タイトル:【DoL】サンドリヨンマスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 2 人
リプレイ完成日時:
2008/03/10 22:34

●オープニング本文


●バイクアーマー見参!
 シカゴでの激戦が繰り広げられていたある日。仮眠を取っていたミクは、突然のお呼び出しコールに、たたき起こされる事になった。
「ふみ〜。何よ、おじー様ぁ」
 相手は祖父のキャスター准将である。眠い目をこすりこすり、応対に出るミク。
「喜べっ! 例のバイクKVの試作品が出来たぞ!」
「ほへ?」
 開口一番、ふんぞり返る准将。怪訝そうな表情をするミクに、准将は、まるで出来上がったプラモを見せびらかすかのように、背後を指し示した。
「これを見ろっ」
 そこには、見慣れない形をしたKVがあった。普通のKVよりかなり小さく、自動車にしては細すぎるタイヤが2つ、足元に付いている。胸元に『カプリリア』と言うマークが付いているのを見て、ミクは確か准将の家にあったバイクと、同じマークだなと気付く。
「小さくない?」
「うむ。戦場工作向けカスタマイズをしてあるからな。それに、最近の情勢では、こう言ったタイプの方が有効だろう」
 見る限り、KVと言うよりは、ひと昔前のアニメに出てきたパワードアーマーに近い。そう言って、スペックを見せる准将。それには、概ねの能力は、武器を強化した歴戦の傭兵とさほど変わらないが、その代わり、地上戦でのスピードだけは並みのKV以上、サイズは既存のKVの半分と言う、弾丸マシンが出来上がっていた。
「うわ、何この仕様」
「いやぁ、バイクベースにしたら、装甲薄くて、生身じゃGに耐えられなくなっちゃって‥‥」
 その速さは、覚醒しないと扱いきれないほどである。いや、覚醒したとしても、かかる負荷は相当なものだろう。
「普通に使えるようにしてよねー」
「いや、バイクとしてはちゃんと使えるぞ。兵装とアクセサリは少ないが、ミラーシェイドつけておいた」
 超スピードバイク+パワードアーマー+光学迷彩。
「おじー様」
 やたらにこにこしたミク、わざと覚醒しながら、こう尋ねる。
「開発中に見たDVD何?」
「えーと、OGとスパイ大作戦と‥‥」
 ずらずらと、映画やゲームやアニメの名前が並ぶ。げんなりするミク。
「そんな趣味装備、本当に大丈夫?」
「上手く行けば見付からないのは確かだ。占領された町は、瓦礫で細い道が多いそうだから、ちょうど良いだろう」
 丈夫さはないが、その分小回りが効く。より人に近い動きが出来る為、ワームやタートルにバレない動きが可能だそうだ。もっとも、見付かって一発食らえば終わりなのだが。
「グラップラーさん達みたいなもんか。わかった。じゃあ投入申請して見るね」
 そう考えると、上手く活用してくれそうな傭兵は多そうだ。そう判断したミクは、激戦が繰り広げられているシカゴ周辺へ、その舞台を申請するのだった。

『試作機が出来ました。障害物の多い土地に適性のある機体になっているので、有効利用してくれる方募集です』

 場所は、他の傭兵達の活躍によって、街の様子がある程度わかっており、また南西部のキメラが掃討されているインディアナポリスが選ばれたのだった。

●参加者一覧

MIDOH(ga0151
23歳・♀・FT
稲葉 徹二(ga0163
17歳・♂・FT
須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
流 星之丞(ga1928
17歳・♂・GP
沢辺 朋宏(ga4488
21歳・♂・GP
ミカエル・ヴァティス(ga5305
23歳・♀・SN
玖堂 鷹秀(ga5346
27歳・♂・ER
玖堂 暁恒(ga6985
29歳・♂・PN

