タイトル:SUIKA割マスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/28 22:35

●オープニング本文


 青い空!
 白い砂浜!
 はじける波!
 よく冷えたスイカ!


 ただし、全長3mが6匹。


 そんな写真が、UPCの依頼データベースに送りつけられたのは、お盆も近いある日の事だった。
「スイカか。美味そうだなぁ」
 縮尺がどう見ても間違っているとしか思えない、家一件くらいありそうなキメラ。それが、しゃげぇと牙を剥きながら、カメラに向ってポージングしている。ポージングと言うからには、手足もばっちり生えていて、ものすごくシュールな砂浜と化していた。
「おじいちゃん、それキメラだぉ?」
「そりゃあ、いくら品種改良があるからって、ここまででかくて牙が生えてるスイカが、人の手で出来るわけなかろう。どこから沸いた?」
 何しろ、比較対照として粉砕された警察の白い自転車は、足元で粉々になっており、赤い特徴的な液体がべっとりと付着していた。それは、所々黄色くなっていて、まだ成長途中の液体である事をうかがわせる。
「んと、わかんないけど、朝見回りに来たおまわりさんが見つけて、UPCに通報してきたぉ」
 届けには、地元の駐在員の名前が記されている。職業柄、近付いて確認しなきゃいけなかったのだが、その結果西瓜に襲われ、全治一ヶ月の重傷病院送りになったそうだ。
「データベースだと、先週には、熊みたいなバグアが、畑を荒らしていたのが目撃されてるぉ」
 以前から出没していたと言う熊バグアに、一応監視カメラが付けられていた。それによると、熊キメラが収穫を終えたスイカのつるを引っこ抜き、残った西瓜もろとも、綺麗さっぱり奪って行っている。
「つー事は、どっかのジョバンニが一晩でやっちまったんだろう。元はそれだな」
 まぁ畑の産物と言う事は、概ね中身は予想できる。でかくて手足が生えてて、牙があって、飛び道具にはマシンガンみたいな硬質の種がぶっ飛んでくる筈。
「畑のって事は、食べれるの?」
「おう。今年のは猛暑の影響だが何だか知らないが、甘いと毎年言ってるみたいだな」
 人食い西瓜を食う気になるかも、安全かどうかもさっぱり分からんが。
「わかった。じゃあ倒したら食べれるね」
「そうだな。運がよければ、な」
 戦乱を生き抜いてきたジジィによれば、腹を壊すのは運勢らしい。

 その頃、現地では。
「UPCには申請したけど、大丈夫なのかな」
「わからんけど、ヤバかったら、避難しなきゃいけないかもな」
 地元のおまわりさんと消防団の皆様が、交代で西瓜の監視を行っていた。何か危険な事があれば、すぐに逃げるよう打ち合わせも済んでいる。砂浜には、距離を示すマス目が切られ、日暮れ時の大西瓜は、今のところ大人しくしているように見えた。
 ところが。
「スイカマン、カミングアウト!」
 月の輝く夜、砂浜に野太い声が響いた。見れば、砂浜の端っこにある岩場の上に、熊みたいな体躯を持つ人影が、見慣れない機械を片手に、そう命じている。
 その声が響いた刹那、西瓜がいきなり動き出した。ごろごろと転がったかと思うと、内側からはじける様にして、スイカ柄のゴーレムみたいになっていた。
「舞台を整えてくれて、手間が省けたぜ。これで、西瓜王はレンきゅんの力になれるってもんだ」
 その声に答えるようにして、西瓜人間がけしゃけしゃと声を上げる。どうやら、西瓜柄で人型なだけで、ゴーレムではないようだ。
「西瓜、人間? レンって、多分前にUPCから流れてきた子供の手配写真だよな?」
「た、多分っ」
 じりっと後ろに下がる見回り組み。しかし、それより熊の方が早かった。
「やれぇい!」
 命じる熊。と、西瓜人間は予想通り手から蔓を伸ばし、マシンガン見たいな種で、コンクリにも穴を開ける勢いで、見張りの人々へと遅いかかる。そればかりではない、手に巨大なナタを持っていたり、やたら素早い奴がいる。どうやら、傭兵達と同じように、それぞれ特性があるらしい。
「うぉわぁぁ、逃げろ!」
 西瓜は食うモンで、食われるもんじゃない! とばかりに、さっさと逃げる人々。そんな追いかけっこを見て、熊は満足そうにふんぞり返った。
「ふふん。このスイカバーデには、中身を人の血で染め上げるギミックが組んである。西瓜だと思って舐めると、痛い目に会うぜ!」
 もう会ってるジャマイカと言うのは、言わないお約束である。

