タイトル:【AA】風雲ジブラルタルマスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 10 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/17 00:54

●オープニング本文


●風雲立ち上る城
 大規模作戦は、その名の通り、千人単位の兵が集まる大掛かりな作戦だ。
 だが、それと同時に数多の兵がお星様になる運命を持つ。それは、敵‥‥すなわちバグアにも拠点を築き、策を練る将が居るからだ。
 今回、ミカエル橋の橋梁には、敵から奪ってきた物資が使われ、大掛かりな工事が行われている。しかし、北アフリカに配置されたバグア達が、そんな事を指をくわえて見ているわけではなかった。
 その1つ、岬に設置された見張り台を兼ねた城。まちがいなくアフリカの海岸にあるはずなのだが、どういうわけか瓦葺の白い壁を持つ3階建ての高い建物だ。その一番上‥‥いわゆる天守閣にあたる部分では、2人の男がふんぞり返って眼下を見下ろしていた。
「殿! 今度はいよいよ、この緑の丘を動かす時が来ましたぞ!」
 何故か頭頂部がかわいそうな事になっている部下らしき片方が、バグアからの通達を伝えている。
「うむ。下等な民達をこき使って作り上げたこの城が、役に立つ時が来た様だな!」
 いや、殿がおわしますそこは、どう見ても海峡を通行するユニット船を見張り、撃沈させる為の施設なわけだが、世の中には勘違い男と言うのは、量産されているらしい。
「ただいま傭兵達のルートには、ジブラルタルの橋、竜神の池、そして我が城に至るルートには悪魔の館を配置し、万全の体制を整えておりまする!」
「ぬるいな。配下のストロンガー金剛石だけでは頼りない。お前も行って対応して来い!」
 どこかで聞いたような配備状況なのは、気にしないのが身のためだ。

●精鋭に告ぐ
 UPC本部。各支部とも専用回線でリンクし、傭兵ならばその作戦をいつでも確認出来るモニター達の群。
 その群に、CGで簡単に記されたのは、今回大規模な作戦の行われているアフリカ大陸北岸の地図。場所はジブラルタルを望む人類側地域だ。
『良くぞ集まった諸君。では、今回のミッションを説明しよう』
 そのグリーンモニターに、ノイズ交じりの画像が映し出される。今はUKにて作戦に従事しているミハイル・ツォイコフだ。今回の大規模作戦では、中核的位置にいる御仁である。この指示も、その仕事の一端なのだろう。
『ジブラルタルには、ミカエル橋と言う橋梁を建設する事が決定されている。その概要は別資料を参考して貰うとして、ミカエル橋の建設には、多数のエネルギーがいる。今回、君たちに頼むのはその輸送任務だ』
 モニターに黄金色に塗り分けられた、バレーボールのようなものが浮かび上がる。数は依頼に参加する面々と同じだけ揃えられているようだ。
『このエネルギーはボール型の衝撃吸収材に包まれているが、色々あってこのような方式で運ぶのが望ましいとされている』
 UPCの規定やら作戦の都合で、エネルギーボールは砲台によく似た発射台で遠方から放たれ、それをKVで受け止めてから、橋を渡らなければならないらしい。何でおててで運ばなきゃいけないとか、そう言う疑問は『極秘』と言うヴェールに包まれ、傭兵達にはいっさい知らされないようだ。
『そこで、諸君達にはこのエネルギーボールを持って、作戦に望んで欲しい』
 比較対照として出てきたのは、ディスタンだった。大きさとしては、小脇に抱えられる程度なので、無理をすれば片手で持てるレベルの兵器を使えないわけではない。AUKVのバイク形態で乗せるのは、形状が球形とかなり不安定な上、大きさも少し大きすぎるので無理だろう。
『輸送を行うのは、この橋だ』
 モニターに次々と現地の画像が浮かび上がる。舞台となるのは、ミカエル橋のエネルギー集積所に向うルートにある橋である。地元の住民が使うような、車もぎりぎりと言った様子の頼りない吊橋である。なので、KVであまり乱暴に駆け抜けると壊れそうだった。かと言って、周囲は森の木々に覆われており、KVが着陸できそうなスペースがない。よって、飛行形態で輸送するのは不可能だろう。要するに、エネルギーボールを手で持ってそっと運ばなければならないと言うことだ。
