タイトル:【DoL】怪しいトラックマスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/02/01 00:31

●オープニング本文


 西暦2008年を迎えた一月某日、名古屋にあるUPC日本本部を統括する東アジア軍本部の会議室では、ミハイル・ツォイコフ中佐がいつにも増して怒号を上げていた。
「お前達が私を評価してくれたことには嬉しく思う。だがそれでは余計な注目を浴びてしまうだけというのが分からんのか!」
 問題になっている議題はツォイコフ中佐の帰郷である。本来極東ロシア軍所属の中佐がいつまでも日本に滞在する必要は無く、防衛戦の事後処理も済んだ今では中佐はロシアに帰るのが筋だった。しかし日本本部の司令官本郷源一郎大佐は、中佐の帰郷さえも一つのプロパガンダに利用できないものかと考えていた。
「だがガリーニンはもう存在しない、中佐はどうするというのだ?」
「俺を呼び出したのはお前達で、ガリーニンの突撃もお前達の指示だ! 全権を握ったのは確かに俺だが、その青写真を描いたのもお前達ではないか!!」
 吼える中佐、しかし彼に提示された案は一つしかないことも中佐は理解していた。
「お前達は何故そこまで俺をユニヴァースナイトに乗せようとするのだ!!!」
 会議室のプロジェクターは、UPC東アジア軍が提示したガリーニンに代わる中佐の乗艦「ユニヴァースナイト」を映し出していた。手元に配られた資料には「KV搭載可能、自己発電機能有、航続可能時間1000時間超」といった十分すぎる性能が書かれている。しかし最大の問題点が書かれていなかった。
「名古屋防衛戦も敵の本来の目的はこのユニヴァースナイトの破壊が目的だったのではないか?」
 ユニヴァースナイトの最大の問題点、ヴァース自体には十分な火力が搭載されているわけではない、いかに各メガコーポレーション合同開発の最新鋭空中空母とはいえ、KVが無い状態で集中砲火を浴びれば撃墜は免れない。
「そのユニヴァースナイトの進水式を大々的に行うと言うのはどういう了見なのだ! 再び名古屋をバグアの戦火に晒したいのか!!」
 当初中佐はユニヴァースナイトに乗ること自体に懐疑的だった。
 乗ってしまえば常に最前線を転戦し、部下を危険に晒してしまう。
 乗艦条件として提示したのが部下以外の各種専門家の搭乗と進水式の見直しだった。
「しかし名古屋以外にもバグアからの解放を期待する声は高い。彼ら彼女らに希望を持たせるのも私達UPC軍人の仕事だ」
 冷静に諭す司令官。そこまで言われた以上、流石の中佐も反論ができなかった。
「ならばガリーニンの時と同様KVでの護衛を依頼する。並びに、民間人は全員シェルター退避だ。貴様らの言う希望はブラウン管を通してでも伝わるだろう。これが俺の譲歩できる最低ラインだ」
 こうして中佐のユニヴァースナイト搭乗が決定した。

 それは、名古屋市内でも、わりかし目立つ場所で起きた。名古屋駅から地下鉄へ通じる通路や、市街地にある会議場に、公民館等である。概ね、人の集まりやすく、災害時には避難場所になりそうな場所のいくつかに、トラックが乗りつけられていた。
「さて、始めるとしようか」
 眼鏡の青年が、そう呟いて、車の外へ合図する。直後、そのバックミラーに、人型の機械が映った。
「博士には悪いけど、俺のやりたいようにやらせてもらうよ。新型のテスト兼ねてね」
 くくく‥‥と意地悪く微笑む彼が、紙飛行機に飛ばして投げたもの。それには、何やら化学記号めいた物が羅列している。見るものが見れば、それがある気体の組成表だと気付いただろう。
「さて、どれだけ食いつくかな」
 そう言って、トラックを発進させる彼。後には、まるで資材か何かのように、ドラム缶が3つ置かれていたと言う‥‥。

