タイトル:【PN】イミテーションSマスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/05/15 23:25

●オープニング本文


 ジャンヌ救出から数日たった頃である。その後の状況が分かってきた。
「えー、ジャンヌお姉さん、肋骨ぽっきり?」
『ヒビ入っちゃったみたいだよ。入院までにはいかないけど、全治一ヶ月ってトコ』
 何しろ無茶な逃亡をやらかして、体の方が耐え切れなかったらしい。やはり、一般人と能力者では、耐久力が違うと行った所か。
「結構重傷だぉ」
『だから、送り届けるのも時間がかかりそうでね。護衛はつけるんだけど、狙い撃たれる可能性もある。だから、年恰好の似た傭兵を用立てて、囮になってもらおうってわけさ』
 で、そんな彼女は、現在別のチームが護衛に付いて、イタリアまで送り届けている最中である。しかし、さすがに怪我した一般人。バグアにかぎつけられるのは、時間の問題だろう。
「でも、ミクはそんなに背が高くないぉ」
『僕もちょっと身長がありすぎるしね。あとは、リーフさんだけど、彼女も体格あわないし』
 もっとも、その依頼を流してくるUPCの関係者に、体格のあいそうな者達がいない。ミクはジャンヌより頭1つ下だし、カラスは2つほど上だ。オマケに、体重も余ったり足りなかったりする。
「じゃあ、傭兵さんの中から、何とか探すしかないね」
『そう言う事。ルートは陸海空ってあるから、好きなの選んでよ』
 すらすらと書類を書き上げるミクに、カラスは現在人類側が抑えている地図を送りつける。
「って。これ大問題だぉ‥‥」
『そうなんだよね‥‥』
 見たミクが頭を抱えると同時に、カラスもため息を漏らす。ルートは陸を北上、海を南下、そして空路を東進する三つなのだが、陸は囮にならない可能性がある。海は敵の新型ワームがうようよしていて、対応している他の傭兵やUPCの邪魔になる恐れがある。空は派手にやりすぎると速攻バレちゃう可能性大。もちろん、本人がどこを通るかは、警備の都合上ひみちゅになっている。
「ルートは、傭兵さん達にどうにかしてもらうぉ。KVは使用可能なの?」
『許可は出てるよ。だけど、一般人はKVに乗れないって事になってるから、気をつけてね』
 言われるまでもない。そう思い、ミクは急いで敵の情報を集めるのだった。

 そして、その現地の状況はと言うと。
「キューブワームが増殖してる‥‥」
 バルセロナ北東方面に、偵察機を飛ばしていたらしい。見れば、バレンシアから増殖したものも合わせて、海上まで張り出すような形で、キューブワームが増殖していた。
「く、頭痛がひどいな。これじゃ、普通のワームも‥‥うわぁっ」
 しかも、その妨害電波のせいで、通常ワームにたかり殺されてしまっている。空は、そんな光景が、あちこちで起きていた。

 一方の海はと言うと。
「く、どっちに行ってもメガロワームだらけだな‥‥」
 まるでどこかのパニック映画のように、水面に大小さまざまな、特徴ある三角びれが浮かぶ。唯一つ違うのは、それが生体ではなく、敵の兵器だと言う事。
「何とかマルセイユまでたどり着ければ‥‥!」
 そんな通信記録が残るが、直後に機体がごぼりと音を立てた。どうやら、こちらもたかり殺されてしまったらしい。

 最後に残った陸。バルセロナを北上すれば、要塞があり、人類側の戦線へとたどり着く計算だ。
「すみません。一般人は身分証がないと通れないんですっ」
 だが、そこでは避難を求める一般人でごった返していた。しかも、受け入れ先の準備が整っていないのと、むやみに開けてはバグアのスパイを紛れ込ませるのを警戒して、ビザが必要になっている。
「今、市民の避難用に輸送機を調達してますから、もう少し耐えててくださいっ。お願いしますっ」
 担当のUPC係官が、長蛇の列を作っている人々に頭を下げまくっている。どうやら、急な戦線動乱に、慌てふためいているらしく、混雑で子供が泣き出している始末だ。
「ああ、今日も赤い炎が‥‥」
「きっと、あそこに悪い人がいるんだね‥‥」
 不安そうに空を見上げる人々。南の空にキューブワームが飛びかい、見えない悪魔が天を紅蓮に染めていた。
 こんな所に偽ジャンルを無理やり通行させたら、結果は火を見るより明らかである。

