タイトル:追いつかない君にマスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/07/14 08:29

●オープニング本文


 最近、新しい機体や、新しいシステムが増えた。
 だが、ただでさえ多い機体なのに、と辟易している老人が1人。通称『ジジィ』ことキャスター准将である。
「うーん。そろそろAUKVの新しいのとか、翔幻の後継機とか考えなくちゃならんが、ここ最近色々出回ってるんで、データが足りねーなぁ‥‥」
 開発を考えている准将らしいのだが、それに先んじて作戦が行われてしまったので、被らないように技術を導入するのが、結構手間がかかるらしい。それ以前に、新しい技術への探究心も、まだまだ衰えていないようだ。ジジィなのに。
「つぅわけなんで、ちょっと機体特性のデータを集めなおしたい。アルバトロスやヘルヘブンあたりまでなら把握してるんで、必要ないんだが、ここ数ヶ月の‥‥平たく言うとジブラルタル戦以降に増えた機体の特性チェックだな」
 大規模のデータをひっくり返している准将だが、どうしてもやはり実物を弄ってみないと、自身で把握するのは難しいらしく、准将は寺田に生徒や聴講生達に依頼するよう告げていた。
『構いませんが、それくらいとなると、演習場ではなくて、グリーンランドをご使用になった方がいいかもしれませんね』
「ああ。暴れるなら表でって奴だな。本当は闘技場を使いたいが、無理やりスケジュールをねじ込むわけには行かないし。借りれるなら向こうの施設を使いたい」
 さすがに准将も、地下の演習場や闘技場のスケジュールを押しのけてまで、実験とデータ集めをしたいとは思っていないようだ。それ以前に、KVを使うので、どうせなら思いっきり暴れられる場所が良いとの事。
『わかりました。では授業と研究の一端として、予約を取っておきます。表には行かれますか?』
「そうしてくれ。夏場の向こうでも弊害が出るようじゃ、あっちの連中に勝てないからな」
 向こう、と言うのはグリーンランドの事だろう。冬場には凍死するほどの気温を常に考えているわけにも行かないが、常識的な範囲での対低気温は対策しておきたい。
『わかりました。では、場所を確保しておきます』
 そう言って、ゴットホープに連絡する寺田だった。

 数日後、用意されたのは、高速艇乗り場からもさほど遠くない、海岸の開けた場所だった。
「で、ここが予約場所か。例によって沿岸部だな」
『専用機体もありますからねぇ。秘匿しておくようなモノでもないですし』
 上からHWにでも見られれば、一目瞭然だが、隠しておくような作業ではない。ただ、KVが数機集まって、ドツキ合いをしているだけだし。
「秘密の特訓の方が面白いんだがな。さて、敵はどうするかなぁ。勝手に作っちゃっていいのか?」
 KV同士での練習も考えにはあったが、データの刷り合わせが面倒だし、それは闘技場で行われている可能性もある。集まったパイロットが希望すれば、手合わせも考えてはいたが、わかりやすく的を用意するのが妥当だろう。寺田も『お任せします』と答えていた。
「んじゃ、スクラップ材料を輸送してくれ。あと、ちょっと詳しく見たいんで、人数は少なめにしたいんだが‥‥」
『本当は、人数に制限を設けるべきではないんでしょうけどね』
 こうして、本部とカンパネラに、こんな依頼が表示されるのだった。

『シラヌイ以後発売の機体や、導入システム、パーツ等々のデータ取りを行います。勝手の分からないと思っている生徒・傭兵各位は、グリーンランドの指定区域まで行ってください』

 復習は大切である。

●参加者一覧

龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
レイード・ブラウニング(gb8965
21歳・♂・DG
如月 芹佳(gc0928
17歳・♀・FC
オルカ・スパイホップ(gc1882
11歳・♂・AA
ミリハナク(gc4008
24歳・♀・AA
南 星華(gc4044
29歳・♀・FC