【3mのスイカが、西瓜人間になって町で暴れています! 何とかしてください!】

 そんな依頼になって、UPCに出動命令が下ったのは、それから間もなくの事である。

●参加者一覧

ホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416
20歳・♂・FT
辰巳 空(ga4698
20歳・♂・PN
木花咲耶(ga5139
24歳・♀・FT
佐賀重吾郎(gb7331
38歳・♂・FT
緑間 徹(gb7712
22歳・♂・FC
希崎 十夜(gb9800
19歳・♂・PN
守剣 京助(gc0920
22歳・♂・AA
桜井・遊美(gc1284
17歳・♀・HG

●リプレイ本文

 問題の砂浜についた一行は、照りつける太陽に、砂漠を思わずにはいられなかった。特に暑いその日、砂浜には違和感はないが、大きさ的に尋常じゃないスイカが、どででんと転がっている。
「ふむ。クラスっぽいのがあるキメラか。キメラも日々進化してるんだな。‥‥スイカである必要は無さそうだが」
 その様子に、感心する守剣 京助(gc0920)。が、横の桜井・遊美(gc1284)が呆れた用に突っ込みを入れた。
「何でもキメラにすればいいってわけじゃない気がするけど、これ現実なんだよね」
 手元に弄んでいたカードには、凶事を示すような絵柄が描かれている。が、木花咲耶(ga5139)はのほほんとスイカをガン見中。
「スイカ‥‥最近食べてないわ。運試しで食べてみようかしら‥‥いいえ、とりあえず殲滅してから考えましょう。‥‥食べてみたいわ」
「中身がどうなっているのか‥‥。どこまでが西瓜で、どこからが人間なのか‥‥。ちょっぴり気になるお年頃だな」
 割り砕いて覗いて見たいホアキン・デ・ラ・ロサ(ga2416)さん。年頃ってほどの年齢か? と思うが、IDカードに書かれた年齢はまだ二十歳の若者なのだ。
「報告によれば、ナタを持った奴や、スピードがある奴がいるようだが」
「余り近付きたくはないですよねぇ」
 緑間 徹(gb7712)が、事前調査書を覗きこみながらそう言った。辰巳 空(ga4698)の弁によると、今回は特殊能力を持っているキメラもいるかもしれない。
「地元の消防団の話じゃ、タイプ的には3タイプだと言う話だ」
「後は、どこかに射撃タイプがいるな‥‥」
 ホアキンが自警団に聞いてきたところによると、ナタタイプ、敏捷タイプの他、種を弾丸にするタイプも要るようだ。見たところ、見分けがつかないが、緑間はそう判断する。他の迅雷や瞬天速で潰せるだろうか。
「地面が砂地だから、足をとられないようにしないといけないでござるなぁ‥‥」
「ブーツに砂が入るとやりにくいしな」
 ともあれ、ぶつかって見るのが筋だろう。佐賀重吾郎(gb7331)がそう言いながら、軽く足元を踏みしめる。少し沈むが、踏ん張れないわけではなさそうだ。見れば、緑間もブーツの紐をぎゅっと締めなおしている。
 と、そのポケットから、赤い色の物体がちらりと覗いているのを、重五郎が気付いた。
「どうでもいいが、それは?」
「気休めのお守り。‥油っぽいものとは食い合わせが悪いと聞くが、どうだかな」
 エビ天の尻尾である。まぁ油モンと水モンなわけだが、果たして退いてくれるだろうか。
「熊は後ろの方だな。そうすると、真ん中の辺りのスイカがそれっぽい」
 双眼鏡で、熊とスイカの位置を確かめていたホアキンが、後方中程の‥‥傭兵達の間でも、スナイパー等の射撃組が位置する場所である。
「では作戦は、熊さんを優先的に倒す方向できまりそうね」
 咲耶がその後ろに陣取り、小隊戦では隊長位置にいるであろうキメラに狙いを定めたようだ。もっとも、その前にスイカがゴロゴロいるので、駆け抜けるのは中々難しそうではあるのだが。
「ふざけた印象のキメラだけど‥‥相手はキメラだ。油断せずに、ただ、全力全開で倒す」
 希崎 十夜(gb9800)が持っているのはエネルギーガンだ。実戦で試すのは初めてだが、自身と相性は良い‥‥筈。試して見るのもわるくはない。
「野菜タイプには、少し因縁があるのだよ」
 夏も終わりに近い。緑間は、派手なスイカ割と言わんばかりに、自身の獲物を見据える。
「いくぞアキレウス、お前の出番だ」
 それを合図に、傭兵達は漁船の影から飛び出し、スイカ退治に挑むのだった。