●リプレイ本文

 バイク型KV『サンドリヨン』試作機は、ラスホプを経由して傭兵達の元に運ばれていた。
「カプリリアか‥‥。なるほど。俺としては、こー翼のマークがある方が‥‥」
 実物を見て、そう呟く沢辺 朋宏(ga4488)。国産がよかったなーと暗に言われ、ミクは親会社がOK出さない事を告げる。どうやら、色々と事情があるようだ。その事情を含め、稲葉 徹二(ga0163)はこう尋ねる。
「現地の民間人状況はどうなっているんです?」
「南半分は、キメラがいなくなってるから、少しは外に出やすくなってるかな。もっとも、その分治安が悪くなってるけど」
 ミクが差し出したデータには、以前傭兵達が手に入れた地図と、キメラの配置図が、詳細に記されている。ついでに、どこに隠れたら良いのかも。 
「安全に暮らせるようになるには、まだ時間がかかりそうねぇ」
 MIDOH(ga0151)が残念そうに呟いて、お守り代わりのスコーピオンに触れる。解放したとは言え、完全に支配権を取り戻したわけではない。見付かって撃ち殺される心配がなくなった反面、混乱に乗じた悪い人間もいるのだ。
「なぁミク、このバイクKVは、タンデム出来るん?」
「バイク形態時は、何も弄ってなきゃかなぁ。変形時はシートがないもん」
 朋宏が連れてきた手伝いの沢辺 麗奈(ga4489)に尋ねられ、そう答えるミク。この辺りは、普通のバイクと同じ様に、人が乗る部分に、各主武装アクセサリをつけなければならない為、重量30以上のアイテムを乗せると、2人目が乗れないようだ。
「やっぱり、光学迷彩かけると、後付のマーキングが浮くね」
 試しに、ミラーシェイドを起動させて見ると、流 星之丞(ga1928)の貼り付けた21の文字だけが目立つ。
「バルカンと燃料タンクがせいぜいよねー。何とか中型にできない?」
「人口筋肉つけないと乗りませんよ」
 MIDOHが20mmバルカンと、ステルスフレームの他、燃料タンクを並べている。重さとバランスを調整していた玖堂 鷹秀(ga5346)、首を横に振った。どうやら、小型で我慢しなければならないようだ。他の面々のものも試して見るが、サンドリヨンは体が小さいので、重さの他、長さも考慮しなければならない結果となる。
 一通り準備を終えた傭兵達は、解放済みの南西部から、北東に向けて発進した。
「さぁて! 援護ヨロシク頼むぜ、アニキ!!」
「お前こそしっかりトドメ刺さねぇと、後でハッ倒すぞ!!」
 覚醒し、サンドリヨンへと乗り込むタカに、そう答える玖堂 暁恒(ga6985)。傭兵達によくある、覚醒すると性格の変わる系統らしく、特にタカは、今までの礼儀正しさが嘘のような言動だ。
「きやがったな」
 須佐 武流(ga1461)が、路地を曲がった所で、高速道路の上を走りぬけるワームを見つけた。ミーちゃんが慌てて急制動をかけ、崩れた建物の影に回りこむ。普通のKVならば、頭しか入らないような場所だが、バイクならばただの風景として溶け込める。その影にもぐりこみ、ワームをやり過ごす2人。
「どうやら、やはり南側はワームは少ないみたいだな。ドームと、空港周辺に集中してるらしい」
 向こうも用事がある様子で、何とか、見付からずに済んだらしい。須佐はワームが飛んで行った方向を見て、そう気付く。
「行って、見る? ヤバそうだけど」
 バイクを起こしてきたMIDOHがそう尋ねてきた。サンドリヨンを自分の物にするまでには死ねないと思いつつ、何もしないのでは、話にならない。
「そうだな。他の面々にも連絡してくれ」
 須佐が先行する。その間に、MIDOHは照明弾を放った。遠くからでも見えるそれは、少し離れた街中にいた他の面々にも、警戒と要注意の意味を持って伝わる。
「ち、もう切れたか‥‥」
 が、その直後、光学迷彩が切れた。どうやら、連続使用は30分が限界、しかも使用回数にも限りがあるようだ。
「もう少しで北側エリアに入れるのに‥‥」
 そう呟くジョー。高速道路の上には、障害物がない分、ワームがうろうろしているが、下側には余り注意が向いて居ないらしく、光学迷彩を使えば、ジャングルで木の影に隠れながら移動するのと同じ要領で進むことが出来た。が、それも南側のエリアだけだ。
「こっから先は、障害物ねぇな‥‥」
 一方、街中から先行していた玖堂兄弟と稲葉は、南側から北側へ続く幹線道路に来ていた。建物の影に隠れ、様子を伺う稲葉。
