タイトル:知覚のレディマスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/08/25 23:43

●オープニング本文


 ラスホプでは日々新しい技術が開発されている。それは何も、ブレスト博士のラボばかりではない。ジジィことキャスター准将んとこだって、時にはまともな研究が行われているのだ。
「つうわけで、おねいちゃんシルエットのAUKVを作れって言われてんだよなぁ」
「つくりゃあ良いじゃないですか。上の許可は出てるんですし」
 何故か、ジジィのラボに配属されているカラスが、電子署名入りの依頼を指し示してそう言う。最近はKVの方が花盛りなので、AUKVも新しい物をと言うのが、その発端だ。
「生徒の方からも、知覚特化が欲しいって言われてるんでなぁ。問題は中身だ」
「ふむ。試験内容と、相手ですか‥‥」
 ディスプレイに映し出されたのは、UPCからの概要書である。が、テスト項目とパイロットの欄が思いっきり空白だった。場所はグリーンランドか演習場、四国・沖縄のマップや、闘技場のスケジュール等もファイルされているが、どこにするかはまだ迷っているようだ。
「知覚特化にすると言う素案までは決まったんだが、場所と項目。それにその上乗せする知覚をどの程度にするのがベストなのか、データが足りねぇんだよな。いつもみたいに試作品作って、演習場放り込めば良いって訳じゃねェし」
 カラスやミクの素体データもファイリングされている。だが、前線に出ている傭兵達とはかけ離れているので、参考になりゃしない。かと言って、研究部でやるには弊害があった。
「そもそも、非物理特化の試作品なんてのが難しいですしねぇ」
 試作品でも、それらしきものを作る事は出来る。たいていは一ヶ月もしないうちに壊れて使い物にならなかったりするが、かと言って捕まえてきたキメラが物理無効だと大体逃げて傭兵に始末させられているわけで。
 そんなわけで、学園内外から協力者を募る事になったのだった。

 翌日。
「わざわざ試作品にする必要はねェわな。こんっだけ非物理に特化してる奴いるんだから」
 データをパラパラとめくってたジジィがそう言うと、カラスの槍に目を移した。非物理のパウワァは、そこでも遺憾なく発揮されている。
「えー、ジャッジが面倒なんですよう」
「文句言うな。どうやったって必要なんだから」
 どうやら、ジジィ達のラボでは、カラスを審判にして、テストをする方向で話がまとまったようだ。
「と言うわけで、久々に開発に手を付けようってんだが、ろくな試作品がない。ので、集まったお前らには、キメラになって貰う」
 その意を受けて、集められた生徒聴講生傭兵が「えぇぇぇ!」と不満そうな顔をする。いや、チームに分かれての演習は授業でもやっているが、まさか名指しで敵キャラですと言われるとは思わなかった模様。
「文句言うな。何れはお前らの外装になんだから。方法は任せるが、お前らはどちらかと言うと襲ってきたり、逃げたりする方だ。敵の気持ちになって、新型の開発に参加してくれ。意見も求む」
 まぁ、内容的には授業でやっている場合と、さほど変わらない。サッカーや野球の練習試合といっしょである。
「すみません。新型の中身にはなれないんですか?」
「ベースにリンドを使うから、可能と言えば可能だが、それだと同士討ちになっちまうから、事故に気をつけて追いかけっこしてくれ」
 誰かの質問にそう答えるジジィ。基礎から改造したほうがやりやすいと言ったところだろうか。
「いいんですかね? それで」
「こまけぇ事は気にすんな! わけぇんだから!」
 ただ、最後はやっぱりジジィ節が火を吹くのであった。

『目標は、どの程度の知覚能力を保持すれば、最前線のエースと同等、もしくはそれ以上のパワーになるかを調べる事。知覚に自信を付けたい者は、うちのラボまで』

 なお、知覚の数値を決めると言う目的の為、他のクラスに置いては、生身でそれだけの数値が叩きだせる自負がある場合、特に制限は設けないそうである。

●参加者一覧

荒巻 美琴(ga4863
21歳・♀・PN
M2(ga8024
20歳・♂・AA
ロジーナ=シュルツ(gb3044
14歳・♀・DG
橘川 海(gb4179
18歳・♀・HD
月城 紗夜(gb6417
19歳・♀・HD
布野 橘(gb8011
19歳・♂・GP
沖田 護(gc0208
18歳・♂・HD
功刀 元(gc2818
17歳・♂・HD

