タイトル:【東京】HaertCatch秋葉Eマスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 3 人
リプレイ完成日時:
2011/07/03 22:04

●オープニング本文


 話は、数日前に遡る‥‥。
 秋葉原の駅前に常設されている巨大スクリーン。バグア来襲前は、宣伝を兼ねた数々のアニメが上映され、道行く人々に強烈なアピールをしていた場所だ。
『今まで見てたけど、キミたちの中にも面白い人がいるんだね。なら、こそこそしなくていいよ。一緒に遊ぼ!』
 スクリーンから放たれた挑戦。それが、UPCの動きに対するこの街の支配者からの返礼だった。
 要約すると、彼が用意した戦力とこちらの能力者で勝負‥‥ということか。もっとも少年にとって、勝ち負けは二の次である。
『来ないならいいよ。秋葉原のみんなで遊ぶから。みんなボクの友達だし、倒され役もたくさんいるから』
 僕が楽しむために戦え。そう告げる支配者に対しUPC軍に拒否権はない。これはもはや提案ではなく、人質を持つ者からの命令なのだ。
 一方、レジスタンスや傭兵達の活動により、今の秋葉原を生み出した洗脳装置の場所は、三箇所にまで絞られている。できればもう少し情報を集めたかったが、これ以上は厳しいと考えていたのも事実――。
 「よし、腹は決まった! エミールの挑戦を受け、同時に洗脳装置破壊作戦を決行する!」
 ならばこの挑戦を、敵の最大戦力であるエミールの気を引く絶好のチャンスと考えよう。
 隙を突いて、洗脳装置を破壊する。
 すぐさま、ULTに依頼として情報がもたらされた。

 ――それは、笑顔にあふれる平和な秋葉原に終わりを齎すことでも、ある。

 だが。
「私は、皆の心をつかむ作品が作りたい‥‥洗脳によってなどでは、なく」
 今はレジスタンスの一人であるアニメ製作局の青年が、慌しく走る兵士を見て、静かに呟いていた――

 カンパネラ研究棟、准将のガレージにて。
「だーかーらー。何で俺なんだよ?」
「ですから、准将が一番お詳しいんです」
 ぶーたれる准将の両側には、やっぱり増えている戦隊ヒーローものの玩具があり、説得力が欠片もない。
「俺が知ってるのは、あの子供が来る前の話だ。だいたい、俺はもう子供を敵になんざ回したくねぇぞ」
「今回は、気を退くだけですから。それに、シナリオは傭兵の皆様に頼むつもりですし」
 そう説明される准将。やっぱり、子供を使う作戦には賛成しかねるらしい。しかし、出てきたのは、秋葉原の地図と、そして大雑把な一般人と思しき人数だ。
「結構人数がいるな‥‥。市街戦になるのか?」
「いえ、ヒーローショーです」
 てっきり、道案内と言った所かと思っていた准将は、その一言に大幅な改訂を余儀なくされるのだった。