『偽ジャンヌになって、バルセロナからミラノへ向かうまで、陸海空のどれかで、囮になって来てください』

 時を、稼げ!

●参加者一覧

吾妻 大和(ga0175
16歳・♂・FT
藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
煉条トヲイ(ga0236
21歳・♂・AA
棗・健太郎(ga1086
15歳・♂・FT
水理 和奏(ga1500
13歳・♀・AA
麓みゆり(ga2049
22歳・♀・FT
阿野次 のもじ(ga5480
16歳・♀・PN
比良坂 和泉(ga6549
20歳・♂・GD

●リプレイ本文

 準備を整えた傭兵達は、それぞれの愛機に乗り込み、空路でバルセロナから海岸沿いに、ミラノへ向かう事になった。ただし、麓みゆり(ga2049)はジャンヌになっている都合上、水理 和奏(ga1500)の後ろ側だ。
「交戦中のジェノバ上空は避けた方がいいかね。念の為」
『ルートは護衛班の皆さんで設定して構いませんよ』
 ジェノバ近郊は、現在激戦区らしいので、避けた方が無難だろうと判断する吾妻 大和(ga0175)に、みゆりはお任せ、と自分の意思を告げる。
「あーぁ、これなら充分衆目を惑わせるのにな〜、私24ですからー、残念!」
 それを見ていた藤田あやこ(ga0204)、小隊制服姿で、その豊かな胸を揺らし、ショーツの裾を直している。
「ジャンヌ搭乗機を守る護衛のKV‥‥と言う設定なら、KVで移動してもそんなに怪しくは無い‥‥筈」
 その護衛班の煉条トヲイ(ga0236)、速度を最低ライン維持しつつ、海沿いのルートを設定している。その後に従っているのは、機首をやや南東よりにした棗・健太郎(ga1086)だ。
「大丈夫かなぁ‥‥」
『心配するな。健太郎。向こうも経験者だ。手は打ってあるんだろう?』
 通信機越しに言われて、頷く彼。阿野次 のもじ(ga5480)の可愛さ爆発電話魔アイドル攻撃だけでは、今ひとつ足らないので、使い捨てのフリーメアドでもって、偽情報を流してみたが、果たして引っかかるかどうか不安だった。
「こっちも偽装工作してきた。明朝出発でGOだ!」
 一方ののもじっち、電話だけではなく、告知も行ってきたようだ。昼出発と告知しておきながら、実際は直前に朝出発に変更すると言う、細かいギミックも入れたようである。
「まぁ、慎ましく行きますよ」
 テンションの高い彼女には、お目付け役めいたポジションで、比良坂 和泉(ga6549)がやや後方に付き従っていた。こうして、海沿いをマルセイユ目指して進み、補給した後、ミラノへ進むと言う航路を、傭兵達は選択したわけだが。
「こちらアメノムラクモ。ジャンヌ搭乗機、異常ありませんかってな」