 一方その頃、ラスホプのミクは、珍しく名古屋周辺の調査をしていた。ちゃんと働いてるもん! と言うわけだ。
 とは言え、ラスホプの傭兵さん達にも紹介できるよう、ちょっとしたケーキ屋さん等々を事前チェックしている程度だったのだが、そこでちょっとばかり気になる事があった。
「やっぱり、KV搬入の予定はないよなぁ‥‥」
 それは、とある街角での出来事だった。正確には、市内のあちこちに作られたシェルターの近くだ。そこに、普通の4トントラックよりかなり大きいその荷台からは、シートがかけられた人型の機械と、ドラム缶のようなもの、さらに空気ダクトに接続するような蛇腹型の太いパイプが見えている。普通考えれば、KVと共に能力者を配している光景だが、映っている数人は、登録されているデータにはない。それどころか、作業しているらしき彼らの中に、数年前宇宙ステーションに滞在中、行方不明になった日本人の姿があったそうだ。
 公式記録にも載る人物。黒髪の日本人。結構イケメン。さらさらの髪を一つにまとめ、眼鏡をかけたどこかの係員みたいな姿をしているその彼の名は‥‥佐渡京太郎。
「これ、もしかしてユニヴァースナイトの進水式に合わせて、何かやる気なのかなぁ‥‥」
 資料と首っ引きで、眉根を寄せるミク。だが、動画が使えない以上、資料は静止画しかなく、それだけでは詳しく分からない。
「よし、実際に行って確かめてこよう! 偵察兼パトロールって事で! シェルターに何かされたら困るし!」
 そう言って、いそいそと本部へ向かうミク。しばし考えた彼女は、ぽつりと呟く。
「一応‥‥召集、かけとこうっと」
 シェルターの周辺で、市民が今まで見た事も無いゴーレム型の敵に襲われたとの情報が入ったのは、その直後である。

『シェルターの近くに、怪しげなトラックが、怪しげな発生装置を、見たことないゴーレムで運び込んでいるみたいです。ミクと一緒に調べに行って欲しいぞ』

 どうやら、依頼で働かないとか言われたのが、気に入らなかったらしい。

●参加者一覧

大曽根櫻(ga0005
16歳・♀・AA
ナレイン・フェルド(ga0506
26歳・♂・GP
北柴 航三郎(ga4410
33歳・♂・ER
沢辺 朋宏(ga4488
21歳・♂・GP
レールズ(ga5293
22歳・♂・AA
リーゼロッテ・御剣(ga5669
20歳・♀・SN
フォル=アヴィン(ga6258
31歳・♂・AA
マコト(ga6361
19歳・♂・GP

