タイトル:【開発】天冥の衝動マスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/08/05 00:04

●オープニング本文


 アフリカ‥‥アルジェリアの国境付近のある町。砂漠の空気にも程近く、地中海のたおやかな恵みとは少しばかり離れてはいるものの、熱波のもたらす空気はエキゾチックな雰囲気をもたらし、慣れないものに取っては異国情緒を満喫させる世界になっている。
「だーーっ。あぢーーーーーーっ」
 が、そんな雰囲気をぶち壊すジジィの一言。その肌は、ここに来ての作業を物語るかのように、見事なTシャツ焼けだ。
「おじーちゃん、大きな声出したら、周りがびっくりしてるぉー」
「そうですよ、准将。ここはラスホプと違うんですから」
 お供はミクにカラスが、そう言った。2人とも、研究所特製『絶対焼けないミネラル入り日焼け止め』を塗り、アフリカの太陽から完全防備している。
「ったく、何だってこんな所でヘルヘブンのVUをやんなきゃいけないんだか‥‥。広大な砂漠なら、別にここじゃなくたって良いだろーに」
 ぶつぶつと文句を言う割には、てきぱきとUPCマークのついたコンテナへ、開封指示をしていた。カプロイアのマークが併記されたコンテナからは、KVのパーツと思しき部品が、いくつも簡易ドックへ運びこまれていく。
「仕方ないでしょう。一番近いんですから。あ、ミクちゃんお茶」
「はいだぉー」
 そのチェックを行うカラスと、夏場の作業用に水分を持ってくるミク。冷えたボトルが、幾つか冷蔵庫に放り込んである。
「あんま飲みすぎるなよ。後で面倒になるから。さて、仕事始めっか」
「まずはどこから手を付けましょうか?」
 暑いの何のと言っても、機械を弄らせると、早い准将。腕をかぽかぽさせながら、必要項目をべらべらとしゃべる。
「この辺の基礎部分のパワーアップの優先順位きめなきゃいけねーし、特殊能力の改造案からだなぁ。ぶっ飛ばせる環境は整ってるし、チェニジア基地から輸送してくれるから、気にせず速度は出せるんだが」
 端末にそれをメモるのはミクだ。チェニジアにあるUPC基地までのルートを調べていた所、通り道に小さな油田がある事に気づく。
「油田にぶつけない用にしないといけないぉ」
「あれの消化は面倒だしな。砂嵐が近いか‥‥。防砂処理だけはしていけよ」
 コンテナの中にあるのは、無強化のヘルヘブン250と750だ。大事な所に砂漠の細かい砂が入らないよう、目張りしていく爺ィ。が、その様子にひと通り荷解きを終えた助手2人が回れ右。
「ミクは人数を集めなきゃいけないので‥‥」
「こんな日差しの強い所では、折角の白い肌が焼けてしまいますから」
 どうやらこの暑さで必要そうなものを用意しただけで、涼しい所へ行ってしまったようだった。
「逃げるなーーーー!」
 ジジィのシャウトは届かない。

『ヘルヘブンのバージョンアップを行おうと思います。まず、基礎技能のどこを伸ばすのかと、特殊能力の改装に付いての意見を募集し、現地で効果に付いて実験を行いたいと思って居ます。ヘルヘブンは自前でも構いません。また、比較対照としての機体を持ってくるのも問題ありませんが、操縦実験のため、一度は乗っていただければ助かります』

 逃げたミク達の変わりに、UPCのオペレーターさんが文章を考えてくれるのだった。

●参加者一覧

須佐 武流(ga1461
20歳・♂・PN
漸 王零(ga2930
20歳・♂・AA
鬼道・麗那(gb1939
16歳・♀・HD
嵐 一人(gb1968
18歳・♂・HD
佐渡川 歩(gb4026
17歳・♂・ER
ゼンラー(gb8572
27歳・♂・ER

