タイトル:【酔っ払いにKV】マスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/01/26 18:25

●オープニング本文


●うわばみキメラ
 能力者といえども、人間である。
 ゆえに、わかっていてもどうしようもない事だってあるのだ。
 人、それを不可抗力と呼ぶ。

 それはさておき。
 その日、ミク達はとある作戦の為、キメラのお掃除をしていた。
「オラーイ、オラーイ。はい、OK〜」
 両側を崖に囲まれた細い道。KVが2台も並べば一杯になってしまうような場所だ。その奥には広場があるものの、大小さまざまの避難民テントで、迷路の様になっている。
 その入り口で、UPCの兵士と傭兵達が、忙しく立ち働いていた。
「ミクちゃん、あと設置数どれくらいだい?」
「3つかな。通路は一箇所しかないから、その後ろにKV設置すれば、バリケードになるって、計算結果が出てる」
 この間の四国の件で反省したのだろう。UPCの制服姿で、珍しく真面目に仕事しているミク。左の甲に、音叉を組み合わせたようなマークが浮かび、普通の口調になって、ものすごい速度でキーボードを叩いている所を見ると、覚醒して作業に当たっているのだろう。
 その指示を受け、次々と並んでいるのは、大きなバリケードだ。さらに、その後ろには、KVが2機並んで、防御を固めている。
 彼らが守る先には、避難民達のキャンプと、移動用のバスがあった。UPCのマークが付いたバスに乗り、その移送が完了するまでに、キメラをふっ飛ばしてくれと言うのが、今回の依頼だった。
 はずなのだが。
「来るぞ。耐えろっ」
「アクセはあるっ。ブレスぐらい、乗り越えてみせるっ!」
 中々動くわけに行かない場所なので、キメラのブレスは気合いと根性とさまざまな装備と言う名の努力で、なんとか耐え忍ぶ予定だった。能力者達が覚悟を決めた刹那、キメラの口がかぱりと開き、真っ白いブレスが吹きかけられる。
 ところが。
「「酒くさっっ!!」」
 高温の蒸気にも似たそのブレスは、酒好きロシアのおっさんも瞬く間にぶっ倒れそうな、超強力アルコールブレスだったのである。
 並みのアルコールであれば、それほどではなかっただろう。中には、顔色1つ変えない能力者もいる。不運だったのは、相手がバグアであり、並のアルコールではなかった事だ。
 さらに、間の悪い事に。
「くっ。やはり手を引いている奴が‥‥ひっく」
「それを言うなら、糸だぉ〜。うぃっく」
「何だか体が熱い‥‥脱いでもイイですか?」
「待て、それは俺が先だ。ひぃっく」
 キメラだけでは足りないと思ったのか、目の前には強化した蛇型ワームが都合8引き。それらが、相変わらず酒臭いブレスを吐き出している。
「どぉしようか」
「やるしかないだろうねぇ。ひっく」
 今、君たちはそこにいる――――。

●KVは道交法適用か否か
 そんな記録が、准将の元に届けられたのは、それから間もなくの事。
『と言うわけでぇ。ミク達はぁ。バグアの罠で、まごうことなき酔っ払いだぉ。でも、気にせずやっつけてほしいぉ。あ、増援の人も、酔っ払うみたいだから、覚悟してほしいぉ』
 通信機の向こうで、赤い顔をしながら、そう報告してくるミク。覚醒しているのに、舌ったらずなのは、酔っ払っている状態だからだろう。画面が微妙に白く蒸気で染まっている状態に、受けた准将がにやりと笑う。
「つー事は、あのワームぶっ倒したら、中から酒飲み放題な訳だな」
 で、彼が取ったのは、専用KVの鍵だ。
「准将! 飲む気なら、KVは置いて行ってください!」
「ワーム出てるんなら、そう言うわけにいかねーだろ! ひゃっはー、新年会だー!」
 ジジィが、酒に釣られて増援を要請したのは、それから間もなくの事である。

「このままでは、傭兵達も、すぐ後ろの人々も、急性アルコール中毒でお陀仏になってしまうよ。ジジィはともかく、一般人に被害が出るのはまずい。申し訳ないが、増援に行ってくれないか?」

 カラスがモニターでそう依頼して来たのも、これまた間もなくの事である。

 頑張れ酔っ払い。
 負けるな酔っ払い。
 明日の朝日を素面で拝む為に!