●リプレイ本文

 一行は相談と挨拶の為、准将のガレージを集合場所にしていた。
「おじいちゃんっ、手伝いにきましたよっ!」
 元気娘の橘川 海(gb4179)、師であるジジィに、指示を仰いでいる。どうやら、早速弄りたくてしかたがないようだ。
「おうっ。とりあえずひと通りの日常チェック項目やっとけ。基礎はリンドと一緒だから、確認項目はわかるな?」
「はいっ」
 とはいえ、バイクには詳しい子なので、道具とそれだけの指示で、即座に作業へ取り掛かれる。新らしい子がAUKVに増えると聞き、にこにこしながら、電装系を弄っていた。
「すごいなぁ。それだけでわかるんだ」
「まぁ、海は元々バイク弄ってた奴だからな。って、変形用スイッチはOK出すまで触るンじゃねぇ」
 感心したように、そう言う沖田 護(gc0208)。抱いた感情は‥‥憧れ。こうして、共に同じ仕事に打ち込めるのが、何故かとてもうれしい。その姿を見て、護は自身の身を見下ろしながら、ため息をつく。
「この子達の力、引き出してあげたいよねっ」
「う、うん」
 笑顔で言われ、慌てて緩んだ頬を元に戻す。准将がボソッと「‥‥若いなー」と、何かを懐かしむ表情を浮かべていたが、気付かないふりだ。
「それにしても准将、一応ちゃんと仕事してるんだ」
 M2(ga8024)が話題を変えるように言った。そして、注意がジジィに向いている間に、撤収しようとしている黒尽くめの金髪に、目を向ける。
「まぁいいや。知覚特化なら、ちょうど良い被験体がそこにいると、俺も思うんだけどなぁぁ」
「アイツには、後で外の耐久テストをやって貰う予定だから、今は保存しておかないとまずい」
 ジジィ、今回はカラスを生贄にする気はないらしい。その口元に浮かんだ、謎の微笑みは、むしろカラスより良いオモチャで遊ぼうとしているお子様だ。そこへ、ずりずりとエネルギーガンと電磁爆雷をひきづって来るロジーナ=シュルツ(gb3044)。
「って、ロジーナ何持ってきたぁ!?」
 フーノ・タチバナ(gb8011)が恋人の月城 紗夜(gb6417)を思わず背中に庇ってしまう。
「……知覚武器、必要なんでしょぉ? ボクの武器使いたいのに使えないのあるのいっぱい。だから使うの。威力あれば絶対強いもん」」
 ぽいぽいと、オモチャのように扱うロジーナ嬢。准将曰く『歩く電磁爆雷』。どうやら、浮かれている場合じゃないようだった。