 で。
「つまり、こーだな? このエミールって子供の気を引く為に、KVまるごとつかったヒーローショーをやれと」
「そうですわ。私は、その‥‥余り詳しくないですし、別な方向になってしまいますから」
 解説をしているのは聖那だ。彼女の祖母が、違う世界の住人と言うのは、以前から噂されていたことである。諸々の事情を考えると、プロデューサーは准将にしておいたほうが無難と言うのが、UPCの判断だ。
「ふむ、わかった。子どもの気を引くだけなら、さほど痛いことにはならないだろう。相手の戦力は、どれくらいだ?」
 許可証のフォームを引っ張り出しながら、そう尋ねてくる准将。と、即座に秋葉原で確認された戦力が浮かび上がる。それには、俗にキマイラと称される幻獣図鑑に載っているような大型キメラが、バイク代わりに徘徊しており、ビルの屋根には、我が物顔で巨大とかげが人を咥えて這い回り、車やトラック代わりにHWが走っていたり止まっていたりしている。要するに、かつて人がいた所にキメラが、そして車やバイクだったところに大型キメラやワームが並び、それを整理しているおまわりさんだった筈の場所に、強化人間がいると言う始末だ。
「これ、全部牙向くと面倒だぞ‥‥」
「いえ、向こうの挑発では、これらの殆どはオブジェと考えてよいようです。ただ、ショーを行うのに必要そうだと考える場合は、その限りではないようですが」
 エミールがたたきつけてきた話によると、この会場のどこかで高みの見物をしており、今いる戦力の1割程度しか襲わないそうだ。おそらく、この10匹程度の大型キメラ、そして色とりどりのゴーレムが5台、後は人間型のキメラが沸くほど。
「なるほど、ほぼ戦隊ものの敵構成だな。それならまぁ、こっちもなんとかなるか」
 横の玩具に目を走らせながら、そう答える准将。後は全身スーツと合体ロボ代わりのKVだが、これは傭兵達に言えば自前で持ってきてくれるだろう。
「後は、依頼人のお姫がいるな。ミクにすぐ来るよう伝えてくれ」
 同じ異星人でも、依頼人がバグアでは困ると言うわけである。

 さて、ミクが到着後、あてつけのように送り付けられてきた画像。エミールの手のものが、秋葉原の現在の様子を写してきたのだろう。そこは、どういうわけかかつての状況そのままの光景を映し出していた。
「あんだ? これ」
「わかんないけど、エミールっていうのが、『おともだち』って言ってたから、これきっとバグアの人なんじゃないかなぁ‥‥」
 どうみても一般市民ABCDである。しかし、他方では強力な洗脳装置があると言われている為、その殆どはエミールに忠誠を誓う親バグア化した人々だ。もちろん、彼らを傷つけるような真似は、出来るだけ控えなければならないだろう。
「ここで、ヒーローショーやればいいぉ? 普通に戦闘しちゃダメなのかぉ?」
「ここでやったら、こいつら全員盾決定だろ。それに、何しろ向こうのご指名だ。普通に暴れてるから迎撃しに来るだろう的な考えじゃダメだろう」
 難しい話である。首をかしげているミクに対し、ジジィはニヤニヤしながら、こう告げる。
「なぁに、相手はお子様だ。お子様の興味を引くような話をやりゃあいい。観客もその手の人間なんだから、なんとかなるだろう?」
 そう言って差し出したのは、緑を貴重とした、なんかやたらキラキラしたラメっぽい質感の、ふりひらのついたお姫さま衣装である。
「ミク、おうた歌っても良い?」
「‥‥おまいがうたうと、窓ガラスが吹きと‥‥んでもいいか。今回の場合」
 まるで舞台衣装のようなそれに、准将はそう答えるのだった。

 そして、数日後、UPCの大型スクリーンに、異星人のお姫さまっぽい衣装のミクが映っていた。
「どうか、星の力を集めてください。この街には、選ばれた5人の戦士がいるはずです。母なる大地を救うため、星の力が必要なのです!」
 どうやらそれがイントロのシーンらしい。

●参加者一覧

阿野次 のもじ(ga5480
16歳・♀・PN
ゲシュペンスト(ga5579
27歳・♂・PN
天小路桜子(gb1928
15歳・♀・DG
鬼道・麗那(gb1939
16歳・♀・HD
ランディ・ランドルフ(gb2675
10歳・♂・HD
エイラ・リトヴァク(gb9458
16歳・♀・ER
ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751
18歳・♂・DF
美空・火馬莉(gc6653
13歳・♀・ER