●リプレイ本文

 佐渡川 歩(gb4026)のすすけかけた背中に当たるスポットライト一条。
「ついに!」
 ばばん。と、そのスポットライトの光が増す。
「ついにこの日が来ました!」
 そんな心のファンファーレと共に、心の紙ふぶきとリボンが舞う中、佐渡川は、設置されたキャンプの中で、歓喜の涙をちょちょぎらせていた。
「うう、苦節数年。バージョンアップした暁には、、颯爽とバグアを蹴散らして浜辺の視線は僕に釘付けです! 特に女性とか女性とか女性とか!!」
 彼の脳内には、ききぃっとヘルヘブンを乗りつけて、ピンチのおねーちゃんからとても感謝される図が展開されているに違いない。うきうきと、ヘルヘブンの用意を開始する佐渡川。そこでは、同じように整備に精を出しているゼンラー(gb8572)さんがいた。
「おぉう。ミクさんは元気そうで何よりだねぇ。お久しぶり」
「あ、ゼンラーさん。その‥‥こんにちは」
 ぽっと頬を染めるミクが、ゼンラーさんの下の方を向く。
「なんかずいぶんと長いこと放置されてきたよな、これ…。確か出てきたのはシラヌイと同じ時期だったはずなのに…」
「俺が最初だったんだぜ。だから、こうしたんだ」
 須佐 武流(ga1461)にそう答え、自分の機体を見せる嵐 一人(gb1968)。搭乗するヘルヘブン750は、傭兵の中では最初に搭乗権を購入したものらしく、大きく01のマーキングがしてあった。
「そんなに以前からあったっけ。実は以前から気になっていたんだよね‥‥この機体」
 覚醒する前なので、普通の口調で話している漸 王零(ga2930)。と、一人はにやりと笑って、モニターボードに画像を浮かべ、その上で変形させて見せる。
「こいつの真の姿はそんなんじゃない。高速二輪形態の時こそ、その魂を見せる時だ」
「愛するこの子を、うちの小隊でももっと使いやすくしたいですわ〜」
 うっとりと自分の理想を乗せようとする鬼道・麗那(gb1939)。
「待ち望んでた人間もこの中にいるだろうから。こいつのためにも頑張ってやろうぜ」
 なでなでと機体を触る須佐。目の前にも、既に楽しみにしている人間がいるわけで。
「それもそうだ。あと、750を貸してくれるとありがたいな」
 が、そう答えた王零、実はヘルヘブンを持っていない事が発覚するのだった。

 まずは基本と言う事で、王零はスピード・旋回性の違いや、スキルの効果を実感していた。
「ふーむ。乗って見た感じ、あげるとするなら回避と装備だな。折角車輪の人型形態なんだが、オーガと比べるといささか力不足か‥‥」
 指定の場所に停止させ、下りてくる彼。普段乗りまわしている機体と比べると、だいぶ心もとない。
「エンジン出力の強化や足回りの性能を向上させればいけるんじゃないかな?」
「あー、そだな。この辺の出力と、駆動系を部品交換すれば、上がるな。って、それだと基礎パーツからやりなおしか‥‥」
 ばしばしとエンジンに直しをいれる准将。専門用語と難しい線ばかりだが、要するにエンジンの性能が昔より上がっているので、新型に取替え、それにあわせた足回りにし、出てきたパワーにフレームが耐えられるようにしなければならないらしい。
「そんなにやわかったっけ?」
「いや、そう簡単に壊れはしないが、車体が可愛そうだ。それなら、基礎から組みなおした方が、無理がかかんねーし」
 怪訝そうに聞いてくる王零。と、ジジィはホワイトボードにバイクの図を載せながら、説明してくれた。
「じゃあついでに、装備なんとか上げられないか? 最近の機体と比較してもきつめだと思うから、あと後を考えて、増やせるようにした方が良いと思うが」
 機械と言うものは、いらない部品をカットして、小さくしていくものだと聞いた。その余剰部分に、オプション装備を付けられないだろうか‥‥と。
「あんまり重過ぎると、回避下がるぞ」
「それが問題なんだよな。命中は上げたいし」
 問題は、その先である。2輪モードだと、狙いが定まりにくくなるので、一人としてもその辺をなんとかカバーしたいらしい。
「250なら、低めな攻撃力を補うのと、命中と回避上げで、副兵総数増やしません?」
「んー、まぁ出来ればやりたいが、無理なら諦めれ」
 一応、やれれば増やすと、佐渡川に答えるジジィ。
「えー、私はそれなら、知覚を上げて非物理で殴った方が‥‥。フレームの素材で、重心だけ下げてとか出来ませんの?」
 が、麗那さんはちょっぴり違う案を出してくる。確かに低い方が曲がりやすく、転びにくい。が、そうするとバランスから考えねばならず、出してきた測定値の増減案を見て、ジジィは頭を抱えていた。
「防御は要らないんで、肉抜きすれば行けるかしらと思ったのですが‥‥」
 それによると、物理攻撃ではなく、知覚攻撃機にして、防御力を下げ、その軽くなった分で機動力を上げ、空いた所に装備を詰め込もうと言う相談らしい。
「無駄なモンを落として早くするのはアリだと思うが、こいつはレース機じゃなくて、兵器なわけだしなぁ」
 問題は『早く走る』だけなら、それでもいい。しかし、ヘルヘブンは走る機械ではなく、戦う機械だ。早いだけで攻撃には向かないってんなら、飛行機でも用事は足りる。
「じゃあ、やはり知覚を上げて非物理で殴る‥‥」
「無理だろ。大元の発生機構が違いすぎるわ」
 何とかしてコンパクトにするのが、軽量化の基本ではあるが、流石にパラディンをヨロウェルにするくらい違うような改造は出来ないので、ジジィは次なる段階へとフェイズを移すのだった。