 地下演習場には、様々な場所がある。選ばれたのは、普段から使っている森と市街地のエリアだ。
「近接戦闘の性能、貯めさせてもらおうか」
 まずは、荒巻 美琴(ga4863)とM2、そして功刀 元(gc2818)が森を想定した木々の中に散っていく。データを取るジジィに、配置の図を投げた。
「設定はこうなってますんで、よろしくですねー」
 何でも、攻撃テストは試作機組みは、森に潜む敵役にアタック。迎撃テストが、試作機組みは市街地に陣を置き、敵役を迎え撃つシチュエーションだそうです。
「じゃあいきますよっ!」
 迎撃する方の海が、棍を片手に、新型を装着する。覚醒効果でテールランプのような光がラインを引き、グローブ型超機械が、その腕に装着された。素早い動きで、敵や苦に回った面々へと距離を詰める海に、バハムートを装着した護が追いつけないで綿渡している。
「エネガン、火属性‥‥」
 ロジーナが持ってきたのは、エネルギーガンと、鎖式電磁爆雷。ぱりっと聞かせた非物理のスパークは、黄色くてぶんぶんとしているものらしい。
「もう少し音大きくしても良いよ」
 敵役の美琴、そう言いながら、海に愛用のファングでお応えしている。まずは、オーソドックスに、フットワークを生かして、左側へと回りこんだ。
「わかったの。もう少し濃くして、ぶんぶん大きくするの‥‥」
 海に言われ、ロジーナはエネルギーガンの出力を上げた。彼女の視界の中で、危険を示す黄色が濃くなり、夕焼け色に近付いていく。
「まちなさぁぁぁいっ!」
「失礼のないように、全力で行かせて貰いたいからねっ」
 しかし、海はそんな事全く気にせず、竜の咆哮と翼を併用し、美琴へと回りこんだ。後ろを取られないように、足さばきでお応えする美琴。
「ロジちゃん、電磁爆雷をっ」
「何かこれ、ここすごくぶんぶんしてて黄色いの」
 そこへ、海は目標を合わせるように、超機械のスイッチを入れた。ロジーナが危険度を示す賛辞を送る。それは、火属性と相まって、一種の火炎放射器だ。見れば、耐熱処置をしてあるはずの、作り物の木が焦げてしまっている。
「ふんっ。新型の防御能力を見るには丁度いいと思うんだけどね」
 速さでは、グラップラーの矜持で負けるわけには行かない。そう思った美琴、疾風脚で速度を上げる。早くて反応できていないそこへ、護が竜の瞳を発動させた。
「速い動きの一手先を読む、と」
 攻撃を、バハムートの防御盾で防ぐ。防御と抵抗の高いキメラ役として、緑の錬力光を輝かせる護。色々と積んできた装備が、後の海ごとしっかりと護ってくれた。
「パイドロスは、走り比べてもいいもんだぜっ」
 一方、元は竜の瞳を使い、攻撃より速度を上げる事に終始していた。奇襲を目的に、台の上から月城にフィンガーネイルを振り下ろす。
「心得た。ならば‥‥抵抗とスピード、貯めさせてもらおうかっ」
 そう言った月城が、フィンガーネイルを受け止めた。さすがに速度は元の方が速い。しかし、実験の為か、着込んだバハムートは、そのダメージをしっかりと軽減してくれる。
「よう、紗夜。相手してもらえるか?」
 そこへ、立ちはだかるは恋人のフーノだ。不敵な笑みを浮かべるフーノに、うなづいた月城は、マイクがONになっているのを確かめつつ、竜の尾を起動させた。
「お前に遠慮はいらんな? 全力で来なければミク・プロイセンにお前は薔薇だと流言する」
「それは勘弁っ」
 自分が寺田に押し倒されている絵を見るのは、名誉毀損がどうのと言う以前の問題だ。とにかく、月城の機嫌を損ねないよう、持ってきた機械槍「ロータス」を起動させ、篭手でもあるVivoで、月城へ攻撃を当てようとする。