●リプレイ本文

 ショーは、エミールがどこだかわからない部屋で、鑑賞している中で始まっていた。
「そう、私に指図するのは許せないですが、太陽‥‥それが私の力なのね‥‥」
 まぶしそうに見上げる鬼道・麗那(gb1939)。その視線の先は、モニター下の大通りにかかる橋だ。
「ここでお別れです。ですが、私は必ずや姫様の元に」
「親衛隊長‥‥」
 星のお姫様姿のミクが、エイラ・リトヴァク(gb9458)に膝をつかれている。その足元には、ぷしゅうっとドライアイスが流れていた。
「もどってきたら、あの‥‥よろしいでしょうか?」
 台本にないセリフに、ミクの顔が呆ける。素に戻っちゃった彼女に、エイラはちょっとイタズラっぽい笑みを浮かべて、こう言った。
「なんでもありません。お慕いしておりましたわ」
 そして、ドライアイスの煙に包まれながら、ミクをハグすると、柱の影から出てきたのは、執事服に身を包んだ功刀 元(gc2818)だ。
「姫、時間でございます。ここは急ぎ避難を」
 仮面をつけた彼がひっそり傍らから促す。
「うん‥‥。エイラお姉さん、死なないでね」
「それだけで充分でございます!」
 名前呼んでくれて満足したらしい。そのまま、煙に包まれていくエイラさん。次いで現れたのは阿野次 のもじ(ga5480)。
「ミクちゃん、じゃ私もいくね」
 とん。
「のもじちゃーーん!!」
 暗転。タイトルコール。
『魔法少女 のもじ☆マジカ〜友情に×二次♪』
 モニターに写された文字を見て、台本を用意した天小路桜子(gb1928)と麗那が、あわてて事態の収拾を図るのだった。