 能力値は、概ね機動力と命中力と、装備力をあげると言う方向でまとまった。バイクで言えば、ツーリング向きの機体と言った所だろう。
「じゃあ次はつけるスキルの改良だな」
 メインはここからである。強化改修会議と書かれたおっきな紙に、ドロームの社長みたいな格好したミクが、油性ペンを握り締めてスタンバイ。
「ふむ…そう、だねぃ。拙僧はやはり、特殊能力のテコ入れが肝要かなと‥‥」
 机の下ははいてないかもしれないゼンラーさんが言い切らないうちに、佐渡川がその机をだむだむと叩いていた。
「750のキャバリーチャージ! キャバリーチャージの改良をーーーー!!」
「だーーー、うるせぇっ。それをやりにきてんだから、机叩くなっ。茶がこぼれんだろっ」
 ごすううっと、ジジィがスパナでツッコミを入れている。その性かどうかはほろりと涙を流す佐渡川。
「だってー。これだけ威力が上がるのに、強敵に当てれないのが惜しくてー」
「んなお便利なんざ、そう簡単に出来るかっつーの」
 大人の事情と言う奴である。
「でもぉ、他の能力は比較的満足できるので、改造での伸び率を上げるとか。もしくは命中の上がるツインブースト系とかいいかなぁ」
 どっか当たり所でも悪かったのか、ちょっとオネェ入った口調でもって、自分の希望を口にする佐渡川。それには、須佐がうんうんと頷いている。
「全行動力かけて一撃を食らわす。確かに、浪漫溢れていいんだが、使い勝手が悪すぎるしなぁ」
「確かに、当たんなきゃ意味ないしねぃ‥‥」
 ゼンラーも同意すると、ミクがでっかく『命中↑↑』と書いている。そこへ、須佐がさらに畳みかけた
「理想は、一回の行動で全てできることだが…、それじゃあ250のチャージと変わらんしな。二回くらいで、旋回するなり逃げるなりの行動力はキープできるようにしてほしいんだよ」
「それなら、サスとか変えれば行ける。問題は、今後の事も考えなきゃならんし、固定にして無茶して折れると嫌だなー」
 使い方があらっぽくて燃やされるのを、何度も経験したじじぃとしては、やはり補正を引き下げてにしたいようだ。
「確かに、クセこそ強いが使い方次第、というのは考えものだねぃ。命中精度の低下に関してはだが。そも、『当てられる』要所で狙ってたからねぃ」
 世の中、博打武器は面白いけど使いにくい。
「当てた後、どうなってもしらねぇって言うなら、まだ弄り手もある気はするがな」
「テコ入れするならば、行動力消費の低減か、付加価値をとなりそうだねぃ」
 やはり、傭兵達の意見は、もう少し駆動系を強化して、狙いやすくしたいらしい。もしくは、逃がしやすくするかと言ったところだろうか。
「250におけるチャージ、錬力は比較的ある機体ですし、出力を上げた分消費を増やしていいかもしれません」
 佐渡川が、ぶん殴られた効果でまともな事を言う。
「命中を上げるのに、少し錬力を余分に消費するようにして、精度を上げ、壊す率が高くなるのを覚悟で無茶が出来るようにする、つー感じかな」
 ぶっちゃけると、バイクと同じように転びやすくなると言うところだ。
「それだったら、もういっそキャバルリーチャージ廃止して、知覚1本に絞って、機動性上げた方がよくありませんこと? 研ぎ澄ましたケモノに、贅肉は必要ないですもの」
「却下」
 麗那の案に、ジジィが即答した。無理なもんは、無理だと。
「強力なのは確かだし、もう少し当たりやすく出来れば充分だと思うぜ。運用データはあるんだろ?」
 まぁまぁと間を取る一人。言いたい事はわかるので、今までのデータを片手に、どのラインが当て易いのか、結果は既に出ているはずだと。
「ああ。まぁ無茶をしなけりゃ壊れるってのもねぇが」
「だったら、固定兵装の障壁等を前方に展開しそれを利用してのチャージベースにしたらどうだ?」
 麗那の希望するように、知覚を少し上げれば、カウルの変わりにそれを展開し、速度を追加したブーストと駆動系で補助すれば、軽くなって相当なスピードが出るようになるだろう。
「工場と相談してみる。それでダメだったら、ダメって事で」
 ジジィの出したメールの宛名には、しっかりはっきりとカプロイア伯爵の名が記されているのだった。