「戦場に慈悲など無い、全力で潰す」
 しかし、超機械の一種であるVivoは、月城の発動した竜の尾で思いっきり消されてしまった。
「おわっ。こんなもんか‥‥。やっぱ、痛いもんだな」
 どうやら、抵抗はこんなもんで大丈夫そうだ。あからさまな攻撃をして来ないフーノ、どうやら命中の様子身をしているようで、甘い攻撃は全て交わされてしまう。
「ジジイ、もう試作は走れるか? 走りたいのだが」
「つぅか、ライギア持ってきてそれは、ダメとは言えネーだろうが」
 ジジィがOKを出したので、月城は一度バイク形態へと戻すと、嬉しそうにライジャケを羽織る。
「速度はどうだろうな。パイドロスにそう簡単には追いつけないだろうけど。ついて、こられるのか?」
 フーノも、愛機をバイク形態にして逃走開始。元が「走行テストなら、試作機組は、森を脱出して、バイク形態で市街地を目指してくださいー」と、ルートをセッティングしている。確か、バイク練習で使ったコースがあるはずだ。
「この子の本当の力、見せてあげるっ!」
 海がブースとで追跡を開始した。操縦の腕と速度は、まだ余力がある。残りの簾力が気になったが、そこはジジィが付いているので、大丈夫だろう。
「そうはさせないよ。ここは迎撃するのも手だしねっ」
 前に出ようとした海に、月城の超機械『ザフィエル』が炸裂した。竜の尾で相殺していないそれは、牽制にしかなっていないようだったが。
「ここは、本気で行かせて貰うよ。絡め手は使わないけどねっ」
 ガンズトンファーで、攻撃を受け流したM2が、機械剣βを起動させる。しかし、そのパワーは、新型に打ち消されてしまった。銃弾はペイント弾を使っていたが、これがもし実弾兵器だとすると、怖い事になっていたかもしれない。どうやら、抵抗の値は、知覚に勝てはしなくとも、今の知覚では押される場合もあるようだ。
「先手、必勝っ!」
 壊すのが目的ではないが、物理防御も試したい護が、そう言いながらヨハネスで切り付ける。しかし、当たらない。完全に外れたわけではない所を見ると、どうやら当たるか否は運勢に頼る所も大きいようだ。
「ぶんぶんしてるの。いっぱい、いっぱい撒くの‥‥。まだ多分このこ動けるもん」」
 そこへ、竜の角を起動させたロジーナが、火炎放射器なエネルギーガンをぶっ放す。
「やっぱり、回避が高い方が、ぶんぶんするの‥‥」
 彼女の手ごたえでは、機動性は今のままの回避力より、もう少しプラスしたいらしい。知覚と抵抗と錬力を確保するためには、中々難しいようだ。それを装備できる力をつけると、今のような走り回る戦い方は出来なくなる。
「素通りはお断りしたいんですけどね。力比べをどうしますかっ?」
 もっとも、そんなロジーナが通りぬけようとするのを、護が許さない。盾で押し倒すように、ぐいいっとその距離を詰めた。
「ボクでもコレくらいの知覚ダメージは出せるんだから、このデータも参考にしてもらうよ」
 お互いに、まだ余裕はあるようだ。そう判断した美琴が、獲物を機械剣に持ち変える。しかし、その攻撃を海が棍でいなし、竜の方向でつき返した。
「させないんだからっ!」
「‥‥! ボクをいじめないでぇーーーーっ!!」
 超機械の発動を見たロジーナが、その海にあわせるように竜の角と咆哮を起動させ、電磁式爆雷を最大パワーで振りぬく。
「おわぁぁぁっ!」
 どうやら、彼女のパワーは運が悪いと、美琴の抵抗を無効化してしまうくらいのものだったらしい。悲鳴が演習場に響いたのだった。

