タイトル:【AA】竜神水路の飛び石マスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/27 17:55

●オープニング本文


【AA】竜神水路の飛び石
 ジブラルタルの橋を無事? 攻略した傭兵達だったが、お怒りなのは殿とマンゴー頭だった。
「ぐぬぬぬぬ。おのれ能力者どもめー。こうなったら、水路の竜神システムを起動させるのだ!」
 殿が相変わらず頭から煙を出している。びしっと偵察カメラの前に指を突きつける彼に、マンゴー頭はちょっと困惑した顔をしている。
「しかし、アレは周辺の水路を毒水に変えるモンですが!?」
 よくわかる解説によると、水路にはバグアの異星な科学力でもって、そのエリアだけねっとりした毒の沼地っぽく帰られているそうだ。
「構うな。お前のその頭は防ぎようがないだろう」
「関係ないです!!」
 と言う本編ぶっ飛ばしたやり取りをしていた時だった。
「ねー。何か面白そうなことしてんじゃん、混ぜてよ」
 作りの荒い城の窓に、ひょっこりと顔を出すレン。
「わわわわ若っ!? いったいどこから」
 殿が慌てた。どう見てもお笑いミッションに、何故かゾディアックみずがめ座が面を出している。
「いやそれよりも、ゾディアックが何やってんですかっ」
「だって暇なんだもん。毒じゃ生ぬるいよー。もう一ひねりした方がいいって。絶対」
 どうやら、本体の作戦は自分の手を離れているので、面白そうなアトラクションを堪能しに来たらしい。少年の心が反応したと言ったところだろう。
「仕方ありませんなぁ」
「若の言う事ですから」
 とか言うやり取りがあったかどうかはさておき、再び指令は下されたのだった。

 それでは、今回のミッションを説明しよう!
「今回の作戦の目的は、背中に仕込んだエネルギーパックを、対岸まで運ぶ事である」
 中佐のナレーションと共に、エネルギーパックの外観が表示される。どうみても大きなお弁当にしか見えないが、それでもUPCのマークはしっかり入っている。
「このエネルギーパックは、水に濡れるとやばいシロモノなので、水中機で運搬と言うのは出来ない」
 まぁそれなりの防水処理はしてあるので、飛沫がかかる程度‥‥いわゆるお風呂用防水はしてあるが、湯船に沈めるのはNGと言う奴だ。
「水路の上を飛び越える事は可能だが、形状が形状なので、戦闘機形態で牽引をする事は出来ないらしい。よって、人型形態で背負って運べと言う指示だ」
 見本としてミクが背中にお弁当箱を背負っている。どうやらこのような形になって行けと言うことらしい。その行き先は、殿ご自慢の毒の水路だ。
「攻略ポイントはここだが、バグアの妨害が激しいと思われる」
 水路の画像が表示された。そこには、作業するヘルメットワーム数体がおり、ところどころ欠けた飛び石に、補修作業を施していた。それによると、水路には、概ね1ブロックにつき3〜4個のダミーが仕込まれているようだ。
「無人偵察機によると、このダミーはランダム性がある。おまけにこれには移動設備がついているそうだ」
 つまり、一人が移動するごとに変わる。先の人の分をおぼえて居る意味はない。
「また、このワームどもは、周囲に潜んでいる可能性が高い。毒の沼地は、我らには危害があるが、こいつらには耐性が付いているようだな」
 なので、飛び石の途中で止まると、キメラ達に水の中へ突き落とされてしまう可能性もあるそうだ。
「この水路の幅は、水路の幅は、計算の結果、KVは使えない。全力ダッシュはOKだが、AUKVのブーストは使用不可だそうだ」
 なので、AUKVの人型は可能だが、バイクモードは不可となる。
 己の気合いと根性で、毒の沼地を攻略するのだ! 健闘を祈る!