「頼むから、無茶するなよ。こっちが大変なんだから」
 その後ろで、首根っこを掴める位置に陣取った暁恒がそう呟く。こっちは、いつでも発射できるように、既に人型となり、光学迷彩を発動させていた。
「なぁに、全速力で駆け抜ければ良い話ですよ」
 スロットルを開ける稲葉。ぐぅんっと強烈なGが体にかかる。息苦しさを覚えるほどの圧迫感に耐えながら、彼は幹線道路を横切るように、スピードを上げる。気付いたワームが2匹ほど、こちらに近づいてくる。
「いつまでも見下ろしてんじゃねぇよ! オラァ!!」
 そこへ、タカが斜めになったビルから飛び降りるように、サンドリヨンを人型にしたまま、滑り降りて行く。振り下ろしたビームコーティングアクスが、ワームの反対側から、その身を切り裂こうとする。鈍い手ごたえ。さすがに1人では辛い。
「小兵の戦はまず逃げ回るところから、でありますよ」
 その間に、駆け抜けて行く稲葉。そして、路地の向こう側へと回りこむと、手にしたハンマーを、勢いよくワームへと当てる。しかし、中々当たらない。正面からの攻撃を避けていると言うのもあるが、元々パワーがないので、当てづらいようだ。
「照準良し‥‥鋼の矢よ! ブチ抜け!!」
 そんな彼らを、手にしたスナイパーライフルでもって、後ろから迎撃する暁恒。光学迷彩を発動した状態から撃っているが、おかげでワーム達は、その弾がどこから来ているのか分からないようで、右往左往している。その間に、2人は住宅街に滑り込むようにして、停止させる。即座に光学迷彩を起動させると、ワームは彼の姿を見失ったようだ。
 そのおかげで、傭兵達は、ドームに一番近い住宅の影で、その動きを見張る事になったわけだが。
「もうちょっと近づけないのかよ」
 金網で仕切られた、だだっ広い駐車場のようなスペース。料金所を改造したと思われるそこは、映画で見たそのままに、通行証がなければ、通り抜けられないようだった。
「強引に抜けるしかなさそうだね」
 光学迷彩を発動したまま、フェンスの方へと近づくMIDOH。うすぼんやりと浮かんだ機体に、ヘルメットワーム達も気付いたのか、警戒音が鳴り響いた。程なくして、ワームとの距離が縮んでくる。
「対空ロケットくらいつけやがれってんだ。上手く行きますよーに!」
 そう言って、MIDOHが機体を人型へと変形させた。そして、姿を現した瞬間、その一瞬の隙を生かして、バルカンを乱射する。その回避にヘルメットワームの注目が向いている間に、須佐はガトリング砲をお見舞いする。衝撃が体を揺らすが、ダメージそれほど行かない。だが、彼は気にしていなかった。要は、MIDOHが再びバイク体型へと変形出来る時間稼ぎが出来れば良いのだ。
「今の内に!」
 ガトリングの弾がばら撒かれる中を、変形してスピードを稼ぐMIDOH。直後、彼女のバイクはミラーシェイドを纏い、周囲の風景に溶け込んで行く。しかし、ワームはその重力異常を感知しているのか、見えないバイクをトレースするように、謎の怪光線が発射される。
「く‥‥。結構、ぎりぎり‥‥だなっ!」
 走り回りながら、それを避けようとするジョー。ミラーシェイドを発動させながらの状態だが、それでも何発かに1発は、自身の機体を激しく揺らしてくる。
「頑張ってつけたんだ。上手く起動してくれよ!」
 その揺れに耐えながら、3.2mレーザー砲を起動するジョー。スピードががくんと落ち、ワーム達が追随してくるが、彼は構わずその青白い光線を放った。避けるワーム達が、左右に広がる。相変わらず慣性の法則を無視して、はさみうちにしようとする彼ら。なんとか変形を繰り返そうとするジョーだったが、その動きを気にして、中々人型になれないでいた。そこへ、距離を置いていた須佐が、ガトリング砲を見舞う。盛大な音がして、ヘルメットワームに煙が生えた。彼が囮になっている間に、ジョーはドームの影へと滑り込み、ミラーシェイドを発動させる。
「中に入ればっ!」
 朋宏が、障害物を避けるスラロームの要領で、ワームの攻撃を避けながら、ドームに向けて逃げ回る。だが、相手もいつまでもそれに従っているほど、頭は悪くないらしく、上空を飛び越え、行く手をさえぎってきた。
「まったく! 相変わらず無茶な動きだ」
 急ブレーキをかけながら、ハンドルを切る朋宏。きききぃっとタイヤが地面をこする音が聞こえてくるのを無視して、ワームに回れ右をした彼は、そのままスロットルを空けた。前タイヤが浮き上がり、バランスを崩した彼のバイクは、勢い余って転倒してしまう。
