「UPCの人、既存機の劣化版じゃ、通してくれないよ。もっと上位種かつ汎用機にしないと」
「‥‥水中キットの使用も考えれば‥‥陸海空制覇の‥‥最高の運び屋です‥‥」 
 この辺は、後継機の苦悩と言う奴だろう。
「私としては防御を充実させたがいいかなぁとか。輸送機的特殊能力的に『コンテナ接続:部隊の補給率向上』とか何かつくと面白いんじゃないかなぁ、と」
 鈴葉・シロウ(ga4772)も、紙装甲は却下と思っているようだ。
「とりあえず、今回はユーリさんの案を軸に、表の多かったものを採用するぉ」
 ミクが、傭兵達の意見をまとめた荷物リストを皆に公開する。
「わかりました。後は動いてみて‥‥だね」
 作業の進む機体に、希望と期待をかけつつ、シロウはそう言って、愛機に乗り込むのだった。

 話し合った結果、移動ルートはこーなった。
「えぇと、西側待機列は昼過ぎまでかかるから‥‥」
『大阪イベントの練習だと思えばいいぉ』
 森里の地図には、LH→ナポリ→シ島→サ島→コ島→グラナダ→LHと書いてある。正確に言うと、ラスホプ>ナポリ>シシリー>サルディニア>コルシカ>グラナダ>ラスホプと言った所だ。
「冗談はさておき、ルートはこれであってるんですよね」
『まずはシシリーからだぉ』
 既に一向はナポリで必要なものを積み込み、シシリーへ向かっている。護衛は翠とシロウ、他の面々は、D−4に搭乗していた。
「何も‥‥起こらなければ‥‥良いんですが‥‥」
「まだ時間がありますから、これでも食べて、鋭気を養いましょう」
 不安そうにそう呟く夜羽 ハク(ga8230)に、ミナがメロンパンセットを差し出した。食事‥‥と言うには簡単すぎるが、甘い香りは食欲を誘う。
「‥‥♪」
 数だけはあるそれを、持参したりんごジュースやヨーグルトドリンクを持って、わたわたと配って歩く憐。ぱたぱたと嬉しそうに走り回っている。
「憐。危ないから走らないでね」
「普段‥‥ディアブロのコクピットじゃ動けない‥‥」
 どうやら、それが楽しくて仕方がないらしい。レーダーを見てみたり、ちょっとした用を見つけては、あっちこっちいったりきたり。カーゴ内をぐるぐると動き回っていた。
「まぁいいですよ。島までは私が何とかしますし」
 ルシフェルがチェックポイントごとの担当表を見てそう言った。今回、疲労その他を考えて、交代で操縦する事になっている。
『そろそろ戦闘空域です。中の人は手すりにおつかまりください』
 もう1人、ミナがそうアナウンスしている。その証拠に、ぱりぱりとスパークがはじけ、ここからは我らの海域とばかりに、ジャミングが酷くなっていた。
「やっぱり、覚醒しないと辛いな‥‥。もう少しハンドルが軽ければ、どうにかなりそうだが」
 一方ユーリは、UPCの一般兵にも扱えるかどうかを、非覚醒状態で操縦して実験してみるが、装備が重い分、操作性が下がり、腕がぱんぱんに張ってしまっている。おまけに、飛行ルートが安定しない。
「色々実験しているんですかねぇ、よろよろしてますけど」
 一方、そのふらついているD−04を心配して、速度を落とそうとするシロウ。
「中にいるのはベテランです。心配する事はないでしょう。それにしても鈴葉ブラザー、こうして一緒に飛ぶのは確か初めてでしたな? お互い、平和に遊覧飛行と洒落込みたいですな」
 普段、魂の兄弟と呼び合う仲らしい翠の肥満(ga2348)、そのスピードをあわせつつそう言った。だがそこへ、アラームが鳴り響き、敵の登場を告げている。どうやら、お客様の方はそうも行かないようだ。
『空便より報告。最短ルートにジャミングが激しくなってきました。そろそろ出番のようですよ』
「了解。では、エスコートと行きましょうか」
 森里からの通信に、翠はAAMのスイッチを入れる。けん制代わりのそれでキューブ達を蹴散らしている間、一向は次第に高度を下げていく。
『目標確認。このままのペースで着陸するのが、最短ルートです』
 森里がガイドを送り付けて来た。それを脳みそにインプットしつつ、シロウは空中で人型形態への変形スイッチを入れる。
「新型機の登場は格好よくなくては‥‥ねぇ」
 ふふっとそう言って、レバーを倒す彼。その直後、KVの背中に真紅のマントが生える。風になびいたそれは、空中でまるで翼のように広がっていた。
「っわ! まだいっぱいいますね!」
 D−04の中のミナが速度を上げようとするが、そこへワーム達が群がってくる。ずしずしと煙が上がっているところ見ると、数分後にはタートルワームあたりもやってくるだろう。
「お前らの相手はこっちです!」
 近づけさせるわけには行かない。そう判断したシロウ、そういってミサイルを放った。彼が相手をしている間、翠がこう告げる。
「今のうちに早く行け」
「う、うん。でも駄目だよ、死亡フラグは」
 そう言った奴が、二度と戻ってこなかったのを、彼らは知っている。必ずしもそうなるわけではなかったが、それでもシロウと翠は、追いすがろうとするヘルメットワームに向き直り、こう言った。