 練習用の施設と言うのは、かなり丈夫で、それだけの大暴れをしても、傷は普段通りだった。
「やれやれ、やっぱ、逃げるのは性に合わないぜ」
 もっとも、中の人はそこまで行かない。パワー不足の露見したフーノが、自身の怪我を手当てしながら、お手上げと言った風情で、手を上げた。
「じゃ、これまでのまとめをしようか」
「形状と名前は、案があったらお願いします」
 M2のセリフに、元もそう言い出した。護が貰った原稿用紙に、新型と自機の戦闘記録をつけている。ジジィがデータベース用の端末を貸してくれた。
「えと、やっぱり、回避を少しは上げた方が良いと思うの。女の子、軽量ってイメージがあるし、その方が小回りが効くの‥‥」
 ロジーナが、生存製の要として、足回りにチェックをずばずば入れていた。練力の部分に大きく『燃料タンク』と書き込み、背中に細い硬い物体を書き加えている。蜂の尻尾に似ていた。
「引っ張られたら一巻の終わりだな」
 准将、そこに『予備』と追加。これなら、万が一尻尾を切られてもどうにかなるし、人によっては無くてもどうにかなるだろう。
「スピードなら、レプリカタイプだよな。バハムートが知覚と防御故、知覚・抵抗と回避が欲しい」
「その辺は、カウルでどうにかしよう。そうだな。だが、ミカエルと被らないようにもせんと」
 月城にそう答えるジジィ。この辺は外装なので、個々人によってカスタムが可能なようだ。
「バイク形態は流線型、空気抵抗を少なくし回避を上げ、素材を非物理に強いものにすればどうだ?」
「こっちの希望数値は、知覚・回避・抵抗重視なんですけど」
 もっとも、ミラーフレームやステルスフレームに使用されるもの‥‥と言うのは、中々難しいかもしれない。護の希望とも一部被っているものはあったが、それには海が異を唱えた。
「けど、強い攻撃でも当たらないと意味がありません。相手エースに当てられる命中力は欲しいですっ」
「ある程度は、必要だろうなぁ。けど、エースにいきなりは無理だろ」
 好みの問題もある。それに、命中値が高すぎると、ミカエルにも被ってしまう。しかし、当たらなければ意味はない。月城が、データを提示する。
「後方支援を考慮して、こんなもんか?」
「こことここが逆だろう」
 回避と命中が入れ替わった。護の体感でも似たようなもんだったので、問題はないようだ。
「そんなモンで良いか。感覚はこんなもんだし」
 フーノがその感覚をメモにして残している。時折、痛みで歪むのか、月城が心配そうに声をかけた。
「お前は大丈夫なのか?」
「まさか逆になるとは思わなかったけどな」
 本当は、今頃フーノが月城を治療してるはずだったんだが、立場が入れ替わってしまったようだ。M2がニヨニヨしながら、「実に興味深い感想だね」とか言っている。
「後は、女性形状なら、出来るだけ小型化を目指せると良いかな」
「女忍者か女フェンサーでしょうか」
 その間に、元と護は見た目の細かい調整に移っていた。
「小型軽量で回避知覚重視なイメージです。アーマー形状ではビキニアーマー系にしてみて、重要部位にのみ装甲を重点的に配置する事により、女性特有のプロポーションを強調できるのではとー」
「ミカエルより優雅な感じか? だが胸は要らん、胸だけが女性じゃない!」
 力説する元に、月城さん即答する。調整の結果、着脱式になった。
「よし。ではこれを着せてみましょう」
 ある程度決まった所で、元が取り出したのは、メイド服と編みタイツ、それに何故かロッタのお面だ。それを、一番小さくしたロジーナ用の機体に着せてみる。似合うのが不思議だが。
 最後は、名前だ。
「そうだねぇ。アスタロトとかは? 物理型が天使でミカエルだし。反対の知覚型は悪魔の名前で」
「悪くないが、気を悪くする奴いないか?」
 M2に答えるジジィ。日本人には問題ないかもしれないが、ヨーロッパ圏では、たまぁに文句を言われる事があるそうだ。元はイシュタルと言う女神様だが、欧米あわせならアスタロトの方が良いかもしれない。
「どうせ対にするなら、堕天使から名を取ってバルベロとかどうでしょうー? 元ミカエルに仕えてた女仕官だそうで、知と光を司っていたようですー」
 元もやはりミカエルを意識して要るようだ。護が控えめに「スピカとか‥‥」とおとめ座の一等星を引き合いに出し、携帯端末に耳を傾けながら、ロジーナが「……テュフォンとか、どぉ?」と、嵐を巻き起こす竜の怪物を名付けようとしている。
「シルエットが女性型ってことだから、女神の名前辺りが良いんじゃないかな?」
 美琴は、 アイルランド神話からモリガン、ウェールズ神話からアリアンロッド。さらにゴール系神話から、勝利と闘争の女神シルヴァーナも引っ張り出してきた。色々と意味はあるが、ジジィは考えた挙句こう答える。
「その辺の決定は、また今度だな。なんとなく調整の方向はわかった。またちょっと色々頼むかもしれないが、その時はよろしく頼む」
 どうやら、それはまた別ののようである。