●リプレイ本文

「うっし。これで装備はばっちりだな。名付けて我龍旋武者レックスキャノン仕様だ」」
 装備を調整していた龍深城・我斬(ga8283)、自慢そうにふんぞり返った。見れば、鎧を来たドラゴンに見える。が、彼はまだまだ不満げだ。
「後はゴールドラッシュさえあれば、もっと勇者っぽくなったんだけどなぁ」
「プラモじゃねェYO」
 その壮大な装備に、思わずツッコミを入れるジジィ。そんな傭兵達の希望により、ほぼ1対1での演習になった。ぎゅおおおんっと、デコトラのタイヤが回ったそれは、実戦に近づけてあるのか、さほど変わらない。ばしゅばしゅばしゅっと天井のガトリングガンがお見舞いされる。
「早いぞ准将っ」
 我斬は、それを右手に仕込んだ巨大な爪で、がっちりと受け止めていた。はじかれた非物理のレーザーが、試作型超伝導DCに当たり、消えた。ペイント弾仕様のそれは、当たっても壊れないが、それでもゲームオーバーになるのはいただけない。慌てて超伝導DCのスイッチを入れた。ばしゅっと装甲の表面に走った電圧が、レーザーの一撃をはじく。
「元が少し柔いから心配なんだよね、消費がデカイ分の効果はあるかな?」
「KV1機分追加しといて何を言うか」
 レーザーそのものを避ける事は出来なかったが、無効化する事は出来たようだ。測定値の結果を見てぼやく准将に、我斬は首を横に振る。
「まだ半分だって。やっぱり今ひとつ物足りないかなぁ。運が悪いと避けきれないみたいだ」
「中身にも左右されっからな」
 攻撃を避けきる事は、まだ彼の竜牙では難しいらしい。今は、トラック改造の早い奴なので、慣性制御はないが、この分を足されたら、いかに新型でも対応しきれないかもしれない。
「OK。じゃあ今度は逆だ」
 もっとも、竜牙のその爪が、デコトラを捕らえるのは、予想より早かった。ガタイの割には、足の早い竜牙が、デコトラに一撃を加えようとする。が、一手足りず、デコトラの表面を傷つけるだけに終わってしまう。
「ふむ、素のデータだと運が悪いと通らないかな」
「非物理射撃も運が悪いと通らないぞ」
 硬いだけはある。それでも、2度目の攻撃はデコトラを捕らえていた。ブースターで距離を詰め、彼はにやりと笑う。
「OK。なら必殺技を試させてもらおうか」
「壊すなよっ」
 念押しする准将。が、我斬はその刹那、スイッチを切り替えていた。
「やるぞぉ我龍旋。オフェンスアクセラレーター起動、F・Iテイルクラァァッシュ!!」
 尻尾に仕込んだF・I・ナックルがぶぅんっと唸りを上げた、エネルギーが尻尾に集中し、解放された刹那、衝撃と閃光が走る。取り付けたセンサーに、びしぃっと盛大な亀裂が入り‥‥爆発する。
「おわぁぁぁっ。壊すなって言っただろぉぉぉ!」
「あちゃー。芯を壊さないように注意したつもりだったんだけどなー‥‥」
 頭を抱える我斬。どうやら、威力が強すぎたらしい。センサーのメーターが振り切っている。世の中、気をつけていても、どうしようもない事はあるのだ。