●リプレイ本文

 ともかく、状況がわかりにくい‥‥と大曽根櫻(ga0005)が言うので、まず手分けして情報収集を行う事になった。そうすれば、予測も立てやすいだろうと言う魂胆である。
 話は地上A班‥‥フォル=アヴィン(ga6258)、ナレイン・フェルド(ga0506)、リーゼロッテ・御剣(ga5669)のチームから始まる。フォルがミク・プロイセン(gz0005)にケーキ奢るからと言ってまで、通信機を所望したのだが、やはり余り性能の良いものは回ってこない。オマケに、渡された見取り図は手書き。バイクはほぼ希望どおりのものを調達できたのだが、肝心の佐渡京太郎なる人物のデータが、殆ど手に入らなかった。どうやら、何者かの手によって、データが改ざんされていたらしい。
「よし、これでOKね。あとはブランケットかぶって、大人しくしてて頂戴ね」
 トラックの荷台に、人型にしたまま座らせるナレイン。中身と同じ様に、いかにも女性らしく正座を崩したKVを見て、そう微笑みかける。
「ニルヴァーナ、私が帰ってくるまでいい子にしててね♪」
 一方、リーゼもまた、自分の愛機をひと撫ですると、トラックへと戻ってきた。持って行くKVは1機だけだが、他のKVも出来るだけ近くに置いておきたい‥‥と主張すると、名古屋郊外にあるUPC基地の倉庫に置かせてくれた。
「すぐには駆けつけられませんけど、ね」
 残念そうにそう言うリーゼ。飛び立ってからの距離は近いが、そこまでたどり着くまで、若干時間がかかりそうだ。
「まぁ良いじゃない。ないよりマシよ。それで、どこ行くの?」
 無線機から、バイクのナレインがそう言ってきた。物資の都合で、ナビなんぞ付いていない。なので、地道に聞き込みをするしかない。
「一番近くの公園から行きましょう。この先の小学校です」
 指示を受け、先ほど見た地図を思い出す彼。確か、広い通りの三つ目の角だ。大戦に備えて、道は加工されているものもあるが、避難場所とスクールゾーンくらい、そのままだろうと。
「いたいた。さて、じゃあお姉さんの腕の見せ所ね」
 彼を追い、トラックを止めたリーゼが、シェルターの入り口で作業をしていたらしいUPCの係員に声をかける。
「そこのお兄さん達〜ちょっと聞きたいことあるんだけどな〜♪」
 そう言ってウィンクしつつ、胸が大きく見えるように腕を組み、話を聞こうとするリーゼ。
「怪しいトラックねぇ‥‥」
 一応、一般市民はシェルターに避難している筈なので、残っているのは傭兵かUPCの中の人か、バグアの手先と言う事になる。
「どうだった?」
「トラックとか、例のお兄さん達については、よくわからなかったわ」
 ナレインに首を横に振るリーゼ。いかに隠密潜行は、気配を隠すシロモノであって、何か見つけ出すものではないと言ったところか。
「ミクと一緒に、佐渡の目撃場所に行った方が良いか‥‥。何か発見出来るかもしれないしな‥‥」
 フォルはそう言うと、画像に移っていた場所へと向かった。そして、その画像に映りこんでいた地面へ目を凝らす。
「あったあった。残ってると良いが」
 落ちていた紙を拾い上げる北柴。しかし、その表面の文字は既にかすれていて、殆ど読めない。
「んー? これは暗号? いや、化学式かな?」
 何やら文字らしきものが書かれているのはわかった。とりあえず、解析する為、トラックへと戻る。
「あ、おかえり。あのね、シェルターついてた不振物は、吸気口に取り付けられてたんで、まとめて倉庫の方に送られたみたい」
 そう答えるリーゼ。ちょうど良いって言うんで、Aチームは、倉庫へと戻ってくる。搬入口で検査を受けたらしいそれが運ばれた先にあったのは。
「こ〜言うのって素人が勝手に触らない方がいいのよね? プロの方にお任せしちゃいましょ♪」
「そうだな。頼めるか?」
 ナレインとフォルの申し出に、こくんと頷く彼女。そこらへんに転がっていた工具で、てきぱきと解体にかかる。
「これは‥‥」
 中に入っていたもの。それは、使用が禁止されている、ある液体だった。

