タイトル:【DoL】エスコートマスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/07 01:49

●オープニング本文


 西暦2008年を迎えた一月某日、名古屋にあるUPC日本本部を統括する東アジア軍本部の会議室では、ミハイル・ツォイコフ中佐がいつにも増して怒号を上げていた。
「お前達が私を評価してくれたことには嬉しく思う。だがそれでは余計な注目を浴びてしまうだけというのが分からんのか!」
 問題になっている議題はツォイコフ中佐の帰郷である。本来極東ロシア軍所属の中佐がいつまでも日本に滞在する必要は無く、防衛戦の事後処理も済んだ今では中佐はロシアに帰るのが筋だった。しかし日本本部の司令官本郷源一郎大佐は、中佐の帰郷さえも一つのプロパガンダに利用できないものかと考えていた。
「だがガリーニンはもう存在しない、中佐はどうするというのだ?」
「俺を呼び出したのはお前達で、ガリーニンの突撃もお前達の指示だ! 全権を握ったのは確かに俺だが、その青写真を描いたのもお前達ではないか!!」
 吼える中佐、しかし彼に提示された案は一つしかないことも中佐は理解していた。
「お前達は何故そこまで俺をユニヴァースナイトに乗せようとするのだ!!!」
 会議室のプロジェクターは、UPC東アジア軍が提示したガリーニンに代わる中佐の乗艦「ユニヴァースナイト」を映し出していた。手元に配られた資料には「KV搭載可能、自己発電機能有、航続可能時間1000時間超」といった十分すぎる性能が書かれている。しかし最大の問題点が書かれていなかった。
「名古屋防衛戦も敵の本来の目的はこのユニヴァースナイトの破壊が目的だったのではないか?」
 ユニヴァースナイトの最大の問題点、それはガリーニンを超えギガ・ワームにさえ引けをとらない巨大な体躯だった。また空母である以上ユニヴァースナイト自体には十分な火力が搭載されているわけではない、いかに各メガコーポレーション合同開発の最新鋭空中空母とはいえ、KVが無い状態で集中砲火を浴びれば撃墜は免れない。
「そのユニヴァースナイトの進水式を大々的に行うと言うのはどういう了見なのだ! 再び名古屋をバグアの戦火に晒したいのか!!」
 当初中佐はユニヴァースナイトに乗ること自体に懐疑的だった。
 乗ってしまえば常に最前線を転戦し、部下を危険に晒してしまう。
 乗艦条件として提示したのが部下以外の各種専門家の搭乗と進水式の見直しだった。
「しかし名古屋以外にもバグアからの解放を期待する声は高い。彼ら彼女らに希望を持たせるのも私達UPC軍人の仕事だ」
 冷静に諭す司令官。そこまで言われた以上、流石の中佐も反論ができなかった。
「ならばガリーニンの時と同様KVでの護衛を依頼する。並びに、民間人は全員シェルター退避だ。貴様らの言う希望はブラウン管を通してでも伝わるだろう。これが俺の譲歩できる最低ラインだ」
 こうして中佐のユニヴァースナイト搭乗が決定した。