●参加者一覧

流 星之丞(ga1928
17歳・♂・GP
ミッシング・ゼロ(ga8342
20歳・♀・ER
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
紅月・焔(gb1386
27歳・♂・ER
ハミル・ジャウザール(gb4773
22歳・♂・HG
七市 一信(gb5015
26歳・♂・HD
月城 紗夜(gb6417
19歳・♀・HD
凍月・氷刃(gb8992
16歳・♀・GP
天小路 皐月(gc1161
18歳・♀・SF
姫川桜乃(gc1374
14歳・♀・DG

●リプレイ本文

 今回、2人1組となって、弁当‥‥いや、エネルギーパックを運ぶ手筈になった。その為、一行は監視カメラがうろうろしている水路際から少し離れた場所で待機し、順番に攻略する事になった。
「水無月、この水路、全力で渡れば、それほど時間は掛からんぞ」
 月城 紗夜(gb6417)は水路の間隔と長さを確認する。どうみても、長さじゃ130m以下だ。覚醒して、全てのパワーをつぎ込めば、10秒程度しかかからなそうな距離だ。水無月・氷刃(gb8992)の時は、20秒弱かかりそうな気配だが。
「ならば‥‥これくらいで!」
 全力疾走で最初の飛び石まで軽くジャンプする。幅跳びの要領で開脚しないと渡れない間隔だが、踏んだ感触が違うのは、すぐに分かった。そこで疾風脚を発動させ、落ちる前に次の飛び石へと飛び移ろうとする。現れたキメラには、やはり傭兵のバックアップが入っていた。ばしばしと岸側から、援護の弾丸がぶっ飛んできて、キメラを近付かせない。
「大事な隊員だ! 貴様らの餌食になんぞ、させてたまるか!」
 月城はそう言うと、ペイント弾をべしべしと発射していた。龍の翼を発動し、その速度を挙げ、飛び石に留まらないようにしている。おかげで、カメラが一個潰されてしまった。
「笑いを取るのは貴様等だろう、ハゲ。だいたい、妨害の仕方がつまらん、もっと体張れ!」
 カメラに向ってそう言うと、カチッと何かのスイッチが変わる音がした。刹那、竜神水路の飛び石の動きが変わる。水流が激しくなり、水面から見えない場所に、何か仕掛けが施されてしまったのは、明らかだった。
「一気に行かせて貰う、四の五のは無しだ」
 それでも、氷刃はそう言いながら、瞬天速を発動させた。次は疾風脚。しかし、いかに早くても、足場は変わらない。はずれを踏み抜いてしまう。
「くっ。だが、ただでは落ちん!」
 沈みかけたそれに、ペイント弾を撃ち込む氷刃。毒の沼に耐性を持つキメラが、その発射主に向って、糸を吐き出した。
「捕まれっ!」
 月城が手を伸ばす。が、そのせいで、自身が足を踏み外してしまう。だが、月城は構わずエネルギーパックを放り投げると、龍の鱗を発動させ、氷刃を受け止めていた。
「すまない、後で埋め合わせをさせてくれ」
 がしっとなぜか笑顔でピースサインまでしている月城を足場にして、隣の飛び石へと渡る。が、そこへキメラが水鉄砲を発射する。ばしゅーっと顔面に食らって、岸にたどり着く直前で落とされてしまう氷刃。
「く‥‥お笑いには厳しいつもりだったが、自分がとなると、難しいものだな」
 ようやく上がってきた月城が、不満そうに言うのだった。