 エキストラは、その辺で秋葉原探索に勤しんでいた『一般人』の皆様だ。しかし、被害を出すわけにはいかないので、出番のない桜子が、露払いとばかりに、キメラを蹴り飛ばしていた。そこへ、ごぅんとバイクの轟音が吹き抜ける。
「まったく!最悪の状況だな!」
「あれはっ」
 ミク、MCのおねいさんよろしく、マイク片手に、人々の視界をそちらに向けた。釣られてキメラまでそっちを向いた。
「行くぜ!バハムート!」
 いたのは、ランディ・ランドルフ(gb2675)である。そう言うと覚醒し、足元にあったバハムートを装着する。
「大型ガトリングガンぐらいほしい気分だ。いくら狙撃兵訓練受けたからって大物相手にこれじゃあ、なあ」
 釣られちゃったキメラへ、彼は持っていたライフルを放つ。竜の瞳と、竜の息で命中率、射程を挙げて、なんとかキメラとの距離を保っているものの、大型とかげの動きは予想外に早く、接近されてしまう。
「危ないぉ」
「くっ。まぁ戦闘はやらせじゃないからねっ」
 ミクはと言うと、既に元の後ろにかくまわれていた。『説明しましょう。どうやら相手の速度が上回っているようです』と元が解説入れる中、素に戻って竜の翼で他の遮蔽物に隠れるランディ。それを探す大型キメラと、大型トカゲ。期せずして、台本通りのピンチが演出されていた。 
「そうは行きませんわ!」
 凛とした声が響く。
「日輪に選ばれし聖なる乙女、唯我独尊セイバーホワイト!」
 天を高々と指し示し、ふんぞり返ってびしぃっとポーズ決めるセイバーホワイト。
「来てくれたか!! いや」
 一瞬、顔の明るくなるランディだが、感じた違和感に、首をかしげる。聞いていた話では、ここにはスカイセイバー隊が出てくるはずなんだが。
「星の心は正義の力! 覚星戦隊ヤミセイバー、御呼びとあらば即参上!」
 まったく意に介さず、ヤミセイバーの名乗り口上。
「我が名はクリムゾン。さて、お手並みを拝見致しましょうか」
 もう1人は、展開を様子見しつつ、それとなくフォローしてくれていた桜子さんだった。しかし、さすがに大型相手には、2人では心もとない。ランディはこの間に、KVを取りに行ってるし、他の面々もまた、KV準備中だ。
『なるほど。それで掃除しようって魂胆か』
「ホントに皆様、危なっかしいのですから」
 そう言うやいなや、アスタロトからエネルギーが集約される。いわゆる竜の角と言う奴だが、それは手にしたエネルギーガンへと注入される。
「さて、ここからは一気に巻き返して参りましょう」
 そして、背中のブーストを作動させる彼女。竜の翼が広がり、烈火の息吹が、敵を裂く。彼女がシュタっと着地した直後、エミールはそこかしこのモニター‥‥駅前であったり、大通りの量販店であったり‥‥に、姿を見せる。
『でも、ボクのキメラはそれほど弱くはないよ? さて、どうするのかな』
「巨大兵器はあなた方の専売特許ではありません。御覧なさいませ、あの天空を」
 そう言うと、天空を指し示す桜子。エミールの『お約束だね』と揶揄する中、カメラが大空を向けば、ビルの谷間にきらりと光る2つの目。
「とうっ! 魔法少女のもじ☆マジカ惨状!」
 フルフル魔法少女衣装をまとい、高台から登場するのもじ。
 弓を引き、輝く矢を天に撃ち放つ。ちゅどーーんと、花火弾が演出されていた。一瞬の間の後、エミールが面白そうにケタケタと笑う。