 まずは、ホアキンが言うように、熊めがけて進む事になった。
「えぇい、こしゃくな。やれ、スイカマンども!」
 後ろの熊がそう指示すると、スイカがごろごろと動き始めた。予想通り迎撃に出てきた。
「やっぱり、先にスイカが出てきちゃったですわねぇ」
「仕方があるまい。突出するわけにいかんし、スイカを各個撃破する方向にチェンジだ」
 その向こうの熊を相手にしたい咲夜に、ホアキンが首を横に振る。皆と動きをあわせないわけではない彼女、「わかりました。皆様に合わせるのも手段ですものね」と、その狙いを邪魔なスイカへとあわせた。
「何をごちゃごちゃ言ってる!」
「熊さん、もしかしたら人間かしら。‥‥まあ、バグアの手先ですから関係ないですわね。気にしないようにします」
 後ろで騒いでいる熊に、ため息をついてみる。照りつける太陽は、そんなため息なんぞ瞬く間に蒸発させてしまったようで。
「夏は暑いでござるなぁ。では仕事にかかるとしますか」
 重吾郎が覚醒し、その筋肉を増強させた。いかにもファイターと言った体躯になった彼の瞳には、深紅の炎が宿る。
「そうだな。攻撃は最大の防御って言うし」
 十夜も、覚醒して性格が攻めタイプに変化していく。錬力の消費に伴い、髪が若干伸びたように見えた。
「植物のバグアは‥‥いくらエコでも、人を襲う物を量産されても困ります。殖やされる前に、その生産者ごと成敗しましょう‥‥」
 辰巳はそう言うと、向ってきたスイカ達に、瞬速縮地を使って一気に距離を詰めた。側面へと回りこんだ彼がなぎ払ったのは、天剣「ラジエル」。「神の神秘」の名を冠する剣は、炎のような輝きを纏いながら、スイカの胴へとめり込んだ。
「なるほど、抵抗力も以外と高いようだ」
 にぃっと微笑んだ口元に、覚醒の証たる八重歯がちらりと見える。
「どんなのがいるかわからないし、少しつついてみるか・・」
 先手を取ることには成功したようだ。それを確かめた遊美は、持ち込んだアサルトライフルを構え、盛大にばらまいていた。
「狙撃します。射程距離、あわせられれば良いけど」
 その弾の乱射にあわせるように、希崎のエネルギーガンがスイカを狙う。実弾と非実弾が弾幕を作る中、1匹が二人にかかりきりになっているのを見て、辰巳は一度バックステップをする。
「2対2がちょうど良いですかねっ」
 どうやら、この状況では、むやみに飛び込むのは得策ではないようだ。移動しながら真音獣斬を使い、その1匹‥‥素早いタイプをひきつける。
「趣味が良いとは言えないけど、美味しく頂いちゃおう!」
 衝撃が、砂を舞い上げる。スイカがそれを沈めようと、ゴロゴロと転がる中、遊美は一番近かった辰巳に、援護射撃を行っていた。
「気をつけて! 来るよっ」
 前衛と思しきナタ持った西瓜が、援護射撃をまず潰しに来たようだ。その辺りの策は、熊といえども練っているらしい。しかし、前衛型西瓜の前には、同じく前衛が立ちはだかる。
「でかい西瓜だ、中身のつまり具合はいいかでござるか」
 そう言うや否や、重吾郎は手にした紅で、スイカを切りつけ、そのままチェーンソードを叩きつける。しかし、スイカも黙ってやられているわけではなく、ひびを入らせながら、ごろりと転がってきた。
「ぬう。させん!」
 先手必勝、とばかりにその転がるスイカを止めようとする重吾郎。機先を制した格好となったそこへ、紅へ切り付ける。急所付きも使いたかったが、残念ながらスイカの弱点が分からない。
「はっはああああああああああああ!!!」
 ナタ持ちキメラが遠いので、守剣はその間に素早いスイカへ、先手必勝と豪力発現を使い、思いっきり大剣を叩きつけていた。ごろりと転がり、ひびが大きくなる。