 次は、姫川桜乃(gc1374)と、パンダこと七市 一信(gb5015)の番だった。もっとも、腰からはランタンを下げ、首から呼笛を下げている姫川の水着は、ひもビキニ上下にしか見えない。パンダは例によってパンダだ。
「とにかく、落ちないように行かないとね! じゃあパンダさんいくよー」
 ひょいっと、身軽な仕草で、姫川がパンダの着ぐるみによじ登っていた。その様子に、紅月がむぐううとガン見していた。
「くそう、なんてうらやましい奴だ! ミニスカで肩車だなんて!」
「そう? まぁでも、ちょっと足の辺りがくすぐったいかな?」
 もっとも、姫川は全く気にした風情はなさそうだ。しかも、パンダの興味は、どちらかと言うと、川面を行き来する監視カメラに向けられている。
「川を毒にして、なおかつこれ見よがしに渡れる石を用意して、さらにカメラまで用意するなんてなんて面白‥‥げふんげふん、流石バグア汚い汚いバグア」
 よく見れば、合金軍手をはめて、直接触れないようにしている。
「振り落とされないようにしないと。えぇい!」
 姫川がスコーピオンでキメラに攻撃している。上でばしばしと銃弾の発射音が響くが、AUKVはその騒音をきちんとカットしてくれた。そして、AUKVの機動性を使って、思いっきり飛び石へとジャンプする。
「てぇい! あ」
 が、見事なまでに‥‥ハズレ。大きく足元を濡らしたが、完全に水没してはいない。
「くう、この子を濡らすわけには‥‥ふんぬらば!!」
 パンダ、落ちる前に姫川をむんずと掴んで、力を込める。
「ひやぁぁぁぁ!」
 今度は姫川が空に舞う番だった。が、彼女もただ投げられるわけではない。
「届け!2段ジャ‥‥ちょっと!それスカート!!きゃーっ!」
 持ち込んでいた背中の2段ロケットに点火‥‥しようとしたが、残念ながらスカートにそんな機能はなかった! ぴゅううっ飛んでった彼女が振り返ると。
「‥‥ってこんなとこで死んでたまるかあああああ」
 大絶叫と共に、その飛び石をビート板の用に抱え込んだパンダが、盛大に足を動かしている真っ最中だった。おかげで、ダミーだった岩も、ただの浮きにしかなっていない。
「セーフ、俺セーフ!?」
 ほっと胸をなでおろしたのもつかの間、つるっと滑って水の中。しかも、姫川さん、そんなパンダを足蹴にして、次の岩に進んでいた。ところが、その先にあるはずのブロックが、ない。
「!?!?!?」
 ばしゃあああんっと盛大な水柱が立ち上る。しゅうしゅうと音を立てるそれは、糸を溶かす類のものらしく、姫川ちゃん、あっという間に脱げていた。
「残念だったわね! 下は水着なのよ!‥‥えっ!?」
 監視カメラに指をさしながら、ふんぞり返る姫川だが、水着も繊維。胸をそらした瞬間に、水着のひもがほどけてしまう。そんな姫川のせくしぃショットを見て、感涙に咽ぶ紅月。
「ジーザス‥‥なんてこった!毒沼がオアシスに見えてきたぜ! 俺‥‥この依頼来てよかった!! ヒャッハー!」
 悲鳴が小さく上がり、監視カメラと紅月・焔(gb1386)に、スコーピオンが乱射されていた。
「後は任せたぜ‥‥ででんでんででん」
 ついでにパンダまで巻き添え食らってるが、親指立ててぐっどらっくのポーズしている。走馬灯見なかっただけマシだと思おう。