●参加者一覧

メディウス・ボレアリス(ga0564
28歳・♀・ER
ベルティア(ga8183
22歳・♀・DF
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
武藤 煉(gb1042
23歳・♂・AA
諌山美雲(gb5758
21歳・♀・ER
八尾師 命(gb9785
18歳・♀・ER
美紅・ラング(gb9880
13歳・♀・JG
煌・ディーン(gc6462
18歳・♂・DF

●リプレイ本文

 その谷間には、強烈なアルコールの匂いが漂っていた。入り口には、KVが配置され、傭兵達が守りについていた‥‥筈なのだが。
「な、なんだ? この未知なる香りは‥‥なのである」
 バリケード兼砲台として、現地に持ち込まれた美紅・ラング(gb9880)のスピゴー。防備についている傭兵の中で、未成年は彼女だけである。
「ああ、何と言う運命の采配でありましょうか〜」
 もっとも、そのセリフは、思いっきり棒読みだったり。それもそのはず、目の前には生身組として参加していたメディウス・ボレアリス(ga0564)が、盛大な高笑いを響かせていたのだから。
「クックックッ! カーッカッカッカッ!! 足りん! 足りんぞ! 我を潰したければこの3倍は持って来い!」
 バリケードの上で、ふんぞり返っているメディさん。ビデオカメラにワインとハムを持ち込んじゃった彼女は、アルコールブレスにやられたUPC兵から、やんやの喝采を浴びていた。
「これ、どうしましょうか‥‥」
「さぁ。もう少し様子を見ていた方が良いのかもしれないのである」
 八尾師 命(gb9785)にそう答える美紅。宴会とか始めそうな勢いの酔っ払いな皆さんに、正直近寄れないご様子。そこへ、きしゃあと牙を剥き、食いつこうとするキメラ蛇達に、メディは持ち込んだビデオカメラを回している。
「出てきたな。状況は理解している。成すべき事もな」
 資料提出用に用意したものだが、メディさんは気の向くまま、興味の向くままに、撮影していたり。
「そう思うんなら、手伝ってください〜」
「折角の良い気分なのだ。興の向くままに戯れても良いだろう」
 泣きそうな顔で訴えてくる命に対し、メディさんは、にやりと笑い、向かってくる蛇キメラをエネルギーガンで相手している。だがそんな2人に、蛇キメラがかぱりと口を開き、真っ白い蒸気のようなブレスをお見舞いしてきた。
「う〜‥‥何故か悲しくなってきましたよ〜‥‥」
 顔を真っ赤にして、おめめをうるうるさせる命。どうやら彼女は酔っ払うと泣き上戸になるらしい。
「は、早く横になりたいです。ごめんなさい〜」
 それでも、自分の作業をはじめる命。なんだか謝り倒しながら、電波増強を行っている。その様子に、やっぱり生来の無表情な美紅が、怪訝そうに首をかしげた。
「いったい何だったのでありますか? 今のは」
 彼女もまた、思いっきりブレスをかぶったはずである。だが、通信画面越しの彼女は、変わっているようには見えない。
「ジョ二〜、美紅は軍人をやめるぞー」
 どうやら、顔にこそ出ていないが、思いっきり酔っ払っているようだ。そりゃあ持ち込んだスピリットゴーストは、バリケードの代わりだし、動くわけに行かなかったわけで。
「うむ。こうなってしまっては仕方がない。まぁとりあえず飲め」
 唯一冷静だったのは、既に最初っから酔っ払っているメディである。相変わらず酒を酌み交わしながら、目の前に広がる惨状を面白がって観察ちゅう。
「ふえ〜ん、どうしましょう〜」
 泣きながら、超機械を出してくる命さん。美紅はと言うと、機体冷却機がごんごんと盛大に稼働率を上げている状態。そこへ、ざまぁとばかりに、ワームがキメラを率いてばさりとその翼を羽ばたかせる。
「折角なんで、こいつを試してみるか」
 と、メディさん。適当に持って来たハムを口に放り込みながら、その手にした超機械のスイッチを入れる。べりべりと謎の怪電波が走り、ワームの攻性操作を食らわせようとした。
「あれ?」
 だが、蛇型と言うからには、完全な機械ではないのだろう。ばさりと羽ばたいた翼は、その操作を受け付けない。どうやら、あのアルコールブレスは、生体パーツから放たれているようだ。
「えぇい、だったらこっちを使うだけだ!」
 きしゃああっとキメラに吼えられて、慌てて対象をごく普通のHWへと移すメディさん。さすがに、1人では上手く行かないようだった。