 さて、ヘルヘブンにはもう1つ課題があった。
「まぁチャージ系改造案はなんとなくまとまったが、次はそれを生み出す推力だな」
 ジジィの前には、高速二輪モードの操作画面がある。最高速度のメーターが切られたそれは、ヘルヘブンのもう1つの課題だ。
「もっと速度が欲しいです。機体自体の移動はそのままでいいですから、高速二輪モードの移動強化をお願いしたく。めざすは地上最速」
「言うと思った」
 そもそも、それをコンセプトに生み出された機体である。佐渡川の言う事ももっともで、ゼンラーがうんうんと頷いている。
「名目の割に、戦闘移動の速度が低いのは物悲しいねぃ」
「ワイバーンに追いつかれてるのが癪なんだよ。この座は譲りたくは無いよなぁ」
「けど、地上だけってわけにもいかねぇし」
 准将も、やはり速度の遅さは考えていたようで、佐渡川を含め、考え込んでいる。と、悩む男子一同に、唯一の女子‥‥見た目は一人も須佐も女の子に見えるが、本当に女の子は彼女だけである‥‥の麗那さんがこう言い出した。
「否定は簡単ですが、私の案は可能性の獣がテーマです。今こそ、空中格闘可能な最速機というコンセプト回帰をですね」
「だから、システム的に無理なんだっつの」
 即答するジジィ。しかし、麗那さん聞いていない。
「だったら、目指すはレーサー、先ず必要なのは圧倒的なスピードですよ。装甲の見直しによる軽量化やドラッグレースによるデータ収集でバグア機に迫る機動力を」
「それじゃあ、今とかわらない直線番長だろう。だだっ広い平原や、直線道路ばっかじゃないし」
 須佐が首を横に振る。
「とゆーことは、ついにK64−オフロードモデルが全ヘルヘブンに搭載‥‥」
 で、そこに佐渡川が自前のタイヤをこっそり差し出そうとしていたり。
「おめーのは特注品だろうが。他の機体に取り付けるわけにいかねーだろ」
「しくしく」
 が、やっぱりジジィに一蹴されてしまう。と、麗那が持ってきたのは、次なる秘策だ。
「だったら、組織的に機能できる性能でカバーしたら‥‥」
 レーサーとピットとの通話をイメージし、AI直結で、脳波による安定した通信機‥‥と良い出す彼女に、ジジィは実際のレース画像を持ち出し、その会話を聞かせてみせる。
「良いけど、おまい、アレ聞いて指示わかるか?」
 なにしろ、何聞いても「このままがんばって下さい」で意思疎通をするよーな世界である。そんなモン脳みそ直結させたらエラい事になる。それがジジィの心配なようだった。
「むうう。じゃあ、どうせ知覚アゲアゲにするんだから、ビーム爪を標準装備して、簡易空中戦闘を〜」
「おまい、それリンクス作りたいだけじゃねーか。どっちみち、システム的に無理なんだから、標準搭載にはできそうにねぇ。オプションでなんとかするしかねぇよ」
 彼女が、かつてボツになったアイディアを入れたいんだろうなぁと思い至った准将は、エナジーウィングの技術転用を、好きな奴は付けろ的に組み混んでくれるのだった。
「あとは、付加価値かねぃ‥‥」
 と、ゼンラー。機械的な部分は、大まかには決まったようなものなので、次は購買意欲をそそるようなもの、というわけだ。
「なんとか二本足は無理かなぁ。したいんだけどなぁ。と言うか、真の姿なんだけどなぁ‥‥」
 一人、自分が信じて疑わない姿に持って行きたいようだ。しかし、流石に新造機に近いとは言え、デザインを大幅に変えるのは、いただけない。色々弄った結果、駆動をやりやすくする都合上、ジョイント部分の間隔を狭くして、タイヤそのものを、2本で1つでバランスを取るようにしていた。UPCの写真を切り替えるには、時間がかかるので、その辺は大人の事情と言う事で、我慢して貰うしかない。問題は、その後のバランス調整にある。
「でもそうすると、横アタックに弱くなるぜ。車輪部分、ある程度緩和するために、車輪部分がある程度フレキシブルに動くようにするといいかもな?」
 須佐の弁に、関節がダブルジョイントになった。後は、自己改造で対応。空は可変翼くらいは入れてくれるらしい。バグアにのっとられた際に、パイロットを廃人にされかねないので、コミュニケーターは見送られた。
「しかし、固定兵装は欲しいものだが‥‥」
「エナジークローをぉぉ、空中で格闘できるビーム爪!」
 王零に食い下がる麗那。しかし、ジジィは首を縦に振らない。
「どうせなら、もろさを補う盾ってのも、ありじゃないかな。2輪形態時に前輪のタイヤの間に設置出来る物か、フロントカバーの様な位置に設置できそうな物で。ただ、Cチャージを考えると、障壁とかフィールドが張れそうなもんがいいと思うんだが」
「工場と相談してみる。全部を入れるのは無理だろうから、ダメなモンは調整って事でいいだろ」
 ジジィの出したメールの宛名には、しっかりはっきりとカプロイア伯爵の名が記されているのだった。