「って言ってるけど、余力はある?」
「あいつらの相手くらいならな。頼むぜ、GJr3‥‥‥‥金かけてるんだから、ちゃんと動けよォッ!」
 螺旋弾頭ミサイルが、不規則な軌跡を描いて放たれる。その螺旋が確実に当たるよう、ガトリングを放つシロウ。そして、注意が向いたそれを、鬼ごっこのように、D−04から引き剥がすべく、移動を開始する。
「そろそろ島見えてきたから、着陸しないと」
 着陸態勢へと入るD−04。しかし、足下には、その高さからでも、メガロドン型のワームが、波間に見えた。
「この忙しいときに‥‥。やっぱり降りて探さなくちゃ駄目‥‥?」
 頷くユーリ。この距離から、スタンプ台は確認できない。おそらく、どこかに打ち捨てられているか何かだろうと、森里が言っていたから、足で探さないとまずそうだ。
「爆雷投下! 当たるかわからないけどな」
「了解。さあ、D−04がただの輸送機じゃない事を見せてやるにゃー」
 その前に、着陸地点にメガロドンから攻撃を食らってはかなわないので、憐は武器スロットに納めていた爆雷を投下する。命中したかどうかは定かではないが、盛大な水柱が上がった。
「さっさと降りろ! 陸だと戦力が半減する!」
「大事な子なんですよ‥‥傷つけないで‥‥」
 その間に、ハクは持ってきた武器を手にしていた。どれだけ効果があるかわからないが、危険の少なそうな緊急用ハッチから身を乗り出し、貫通弾を込める。
「応援、入れた方がいいか?」
「向こうだって余力ないよ。せいぜい、弾幕張るくらい。先にスタンプ台を探そ」
 森里の問いに、ミナが首を横に振る。それが出来たら、傭兵にメガロドンをしとめる依頼などしてこない。搭乗組はそう思い直すと、スタンプ目指してまっしぐらなのだった。

 D−04を少し離れた場所に隠すようにして、搭乗員はスタンプが隠されていると思しきエリアへ降り立っていた。
「やれやれ、やっとどうにかなった‥‥」
 ため息をついて、周囲の状況を確かめる森里。
「D型、大丈夫かね」
「翠さんと鈴葉さんが待機中ですから、何かあったら連絡くれるはずです」
 ペアを組むユーリに、そう答える彼。一応、警戒役として上空をぐるぐるしているそうである。
「わかった。それじゃ、スタンプ探しにキメラ警戒と行きますか‥‥」
 そう言うわけで、彼らはスタンプがおいてあると思しき方向へと向かった。森里が地図を引っ張り出してきた限りでは、そのスタンプはわかりやすい玄関口に置いてあるらしい。元々観光用なので、それほど複雑な場所には隠していないと言った所だろう。
「何かごついのが、行列作ってるなぁ‥‥」
 ハクと一緒だったミナが、かつての観光客の変わりに、屈強な兄ちゃんみたいな亜人型キメラが、行列を作って警戒中なのを見て、顔を引きつらせる。茂みの向こうに見えるボロボロのスタンプ台には、敗れかけた観光のぼりが立っており、『ようこそシシリーへ』の文字がはためいている。
「けど、スタンプ台、あの行列の向こう側だよ」
 そう答えるハク。その周囲はとても開けていて、身を隠せそうな場所がない。それもその筈、スタンプブースの向こう側に見えるのは、滑走路だ。
「こっちも確認っと。やっぱり、生身ではキケンそうですね‥‥」
 ルシフェルと憐のペアからも、うろうろする亜人キメラと、その向こうにあるスタンプ台が見える。タイミングを計りかねていると、森里が口火を切った。
「えぇい、片っ端から処分だっ。ごついのは迂回っ」
「この場合は仕方がないな。援護するぜー」
 たたっと飛び出して、流し切りをお見舞いする森里の後ろから、長射程の弓を番えるユーリ。そうやって前の2人が派手に動いている間に、他の面々がスタンプを押しに行った。
 だが。
「囲まれちゃったよ。どうやって突破する?」
 そうやって乱舞していたのもつかの間。いつの間にか周囲をぐるりとキメラに取り囲まれていた。背中合わせで、剣と弓を構えたままの森里とユーリ。その2人と身を交差させるように、ハクとミナ、ルシフェルにかばわれる形で憐が様子を見ている。
「強硬‥‥かな。武器ならあるし」
 ユーリがそう言って、無線機のスイッチを押した。とたん、轟音が天空より響いてくる。まるで、存在を知らせる高笑いのように、ばりばりと空気を振るわせるそれに、キメラ達はもちろん、他の面々も天空を仰いだ。
「遅くなったな。兄弟」
 静かにそう言って、コクピットから姿を見せる翠。そう、そこに居たのは翠とシロウのKVだった。
「いきますよ、ブラザー」
 シロウがそう言って、KVを変形させる。答えた翠と共に、レッドマントをはためかせた姿が、その重量感と共に降下する。
「「ツインレッドマグナァァァァァムッッ!」」
 拡声器で叫びながら、スピードを上げるKV。2人分が加算されたKVの踵落としは、群がるキメラを、スタンプブースごと踏み潰してしまうのだった。