 3組目。ヒューイ・焔(ga8434)と焔。
「紅月・焔! 毒沼に舞い降りし煩悩の使者! 俺‥‥参上!!」
 ガスマスクを被り、サムライのコスプレに身を包んだ変な男が参上している。煩悩を極めた、通称『変態の方の焔』だ。
「変わった水中眼鏡だな。よし、ビート板は持ったか?」
「おう、ばっちりだ!」
 しかも、もう片方の焔さんとは顔見知りらしい。顔色1つ返ることなく、大きなビート版を2枚づつ抱えている。
「んじゃあいくぞ。安全な場所は、既にペイント弾が撃たれているはずだ! ひゃーはははは!!」
 今回も、やたらとテンションが高い。ビート板を両脇に抱え、飛び石に向って全力疾走開始。相変わらず寝ていないようで、奇妙な笑い声を上げた直後、ずもっと足元が沈みかけた。ペイント弾をかじった跡があるから、きっとこれがダミーだろう。そう判断した焔は、持っていたビート板を池に向って投げつける。
「はっはー! 興味をもった相手には近付く。時にそれが寂しい結果を招くこともあるでしょう、しかし次の出会いがいつまた来るかもしれません!」
 どこの占いから引用してきたのか分からないが、ダッシュで発進したその勢いで、ビート板を踏みつける。しかしその直後、ビート板は毒の沼地効果で、あっという間に浮力を失ってしまった。
「俺はこう思ってる、旅は素晴らしいものだと! 新しい体験が人生の経験になり得難い知識へと昇華する!」
 ならばと、マンゴー頭が投入してきたのは、立派な体格を持つ人型キメラさんだった。が、焔は全力ダッシュで対岸へ。そこへ立ちはだかったのは、もう一人の焔こと紅月だ。
「ふ‥‥俺にはちゃんと対バグア用の武器がある‥‥リーサルウェポンがな!」
 そう言って、サムライのコスプレに、手をかける。その下には、セーラー服と言うある意味ではリーサルウェポンなお洋服が転がっていた。
「くくく‥‥俺が落ちたら‥‥見えるぜぇ? 中のサンクチュアリが」
 そう言って、銃で妨害キメラを撃ち落としながら、飛び石へと足をかける。だが、特に策を講じていない紅月に、キメラが盛大に白い糸を吐き出した。‥‥焔に。
「だから俺は旅が大好きだ! 聞いてますかみのりさん、みのりさァァァ〜〜ん! ‥‥あ」
 ばしゃあああんっと水の中に落っこちる焔。その白い糸は、紅月にも襲いかかる。
「やだなぁ‥‥冗談ですって‥‥ちょ! 暴力は何も生み出さない! ‥‥いやぁぁぁ!!」
 水柱二本目が上がった。それでも、最期までガスマスクは外さない、焔なのでした。

 4組目。新人アイドルのミッシング・ゼロ(ga8342)ちゃん。
「むむむのむっ! 何かわからないけど、ボクがんばるっ!」
 ぐぐぐっとちっちゃくガッツポーズするゼロ。が、きょろきょろと周囲を見回し、同行者を募る事にする。
「でも、誰かと一緒だったらいいなーいいなー。1人だと怖いもんっ!」
 と、その刹那だった。がさりと岸辺の木の上に、お守りの傘を背負い、トレードマークの黄色いマフラーをなびかせながら、颯爽と登場する赤い影。
「そう言うことなら、任せてもらいましょうっ」
 おめめを輝かせる彼女に、黄色いマフラーのお兄さんこと流 星之丞(ga1928)‥‥通称ジョーは、きっと顔を上げて、カメラを見据えていた。
「どんな難関が用意されようとも、僕の勇気は挫けません‥‥そのまんまな指揮官や、世界の殿を打倒し、あのバグア城を、いつか必ず陥落させる為にも!」
「やったぁ。お兄さんと一緒なら、頑張れる気がするっ」
 同行者が増えた事に素直に喜ぶゼロちゃん。が、ジョーはマンゴー頭がいない事をきにかけているようだ。
「この間の指揮官がいませんね‥‥支配地域に何かトラブルがあって、対応に追われているんでしょうか?なんにしても、今がチャンスです」
「んしょっと。水に入っちゃうから、準備運動大事だよ! バグアさんはちょっと待ってね!」
 そう言って、ゼロがどこから調達してきたのか、音楽に乗ってやり始めたのは、よくプール前にやる準備体操だ。しかもなぜか、ジョーまで一緒に体操している。とても笑顔が爽やかだ。
「この勇気の印であるマフラーが水面に付かないよう、素早く駆け抜けるだけです!」
 ふぁさぁっと黄色いマフラーが風になびいて行る。そうして、準備を整えたジョーとゼロは、じぃぃぃっと足場になる所を見比べていた。
「えいっ!」
 目を瞑って、えいっと両足でジャンプする。が、濡れた石の上では、バランスを取りづらいらしく、ふらふらふらふら、実に頼りない。泣きそうになって、何とかバランスを取っていると、後ろからジョーが支えてくれた。
「石の見分け方は‥‥大丈夫、小隊の仲間達の声が僕を導いてくれます!」
 ぶっちゃけ、ただの勘である。
「わ、わかったっ。んと、お友達の事考えればいいんだねっ」
 しかし、ゼロは疑いもせず、言われた通りにお友達の顔を思い浮かべて見た。そして、そのお友達がOKって言ってくれそうな石の方向へと、足を踏み出す。
「進むべき石に仲間達の姿が‥‥みんな、僕を導いてくださいっ!」
 そう宣言すると、ジョーは次の石に向って、思いっきりジャンプする。が、同じ様に飛び出したゼロ、脚を揃えたまま横に倒れていき、ぼちゃあんと池の中に突っ込んでいた。
「きゃぁ〜んっ♪べとべとするー」
 ぬるぬるするその液体から逃れるように、上着を脱ぎ捨てるゼロ。
「‥‥こんな所で、落ちるわけにはいきません!」
 かちっと奥歯をかみ締める音がした。即座に強力発現で、近くの岩を掴むジョー。ぼきっと根元から折れる音がして、予定外の浮石になってしまう。そのままでは、落ちてしまうと判断したジョー、とっさに背中の傘を使い、抜き放ち、紅蓮衝撃をかけて水面をぶっ叩いていた。その反動で、ジョーの体が大きく浮き上がる。
『飛んだ!?』
 しかも、飛沫も傘なので安心だ!
「すごぉいっ! ボクももう1回チャレンジだっ」
 その姿を見て、両腕で胸を隠していたゼロちゃん、たたっと裸に近い状態のまま、スタート時点へと戻る。これでも真剣だ。とっても真剣なのだ!
「倒れていった皆さんの為にも、水路の向こう岸でおいでおいでしてるおばぁちゃんの為にも、絶対諦めません!」
 かちりと奥歯をかみ締めるジョー。それは見ちゃいけないような水路の気がするが、彼は気付いてもいないのだった。