『だが、この橋の周囲に、タートルワームが5機程確認されている。この先にあるミカエル橋に向う部隊のようだ』
 さすがに、バグアも増援を出そうとしているのか、海岸線沿いにこちらへ向っている模様。入り組んだ地形には、もっと他にいるかもしれないが、画像には映っていない。
『このタートルワームは、背中の砲台に黒い大きな球形のエネルギーボールが仕込まれている事が分かっている。実弾と非実弾の両方があるようだが、会敵しないとわからない。ただ、指揮官と思しきタロスが一体居るので、油断は出来ないだろう』
 無人機と思しき画像が映し出される。タートルワームは、砲台と体躯が若干装甲過多な所以外は、それほど既存のタートルと大差はないようだ。だが、その先頭にいるタロスは、どういうわけか、頭のはげた和服男性のような姿をしており、羽織のようなコートの外装をしているようだ。何故かエンブレムにマンゴーのマークがついている。
『このタートルワーム部隊を相手する際の、周囲への影響だが、周囲に町はないようだ』
 が、小さな村までは確認していない。公式発表では、避難は完了しているとの事だが、自身の目で確認しているわけではない。周囲への銃撃は控えるべきだろう。解放すれば戻ってくる事を考えれば、余り占拠して銃撃にさらすのは歓迎出来ない。
『エネルギーボールを狙っているらしく、橋を渡ろうとすると砲撃を食らう。タートルワームを倒す事は優先任務ではないので、エネルギーボールを速やかに運んで欲しい。健闘を祈る!』
 なお、本人は任務で現地を離れる事が出来ない為、現地での質疑応答はキャスター准将が行うらしい。
「って事で、ゴールデンボールもって吊橋わたるぉ☆」
 そう言ってモニターにリピートの処理をかけるミク。だが、女の子がそんな事を言ってはイケニャイ。

●参加者一覧

流 星之丞(ga1928
17歳・♂・GP
阿野次 のもじ(ga5480
16歳・♀・PN
ミッシング・ゼロ(ga8342
20歳・♀・ER
ヒューイ・焔(ga8434
28歳・♂・AA
鹿島 綾(gb4549
22歳・♀・AA
七市 一信(gb5015
26歳・♂・HD
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
色素 薄芽(gc0459
20歳・♀・SF
天小路 皐月(gc1161
18歳・♀・SF
シクル・ハーツ(gc1986
19歳・♀・PN

●リプレイ本文

 一行は役割と大まかな作戦を決めると、早速準備に入っていた。そこへ、地殻変動装置を片手に低空飛行していた夢守 ルキア(gb9436)が戻ってくる。
「村が、水路の下流にあったよ。時々人間狩りがあるみたいだけど、概ね今回の作戦領域とは離れているよ」
 どうやら、時々キメラがやってきて、まるで奴隷狩りのように、労働力として捕獲されているらしい。
「じゃあ、ドンパチやっても構わないですね。って、もうきちゃいましたよー」
 多少流れ弾があっても大丈夫かな、と思う天小路 皐月(gc1161)。その刹那、タロスがタートルワームに乗って、現場作戦エリアへとやってきてしまっていた。
「多少、順番が前後するようですね。陽動部隊に回った皆さんは、付いてきてください!」
 どうやら援護に回っている時間はないようだ。そう判断した皐月は、陽動の面々を引き連れて、そのタートルワーム達の妨害へと向う事になる。
「よくわからないけど、えいっ! これでできてる?」
 ミッシング・ゼロ(ga8342)がそう言いながら、ロックオンキャンセラーをオンにする。不安そうに尋ねてくる彼女に、皐月が安心させる様に言った。
「出来てますよ。大丈夫。そのまま撃ち続けてください!」
 が、カメもタロスも存外早い。あっという間に端に横付けにして、定位置につく。
「なんだあのタロス‥‥昔記録映像で見た、そのまんまじゃないか!」
 その様子に、流 星之丞(ga1928)が驚いていた。見た目と中身の一致したタロスさん、その記録映像そのまんまの位置で、砲台の銃口とデコ部分をきらんと輝かしている。そのデコタロスに、焔はびしっとKVの指先を突きつけて宣言する。