 その話は、すぐさま地上班B‥‥櫻、沢辺 朋宏(ga4488)、北柴 航三郎(ga4410)に伝えられた。
「何? 吸気口に仕掛けられてたのは、怪しい液体入りの物体?」
「うん、そーなんだー。今、詳しい組成とか調べてるけど、シェルター閉鎖空間だから、もしこれがそーゆーものだと、中の人危ないって」
 北柴に、ミクがそう説明してくれる。機械の見付かった場所を、地図に書き加えて行く彼。
「見つかった場所に案内していただけますか?」
「いいお。でも、多分もう何も残ってないと思うよ」
 一応上官なので、沢辺がそう言う。が、ミクは快くそう言って、バイクの後ろに勝手に跨ってしまった。
「先行します。後で付いて着てくださいね」
 中型モトクロスタイプ。住民の避難した町では、さえぎるものは少ない。
「KV、使う事になるでしょうか‥‥」
「わかりませんね。この状況だと、街中では使わないかもしれません」
 櫻が、荷台に積んだ自分のKVを心配している。一応、上空から発見したら連絡を受ける事にはなっていたが。
「使うのであれば、今の内に整備しておいた方がよろしいでしょうか‥‥」
「倉庫を出るときに、一通り見てはもらっています。大丈夫でしょう」
 心配そうに荷台を見る櫻に、北柴は首を横に振る。トラックで輸送した程度で傷つくような精密機械なら、端からバグアとやりあったり出来ないと。
「あー、そうそう。その先、前パトカーが居ましたよ」
「へっ。あ、じゃあ道変えますね」
 地元民らしき櫻の指示で、慌ててハンドルをきる北柴。途中、曲がりきれずに荷台のあたりをがりがりとこすってしまったが、余り気にしていないようだ。
「大丈夫か? 何なら変わるが」
「いやー、ロボットよりは簡単だと思いますよ。はい」
 バイクから、そう声をかけてくる沢辺。だが、彼は首を横に振った。若干冷や汗が浮かんでいるのにはわけがある。
 北柴、大型は無免だ。
「大型持って無いけど良いかな‥‥」
「咎める人、いないですけどね‥‥」
 皆、避難誘導やらパトロールやらで忙しい。それに、明らかにKVを搭載しているトラックを、UPCが止めるわけがない。
「さて、怪しそうな場所は‥‥。やはりシェルターの近くか」
 沢辺が地図を片手に、そう呟く。
「避難所の前は広い道路になっていますけど、逆側はスクールゾーンですから、トラックは入れません」
 櫻がそう案内する。そこで、トラックを大通り側に止め、その間に沢辺が逆側に回りこんだ。
「あ、いた!」
「しっ。静かに」
 ちょうど、数人の男達が、シェルターを離れる所だった。声を上げかけたミクを、そう言って黙らせ、沢辺はバイクを止めると、瞬天足を発動させる。ロエティシアを抜く暇はなかったが、生身相手なら充分だ。
「悪く思わないで下さいね!」
 逃げようとしたその襟首を掴み、強引に引き寄せる。相手が捕まるものかと抵抗した所で、一発ぶん殴る沢辺。ずさりと地面をこする音がして、相手が吹き飛ぶ。
「待て!」
 体制を立て直そうとした所に、関節を極めようと移動したのがまずかった。そのわずかな差の間に、相手は生垣の向こう側へと逃げてしまう。
「行かせませんっ」
 大通り側から回りこんだ櫻が、手にした蛍火を片手に、突きの形で立ちはだかる。無理やり通り抜けようとした相手に、軽くステップを踏むようにして切り込む彼女。良く見れば、髪が金髪になっている。
「避難してる人達は只でさえ怖い思いしてるんです。これ以上の迷惑はかけさせません」
 さらに、その後ろに控えたトラックからは、北柴が超機械を使って、練成弱体をかけていた。おかげで、追いついた沢辺が、研究所で強化した革靴でもって蹴り飛ばす。
「さて、事情を話してもらいましょうか」
 そう言って、ロエティシアをうりうりと突きつける彼。衣服がばたついている所を見ると、覚醒しているのだろう。
「残念だったな。俺はダミーだ‥‥」
 黒服のかぶっていた帽子を引っぺがすと、そこにたのは、佐渡ではなかった。見覚えのない男。
「ダミーでも何でも良いです。何を仕掛けていたんですか」
「さぁね。人間、空気がなくなると死ぬんだよ。誰でもな!」
 くくくっと意味ありげに笑ったその男は、言いたいだけ言い終わると、がっくりと力を抜いた。見れば、口元から一筋の血が垂れている。
「早く終わらせて、名古屋名物を食べたいですね‥‥」
 静まり返った中、櫻が寂しげにポツリと呟くのだった。