 ところが‥‥である。
 名古屋市街のあちこちで、ゴーレム型の目撃情報が相次いだ頃、当のユニヴァースナイト格納室では。
「だめだなー。さっぱりわからない」
 巨大なユニヴァースナイト‥‥UKの中身で、中佐の部下が、並んでいる精密機械やら専門機器やらの前で、頭を抱えていた。その手元には、進水式の計画表に『見直し』の文字が躍っている。
「イベントは本職じゃねぇし。せいぜい中佐に挨拶してもらうくらいしか出来ないぞ」
 深いため息をつく部下A。進水式に関わっているのは、彼らばかりではない。傭兵達の中にも、ここぞとばかりに仕事に従事する者達がいる。シェルターや市街地のパトロールは言うに及ばず、中には仕事柄芸能関係に携わっている者もいる。
「それでも良いんじゃないか? それよりも中の人だよ」
 とりあえず、具体的な事は傭兵達に任せるとして、アドバイスとか希望者に何か考えてもらおうと言う事になり、彼らは中に乗せる『各種専門家』の選定に入った。中には、キャスター准将の姿もある。知った名前に、彼らは意見を聞こうと、彼に連絡を取ったのだが。
「専門家を乗せるのも良いが、戦える奴も混ぜておかないと、大変な事になりそうだぞ」
 その彼が渡してきたのは、岩龍のとらえた超望遠の写真だった。それには、先ごろから噂されているゴーレム型が、まるで侵略を開始するかのように、上陸している図が映し出されている。その数、8機。また、別の写真では、カメ型の‥‥キメラにしてはサイズの大きすぎる影が、名古屋港に出没している写真もある。いずれも、ユニヴァースナイトの通り道であり、出撃口だ。
「ちょっとまて。このデカぶつに取り付かれたら、俺達だけじゃ対処できないぞ」
 何しろ、ギガワームに匹敵する巨大な空母さんである。目立つ事この上ない。大きな物を動かしなれている面々だが、個人戦では戦力不足だった。
「進水式は決定事項だ。傭兵達には、歓声でもあげとけと通達されてるし。それに、こいつが出撃できなければ、五大湖全域が落ちるのも、時間の問題だしな」
 准将が難しい表情をしてそう答える。呼び出されていた中佐が、怒鳴り声を上げていたのを思い出す彼ら。自然と、深いため息が出る。だが、時間は待ってはくれない。
「つまり、中佐が戻ってくるまでに、こいつを安全な空域までエスコートしてくれる面々を集めろと」
「そうだな。ついでに中を案内して、レーダー監視や、砲撃手なんぞをやってもらうと良い。お前らは運転に集中しておけば良いって事さ」
 KVの航続距離を考えると、日本の領空を通過するまでだろうか。そう指示するキャスター准将だった。

『この大きな貴婦人を、領空外まで無事にエスコートしてくれるナイト様を募集します。ついでにつけたい装備とか、身の守り方とか教えてくれる研究者の皆様も募集します』

 ミクに喋らせているのは、きっとその方が当たり障りないと計算したからだろう。

●参加者一覧

鷹見 仁(ga0232
17歳・♂・FT
リチャード・ガーランド(ga1631
10歳・♂・ER
新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
篠崎 公司(ga2413
36歳・♂・JG
内藤新(ga3460
20歳・♂・ST
常夜ケイ(ga4803
20歳・♀・BM
クラーク・エアハルト(ga4961