「やいそこのパゲ。今すぐそっちいってぶった切っちゃるから覚悟するにゃ」
 一同の目が点になった。ヒューイ・焔(ga8434)さん、何か色々あって寝てないテンションらしい。そこへ、准将がぶっ飛ばしてきたらしいGBがお空の上から降ってきた。
「人とは違うんだよ人とは!」
 機盾レグルスで受け止め、アクティブアーマーでがっちりとGBホールドした鹿島 綾(gb4549)、橋の入り口付近でもって、盛大に揺らして見る。あまり後続の迷惑にならないようにしてはいるのだが、目立つ手段ではなかったようだ。
「このゴールデンボールはボクのモノなんだからっ!」
 その証拠に、マンゴー頭が黒亀部隊に狙わせたのは、GBを大事に抱えていたゼロだ。
「甘いわぁっ! えぇいっ」
「きゃーーー」
 悲鳴を上げつつも、何とか落ちないようにしている彼女。揺れる橋の上で、踏ん張っている綾。ゆらゆらと動く橋は、バグアの嗜虐心を中々にそそった様で、タロスは集中的に2人を狙わせている。
 ところが、そんなタロスの視界内を覆う、黒い煙。何にも見えなくなる中、焔がずずいっと忍び寄っていた。
「たぁ〜ろぉ〜すぅ〜たぁ〜ん‥‥あっそっびっましょッ‥‥ぐへへ」
「おわぁぁっ! いきなり出てくるの禁止っ。心臓に悪い!」
 バグアに心臓があるのかどうかは定かではないが、げしりと突き飛ばされて、ゼロちゃんはアウトになってしまう。満足げにふんぞり返るマンゴー頭だが、ゼロはめげなかった。
「落としちゃったから、皆さんの応援に頑張りますっ」
 そう言って、応援と言う名の援護陽動に向かう。べしべしとロックオンキャンセラーで、悪魔の玉が明後日の方向にそれて行く中、次々とGBがぶっ飛ばされ、運搬作業に取り掛かる事になる。最初の一番やりは七市 一信(gb5015)のようだ。
「この吊橋なんぞ軽くクリアしてみせるよ‥‥時代はすでに、SAS○KEなのだよ!」
 と、パンダはじゃきっと持ってきた金曜日の悪夢と言う名のチェーンソーを突きつけて宣戦布告。しかし、お気には召さないらしいので、マンゴー頭さんは容赦なく亀を発射。
「うおっ。まだだ、まだだよ、まだ遠い‥‥」
 橋の上でGBをキャッチしたパンダ。打ち込んできたブラックボールことBBに対し、いきなりフレア弾をお見舞いする。盛大に爆音が鳴り響く中、パンダは勢い良く橋を蹴り飛ばした。。
「いまじゃ! アーイキャーンフラーーーイ!!!」
 パンダ、空を飛ぶ。が、空に舞い上がったそこへ、BBがぶち当てられていた。
「ぎゃん!・・ふふふ、空中で弾を当てるとは‥‥だが、俺は貴様の弾ではしなん! サラダバギュラ」
 謎の一言を残しつつ、谷底へと落ちて行くパンダさん。盛大に水の音がして、アウト。
「フフフ‥‥。あの砲撃ごときで沈むとは‥‥伊達にパンダをやっては射ないと言うことか。だが、パンダの仇は必ず取ってみせる!」
 次にわたるはずのシクルが、煙幕を張りながら、そう決意の表情を浮かべている。何を思ったか、彼女が持ってきたのは黄色いハンマーだ。こっそり持ってきた買ったらしいが、その色はとても目立つ。
「作戦会議しているときは、そんなに壊れてなかったじゃないか! 誰のせいだ!?」
「おまいだ、そこのパンダ!」
 よじ登ってきたパンダが、自分の事は棚上げで周囲を見回していると、シクルさんがぴこハンで、思いっきり後頭部をドツいている。
「まったく。身軽になった方が良いと言うから」
 ぶつぶつと言いながら、兵装を外すシクル(gc1986)。煙幕はもう充分に出回っており、敵も見方も見えそうにない状態なので、一端解除しても大丈夫なようだ。しかし、亀は目隠しを切り裂くように、BBを投げつけてきた。
「ふん、そんな囮には引っかからんっ」
 ちなみに記録画像では、まだ婚約中の段階だったそうな。まぁそんな話はともかく、がしがしとボールが飛んできたのを、何とか回避しようとするシクルさん。が、橋はぐらぐらと安定せず、安全に回避出来そうにない。安全にエネルギーボールを運ぼうとすると、どうしても玉を受ける事になってしまう。
「えぇい、しつこいなぁっ。落ちろぉっ」
「こっちです。タートルワーム!」
 その間に、皐月が横合いからタートルワームに攻撃していた。気をそらすように挑発をして、レーザーバルカンで狙ってみる。こっちに注意を向けさせるには充分だ。