「体型からして、重心が高そうだがなっ。払いのけるっ」
 スイカのどっちが前で後ろなのかは分からないが、手足の向きから、なんとなく死角を判断したホアキン、ナタを持ったタイプの足元に、刀でソニックブームを撃ちこんでいた。
「ふ‥‥。予想していたた通りだが、これなら、どうにかなるな」
 その一撃のおかげで、何とか避けきれる緑間、疾風の力は、素早いタイプにもしっかりと追いつかせてくれる。足元はかなり戦いにくく、一発食らえば終わりだが、胸に仕込んだエビ天ぷらの尻尾は、お守りの効果を発揮してくれているようだ。
「こっち向きやがれっ!」
 その間に、迅雷を使い、スイカキメラの合間を走り抜けていく十夜。振り向き様、エネルギーガンで一番手間にいたスイカに、その閃光をお見舞いする。中を引くための射撃だったが、元々の素地なのか、以外と盛大にダメージを与えられたようだ。
『全力、全開。雷・幻・閃ッ!』
 注意が向いたそこへ、手にした雲隠を、丸く打ち払う。今回、エネルギーガンをメインに据えて来たもの、長く愛用してきた刀は、己の信念を示すもの。
「ちょっと、威力の差を実感する‥‥な――」
 たとえ、威力に差があったとしても。
「ふはははは、スイカの防御力は伊達じゃない。何しろ叩いても平気だしなっ」
 熊が、あざ笑うかのように、スイカを差し向けてくる。距離が近い。そう判断した十夜は、かねてから考えていた動きで避けていた。
「うわっ。く、こうなったらっ」
 そのまま、後方にバックステップ。迅雷そのものは、普通に稼動した。ただ、やはりバランスを崩し、エネルギーガンを構えなおすまではいいが、狙いを定めた射撃までには至らず、スイカに当たらない。
「スイカ、結構強いのかもしれない。今のうちに、熊を叩こうか‥‥?」
「問題ない。スイカもそろそろとどめでござろう」
 全体の様子を見ていた辰巳、真音獣斬で蔓をきり飛ばしながら、よく見えるようになった熊を指し示した。重吾郎が、ナタタイプの一匹に、チェーンソードの流し切り横一文字を食らわせる。
「熊、こちらに向ってくる様子はないですね」
「種と蔓に気をつけろ。波うち際へ追い込むんだ」
 辰巳の判断に、ホアキンが左手の紅炎、右手のエンジェルソードで、種をはじく。伸びてくる蔓を避けて切り払い、熊へと距離を詰めていた。
「仲間の攻撃の妨げになる援護タイプから排除かしらね」
 種が後ろから援護しようとばしばし飛んでくる。しかし、そこは後方にいた咲耶が援護射撃に出ていた。振り返るスイカをた手で防ぎつつ、距離をつめてくる。
「あなたにかまっていられませんの。退場願いますわ」
 時間は余りない。野放しにしてはいられない。攻撃範囲に入ると回りこみ、豪破斬撃を流し斬る。一気に畳み掛けるつもりだったが、さすがに紅蓮衝撃を使う前に、スイカが反撃してきた。
「このぉっ。目潰しを食らいやがれ」
 そこへ、守剣が太陽を背にした位置から、砂を蹴り上げる。目があるかどうかは分からないが、その隙に咲耶が切り込んでいた。
「よし、今だな。いくぞっ! 流し切り!」
 豪力発現を使い、スイカを真っ二つにする勢いで斬りに行く。前衛が戦う格好となったそこへ、緑間もとっておきを出した。
「俺の相棒は、受けるにはちと重いぞ?」
 刹那の力が、重量50のアキレウスが、下段から横に凪ぐように振り回される。そのまま遠心力を使い、上段へと構え上げていた。
「こっちは回避で充分ですわ。お食らいなさいまし!」
 流し切りが、咲耶から入る。距離を取ろうとしたナタタイプに、雷光鞭に持ち替えたホアキンが、その雷の力を解き放つ。