 その頃、KVチームであるレールズ(ga5293)とマコト(ga6361)は、上空から怪しいトラックの策敵を行っていた。
「俺たちの初陣か。よろしく頼むぜ、相棒」
 操縦桿を握り締めながら、そう呟くマコト。一方、レールズもまた、眼下に目をこらしていた。
「KVで実戦は初めてですが、大規模作戦前のいい慣らしになりそうです」
 上空を旋回するように、KVを操縦するレールズ。
「4トン越えのトラックだから、目立つと思うんだがな‥‥」
 そう言って、マコトも同じ様に捜索しているが、トラックはカモフラージュされているのか、かなり低空で飛行しないと、見分けが付かない。
「あれ? 何か止まってる?」
 KVを乗せたと思しき、地上班Bのトラックが、不自然に停車しているのを見て、マコトは首をかしげた。
「どうしたんです?」
「いや、おかしいなと思ってさ。要請はないけど、ちょっと見てくる」
 レールズに説明し、マコトは高度を下げると、人型へと変形し、着地する。レールズも、同じ様に続いていた。
「これは‥‥」
 駆けつけると、ちょうど手先の男が絶命した後だった。
「何故、人類を裏切って‥‥」
「わかりません。それを語る前に死んじゃいましたから‥‥」
 そう言うレールズに、残念そうな北柴。出来るなら、彼ごと安全地帯まで連行したかったのだが。
「それより、どうも相手は、シェルターの空気口に、何か細工をしたみたいなんです!」
 その北柴、気を取り直したように、解体した装置を見せる。別の班からでは、回収した装置の中に、毒物と思われる液体が入っていた。そして、死に際に残した言葉から推察するに、シェルターにトラップが仕掛けられているのは、明らかだと。
「だったら、別の場所に避難させないと‥‥」
 困惑したように、マコトの方を向くレールズ。相手がワームや大型キメラなら、何とか対処法もあるのだが、見えない敵が相手では、時間の稼ぎ方がわからないようだ。
「増援を呼ぼう。これで分かるはずだ」
 そう言うと、マコトは煙幕を空に向けて放った。狭い空域だ。地上班Aにもすぐに分かるはずである。
「いったい、何が目的で‥‥」
「いずれにしても、俺達に仇為す存在なのは確かさ」
 首をかしげるレールズに、マコトはそう言って、別のシェルターへと向かう。1機2機では、対処がしにくいと言うのが、その目的だった。
「他の方も、順次KVをお願いします」
 目撃された新型もある。戦力はあった方が良い。そうレールズが提言し、傭兵達はそれぞれの愛機を取りに向かうのだった。

「いったいどこから現れるんだ‥‥」
 人型に変形し、シェルターの近辺でパトロールしているマコト。時間は既に日暮れ。そろそろ、闇が侵食してきそうな頃合である。
 そんな宵闇が、影を落とした刹那、建物の影から、殺気がこぼれてで来る。慌てて、回避運動をする彼だが、避けきれずに当たってしまう。
「今のは‥‥!」
 1割近い損傷を受け、慌てて来た方向へと銃を乱射する。と、そこへ出てきたのは、KVを一回り太くしたような外見の、ロボットだった。
「まさか、シェイド? いや、ゴーレムか!」
 それが、新型と判断するや否や、マコトは即座に錬力をKVへ注ぎ込んだ。先手必勝、アグレッシブ・ファングを使う為である。
「食らえ!」
 腕のツインドリルが唸りを上げて回転する。当たれば、いくら新型とは言え、ただではすまない筈。だがそれを、ぎりぎりの所で避ける新型。しゅうんと急速にエネルギー残量の下がる愛機を、横目で見つつ、思いのほか素早いゴーレムに、ごくりとつばを飲み込むマコト。
「大丈夫ですか?」
 駆けつけてきたレールズが、彼を庇うように、前へと立ちふさがった。
「ここは俺が食い止めます。その間に皆さんを!」
 S型を所持する彼ならば、多少は当てやすくなるだろう。そう判断したマコトは、煙幕弾を上げ、他のKVを呼び寄せる。
「えぇん、本当はこんな事に使うはずじゃなかったのに〜」
 呼び出されたリーゼ、場所に急行しながら、不満そうにこぼしていた。
「こっちだって、せっかく考えた尋問方法がパーよ」
「流し切り、習ってたのに」
 同じチームのナレインとフォルも、KVで駆けつけながら、ぐちぐちとこぼしている。
「くそ、逃げられたか‥‥」
「すみません。殲滅したかったんですが‥‥」
 だが、地上班Aが駆けつけた頃、すでにゴーレムは姿を消していた。残念そうなレールズだったが、無理はしない方が賢明だ。
「気に入らないな。ここまでとはね‥‥」
 悔しそうに拳を握り締めるフォル。抵抗は受けていないが、苦戦といえば苦戦だったから。
「この空がずっと平和な青空だといいのに♪」
 一方、嫌いな戦に使わなくてすんだリーゼは、心なしか嬉しそうだ。
「疲労には糖分が良いらしいからな。甘い物でも食いにいくか‥‥」
 一番げんなりしていたマコト、誰ともなしにそう呟くのだった。