「邪魔な奴め。えぇい、アイツをなんとかしろ!」
 その証拠に、マンゴー頭が亀の一部を皐月達に向わせる。その直後、第二波のGBがぶっ飛んできた。
「金曜日の悪夢は持っていませんが、魔よけの傘と消火器は持ちました。この橋、必ず越えて見せます!」
 愛機に巻いた黄色いマフラーをたなびかせつつ、橋の上でGBを受け止めるジョー。
「この希望の玉は、絶対に離しません」
 そうは言うが、いかにピンバイスで肉抜きした機体とは言え、足元は不安定である。最初は慎重に動くジョー。しかし、のんびり運行は、やはり的になるようで、BBがぶっ飛んできた。
「わぁぁっ。すみません、もう一度、射出をお願いします。ここで受け止めます」
 衝撃でGBを落としてしまうジョー。が、連絡したところ、准将から発射された二個目のGBがぶっ飛んできた。
「2個目だと? ならばこうだ!」
 集中的に狙われるジョー。四方八方からBBがぶっ飛んでくる。げしげしと全身を打ち付けられる中、ジョーは一言呟いて、かちりと何かのスイッチを入れた。
「僕は絶対に諦めません‥‥」
 スカイスクレイパーの『目』に光が灯る。足元のタイヤが唸りを上げ、吊橋の上でぶしゅうっと煙を昇らせた。
『ブースト作動、エンジン臨界までカウントスタート』
 機会音声と共にデジタルカウンターが回る。回避オプションがブーストされ、スピードが格段に進化していた。。が、そうはさせじとBBが追いすがる。そこにいたのは、完徹明けの焔。
「いった〜い!! 何するのにゃ!!」
 フットワークで回避すると落ちるので、何とか上体を反らした焔。しかしいくつものBBはそれでは追いつかない。
「こうなったら‥‥。撃ち返すのニャ!」
 焔のアームがぐいんと伸びた。そこに、BBがすっぽりと収まる。それを、焔は勢いを利用して嘆かしていた。その後を、ゼロたんが進む。
「負けないんだからっ! むぅぅ〜‥‥わんっ! わんわんっ!」
 下を見ていない彼女。理由は怖いから。足元不注意で吼える彼女をカバーするように、射線をふさぐのは綾。
「ほらほら、そんな弾程度じゃ落ちないよ?」
 レグルスとアクティブアーマーがGBを運ぶ。やたらぶっ飛んでくるBBを相手にして居るタロスに、焔がおいついた。
「やっと辿り着いたにゃ‥‥ぐへへ‥‥それじゃ、い〜っつしょ〜た〜いむッ★にゃ」
「ってこらーー、発射台の人に直接攻撃を仕掛けちゃダメですっ」
 しかしマンゴー頭、相手をする気がないのか、タートルを残してとっとと後退してしまう。残りのタートルが複数居る事に、戸惑うゼロ。
「どれ?どれを撃ったらいいの? きゃあっ」
「バランスが命だよなぁ、これって」
 揺れる橋の上で、ブースターを使い、バランスを調整する綾。ゆらゆらと動く中、一台のKVが存在を主張するように、おててを振り上げる。
「すみません、ボールくださいー」
 色素 薄芽(gc0459)である。KVに乗っていても発揮されている脅威の存在感のなさでもって、ここまで渡ってきたらしい。
「あれ? 今誰かいたか?」
「こ、ここですよーう。ここにいますよう」
 覚醒しているので、若干存在感が上がっている。ので、おててを振るとちゃんとGBがぶっ飛んできた。そこへ、数々の修羅場を繰り広げていたマンゴー頭が、ぼこぼこになりつつも、めげずに黒ボール発射中。
「いやぁ、面白いように落ちてゆくな。このブラック亀キャノンがある限り、この橋は渡らせないですぞ!」
 面白い用にではない気がするが、きっと気のせいだ。と、マンゴー頭は再び陽動班とのバトルに参加。ふんぞり返って居る間に、薄芽さんはちょっとしょんぼりしながら、すたすたと橋を渡っていくのでした。
「ん? 今何か通ったか? まぁいい。くっくっく、そして性懲りもなくまたきやがったな! さぁ、黒亀キャノン! 奴らを地獄の底に叩き落すのだ!」
 本来なら、存在感とか関係ない亀さん達がお相手する所なのだろうが、そうは問屋が大根おろし。薄芽を追い越すように、一陣の風が駆け抜ける。
「ふははは、そうはいくか! ノモディただいま参上!」
 乱入するにゅうちゃれんじゃーは阿野次 のもじ(ga5480)だ。彼女はそのまま、ぶっ飛んできたGBをバレーボールの要領でトスし、天高くおててを掲げてキャッチする。
