●リプレイ本文
一行は相談と挨拶の為、准将のガレージを集合場所にしていた。
「おじいちゃんっ、手伝いにきましたよっ!」
元気娘の橘川 海(
gb4179)、師であるジジィに、指示を仰いでいる。どうやら、早速弄りたくてしかたがないようだ。
「おうっ。とりあえずひと通りの日常チェック項目やっとけ。基礎はリンドと一緒だから、確認項目はわかるな?」
「はいっ」
とはいえ、バイクには詳しい子なので、道具とそれだけの指示で、即座に作業へ取り掛かれる。新らしい子がAUKVに増えると聞き、にこにこしながら、電装系を弄っていた。
「すごいなぁ。それだけでわかるんだ」
「まぁ、海は元々バイク弄ってた奴だからな。って、変形用スイッチはOK出すまで触るンじゃねぇ」
感心したように、そう言う沖田 護(
gc0208)。抱いた感情は‥‥憧れ。こうして、共に同じ仕事に打ち込めるのが、何故かとてもうれしい。その姿を見て、護は自身の身を見下ろしながら、ため息をつく。
「この子達の力、引き出してあげたいよねっ」
「う、うん」
笑顔で言われ、慌てて緩んだ頬を元に戻す。准将がボソッと「‥‥若いなー」と、何かを懐かしむ表情を浮かべていたが、気付かないふりだ。
「それにしても准将、一応ちゃんと仕事してるんだ」
M2(
ga8024)が話題を変えるように言った。そして、注意がジジィに向いている間に、撤収しようとしている黒尽くめの金髪に、目を向ける。
「まぁいいや。知覚特化なら、ちょうど良い被験体がそこにいると、俺も思うんだけどなぁぁ」
「アイツには、後で外の耐久テストをやって貰う予定だから、今は保存しておかないとまずい」
ジジィ、今回はカラスを生贄にする気はないらしい。その口元に浮かんだ、謎の微笑みは、むしろカラスより良いオモチャで遊ぼうとしているお子様だ。そこへ、ずりずりとエネルギーガンと電磁爆雷をひきづって来るロジーナ=シュルツ(
gb3044)。
「って、ロジーナ何持ってきたぁ!?」
フーノ・タチバナ(
gb8011)が恋人の月城 紗夜(
gb6417)を思わず背中に庇ってしまう。
「……知覚武器、必要なんでしょぉ? ボクの武器使いたいのに使えないのあるのいっぱい。だから使うの。威力あれば絶対強いもん」」
ぽいぽいと、オモチャのように扱うロジーナ嬢。准将曰く『歩く電磁爆雷』。どうやら、浮かれている場合じゃないようだった。
地下演習場には、様々な場所がある。選ばれたのは、普段から使っている森と市街地のエリアだ。
「近接戦闘の性能、貯めさせてもらおうか」
まずは、荒巻 美琴(
ga4863)とM2、そして功刀 元(
gc2818)が森を想定した木々の中に散っていく。データを取るジジィに、配置の図を投げた。
「設定はこうなってますんで、よろしくですねー」
何でも、攻撃テストは試作機組みは、森に潜む敵役にアタック。迎撃テストが、試作機組みは市街地に陣を置き、敵役を迎え撃つシチュエーションだそうです。
「じゃあいきますよっ!」
迎撃する方の海が、棍を片手に、新型を装着する。覚醒効果でテールランプのような光がラインを引き、グローブ型超機械が、その腕に装着された。素早い動きで、敵や苦に回った面々へと距離を詰める海に、バハムートを装着した護が追いつけないで綿渡している。
「エネガン、火属性‥‥」
ロジーナが持ってきたのは、エネルギーガンと、鎖式電磁爆雷。ぱりっと聞かせた非物理のスパークは、黄色くてぶんぶんとしているものらしい。
「もう少し音大きくしても良いよ」