「くっ。まだだっ!」
 起こす間などない。そう判断した朋宏、倒れたまま人型へと変形し、光学迷彩を発動させるものの、既に場所がばれているので、ワームの攻撃が命中してしまう。それでも、狙いが定まらなかったおかげで、幾分は残ったようだ。
「無理するな。残りゲージが半分切ったら撤収するぞっ!」
「せめて当てねば、納得いかんっ」
 須佐に言われた朋宏だが、そうでなければ、せっかく近接格闘仕様にした意味がない。手にしたナックルで攻撃を仕掛ける彼に、須佐は仕方なさそうにアドバイス。
「小型で攻撃力がなくても‥‥要は使い方だ! 関節を狙え!」
 援護するようにガトリングが飛んでくる。その攻撃を弾幕代わりにして、ちょうど腹の辺りへと滑り込む朋宏。
「当たらなければどうって事は‥‥!」
 そのまま、足技を使う要領で蹴り入れる。がんっと鈍い手ごたえ。見れば、関節のつなぎ目に軽くスパークが散っていた。
「こっち向け、こいつめっ!」
 ワームの注意は、完全に朋宏と須佐に向いている。その間に、稲葉がハンマーを振り回して、ワームへと勢いよく当てる。バランスを崩したワームは、そのままドームへと激突し、壁に大きな穴を開けていた。
「あそこから入るぞ!」
 朋宏がワームを蹴り飛ばし、入り口を広げる。地上近いそこは、小さな穴だったが、サンドリヨンで入るには充分だった。
 中は、研究施設研ドッグといった様相だった。ちょうど、ラスホプにあるドローム社に、印象が似ている。違うのは、普段傭兵達が自機の強化に使っている作業台がある場所に、薄い紫がかった、水晶のような鉱石が置かれていた事。横のホワイトボードには、中央に同じ形の鉱石質がかかれ、反対側に砲台の図が描かれている。どうやら、何かの設計図のようだ。
 と、その時である。強い衝撃が、ドームを揺るがした。見れば、無理やり作った入り口に、タートルワームの姿が見える。
「余力、ありますか?」
「厳しいな。さっき、だいぶ練力と燃料を使っちまった」
 稲葉の問いに、首を横に振る須佐。すでに、残りは40%をきっている。小型燃料タンクをつけている朋宏とMIDOH以外の面々も、同様だ。
「あれはどうする?」
「こっちを持ち帰りましょう。解体した女神砲の参考になるかもしれないし」
 その朋宏の問いに、稲葉は壁にかかっていた設計図らしきものをくるくると丸め、コクピットに放り込む。
「オラオラ! どうしたドン亀!? 俺はコッチだぜぇ!!」
 比較的余裕があるらしく、タカはそう言うと、カメの足に、アクスで切りつける。あの大きな体だ。足の一本でも奪えば、機動力が落ちるのは、他の傭兵達が証明している。その為、彼は足を集中的に切りつけていた。だが、本来のKVでさえ、てこずる相手。そう簡単にはダメージも通らず、逆に吹っ飛ばされてしまう。
「タカ! まったく、肝心な所で‥‥!」
 しかも、攻撃力はタートルの方が上。ばちばちとスパークを上げて、大破しかけてるタカのサンドリヨン。暁恒がタートルに向けてスナイパーライフルを撃ちこんだ。狙いは砲口。しかし、弾はタートルの装甲に弾かれ、あさっての方向へと飛んで行ってしまう。
「させないっ!」
 プロトロン砲は駄目だ。そう判断した稲葉、足に滑り込ませるように、ハンマーを叩きつけた。だが、いかに試作機とはいえ、サンドリヨンもKV。流し斬りも紅蓮衝撃も、その鎧を通す事は出来なかった。
「亀なら、ひっくり返せばそう簡単には起きれないはず! もっと腹の下に入り込むよ!」
「了解。お前達にこの地球は渡さない‥‥絶対に!」
 そこに、MIDOHとジョーが、ミラーシェイドを発動させつつ、その小ささを生かして、腹の下へともぐりこむ。普通のKVなら出来ない芸当に、タートルワームがまごついている間に、MIDOHが腹にバルカン、ジョーが足に至近距離からレーザーをお見舞いする。さすがに、ひっくり返りはしないが、その集中攻撃のかいあって、ワームが膝をついた。
「今の内に、これもって逃げましょう。離れてしまえば、隠れられますから!」
 これで、視界外になったはず。そう判断したジョーは、彼らの視界が隠れている間に、四方八方へと散って行くのだった。
 なお、南側に戻った彼らは、サンドリヨンを降りた瞬間、猛烈な車酔いに襲われ、余りにも激しいので、傭兵達はしばらく休まなければならなかった事を追記しておく。