31歳・♂・JG
ルシフェル・ヴァティス(ga5140
23歳・♂・EL

●リプレイ本文

 その日、傭兵達はKVを携え、ユニヴァースナイトの格納庫へとやってきていた。
「ふむ。外装は大きいですが、中身は居住機能も確保されているようですね」
 何しろ、ギガワームと同じ位の大きさである。その技術に興味津々と言った表情で、居住区の一つ一つを確かめる篠崎 公司(ga2413)。
「都合1000時間の飛行が可能って言うタテマエだから、それなりに生活できるようにしてあるみたいだぜ」
 そう話してくれる搭乗員Aくん。さすがに、プロパガンダにしようと言うだけあって、金はかかっているようだ。
「一ヶ月ちょいですか‥‥。その割には、装備が貧弱すぎません?」
 そうとは思って居ない様子の搭乗員。確かに、ガリーニンに比べれば、設備は増えているが、大きさを考えると、若干不安ではある。
「ちょっと試してみましょう。俺、仮想敵やってきます」
 確かめる為に、クラーク・エアハルト(ga4961)がKVを起動させる。レーダーや対空兵装の扱いを慣れさせる目的もあった。
 そして。
「うーん、自衛用の対空攻撃手段は欲しいですよね。空母だとはいっても、代えがきかない以上、相応の武装は備えて欲しいところです」
 新居・やすかず(ga1891)が、その光景を見てそう言った。ギガワームとは違い、量産できるわけではないから。
「BGMがないのはちょっとさびしいだね。昔の宇宙戦艦モノのアニメOPの交響曲アレンジでも流して、テンション上げたい気分だね」
 一方、内藤新(ga3460)は艦内が静まり返っているのが問題なようだ。その意見には、リチャード・ガーランド(ga1631)も横でうんうんと頷いている。まぁ、UPCでなくとも、軍隊に行進曲と言うのは、よくある話なので、彼らはこう言ってくれた。
「いくつか入手してこよう。良さそうな曲があったら、お勧めしてもらうって事で」
 その結果、カオスな選曲になるのは、ある意味仕方のないことだろう。
「うーん、やはり通信機器がなぁ‥‥」
 一方、鷹見 仁(ga0232)はUKの通信能力に、疑問を投げかけていた。KVと同じ様に、無線機は取り付けられている。だが、あくまでもKVや戦闘機の延長線上ばかり。
「三次元レーダーとかつけられないのか?」
「本部に開発要請してるんですけどね。間に合うかどうか」
 昔、アニメで見たCGフル活用のレーダー。しかし、目の前にあるのは、それとはかけ離れた平面図‥‥船舶にあるようなものだ。
「ところでこの艦にはレールガンは搭載してないのかい?」
 戻ってきたクラークが、そう尋ねる。搭乗員の話では、まだ試作段階で、実用化されて居ないらしい。そのうち、自分達に実験台役が回ってくるかな‥‥と、そこまで考えた時だった。
「警報が!」
 けたたましく鳴り響くスクランブルコール。
「現れたな。離脱可能域までどれくらいだ?」
「後10分です」
 常夜ケイ(ga4803)の問いに、そう答える搭乗員。成層圏までもう少し。敵も、それまでに何とかしようと言う心積もりなのだろう。だが、そうはさせない‥‥そう言いたげな仁。
「それまでに片を付けましょう」
 ルシフェル・ヴァティス(ga5140)が、KVへと向かう。こうして、彼らはそれぞれの武器を手に、迎撃へと赴くのだった。