 大和がわざとジャンヌの名前を出しながら呼びかける。敵に傍受されやすいよう、通常回線で、だ。
「こちらジャンヌ機。まだ大丈夫だよー」
 そう答えるパイロットの水理。トヲイの弁から、一般人が乗っても大丈夫だろうと判断し、その補助席に、みゆりを乗せていた。おかげで、関係ないパイロットやKVを巻き込まずに済んだようだ。
「乗れてよかったわね」
「スピードは出せないけどね」
 みゆりがそう言うと、水理は対ショック装置を施した席に向かって答える。衝撃吸収用のクッションで、若干狭いが、まぁゆっくり飛ぶし、どうにかなるだろうと、2人は考えていた。
 そうして、とろとろと出来るだけ低速で飛んでいた彼ら、バルセロナを出て一時間、マルセイユに差し掛かった頃だった。
「おいでなさったぜ。健太郎、準備はいいか?」
 マルセイユにまで出没していたらしいキューブワームが姿を見せる。相変わらずレーダーは沈黙したままの状態に、トヲイは横の健太郎に合図を送ろうとした。
「目視で敵機確認! 戦闘態勢のための煙幕をはる!」
 が、既に健太郎はそう言うや否や、煙幕銃をぶっ放している。視界が遮られる中、トヲイは機体を45度にずらす。
「元気だなー。それじゃ、キューブワームは任せたぜ」
 彼の目当ては、キューブの向こう側にいるヘルメットワームだ。
「え、ちょ‥‥。わぁっ!」
 攻撃を任された健太郎、慌てて装備したガトリング砲を放つ。命中を確認するや否や、移動して距離を稼ぐ。武装にやや不安の残る彼、そうやって援護していた。
「さて、ヘルメット。お前さんは俺が相手だっ!」
 その間に、トヲイはヘルメットワームに向けて、リニア砲を放つ。攻撃力偏重と揶揄される砲弾だが、威力は絶大だ。バイパーの攻撃力とあいまって、ヘルメットワームを一撃で粉砕していた。
「それチャージが!」
「リロード中は、レーザー砲を使うんだよっ。お前さんは逃げ回って、ひきつけるんだ!」
 装弾数1発しかないリニア砲は、再び使えるまでタイミングを計る必要がある。その間、トヲイは3.2cmレーザー砲で、他のワームの相手をしていた。同じ様に、レーザーに切り替える健太郎。
「この戦いは、絶対に負けられないんだ! これでもくらえ!」
 今の状況だと、回避に専念すると言うわけには行かないようだ。がちゃがちゃとやたら撃ちまくる健太郎に、トヲイは練力の残量を気にしながら、こう呟く。
「無茶はするなよ。くそ、キューブワームはヘルメットワームまで強化するのか‥‥全く、鬱陶しい事この上無いな‥‥!」
 距離をとれば、頭痛は治まるが、それでは弾が当たらない。ブーストのタイミングを計りながら、彼は再びリニア砲をワームへと食らわせるのだった。