 5組目のハミル・ジャウザール(gb4773)は、エネルギーパックを手に、きょとんとしていた。今までのパターンを見ると、不安な感じはぬぐえない。
「大丈夫です。全滅だけはさせませんから」
 安心させる用にそう答える天小路 皐月(gc1161)。真面目にやった結果、人には笑いを誘う行動になってしまうのは、どうにも回避出来ないが。
「これで、対策はばっちりでしょうか」
「こっちも一応すみました。では、行ってください」
 ひと通り準備を済ませるハミル。上下セットのレインスーツに、おされな長靴。薄手の手袋。皐月のほうは、一件普通の装備だが、その下には水着を着用済みだ。
「ダミーさえ避けられらば‥‥。援護します」
 渡った組が盛大に攻撃した結果、疑わしいと思しき石は、かじられてボロボロになっているはず。撃ってみればわかる事だ。そう判断した皐月、援護をするようにエネルギーガンを撃つ。その刹那、何かに引火したのか、盛大に爆発音が鳴り響いた。
「皐月には、ちょっとハードルが高いかもです」
 無理をしない程度に、飛び石に足を踏み入れる皐月。ちょっと水に濡れるのも気にして、それでも少し早足気味に歩いている。その間に、ハミルは迅雷を使って先行していた。彼の姿に、皐月は沈む石を見抜こうと、良く監察する。
「そこの右側は怪しいです」
 見れば、ほんのわずか、ゆらゆらと動いていた。そこに、長虫型のキメラが泳いでいる姿が見える。中尉を受けた直後、沈み欠けた足を引き抜きつつ、疾風を使う。能力者の行動力を信じての技だったが、さすがに相手も能力者のスキルを前提に考えているようで、その浮石がキメラによって動かされてしまう。
「ああもう。邪魔です!」
 動きの早くなったハミルが、クロックギアソードを振り回す。しかし、そこへ皐月はこう注意を促していた。
「キメラはこっちで何とかしますから、先を急いでください!」
「わかりました! 弾かれるかもしれないですけど!」
 FFがあるせいで、キック程度ではダメージを与えられない事は分かっている。それでも、ハミルは足元のキメラを踏みつけていた。
「それでも、普通に飛ぶよりはましです」
 皐月も、監視カメラを踏みつけて、足場にしてしまう。気を取られると失敗しそうなので、容赦はなかった。
 結果、案外あっさりと渡ってしまい、監視カメラ達は興が削がれのか、どこかへ撤収してしまうのだった。