「ポーズ! 掴もうぜ♪ GRボール!」
 でこきゅぴーーーんっと四方八方へ透過光が飛び散った。いわゆる光魔法に見せかけたシュテルンの着地システムだ。その効果は、伯爵が思わず美しいと呟いてしまうシロモノである。主に赤マントのおかげで。
「そしてこれが、ノモディ48の必殺技の一つ、GOD★FUROSIKI!」
 でもって、その赤マントを翻し、まるで泥棒さんがそそくさと盗品を持ち去るがごとき包み方をして、GBを確保してしまう。
「あーーー。卑怯だーーー。このっこのこのっ」
 背負った状態は安定感抜群で、とてもチートな感じもするが、せっかくの赤マントがかっこよさ台無しになっちゃってるので、せっかく付いたかっこよさに、状況修正が付いてしまった。
「言っておく。GODティン拳は無敵だ」
 両手の開いたノモディ、拳銃を供えた両手で、無敵のガードを誇る。まるでかにさんのように横移動しながら、マンゴー頭に力強くそう宣言していた。てぃりてぃと自重全開なBGMがどこからか流れている。ほわたぁっと奇妙な掛け声したノモディは、ガトリングナックルのスイッチを入れると、音声認識マイクにこう叫ぶ。
「 必 殺 ! G O D 龍 破 虎 咆 ! !」
 どごぉぉぉんっとマンゴー頭の自重部分に命中。やられ役の悲鳴を上げて後退するタロスに、ノモディこう言った。
「お前のタマはもうティンでいる」
「タロスにタマがあるかぁぁぁっ! 自重しろ自重!」
 もっとも、そんなお笑い無敵能力を、そう簡単に通すと、殿にどやされるではすまないので、ノモディはあっさり谷底に落とされていた。垂直離着陸能力があるので、夢オチで済まされるが、時間が掛かりそうなので、ジョーがその間にスカスクを駆け抜けさせる。
「はっ、卑怯だぞお前!」
「褒め言葉をどうもありがとう。だが、落ちたら洒落にならないし、使わせて貰うよっ」
 続くルキアが、笑顔を浮かべながら、GBを受け取りつつ、ヘルヘブンを二輪体形へと変形させブーストを稼動させる。落ちる前に飛行形態になりたいが、周囲は森だらけで、気流が安定せず、難しいようだ。
「急所狙ってみまーす!」
 低空飛行が使えないので、仕方なく回避を多用するハメになる。ちょこまかと避けようとするルキアに、マンゴー頭が湯気出しているが、逆にショルダーキャノンで下半身を狙っていた。
「正面から戦うような相手じゃないのはわかってる。聞けない相談だよ」
 見て、理解して、撃つ。多少近付いてでも確実に当てたいルキアだったが、タロスと橋には距離があり、中々上手く行かない。かと言って、後ろに下がっては巻き込まれてしまう。
「えぇい、これでも食らえー!」
 容赦なくBBをぶっ飛ばしてくるマンゴー頭の一撃を、ルキアはブーストを多用し、着弾する黒ボールから右往左往にハンドルを切りまくる。
「この強力なネタ―――絶対撃墜されても霞む!」
 だから沈むわけには行かない。例え、ぶっ飛んでった黒ボールが、周囲の森を焦がしていても、この際尊い犠牲と割り切らなければならないようだ。その効果で、周囲にどすどすと盛大な煙幕が立ち上っていた。
「って、こっちはまだ渡ってるんですってば!」
「‥‥ぁ、後の事は頼んだの‥‥にゃ」
 視界がそこかしこで悪くなった中で、巻き込まれた焔と皐月が、そう言いながら落ちて行ったのに気付くものは少ないのだった。
 この結果、ジョーとルキア、存在感ゼロの薄芽の3名がクリアとなった。満面の笑顔でぶぃっとサインしてみせるゼロ。
「待っていろバグア、今僕達がそこへ行きます!」
 水路の方へ引き上げて行くマンゴー頭を、決意も新たに見送るジョー。その視線の先は、高くそそり立つ天守閣っぽい所に向けられていた。
「UPCを応援してくれる。全ての人々にありがとう」
 のもじがそんなジョーをシングルピンに修めながら、ナレーションをつけている。それ以外の部分は、皆が盛大に放出した煙幕効果で、全く映っていなかったりするのだが。
「何だったのだろう‥‥。結局『ティン』の意味もわからなかった‥‥が、まぁいいか‥‥」
 よくわからないと言った表情で、そう呟くシクル。ある意味吹っ切れたと言うよりは、開き直ったのかもしれない。