敵役の美琴、そう言いながら、海に愛用のファングでお応えしている。まずは、オーソドックスに、フットワークを生かして、左側へと回りこんだ。
「わかったの。もう少し濃くして、ぶんぶん大きくするの‥‥」
海に言われ、ロジーナはエネルギーガンの出力を上げた。彼女の視界の中で、危険を示す黄色が濃くなり、夕焼け色に近付いていく。
「まちなさぁぁぁいっ!」
「失礼のないように、全力で行かせて貰いたいからねっ」
しかし、海はそんな事全く気にせず、竜の咆哮と翼を併用し、美琴へと回りこんだ。後ろを取られないように、足さばきでお応えする美琴。
「ロジちゃん、電磁爆雷をっ」
「何かこれ、ここすごくぶんぶんしてて黄色いの」
そこへ、海は目標を合わせるように、超機械のスイッチを入れた。ロジーナが危険度を示す賛辞を送る。それは、火属性と相まって、一種の火炎放射器だ。見れば、耐熱処置をしてあるはずの、作り物の木が焦げてしまっている。
「ふんっ。新型の防御能力を見るには丁度いいと思うんだけどね」
速さでは、グラップラーの矜持で負けるわけには行かない。そう思った美琴、疾風脚で速度を上げる。早くて反応できていないそこへ、護が竜の瞳を発動させた。
「速い動きの一手先を読む、と」
攻撃を、バハムートの防御盾で防ぐ。防御と抵抗の高いキメラ役として、緑の錬力光を輝かせる護。色々と積んできた装備が、後の海ごとしっかりと護ってくれた。
「パイドロスは、走り比べてもいいもんだぜっ」
一方、元は竜の瞳を使い、攻撃より速度を上げる事に終始していた。奇襲を目的に、台の上から月城にフィンガーネイルを振り下ろす。
「心得た。ならば‥‥抵抗とスピード、貯めさせてもらおうかっ」
そう言った月城が、フィンガーネイルを受け止めた。さすがに速度は元の方が速い。しかし、実験の為か、着込んだバハムートは、そのダメージをしっかりと軽減してくれる。
「よう、紗夜。相手してもらえるか?」
そこへ、立ちはだかるは恋人のフーノだ。不敵な笑みを浮かべるフーノに、うなづいた月城は、マイクがONになっているのを確かめつつ、竜の尾を起動させた。
「お前に遠慮はいらんな? 全力で来なければミク・プロイセンにお前は薔薇だと流言する」
「それは勘弁っ」
自分が寺田に押し倒されている絵を見るのは、名誉毀損がどうのと言う以前の問題だ。とにかく、月城の機嫌を損ねないよう、持ってきた機械槍「ロータス」を起動させ、篭手でもあるVivoで、月城へ攻撃を当てようとする。
「戦場に慈悲など無い、全力で潰す」
しかし、超機械の一種であるVivoは、月城の発動した竜の尾で思いっきり消されてしまった。
「おわっ。こんなもんか‥‥。やっぱ、痛いもんだな」
どうやら、抵抗はこんなもんで大丈夫そうだ。あからさまな攻撃をして来ないフーノ、どうやら命中の様子身をしているようで、甘い攻撃は全て交わされてしまう。
「ジジイ、もう試作は走れるか? 走りたいのだが」
「つぅか、ライギア持ってきてそれは、ダメとは言えネーだろうが」
ジジィがOKを出したので、月城は一度バイク形態へと戻すと、嬉しそうにライジャケを羽織る。
「速度はどうだろうな。パイドロスにそう簡単には追いつけないだろうけど。ついて、こられるのか?」
フーノも、愛機をバイク形態にして逃走開始。元が「走行テストなら、試作機組は、森を脱出して、バイク形態で市街地を目指してくださいー」と、ルートをセッティングしている。確か、バイク練習で使ったコースがあるはずだ。
「この子の本当の力、見せてあげるっ!」
海がブースとで追跡を開始した。操縦の腕と速度は、まだ余力がある。残りの簾力が気になったが、そこはジジィが付いているので、大丈夫だろう。