 さて、その頃。増援要請を受けた傭兵達は、急ぎ現地へと向かっていた。
「それにしても、狭いなー」
 龍深城・我斬(ga8283)が周囲をカメラアイで見回しながら、そう言った。谷は両側にKVが並んでやっとの幅しかない。距離はまだあるので、ハイジャンプは出来そうだったが、着地地点の保障は出来なかった。
「バリケードの前には出れそうですけど、がーくん、酔っ払って私達を踏み潰さないでね?」
「わかってる。なるべく踏まないように注意しなきゃな。行くぞ」
 ベルティア(ga8183)にそう答え、我斬の機体から、ぶしゅうっとブースターが吹かされる。人が飛び上がるのと同じ様に深く膝が折られ跳ね上がり、直後、キメラの群れの中へと落下する。だが、踏み潰されたキメラから、ぶしゅっと血飛沫の代わりに、アルコールが飛び散った。
「酒臭ぇ‥‥うぇ、気持ち悪‥‥っ!」
 ブレスは、その後ろに居た武藤 煉(gb1042)と諌山美雲(gb5758)、煌・ディーン(gc6462)をも巻き込んでいた。酒の飲めない煉は、早速青い顔をしている。
「凄いアルコール臭ですね‥‥」
 酔わないと豪語する美雲でさえ、その匂いに顔をしかめていた。その姿に、命が赤い顔で泣き出しながら、かけよってくる。
「ああ〜‥‥味方ですよぉ〜‥‥ヒック」
 合流するつもりのようだ。が、酔っ払った状態では、その足元もおぼつかない。
「あーあ、相当酔っ払ってるなぁ。大丈夫か?」
「こんな頼りない人間でぇ‥‥グスッ‥‥ごめんなさいぃ〜‥‥」
 バリケードを盾にするだけの判断能力はまだ残っているし、超機械の援護もやってはいるのだが、酔った人特有の危うさで、あまり効果を発揮しているとは言い難い。
「いやいや。こんなときこそ、俺の愛機ゼファーの出番だしな!」
 自身のKVを盾にされつつ、そう答えるディーン。狭い谷なので、3機も入ればもう満車である。
「これじゃ動けないな‥‥。汚す心配はないかもしれないが」
 酔払い運転は避けたいディーン。新品のKVにつけるシートでもって、汚さないようにカバーはしてきたものの、この狭い地形では、そこまでシェイクされるような動きにはならないかもしれない。いや、出来ないと行ったほうが正しいだろう。
「お酒は弱い方ではないと思うのだけれど、少し不安ね」
 そこへ、えぐえぐと泣きじゃくりながら合流してくる命。ベルディアガそんな彼女よしよしと宥め、救急セットで二日酔いの薬を渡していた。
「酒はそれなりに飲めるし、回復させる手段も持っている。大丈夫だ」
 練力の消費は激しいが、その分効果はあるはず。そう思い、我斬はファランクスのトリガーを引いた。そこへ、悲鳴と引き換えに、キメラのブレスが吐きかけられる。
「ぐはぁぁぁぁっ。ダメだこれ‥‥」
 煉もまた、先手必勝とばかりに、ツインブーストBで突っ込んできた。狭い空間で、ぎぃぃんっとナックルが蛇型ワームに突っ込む。しかし、目の回る状況に、狙いが定まっていない。
「思ったよりカオスになっているわね」
 生身で合流したベルディアは、そのままアルコール供給源となっているキメラへと向う。デヴァステイターではらちが開かないと、ヒベルティアがお見舞いされている辺り、彼女も相当酔っているようだ。
「細かい戦略とかしらねーぞ? あと、足もとよけとけよっ!」
 同じ様に、がりがりとディーンが遠距離用のレーザーライフルをお見舞いしながら、距離を詰めて行く。どのワームが硬いなんて予想はつかなかったが、何度もきり付ければ、装甲位はげるだろう。
「く、錬力切れか‥‥」