 その頃、真ん中を飛んでいた水理機は。
「前の方で交戦開始‥‥。大丈夫かなぁ‥‥」
 心配そうにKVを操る水理。先行しているトヲイと健太郎機から、盛大な爆音が聞こえてくる。と、その直後、シスター服の内側で、こっそり覚醒していたみゆりが、側面から来た一団に気付く。
「わかなちゃん、こっちにも来たわ」
「わかなロケットは、まだ余裕あるけど、無茶な戦闘は出来ない‥‥」
 普段なら、バイパーの防御力でもって、壁になるところだが、それではジャンヌがニセモノだとバレてしまう。
「大丈夫、何とかするから」
「分かったよ。射程も長いし、弾数も余裕あるから、頑張るねっ」
 中佐に憧れてか、分厚くした装甲は、彼女への攻撃をやわらげてくれる。と、その装甲に物を言わせている水理に、みゆりはこうアドバイス。
「出来るだけゆっくりと‥‥。一般人にはわかなロケット発射の衝撃もきついはずだから、ね」
 頷く彼女。トリガーに手をかけ発射速度をぎりぎりまで落とす。通常兵器と同じ速度まで落とされたそれは、超遠距離から、撹乱するようにキューブの群れへと突っ込んで行く。爆発の衝撃に、みゆりを巻き込まないよう、操縦レバーをゆっくりと倒す。
(やっぱり、間に合わない‥‥!)
 だが、一般人に耐えられる速度では、如何に動きの遅いキューブワームとて、追いつかれてしまう。備え付けられたレーザー砲が、彼女の機体を狙った時だった。
「おぉっと、だがしかし、露払いは我々にまーかせてもらおうっ!」
 後ろの方から、盛大なランチャーミサイルの砲弾が降り注ぎ、キューブワームを粉砕してしまう。
「のもじお姉ちゃん?」
「はーっはっは。来たわね! 世界一周サイコロワーム! 大穴空けてゾロゾロにしてあげるわよ」
 後方にいたのもじの機体から、AAMのミサイルが降り注ぐ。どうやら、彼女達が相手をするようだ。
「相変わらずテンション高いわね。右前方、気をつけて!」
 みゆりが、専用通信機で、キューブに隠れたワームの存在を指摘する。
「私にお任せ! あいあいさ!」
「のもじがゾロ目振ってる間に前に進んで下さいねっ」
 ちょうど死角になっていた部分に、後方のもう一機がスピードを上げた。のもじがバディを組んでいる和泉の機体だ。
「気をつけろ。来るぞ!」
 既に覚醒していた和泉が、まるで合体するようにくっついて行くキューブに、そう警告を発した。ディスタンのアクセサリーユニットに取り付けたスラスターが軽くスパークし、その怪電波を機動力で回避しようとしたのだが。
「‥‥く、これが噂に聞いた精神攻撃‥‥ですか!?」
 キューブの怪電波は、広範囲に及んでいた。新鋭機ディスタンといえど、容赦ないらしく、その風防ごしに、頭痛が襲い掛かる。
「痛ぁ。覚醒してても、きつい‥‥っ」
 それは、後ろで守られていたみゆりにも襲い掛かっていた。念の為、覚醒していた彼女だったが、それでも頭はがんがんと割れ鐘を鳴り響かせる。
「大‥‥丈夫‥‥っ? みゆりおねえさん‥‥ッ」
「心配、しないで‥‥っ。なんとか、たえられる‥‥」
 同じ様に頭痛を抱えているだろうに、自身を気遣う水理。その心配を払拭しようと、首を盾に振るみゆり。そんな彼女達を見て、和泉が後方の藤田、大和の両機へと連絡を取った。
「厄介な敵には‥‥早めに退場してもらうに限る。2人とも、頼むぞ」
「OK。それじゃ、狙い撃ちましょうか」
 あやこがそう言って、ライフルをじゃきりと敵に向けた。
「なるだけ戦闘は避けたいけど、そうも言ってらんないかね」
「そう言う事。最大射程からいくわよ!」
 大和の台詞にそう答え、600m先の目標へと発射するあやこ。さすがにバイパーの命中率と行った所か、何とかキューブには当てる事が出来たが、ワームには避けられてしまった。
「じゃじゃ馬娘からお姫様へ、悪い虫からしっかり護ってね!」
「へいへい」
 取りこぼした相手は、大和の機体が捕捉する。顎でこき使うような形になったが、彼女は気にせず距離を詰めた。
「時にはビンタの一つくらい食らわせないと。前衛さんのフォローに回るわよ。ただでさえ不利なんだから!」
 リロードの間に向かってくるワームへ、300mまで縮め、副兵装に仕込んだガトリング砲が放たれる。。
「相変わらず、ごっついの持ってるなー」