「そうはさせないよ。ここは迎撃するのも手だしねっ」
前に出ようとした海に、月城の超機械『ザフィエル』が炸裂した。竜の尾で相殺していないそれは、牽制にしかなっていないようだったが。
「ここは、本気で行かせて貰うよ。絡め手は使わないけどねっ」
ガンズトンファーで、攻撃を受け流したM2が、機械剣βを起動させる。しかし、そのパワーは、新型に打ち消されてしまった。銃弾はペイント弾を使っていたが、これがもし実弾兵器だとすると、怖い事になっていたかもしれない。どうやら、抵抗の値は、知覚に勝てはしなくとも、今の知覚では押される場合もあるようだ。
「先手、必勝っ!」
壊すのが目的ではないが、物理防御も試したい護が、そう言いながらヨハネスで切り付ける。しかし、当たらない。完全に外れたわけではない所を見ると、どうやら当たるか否は運勢に頼る所も大きいようだ。
「ぶんぶんしてるの。いっぱい、いっぱい撒くの‥‥。まだ多分このこ動けるもん」」
そこへ、竜の角を起動させたロジーナが、火炎放射器なエネルギーガンをぶっ放す。
「やっぱり、回避が高い方が、ぶんぶんするの‥‥」
彼女の手ごたえでは、機動性は今のままの回避力より、もう少しプラスしたいらしい。知覚と抵抗と錬力を確保するためには、中々難しいようだ。それを装備できる力をつけると、今のような走り回る戦い方は出来なくなる。
「素通りはお断りしたいんですけどね。力比べをどうしますかっ?」
もっとも、そんなロジーナが通りぬけようとするのを、護が許さない。盾で押し倒すように、ぐいいっとその距離を詰めた。
「ボクでもコレくらいの知覚ダメージは出せるんだから、このデータも参考にしてもらうよ」
お互いに、まだ余裕はあるようだ。そう判断した美琴が、獲物を機械剣に持ち変える。しかし、その攻撃を海が棍でいなし、竜の方向でつき返した。
「させないんだからっ!」
「‥‥! ボクをいじめないでぇーーーーっ!!」
超機械の発動を見たロジーナが、その海にあわせるように竜の角と咆哮を起動させ、電磁式爆雷を最大パワーで振りぬく。
「おわぁぁぁっ!」
どうやら、彼女のパワーは運が悪いと、美琴の抵抗を無効化してしまうくらいのものだったらしい。悲鳴が演習場に響いたのだった。
練習用の施設と言うのは、かなり丈夫で、それだけの大暴れをしても、傷は普段通りだった。
「やれやれ、やっぱ、逃げるのは性に合わないぜ」
もっとも、中の人はそこまで行かない。パワー不足の露見したフーノが、自身の怪我を手当てしながら、お手上げと言った風情で、手を上げた。
「じゃ、これまでのまとめをしようか」
「形状と名前は、案があったらお願いします」
M2のセリフに、元もそう言い出した。護が貰った原稿用紙に、新型と自機の戦闘記録をつけている。ジジィがデータベース用の端末を貸してくれた。
「えと、やっぱり、回避を少しは上げた方が良いと思うの。女の子、軽量ってイメージがあるし、その方が小回りが効くの‥‥」
ロジーナが、生存製の要として、足回りにチェックをずばずば入れていた。練力の部分に大きく『燃料タンク』と書き込み、背中に細い硬い物体を書き加えている。蜂の尻尾に似ていた。
「引っ張られたら一巻の終わりだな」
准将、そこに『予備』と追加。これなら、万が一尻尾を切られてもどうにかなるし、人によっては無くてもどうにかなるだろう。
「スピードなら、レプリカタイプだよな。バハムートが知覚と防御故、知覚・抵抗と回避が欲しい」
「その辺は、カウルでどうにかしよう。そうだな。だが、ミカエルと被らないようにもせんと」