「香ばしく焼けちまえ」
 ばじゅっとスパークが舞った。おかげで、スイカの数を半減させられ、熊はすたこらさっさと逃げ出すところだ。
「逃がすか。止めますよ!」
 辰巳が駿足瞬地で回りこみ、流し切りをかける。これを止められたら、結構な強敵だ。そう思ったが、熊はあっさりと引っかかった。
「そこ、右に行った! ナタタイプがまだ残ってる!」
 よく伸びた昼顔が足元に広がっているが、守剣の双眼鏡は、その行方をばっちり捉えている。ナタの攻撃を、強力で受け止めていた。
「京ちゃん援護は任せてね!」
 援護射撃で、そのスイカを吹き飛ばす遊美。いや、転がしているような気もしないでもない。
「‥‥一人で海に来て、寂しくなりでもしたのか?」
「そんな事はないぞっ。海水浴場を間違えて、目の保養が出来なかったからとかでは、断じてないっ!」
 ホアキンの問いに、そう答える熊。要するに八つ当たりだったらしい。ホアキン、呆れた表情で、熊の持ってた謎の機械を、ソニックブームで払い落とし、急所付きを脇下に付き込んでいた。
「この人、多分、キメラを開発する部門の職員で、実験に来ただけじゃないかなぁ」
 辰巳が自身の判断を述べる。ゆえに、自分が食われないように、熊の毛皮を被ったり、変なコマンドワードを用意していたのではないかと。
「ところで、レンきゅんって誰何だ?」
「ああ、お前は知らないんだっけ。たぶんこいつだろ」
 緑間の問いには、ホアキンがずしゃっとあらぬ方から手配写真を見せた。甲斐蓮斗。UPCのデータベースで見れる姿だ。
「貴様、あのお方に知らないとか言ったら、酷い目に合わされるぞぉ」
 熊、がくぶるしながらそう訴えてくる。しかし、緑間はと言うと。
「‥その話、長くなりそうか?」
「そうだなぁ。宮古島くらい」
 とても長そうなので、パスした。
「今度はメロンのキメラとかきそうだからね、元凶は立っておかないと・・」
「うむ。手間取るようなら、手伝うでござる」
 その間に、遊美がプローンポジションのパワーをONにすると、重吾郎もまた熊にじりじりとにじり寄った。
「ぼ、ぼーりょくはんたい!」
 バグアが何を言うか。と、十夜は思ったが、強化人間かユダかわからない状態では、トドメを刺すのは忍びない。
「仕方がないな。じゃ、これでしまいだっ!」
「あーーれーーー」
 哀れ熊は、くず鉄のハリセン【怨嗟】でもって、円閃フルスイングを食らい、海の彼方へぶっ飛ばされてしまうのだった。
 あとにはただ、半壊したスイカだけが残ったと言う。

 でかいスイカは、動かなくても見た目のインパクト絶大だった。うーんと悩んだ結果、おててを伸ばす咲夜。守剣も切り分けて食べる事を決めた。重吾郎も食べて見るようだ。
「さて、どんな味なのか楽しみだぜ」
「では食してみるでござるよ」
 こうして、大包丁『黒鷹』で盛大に切り分けて見ると、身はなんだかちょっとレバー風味だ。ただし、食感とみずみずしさ加減は、まごう事なきスイカなのが、ちょっと微妙な気がする。
「あれ?どうしたの」
 だが数分後‥‥ちょうど水着に着替えた遊美が戻ってきた頃、目に映ったのは、守剣が盛大に腹を鳴らしてトイレに駆け込む図だった。どうやら、食べた3人の中で、彼だけ大当たりを引いたらしい。
「やっぱり、運勢かしら」
「拙者は山の生活がながかったからでござろうなぁ」
 幸運にも咲夜は当たらなかった。重吾郎は、山での生活で、食べ物の不具合には、耐性が付いている模様。
「食わなくて良かったなー‥‥」
「だねー」
 食べない事を選んだ緑間に、遊美は苦笑しながらそう答えるのだった。