 もっとも、そんな無謀な攻撃をして居ると、あっという間に燃料切れ起こして、地上で戦わざるを得なくなるのだが。
「うりょ〜、あれ? ここ、は? 確か町が焼けて、俺りぇはなにもできにゃくれ‥‥こりぇは、ればー、ぼたん、めーたー?」
 一方、我斬の記憶はお酒のせいで、傭兵になる前まで戻っている。がちゃがちゃと動かされたKVが、不思議なダンスを踊っていた。
「やべぇ、思いっきり泥酔してるじゃねぇかっ。うあー、気持ちわりぃ‥‥」
 顔を引きつらせ、吐き気に耐える煉。元々、エチケット袋は常備しているが、正直使いたくにゃい。その理由は、バリケードにいるスピリットゴーストだ。
「ツインブーストは‥‥フェニックスのオーバーブーストよりも胃にクるな、こりゃ‥‥」
 ちらりと、視線をモニターに向ける。現地にいるKVのパイロットリストが表示される一番上に、美紅の顔が映っていた。
「くそっ‥‥今此処で色んなもんぶちまけたら、俺はその代わりに色んなもんを失っちまう気がする‥‥ッ!」
 カノジョに無様な姿は晒したくない。て言うか、買ったばっかの新品オウガにぶちまけるのもヤリタクナイ。
「んじゃ、呑めないと言うのなら無理に飲ませはしないが、代わりに別の事で我を愉しませろ」
「えー。何をしろってんだよ。俺、彼女の前じゃ変な事やりたくねぇぞ」
 既に酔っ払っていたメディさんが、酒瓶とカメラとマイクを片手に、錬にこう要求してきた。
「芸だ、芸。色事でも笑い事でも何でも構わん」
 折りしも、キメラがまたブレスを吐いている。そのせいで、我斬の記憶はさらに後退してしまったようだ。
「何だあの化け物? っつかなんで俺これ動かしてんだ?何か後ろに人がいて不退転みたいな感じになってるしー? 夢か?それなら知らんものを動かせるのも判る、夢って割とご都合主義だしな」
 例え夢でもこれ以上人が死ぬのは見たくない。そう思い、我斬は機体のレバーを前に倒した。機体の動かし方は、カラダが覚えているらしく、つついてきた攻撃はひょいっと避けていた。
「まてい、これいりょうはやらせんりょ、化け物ども〜! ば〜〜にゅかん!」
 コクピットで叫ぶ声が、何故か昔見たロボットアニメになっているのは、御愛嬌。
「こらぁ〜、ちゃんとしなさ〜い」
「って、おまえもばけものかぁぁぁ」
 使わないと決めたはずのデヴァステイターが、ツッコミ気味にお見舞いされる。装甲がちょぴっと剥げたが、彼のKVにとってはかすり傷だろう。おかげで、我斬にとっては生身の面々もキメラと誤認されてしまったようだ。
「あははは♪ うぉー♪」
 そりゃあ、楽しそうに槍を振り回しながら、捕まえたキメラをくるくる振り回しているベルディアさんは、どう見ても傭兵さんには見えない。その様子を見て、後ろにいたはずの美雲まで前に出てきた。
「こうなったら、かららの錆にひてさしあげまふお〜」
 回らない舌でそう言いつつ、乙女桜を抜き放って、ダッシュで突撃してくる。だが、立ち上るアルコール臭と、我斬が「めっしゃつ榴だ〜ん!」とか言いながら発射したグレネードが、その足元を狂わせていた。
「はれ? らんか、ぐるぐると目がまわっへ‥‥」
 おめめの座って居る美雲さん。攻撃を避けられて、ぷうぷうと頬を膨らませて抗議する。
「られの許可をもらっへ、わらひの攻撃を避けへるのよ!」
「避けるのに許可なんて居るのかよ!?」
 酔う前に気持ち悪くなっちゃった煉に突っ込まれ、「何か文句ある?」と睨みつけている。その様子に、めそめそと泣き始める命さん。
「グスッ‥‥私のせいでぇ‥‥ヒック‥‥みんな酷い事にぃ〜‥‥」