月城にそう答えるジジィ。この辺は外装なので、個々人によってカスタムが可能なようだ。
「バイク形態は流線型、空気抵抗を少なくし回避を上げ、素材を非物理に強いものにすればどうだ?」
「こっちの希望数値は、知覚・回避・抵抗重視なんですけど」
もっとも、ミラーフレームやステルスフレームに使用されるもの‥‥と言うのは、中々難しいかもしれない。護の希望とも一部被っているものはあったが、それには海が異を唱えた。
「けど、強い攻撃でも当たらないと意味がありません。相手エースに当てられる命中力は欲しいですっ」
「ある程度は、必要だろうなぁ。けど、エースにいきなりは無理だろ」
好みの問題もある。それに、命中値が高すぎると、ミカエルにも被ってしまう。しかし、当たらなければ意味はない。月城が、データを提示する。
「後方支援を考慮して、こんなもんか?」
「こことここが逆だろう」
回避と命中が入れ替わった。護の体感でも似たようなもんだったので、問題はないようだ。
「そんなモンで良いか。感覚はこんなもんだし」
フーノがその感覚をメモにして残している。時折、痛みで歪むのか、月城が心配そうに声をかけた。
「お前は大丈夫なのか?」
「まさか逆になるとは思わなかったけどな」
本当は、今頃フーノが月城を治療してるはずだったんだが、立場が入れ替わってしまったようだ。M2がニヨニヨしながら、「実に興味深い感想だね」とか言っている。
「後は、女性形状なら、出来るだけ小型化を目指せると良いかな」
「女忍者か女フェンサーでしょうか」
その間に、元と護は見た目の細かい調整に移っていた。
「小型軽量で回避知覚重視なイメージです。アーマー形状ではビキニアーマー系にしてみて、重要部位にのみ装甲を重点的に配置する事により、女性特有のプロポーションを強調できるのではとー」
「ミカエルより優雅な感じか? だが胸は要らん、胸だけが女性じゃない!」
力説する元に、月城さん即答する。調整の結果、着脱式になった。
「よし。ではこれを着せてみましょう」
ある程度決まった所で、元が取り出したのは、メイド服と編みタイツ、それに何故かロッタのお面だ。それを、一番小さくしたロジーナ用の機体に着せてみる。似合うのが不思議だが。
最後は、名前だ。
「そうだねぇ。アスタロトとかは? 物理型が天使でミカエルだし。反対の知覚型は悪魔の名前で」
「悪くないが、気を悪くする奴いないか?」
M2に答えるジジィ。日本人には問題ないかもしれないが、ヨーロッパ圏では、たまぁに文句を言われる事があるそうだ。元はイシュタルと言う女神様だが、欧米あわせならアスタロトの方が良いかもしれない。
「どうせ対にするなら、堕天使から名を取ってバルベロとかどうでしょうー? 元ミカエルに仕えてた女仕官だそうで、知と光を司っていたようですー」
元もやはりミカエルを意識して要るようだ。護が控えめに「スピカとか‥‥」とおとめ座の一等星を引き合いに出し、携帯端末に耳を傾けながら、ロジーナが「……テュフォンとか、どぉ?」と、嵐を巻き起こす竜の怪物を名付けようとしている。
「シルエットが女性型ってことだから、女神の名前辺りが良いんじゃないかな?」
美琴は、 アイルランド神話からモリガン、ウェールズ神話からアリアンロッド。さらにゴール系神話から、勝利と闘争の女神シルヴァーナも引っ張り出してきた。色々と意味はあるが、ジジィは考えた挙句こう答える。
「その辺の決定は、また今度だな。なんとなく調整の方向はわかった。またちょっと色々頼むかもしれないが、その時はよろしく頼む」
どうやら、それはまた別ののようである。