 次は、如月 芹佳(gc0928)のシラヌイS型だった。
「行くよ。私の影狼‥‥」
 やはり、1対1を想定した演習に、コクピットの中の彼女はそう呟く。値段こそたいした事ないものばかりだが、ここまでそろえると、いっそレアな気がしてきた。
「この動きについてこれるかな?」
 その漢字装備‥‥飛燕と陽炎を稼動させる芹佳。翼型の推進装甲が、エネルギーの焔を吐き、補助スラスターがその機動力を上げる。ずれた照準は装甲『木菟』のスコープで合わせ直していた。
「残念だな。機体の機動力はパイロットに左右されるんだよ」
 が、トラックの動きも中々早い。全てを平均的に上げているせいか、命中も回避も今ひとつ芹佳の機体に追いついてはいないが、それでもかすった一撃は、防御力にやや難のある影狼の装甲を薙いでいた。
「その割には追いついてないみたいだけど」
 そんな流れ弾を避けようと、芹佳は変則的な動きで対応する。KVは、人が出来る動きは出来ると銘打たれている。ならばと、アクロバティックな動きをしてみるが、サーカスじみた動きをするには、機体の熟練度が少し足りないようだ。
「予想外の動きには、それなりの技術が居るんだね」
「弱点弱点っと。こいつを食らえい」
 相手を怯ませるには、やはり動きだけではダメなのだろう。そこへ、非物理レーザーが叩き込まれる。スラスターでそれを回避しつつ、今度は左手の龍破でもってトラックを掴もうとする。そう簡単には掴ませないと、逃げる箱。
「動きが直線的!」
 超伝導アクチュエータが作動し、途中から加速。ちょうど、水平になったその刃から逃れようと、トラックが荷台を切り離したそこへ、雪影の刃が煌き、水平に突き刺さっていた。がしり、と左腕が箱を捕ら、歩行形態でしか使えない龍破が、トラックの台座の部分を吹き飛ばす。
「強く、なったのかな‥‥?」
 愛用のハーモニカを握り締め、芹佳はぼそりとそう呟くのだった。

 で、次は海岸戦だった。足の付く浅瀬での演習である。
「個人的には、改造した機体の回避でーたが欲しいかな〜。非物理のダメージを知りたいんだよね〜。これ知っておくと、HWと戦う時のめやすになるしねー」
 リヴァイアサンの中で、アクディヴアーマーの起動具合を確かめるオルカ。被弾時の損傷率が知りたいと言う彼に、准将は用意したダミーの注意を促す。
「耐水装置つけてある奴は高いから、絶対壊すなよ」
「わかったー。じゃあ攻撃しないねー」
 オルカ、そう言うと、くるりと回答して回れ右。どうやら、逃げの一手に徹するようだ。
「それでいいなら構わないが。そーれいっくぞー」
『い〜っち、に〜い、さ〜んっと!』
 ばしゅばしゅばしゅと水面を切り裂くレーザー。口調こそ追いかけっこだが、その動きは倍ぐらい早く、まったく当たらない。芹佳の機動をも上回っているようだ。
『何回避けれるかなぁ〜??』
「っていうか、お前どんだけ積んでるんだよ!」
 手元のデータを確かめる准将。それによると、愛機レプンカムイには、それぞれン十万単位の改造費が乗っかっている。
「えぇい、行動出来るのはこっちが上だ。避けんなこなろー」
「それが目的なんだから、逃げるに決まってるじゃーん。データこんなもんかな」
 数値なんぞ飾りじゃー! と言わんばかりに回りこもうとする准将に、逃げまくるオルカ。だが、その一撃はまったく当たらない。
『この程度なら、こんなものかなぁ‥‥』
 どうやら、こちらが早すぎで、アーマーテストにならないようだ。仕方なくオルカは反転し、ブーストを使って急接近する。仕込んだスキルと言う名の推進力が、青い燐光を放ちながら、強烈にその機体を押し出す。その力でもって握り締めたリビティナが、容赦なく偽箱を切り割いていた。
『いっちょあ〜がり!』
「壊すなっつっただろーがー!」
 ぼこぼこと水音を立てつつ沈んでいく箱。さすがに強化された品には、対抗力がなかったようだ。
「えっと。リビティナが300としてこの程度のダメージなら・・・水中練剣大蛇が860で・・・いくつになるんだろ?」
「一概にはいえねーけど、これ数値通りに出てねぇぞ‥‥」
 呆れたようにそう答える准将に、オルカは不満そうに「えー」と口を尖らせるのだった。