 ユニヴァースナイトの中にいる限り、衝撃はさほど大きくはない。しかし、海上からはどこかの空母でも接収しているのか、ばしばしとレーザーが飛んでくる。そんな、危機感を募らせる光景にも関わらず、リチャードは嬉しそうに砲台のコントロール席へと座った。
「く〜〜! いいねえ! 大規模作戦の裏で密かに開発されていた人類を救うかもしれない超弩級飛行型戦闘母艦! まさに科学者の理想にして萌えで燃えなあの台詞! 『こんなこともあろうかと!』って言える最高のシチュエーションじゃないか!」
 嬉しさの余り、身が震える。欲を言えば、もう少し砲台の数を増やして欲しかったが、その代わりに、巨大な主砲が鎮座している。さすがに使用許可はまだ出ていないが。
「過去の例から言えばAC−130のように”砲弾の雨を降らせる”くらいの能力を期待しているのですが‥‥」
 隣の砲座に座っている篠崎が、頭の中に入っている武器データを並べ立てる。が、リチャードはともかく、他の傭兵達には、形式番号を言われても分からない御仁が多い。平たく言うと、ガリーニンの親戚みたいな飛行機なのだが、リチャードはこう言った。
「んな事言ったって、一般人わかんねぇよ!」
「じゃあ説明する。既存の高射砲が75mm、対地攻撃用バルカンが30mmからなんだが‥‥」
 篠崎はそう言うが、リチャードはそのあたりが頭に入っている部類の人間である。やはり知識のない人間の言葉に直すと、KVに付いているバルカンに似たようなモノとか、戦車に付いているメイン大砲とか、そんな類のシロモノだ。
「俺に言ってどうするよ! アレルギー持ってる奴は、そう言うの教えたって、理解も共感もしてくれねぇよ!」
 大火力の浪漫は、普通の人には理解出来ない。と、篠崎は向きになってこう言い返す。
「どこがわからないと言うのだ!」
「世の中、兵器の話が嫌いな奴もいるんだよ! おー、来た来た!」
 もーちょっと、素人でも分かるように言わないと、採用してもらえなさそうだ。そこへ、今までの倍ほどの太さの粒子砲が、目の前を横切る。
「戦術的には必要なんだが‥‥」
「その戦術論も、喧嘩の元になるんだってよ。亀野郎が撃って来たか。食らえ!」
 戦術的には制空権握っていた方が良いと言うのが、篠崎の理論だが、UPCはむしろ局地戦に重きを置いているようだ。空中から、小さな目標に撃っても当たらないし、それに町に被害を出したくないからだろう。ここならそんな心配はいらないとばかりに、リチャードは砲をぶっ放す。
「レーザーならともかく、ビームが相手では対抗手段はそうありません。出来るだけ撃たせない事が肝心ですね」
 篠崎も、そう言って同じ目標へと砲台を操る。だが、それをうっとおしいと思ったのか、粒子砲が砲台のほうに集中してきた。衝撃に、顔が引きつる。
「くう! 凄い威力の大型砲だ。こんなのを直撃されたらバイパーでも大ダメージだな」
 バイパーどころか、砲台直撃なら、リチャード達も危ない。その粒子砲をうらやましそうに見下ろしながら、篠崎が呟く。
「こちらにも、強力な対地攻撃があれば‥‥」
 敵を下方に押しとどめる事も出来るのに‥‥と。残念そうだ。と、同じ様に砲台に乗っているリチャードは、その活路を、下のタートルワームへと向ける。
「うーん、是非鹵獲して分解して、詳細なデータが欲しいものだねえ。アレをナイトフォーゲルで使えれば従来型のワーム相手なら一撃で中破から大破ぐらいかもねえ。あたればだけど」
 どうやら、技術屋魂‥‥と言うか、SF魂が激しく刺激されてしまったようだ。
「学者先生。派手に分解してやれ」
「回収できると良いんですがね」
 通信機ごしに、ケイが言う。が、その為には近づかなければならない。
「当たらないと言うのかっ」
 だが、カメも他のワームも移動している。ただでさえ当たり辛い対地攻撃。結果はおのずと知れようと言うもの。
「く、個々の武装で勝てないならば連携で屠るまでです」
 篠崎はそう言うと、味方のKVに、UKの射線上にワームを呼び込む事を、要請するのだった。