 ホーミングミサイルまで持ってきたあやこに、感心したようにそう言う大和。
「白馬の騎士も女性進出の時代よ♪」
 楽しそうにそう言って、彼女はDO2を連射する。
「どっちかって言うと、白馬の蛇ってとこだけどなー」
 バイパーの鎌首に見据えられた蛇を連想してしまう大和。
「なんか言ったかしら?」
「何でもないッス! あ、追っかけてきました!」
 ぶんぶんと首を横に振り、矛先をワームへと向ける彼。と、あやこはスナイパーライフルのリロードが済むまでは、ガトリングで時間と場所を確保するつもりらしく、げしげしと盛大に打ち込んでいた。
「サイコロさんサイコロさん、良い目を出して頂戴なってな!」
 そう言うと、小型ミサイルを撃ちこむ大和。しかし、相手も数が多く、2〜3体砕け散っても、また元の木阿弥。
「囲まれた?」
「サイコロもバカじゃないってか」
 そうこうしているうちに、両側にまるで壁のようなキューブが出来上がる。がんがんと鳴り響く頭痛。しかし、あやこはそのキューブ達に、レーザーを向けた。
「突破するわ! 敵をバラけさせて!」
「簡単に言ってくれるぜ‥‥」
 文句を言いながらも、機体を上昇させる大和。注意が逸れた瞬間に、今度はあやこが、ホーミングミサイルを発射する。
「これがカジノだったら破産してた所だわ」
 開いた隙間を駆け抜け、同じように上昇するあやこ。ほっと安堵のため息をつく。
「先は長そうだけどな。悪い虫の親玉が来たみたいだし」
「しつこい男の子から逃げるのは得意なんだけどねぇ」
 だが、のんびりしてはいられない。大和の忠告に、彼女は再び戦列へと戻る。そう‥‥急速に接近するKVに良く似た機体がいたから。
「何でこいつがここに‥‥!」
 健太郎の背筋に冷たいものが走る。良く見れば、それは鳥に良く似たワームだった。
「現在地は?」
「ジェノバ到着ちょい前ってところだ」
 のもじが冷静に尋ねると、トヲイがそう地図を見て答えていた。良く見れば、遥か彼方に、陸地が見える。どうやら、様子を見に来たようだ。
「何とか切り抜けないと!」
「ブースター使わないと、ここは無理だぜ。相手してる状況じゃないし」
 健太郎が、半ばパニックを起こしたように、声を荒げる。と、大和が離脱を勧める。これが『普通のワーム』だったら、トヲイの言うように、合流して総攻撃‥‥なのだが。
「煙幕張りますから、今の内に逃げてください」
 それを受けて、和泉が煙幕弾を発射する。だが、相手の鳥ワームは、それをやすやすと避けてしまった。
『その動き、やっぱり囮か‥‥。通りで情報揃いすぎてると思った』
 オマケに、敵の機影から、そんな少年の声がする。
「ばれてる?」
「‥‥念を入れすぎたってところかな」
 健太郎の声に、そう応える和泉。バレないよう、派手さを控えての行動だったが、どうやら、お膳立てをしすぎて、相手にバレてしまったようだ。
『まぁいいや。見た覚えのある子がいるし、ここで戦力を落としておくのも、悪くないからね』
 しかも、相手にとっては片手間。そう言った瞬間、敵の機影が、姿を消す。直後、現れたのはみゆりと水理の乗った機体の真上。
「みゆりねえちゃん! 和奏姉ちゃん! あぶない!」
 ブーストを吹かした健太郎の機体が、その間に割り込む。
「ありがとう‥‥」
 何とか一撃を回避出来たものの、2機ともボロボロになってしまった。
「負けたくない‥‥」
 そのまま、目を引くように囮になろうとする健太郎。
「大丈夫。絶対可憐だから負けない。そろそろどーんでんがえしー、開始しない?」
 のもじが、現在位置を見ながらそう言う。既に、陸地までもうちょっと。上陸してしまえば、ミラノまでは僅かだ。
「赤い悪魔じゃなさそうだしな。何とか振り切れるかもしれん」
「わかった。僕頑張るよ!」
 トヲイの判断に、水理はそう言って、ブースターを吹かす。
 その結果、相手が片手間様子見機体のせいもあって、何とか振り切る事は出来た。しかしそれは、自分達が能力者だとバラす事になっていた。
「本物のジャンヌを護衛しているチームから連絡が入る迄は、『ジャンヌ御一行様』のままで居た方が良いだろうな」  
 上陸したトヲイ、和泉の振舞った冷たいジュースをごきゅごぎゅと飲み干しながら、そう呟く。みゆりの格好は、このことあるを予想して、完璧なまでにジャンヌだったから‥‥である。