 次の相手は南 星華(gc4044)のようだ。と、彼女は上目遣いな視線を投げかけながら、准将に頼みごとをしていた。
「あのー、おじ様。お願いがあるんですけど‥‥」
 と、彼女は自身のKVを指し示し、校告げる。
「ニーベルングだけど、練力消費が激しいのよね。だから、充分なデータが欲しいなら、練力を補給して欲しいの」
 確かに彼女のエネルギータンクは、他の機体に比べれば幾分小型だ。
「そうすると、実戦っぽい対戦にはならないと思うが、それでも良いか?」
「うん。お願い、おじ様。それと、敵が少ないと発揮できないから、ダミーでも一直線に配置してもらえると嬉しいわ」
 その辺りはいくらでも調整可能だが、実際はそこまで都合よく1列になるわけではない。おまけに、今用意できるダミーは、さっきからオーバーキルでぶっ壊されている元トラックばかりである。
「それじゃあ、砲台にしかならねぇよ。出来るだけ何とか出来るようにしてみ」
「わかったわ。おじ様、お手柔らかにお願いするわね」
 一応対戦データなので、動かない砲台の威力テストではないようだ。なるべく動きはあわせるようにするから、と諭されて、彼女は自身のKVへと乗り込む。
「そっちの方がはえーな。追いかけてくから、充分に使えるようにな」
「はーい。えぇと、何とか接近戦に持ち込まないと‥‥」
 動きに対応するパイロットの能力は、さすがに南の方が上だったようだ。サイエンティストより下回っちゃ元も子もないかもしれないが、南はそのわずかな有利さを生かし、なんとか距離を詰めようとする。
「これ、手伝った方がいいかな」
 手番的には最後に回るはずのレイード・ブラウニング(gb8965)が助力を申し出てきた。実際の戦場では、2人で協力して1機を落とすと言うのは、よくある相談である。グリフォンのデータ取りも行いたかったレイードは、その隙に、箱の後ろ側へと回りこんでいた。
「とりあえずは、売りの一つである機動性を試すとしようか」
 なるべく、相手の死角に回りこもうと言うのは、どこも同じだ。箱の射線に捕らえられないよう、ステップエアBを使うレイード。上空に回りこむと、そこへ今度は南が自身の機体で受け流した。
「パリング起動ですわっ。えぇい」
 ヘルムヴィーゲ・パリングが、准将のレーザーを後方へ炸裂させている。反対側へ向った彼女は、自身の機体に、補給用のケーブルが繋がって居るのを確認し、目の前のダミーにその槍の穂先をあわせていた。
「今です。ワルキューレ! ニーベルング!」
 掛け声と共にその槍を振るうのが、パラディンのマナーと言う奴らしい。動かないダミーの箱は、ニーベルングに貫かれ、鉄くずと化した。
「まぁ、こんなもんだろうな。これないと、かなり厳しいぞ」
 下りてきたレイードがそう言う。今回、ガトリングと、ハード・ディフェンダー、そしてプラズマリボルバーを駆使してだったが、演習ではそこまでの機動は必要なかったようだ。
「うーん、実戦では、協力してくれる方が必要ですわねぇ」
 新たな戦場を模索する南だった。