 それでも、練成治療や弱体を使っている彼女。が、中々効果を発揮しない。
「む‥‥、分身するとは、卑劣れふっ!」
 しかも、美雲さん。ふらふらするばかりじゃなくて、視界がぼやけてしまっているらしい。おかげで撃った弾は明後日のほうへとそれていた。
「ね、狙いがさらまりまへん‥‥、ふにゃ‥‥あ」
「う〜‥‥お願いですからぁ‥‥援護させてくださいぃ〜‥‥‥」
 弱体をかけている命のおかげで、少しかすったくらいでも、アルコール引火を起こすようにはなっているのだが、そのせいで、谷の気温は少しずつ上昇していたのだ。
「‥‥‥‥暑い」
 ぼそりと、美雲がそう言って、上着に手をかける。その様子に、メディさんがぐいんとカメラを向けた。
「良いぞー。脱げ脱げ〜! 我も付き合おう〜」
 人に脱がしておいて、自分は服を着たままなのは申し訳ないと思ったのか、メディさんも白衣をばさりと脱ぎ捨てる。
「らんだ。ぬいでいいんら。わーい、脱ぐ脱ぐ〜」
「それなら美紅も脱ぐのであります〜」
 それを皮切りに、美雲さんは上着をほっぽりだしていた。
「俺1人じゃなんだな。お前も脱げ脱げ〜」
 しかも、たちが悪いのか、白衣を脱いだだけのメディさんに、絡んできた。が、彼女はにやりと笑うと、唯一残ったディーンの下着に手をかける。
「良いぜー。って、まだ脱がすもんがあるようだなぁ」
「わぁぁ、下は脱がすなぁぁ!」
 絡んだつもりが絡まれたらしい。なんなら挟んでやろうか? と、意味深なお誘いをしつつ、彼女は美紅を指し示す。
「あっちの雛っ娘はちゃんと脱いでるぞー」
 見れば、空調をがんがんに上げていた美紅さんも、服から何からをコクピットに放り出している。
「ディキシィを聞かせてやるぜい」
 古い軍歌を外部音声機で盛大に流しはじめる美紅さん。
「って、わ! 美紅! 使い方間違ってる!」
 人呼んで歌うバリケード状態の彼女を、煉が慌てて止めていた。見れば彼女は、大砲を棍棒の様に振り回している。そして、それを避けたキメラに、今度はロケット砲をほぼゼロ距離でぶっ放していた。
「うるさいでありますよ〜。あー、これじゃたりないであります〜」
 もはやキメラもワームもへったくれもない状態で、ついでにKVの装甲まで脱衣して、投擲武器のように投げつける。
「って、コラァ! アンスコまで脱ぐんじゃねぇ!」
 その様子に、煉が慌てて通信機をたたっきった。代わりにモニターに浮かんだのは、『しばらくお待ちください』の文字。
「うぇぇぇぇ」
「はーくーなーーー!」
 その間に様子を見に来た煉が、思いっきりエチケット袋の代わりにされていた。ぼろくそにされちゃった煉の機体をげしっと踏みつけつつ、我斬が頭のネジがぶちきれた状態で、暴れ続けている。
「ぶっとべ、超絶剛拳〜!!」
「‥‥あ。すっぽ抜けちゃった」
 その衝撃ですっ転んだ美雲の乙女桜が、キメラの最後の一匹を、突き倒していた‥‥。

 戦闘終了後。
「何で私、肩からタオルを掛けられてるの?」
「あれ? 何でここで寝てたんでしょうか〜?」
 目を覚ました命が、首をかしげている。見れば、美雲にも、大きなバスタオルがかけられていた。
「よし、飲み直しだ! つぶれるまで呑むぞ!」
「おし、付き合うぞねーちゃん」
 だが、最初から酔っていたメディさんと准将は、顔色1つ変えず、避難の終わった元避難所で、打ち上げと称した飲み会に向っている。
「余り気にしない方が良いですよ‥‥」
 その様子に、ベルディアさんはやや呆れながらも、キュアをかけてくれるのだった。