「この街にいる全ての人達聞いて! 心からの笑顔をもたらすようなアニメ! 愛と萌と情念のこもった魂の叫びを作りたい! そんな貴方達の想いは無駄じゃない! その因果引き受ける!」
 台本には『因果』と書いて『よさん』とフリガナが振ってある。人々がぽかーんとする中、セイバーホワイトさんは、びしぃっとのもじとランディにつっかかってきた。
「そこな魔法少女に、射撃歩兵。私に力を貸しなさい」
「何だって」
 上から目線の女王様に、戸惑うランディさん。あっけに取られている彼に、セイバーホワイトはきっとキメラを睨みつける。
「強大な敵に全員の力を一点に集中させるのよ」
「よぉし、わかった。ボクと契約してもってけドロボー、大盤振る舞いだ!」
 のもじがふんぞり返って、そう言った。一応能力者として、それなりの能力と危害は持ち合わせている。みゅいんみゅいんと覚醒のロンドを響かせる中、エミールはくくくと笑う。
『なるほど。じゃあタイミングはココだねぇ。そぉれ、ご希望通りのゴーレムだよん?』
 刹那、秋葉原のあちこちで、悲鳴と歓声が上がった。見れば、やたら派手なカラーリングのゴーレムが、んごごごごと、発進した所だ。
「あんな物まで用意していたのね…此方もセイバーマシンを使います」
 どすううんと、大通りのアスファルトを踏み砕き、器用にアニメ関連のお店を避けながらのしのし歩いて行く。それを見たセイバーホワイトは、執事の元くんに、合図する。闇生の優秀な執事である元くんは、准将の許可の元、てきぱきと彼女のKVを横付けする。
「セイバーマシン、発進!!」
 乗りこむセイバーホワイト。しかし、そこはゴーレム。そう簡単に、どうにかなるものではない。桜子もまた、大型キメラを抑えてはいるが、それでどうにか出来る程ではなかった。
『甘いよ。そんなんでどうにかなると思ったの?』
 さぁ、どうするの? と、ニヤニヤしながら見守るエミール。と、桜子さんは、時計を見ると、待機していた美空・火馬莉(gc6653)達へと合図を送った。刹那、秋葉原に大音響で、ワルキューレソングが鳴り響き、それに乗じて速度を上げたパラディンとヨロウェル、そしてアッシェンプッツェルが、ゴーレムに向かって、右から左へと駆け抜ける。しゅたっと反対側へと抜け、通せんぼした格好となった彼女達は、美空を中心に、降臨のポーズを取ってみせる。
「時の三姉妹女神がお助けするのでありますぅ」
 中央に配役されているのは美空。しかし、両隣にもまた美空家の姉妹が続く。
「然り。皆とともに未来を取り戻そうなのである」
 アルス・マグナ・スクルドの名を冠したアッシェンプッツェルに跨る、軍人風の美紅・ラング(gb9880)。位置はスクルト。
「姉をこき使うとは末恐ろしい妹なのであります。しかし、過去は許すのであります」
 ウルド・聖堂騎士団の名をつけたパラディンのオーディオから、クラシック流しているのは、姉で騎士風のツン女神な美空・緑一色(gc3057)。位置はウルトだ。
「皆さんの星の力たしかに感じたのでありますぅ。星の意思よりつかわされた美空達、時の三姉妹が時を止める間に、戦士たちよ、搭乗するのでありますぅ」
 都合3台のパラディン系で統一し、KVマントやら武装には、キラキラスパンコールでデコレートした機体から、天走る雷光がほとばしる。実際は、ラインの黄金による砲撃なわけだが、下々の者達‥‥この場合、キメラやゴーレムの事‥‥を寄せ付けない威厳が立ち上っていた。