 次は2体目の竜牙だった。持ち主はミリハナク(gc4008)。我斬と比べて、ごくごくまっとうな強化と装備である。
「じゃ、次いくぞー」
 問題は、名前がどこぞのぬいぐるみっぽいのだが。それでも、超伝導DCがどこまで耐えられ、その衝撃はどのくらいパイロットに伝わるのかをテストする為、准将が発射した高性能ライフルを、必死で受け続けるミリ。
「ぎゃおちゃんがんばっ♪ 貴方の痛みは私の痛みよ」
 逃げ回らず、その攻撃力を受け止める彼女だったが、竜牙はダメージを通さなかった。衝撃だけは伝わってくるが、DCが作動しているおかげか、出来の悪いジェットコースターに乗って居るくらいの振動になっていた。
「この辺でいいかしら。次はこっちのテストね」
 DCの作動が止まると、彼女は壊れないうちに、次の行動へと移る。持ち時間はわずかだ。様子を見て居るであろう他の傭兵達の練力を奪うわけにも行かず、早速色々試している。
「一緒に踊りましょう。私のリードに従ってね」
 そう言って、操縦席に持ち込んだオルゴールを鳴らし始める。流れるのはクラシックなワルツ。よく、社交ダンスで流されているような、3拍子の音楽だ。
「美人のお誘いは嬉しいが、こっちは盆踊り専門でな。社交ダンスなんて洒落たモンは無理何だよ」
 が、その踊るようなステップとリズムに、准将は付いてくる気はなさそうだ。
「無粋な方ですわねぇ。じゃあ、お仕置きが必要かしらっ」
 そう言って、ミリハナクがターンを試みる。が、入力したはずの機動には答えてくれなかった。どうやら、入力をミスったらしい。彼女自身は、社交ダンスに分類される舞踏会等でのダンスは得意だが、それを機体に反映させるのには、まだまだ修行が必要なようだ。
「あんま傷つけられても困るんでなっ」
「ふむ、やはりスライサーは動きが大降りになるのかしら。なら、飛び道具ですわねっ」
 ざしゅざしゅと避けようとする箱に、武装テストを開始するミリ。竜牙推奨mp三種類の武器を、次々に接続する。
「恐竜が跳び道具は難しいぞっ」
 対空対誘導弾は、箱が地上を走っているだけに陸上のままでは当てられないようだ。だが、竜牙の本領は、地上形態にある。その1つ、G放電装置は、見た目にはどこにも見えない。きっと、隠された場所にあるのだろう。そう判断したレイードは、そろそろと海岸沿いへと移動していた。
「じゃ、そろそろ‥‥もう1つの売りを試すとしようかね」
 ステップエアを起動し、そのまま海上へと出る彼。箱とぎゃおちゃんは、遥か陸の上だ。ここからなら、射程も届くだろうと思う場所へ、機体を移動させ、水中へと沈めていた。
「そういえば、さっき壊したんだっけ」
 水中に潜る事で、敵の攻撃を回避しながら移動しようと考えていたのだが、水中に対応した箱は、オルカが壊して怒られていた。
「だが、回り込めば済む話だ。さて、最後にこいつも使っておくか!」
 気付かれていないならそれでも構わないので、レイードはそのまま海上の目標へと接近する。
「食らいなさい! コロナエスプロジオーネ!!」
 陸上では、竜牙の口に仕込んだ強化型G放電装置が発射されている。かぱりと口を開いた中から発射された黄色い電光が箱へとお見舞いされた。
 が。
 元々戦闘機形態でしか使えないものを、無理やり地上で使ったもんだから、まるで鼠花火のように、グルグルとその場で炸裂し、役に立っていなかったりする。
「あーあ‥‥」
 要するに自爆しちゃったそこへ、ステップエアAを起動させ、相手の背面へ走りこんだレイードが、ピアシングキャノンとバルカンをお見舞いしていた。
「沈黙、と。ミリとあわせてなかったら、避けれたんだがなぁ」
「有効な手段かは場合によりけりか‥‥」
 それでも、レイードの腕では、手負いの箱を沈黙させるのが精一杯だったらしい。何とか壊さずに済んだと、ほっと胸をなでおろす2人。
「でも口腔内に仕込むのは成功したわよ」
「実際は1匹づつ相手にするわけじゃねェから、セッティングは難しいと思うぜ。ったく、3台も鉄くずになっちまったじゃねぇか‥‥」
 予算がーと呻きながら、肩を落としている准将。
「こんなご時世だからなぁ。使える物は再利用したいって気持ちは良く分かるさ」
 気の毒そうに肩ぽむしているレイードの後ろで、芹佳のハーモニカが、妙に物悲しく響いたのだった。