 だが、そう上手くは行かないのが、戦争と言うものである。
「くっそぉ、なっかなか当たらないですね」
 ちょこまかと動き回るワームは、KVと違い、慣性制御を持っている。上手く回りこめないそれに、新居は不満そうに口を尖らせる。
「貴婦人を狙う殿方は多いと言う事ですよ」
 パーソナルエンブレム「銃を抱く魔女」を描いたクラーク、その貴婦人から、ワームを引き剥がそうと、反対側へと回りこむ。しかし、くるりとその場で回れ右をするワームに、出るのは舌打ちばかり。
「この状況では、積極的な攻勢は白兵組の人達に任せましょう」
「傷一つ無く送り届けないと、キャスター准将と中佐が怖そうですね」
 新居に言われ、クラークはUKのすぐ傍まで戻る。直後、同じく射撃班を任された内藤が、悲鳴を上げた。
「右30度より敵機! 挟まれてるだよ!」
 見れば、反対側からも数機、ワームが現れている。
「やっぱり、地上の敵との撃ちあいになっただか‥‥」
 そのまま、砲弾の飛び交う空になった状態を見て、内藤はぼそりと呟く。と、クラークが冗談交じりにこう言った。
「エスコートを任された騎士ですからね‥‥ここは蒼穹の守護騎士とでも名乗っておきますかねぇ?」
「残念ながら、追加が出てきましたよ」
 ぼしゅぼしゅと、粒子砲が彼らの周囲を揺らす。見れば、同じ方向から、タートルワームの援護射撃が襲ってきた。
「新居さん。そっちは任せました!」
「OK」
 UKから援護射撃を受けながら、スナイパーライフルでもって応戦するクラーク。タートルワームに向けて、D−02の利点を生かして、遠距離射撃を行うものの、牽制程度にしかなっていない。
「ミサイルポッド、いくだよ!」
 一方、そのワームはクラークに任せ、周囲に散らばるキメラ達に向かい、ミサイルポッドを放つ内藤。飛行機雲が、盛大に糸を引き、ところどころで誘爆している。
「護衛であって、退治じゃない。追い払うだけで充分です!」
 そんな彼らに、そう指示をする新居。UKの射線上に誘導するようにライフルを放ち、向かってきた所にミサイルを放っている。
「あの甲羅、相当硬い‥‥」
 一方、クラークは実体弾ではなく、レーザーに切り替えていた。しかし、効果は今ひとつ。どうやら。実弾だろうが非実弾だろうが、余り関係ないようだ。
「低空ぎりぎりまで降下すれば‥‥」
 何とか武器の性能を生かせた攻撃が出来そうだ。そう判断する内藤。
「誤爆に注意してくださいね!」
「わかってる。ひっくり返すだよ!」
 そう言って、内藤はブレス・ノウに練力を注ぎ込む。
「おらだつの希望、ユニヴァースナイトの処女航海だよ。みんなでユニヴァースナイトを、希望に満ちた存在として、全世界にアピールするだよ!」
 ぎゅいっとトリガーを引き絞る彼。ぶつけるのは、狙いを外し難いホーミングミサイルだ。帰りの燃料が心もとないが、致し方ない。
「こちらリップル。今UKの真下だ。ドン亀のビームが来たら急降下で攪乱しに行くぜ。飛んでる輩にゃ下からガドリングで追い立てて砲軸上に誘う」
「援護します」
 そこへ、白兵班に居たケイが、高度を下げてきた。同じ様に高度を下げるルシフェル機。続く一撃は彼らに任せ、内藤はひっくり返す事だけに、全精力を傾ける。
「海面すれすれで‥‥ころべぇっ!」
 ぶしゅうっとミサイルがタートルワームのどてっぱらに命中する。その影響で、粒子砲がUKから内藤の方へと向いてしまう。
「危ないッ」
 食らったら一環の終わりだ。
「舐めるなぁっ!」
 滑り込むように、ルシフェルがガトリング砲を放つ。その間に、人型へと変形した内藤が、タートルワームを足がかりに、再び空中へ。
「稲妻のヒーロー、鷹見仁! 見参!」
 入れ替わるように、空中で変形するのは、仁の機体だ。傭兵の中でも現れ始めたバイパーの所持者。
「ひっくり返りましたよ。甲羅の継ぎ目を狙ってください!」
 すでに、タートルは立ち上がりかけている。一般的な亀のような醜態は、晒さないと行った所だろう。それでも、行動は鈍っている状況に、ケイが「そっち行ったぜ、鷹見さん」と道を開けさせる。
 が、やっぱり出てくる護衛のゴーレム型。
「やっぱり邪魔してきたか‥‥。撹乱しますよ!」
「もとより陸戦装備じゃねぇ!」
 ルシフェルがそう言って、機体を回りこませた。当たらないのは分かっているが、それでも撹乱には充分だ。
「名古屋の褒美に貰ったコイツが唸るぜ! 試作G型ァ!」
 べりばりべりっと、放電管が唸りを上げる。派手なスパークと、乱舞する周囲の弾丸に、ケイは目を輝かせた。
「ひゃほう! 眼福眼福!」
 何しろ、待ちに待った銃撃戦である。
「行きますよ!」
 弱点がどこだか分からなかったが、その間に、ルシフェルはユニコーンズホーンに練力を注ぎ込んだ。普通の亀なら、間接や甲羅の隙間あたりだろうが、果たしてワームに通じるかどうか。
「ディハイングブレェェェェェドッッ!」
 一方の仁はと言うと、極限まで強化した巨大な刃で持って、前足へとブーストを吹かす。
「ユニコーンズホーン。食らいなさい」
 同じ様に、ルシフェルも練力をアグレッシヴファングのスイッチへ注ぎ込んだ。
「足の一本でも、貰ってやるぜ!」
 そう叫びさま、ブレードを振り下ろす。展開する赤いフォースフィールド。その確かな手ごたえと共に、足を切り落とす。
「うっひょぉ、さすが300万」
「私のコンボが、完全に影に隠れちゃいましたよ」
 軽く口笛を吹くケイに、不満そうなルシフェル。見れば、弾幕の煙が晴れた瞬間、タートルの腹に深々と刺さったユニコーンズホーンが、引き抜かれるところ。こうして、UKは無事、ワーム達の攻勢を逃れ、成層圏へと進んで行った。
「艦長、クラーク‥‥あ、傭兵から、電報が届きました」
 そのUK内に届いた電報。中佐はいつものむっつりとした表情のまま、「読んでみろ」と告げる。
「Bon Voyage!」
 ご丁寧にも親指立てて、サムズアップ付き。
 後日、傭兵達には、『武勲を祈るくらい言えんのか』と言う電報が返されたと言う。