 CM開け、じりじりと包囲するゴーレムとキメラに、ちょっとしたピンチが訪れていた。
「いくぜ、シュトルムツヴァイ。お前の性能を見せてみろ!」
 まずは挨拶とばかりに、遠距離からアハトアハトで狙いを定めるランディ。そのスコープの先にいるのは、ビルの壁に張り付く大型トカゲだ。だが、硬い表皮は、むしろ金属的な跳ね返しを持って、ランディを歓迎してくれる。
「やっぱり大物は固いねえ。じゃあ、コイツはどうかな」
 にやりと笑みを浮かべランディはKVのいくつかのスイッチを操作する。
「リミッター解放、ブースト点火、EBシステム、HBフォルム起動! ぶった切るぜ!」
 ぶしゅうっと光り輝く翼のようなブーストの効果をなびかせつつ、敵陣に切り込み、一気に肉薄するランディ。
「コイツの切れ味は半端じゃねえ。雪村には負けるが、接近さえすればコイツでもやれるんだ!」
 そう言うや否や、白雪をまるでドスのように両手で抱え、刺し貫く彼。半ば脅しのようにぐりぐりと突きつける彼。
 が、そんなスピーディな攻撃にも、エミールは動じなかった。敵をただ撃破させるばかりではないと言う難しさに、頭を抱えている。
『あーあ。違う方行こうかな。そういえば、そろそろアレ、始まる頃だっけ』
 しかも、エミールは、そんなヒーローの姿には興味がわかないのだろう。桜子は時計を見つつ、美空に尋ねる。
(美空さん、着地点の掃討はどうなってます?)
(もうそろそろであります)
 どうやら、なんとかなりそうだ。そう感じた彼女は、背中合わせのセイバーホワイトに、頷いてみせる。彼女とて中身は女優だ。演出と監督には従う模様。と、そんなセイバーホワイトさんが見守る中、謎の女戦士クリムゾンが取った策はと言うと。
「ああっ。姫様!」
 もうすっかり後はオチだけと思っていたミクが、前線に放り込まれていた。油断していたミクは、覚醒はするもあっさりとっ捕まってしまう。
「くうっ。このままでは‥‥。太陽の力だけでは、足りないと言うの!?」
 ざーとらしく慌てるクリムゾンとセイバーホワイト。ランディもそれに合わせるように、「もう、弾丸が残ってねぇよ!」と、どこかの映画で見たピンチのセリフを口にする。
 と、その時あった。
「そこまでだ!」
『まだ、なんかあるって言うのかな?』
 エミールがまぜっかえす中、天空にKVの黒影。
「姫様を帰してもらいに来ました!」
 声を聞いたミクが、ぱっと顔を輝かせる。
「エイラお姉さん!」
 輝く電撃を操り、光の槍を携えたエイラが、セラフィックアーマーでもって、神々しい姿を、KVの風防に映し出していた。
「隊長、お待たせしました…援軍です。セイバースカイブルー…推参!」
「ヒーローは遅れてやって来る…。黒焔の戦士セイバーゴーストただ今参上!」
 そのスカイセイバー隊を率いるのは、時の三女神の地上掃討が終わると同時に、低空飛行で侵入させてきたエイラに、ゲシュペンスト(ga5579)と、ドゥ・ヤフーリヴァ(gc4751)だった。彼に率いられた3機のスカイセイバーが、天空を覆う。
「さぁ、私の姫様を返しなさいっ」
『あ、所有格』
 若干百合のけがあるエイラの発言は、その趣向に関しては、欠片も気にされていない。むしろ、その次に続く行為が問題のようで。
「いくぞ。ジェットストリーム空中変形!!」
 ゲシュペンストがそう叫び、ドゥが空から弾幕を張りつつ、急降下の体勢を取る。地面とすれすれの位置まで落ちた刹那、空中変形をかけ、強襲する。
『わー。派手なパフォーマンスだねぇ』
 勢いのまま、片足だけ膝付いたポーズで着地するドゥ。彼がマスクの下で、顔を真っ赤にしているのは、エミールからは見えないようだ。
「この距離ならいける!」
 刹那、ゲシュペンストが空中変形を敢行し、速度を落とす。急速落下していく中、目的にするのは、露払いとばかりに現れているトカゲたちだ。
 エミールが、この影で捜索している者がいる事を把握していれば、二重の意味で気を引ける‥‥と。
「アルティメット・ゲシュペンストキィィィィック!!!!」
 距離はわずかに10m程度。そこを目指して、ゲシュペンストは自らの名を冠した蹴りを叩き込む。バランスを崩したそこへ、ドゥが両手にもった武器を扇状に広げながら、撃ち混んで行く。
「その隙貰った!そこは僕の距離だ!」
 ばりばりと蹴散らされるトカゲ達、その先にいるのは、一際大きいトカゲ型だ。ご丁寧に、複数の顔がついており、その大きな爪先には、ミクが引っかかっている。
「よし。トドメだ!」
「やってみせます、ミク姫様!」
 ゲシュペンストが号令を出す中、祈りを捧げる仕草で持って、スキルを発動させるスカイセイバー隊。その矛先は、間違いなくミクのいる場所だ。
『巻き込み上等なんだ。いいのかなぁ』
 エミールが揶揄するようにそう言う中、桜子は興味が向いたと見るや、(上手くよけてくださいね)とGOサインを出した。えうえうと滝涙流しながら、困惑する彼女に差し込むのは、一筋の希望。
「大丈夫だよ、ミクちゃん。絶望しなくていい。彼らは希望。そして、誰もが本当に望む、真の想いを受け止めなさい、エミューキュベーター!!」
「そうよ。さぁ、太陽の力よ。私達に全てを焼き尽くす断罪の炎をー!」
 光魔法、カッコイイポーズを発動させつつ、降下するのもじと。太陽を背にトドメの必殺技を準備するセイバーホワイトさん。
「輝け太陽の祈り!ホワイトエクストリーム」
「最終奥義『フライデ〜・ドリーム〜・キーーーーク!!!!』」
「喰らえ神の雷‥‥Magneettinen kolminkertainen hyokkays Aichi! Oleskelu! Ystavat!」
 日本語に約すと、磁力3連撃だ。それにひきつけられるように、のもじから金曜日の悪夢が振り下ろされ、キメラは爆砕する。
「我が道に敵なし」
「今私たち最高に輝いているNE」
 トドメを刺した一行が、全員整列で大見得を切る。
『あははは、最高だよ君達。今度バグアにスカウトしたいくらいだ。見栄えの為なら味方巻き添えってね。あははは!』
「はうっ。そうだった。ひ、姫様〜!!」
 エミールのツッコミに、エイラが慌てて爆砕した青いビルの裏手へ向かったのは言うまでもない。
 秋葉原。それは、カオスの渦巻く異空間の町。