●リプレイ本文
マリンブルーのコントラストは、かつてならば、南海の楽園と言われていただろう。
「今後のことも考えると、島の完全占領阻止だけじゃなくて、バグアをきっちり追い出さないとね」
空に広がるヘルメットワームの姿に、そう呟いているアーク・ウイング(
gb4432)。周囲には、キューブワームがきらきらと展開し、それが敵でなければ、どこかのオブジェと言った感がするだろう。
「まったく、初めての沖縄がKVでドンパチするためとは思いもしなかったよっ」
覚醒しながらそうぼやく夕風悠(
ga3948)。その海には今やイトマキエイではなくマンタワームが泳ぐ。
「主よ、皆が無事家路に着けるようにお守りください」
敬虔な信徒らしき三枝 雄二(
ga9107)は、小隊の無事。そして今この戦場にいる面々の無事を祈っている。そこまで話したところ、接近する機体に気付いたのだろう。展開するCWを守るように、HWがこっちへ向ってきた。しかし、空には彼ら6人だけで、他の機体はまだ見えない。
「悠季達とは別れちゃうけど、仕方がないか‥‥」
地上に親友を残してきた澄野・絣(
gb3855)が、そう言ってため息をつく。そんな事を言うと、死亡フラグだのと怒られそうな気がするが、役目が違うのだから仕方がない。
「ドラゴン1、敵ECMメーカーをつぶす、2、ついてこい」
既に、ヘルメットワームが視認されている距離だ。本星型に見えるそれは、確かに正規軍には荷が重いのかもしれない。そう考えつつ、伊藤 毅(
ga2610)は後輩の雄二に合図を送る。ぶしゅーっと二機のフェニックスが、その軌跡を空に浮かべた。趣味性抜群と揶揄される機体だったが、大人数を相手にするにはちょうど良い。そのすぐ後ろへ雄二機ことドラゴン2が続く。
「ブルズアイ、スプラッシュ1」
「ビンゴ! スプラッシュ!」
白い軌跡を描いたミサイルが、何匹かのCWを海へと叩き落した。開戦の合図に、反撃のHWが攻撃を仕掛けてくる。
「2、チェックシックス、ブレイク」
「1、先輩、後ろに注意っす!」
その攻撃を、ブレイクして避けようとするドラゴン1&2。しかし、相手の機動力がそれを上回り、その一撃を食らってしまう。特に、前衛にいたドラゴン1の被弾が酷かった。
「まさか正規軍が全然居ないなんて‥‥、警備体制甘すぎでしょ」
それでも、やはり正規軍のスクランブルがかからない事に、悠が文句を垂れていた。そんな事を言っている状況じゃないのは分かっている。何しろ、眼下には住宅街が垣間見える。その住宅街を抜けた先に展開するCWを確認した刹那、彼女はその能力の1つであるアリスシステムを起動させた。
『文句言う前に、とっとと蹴り飛ばして来いっ』
「わかってる。リア! いくよっ」
准将の檄に答え、悠はバディの赤宮 リア(
ga9958)に声をかけた。直接目標であるタロスの姿はまだ見えない。ならば先に、邪魔なCWを叩くのが正解だろう。発射されたマシンガンが、盛大に手数と言う名の牙を剥く。攻撃能力のメインは、高分子レーザー砲だが、牽制には充分のようで、HWが左右にバラけた。そこへ、横合いからリアのアンジェリカが迫る。
「この熾天姫、魂の通わない無人機如きに墜とされはしませんよっ!!」
SESエンハンサーに乗せたレーザーが青い軌跡を放った。それは、同時に周囲へ展開する本星型へと向う。荷電粒子砲が、その顎を捉えた。
「これは‥‥!」
至近距離で相手をしていたからこそ確認できた、それだけの本星型がいた『理由』。それは、剥がれ落ちた外装が物語る。中から強化したヘルメットワームが姿を現す。
「そうか。おかしいと思った。ダミーか!」
数の増加は質の低下を招く。本星型がこんなに‥‥と思っていたリアだったが、その半数が「本星型に偽装したヘルメットワーム」であるならば、納得が行く。しかし、そこへ援護をするように、残りのCWが妨害電波を発射していた。
「追いついた。いける!」
その相手は絣だ。ぎりぎりまで強化したプラズマライフルを撃ちながら、距離を詰める。さすがに、それが命中するわけではないのだが、その光景に、絣はぎゅっと操縦桿を握り締め、まだ距離があるうちから、レーザーで狙いを定めていた。
「マイクロブースター。お願い」
それだけでは、いかに相手がCWと言えど、距離を詰めれない。そこ絣は、マイクロブースターを起動させ、機体の能力を上げた。そこへ、バディを組んだアークが、ホーミングミサイルを叩き込む。常人の身ならば、追尾する機能を備えたそれは、複数のCWを同時に攻撃するはずだった。だが、CWの妨害で、その動きが定まらない。
「先に倒さないと当たらないかなぁ」
口調だけはかわいらしいままだが、アークはそう言うと、AAMを使い始めた。同時攻撃が出来ないのなら、弾幕に徹するのが吉だ。幸い、残りの弾数はまだある、プラズマライフルを使うのは、まだ先になりそうだ。と、そこへのそりと現れる白い姿。まるでゴムで出来た人形のような姿は‥‥指揮機のタロスだろう。
「きたみたい。白鐘さんはまだ?」
「今、会場向っている所。でも、指揮機を落とせば、多少は楽になるわ」
アークにそう答える絣。いわゆる「エース」は、ただいま別任務の真っ最中だった。
さて、海上では、海に2mほどの距離を開けて浮遊するビッグフィッシュから、制海権を奪取するべく、5人で港へと向っていた。
「私たちの目標は港の奪回と、陸戦班の援護。制海権を取り返しますわよ」
そう言って、今回のメンバーを確かめる櫻小路・なでしこ(
ga3607)。そのモニターには海戦機を操るゼンラー(
gb8572)、クラーク・エアハルト(
ga4961)、百地・悠季(
ga8270)、榊 兵衛(
ga0388)。そしてなでしこ自身の名がある。まず向ったのは、港だった。
空港に隣接した港。さほど使われていない空港の代わりに、ここには人々の生活の糧である船が並べられている。その隙間を、キメラやワーム達がうろうろして何かを探していたようだ。
「宮古島、か…キレイな島だった覚えがあるが。無辜の民。必ず、守らねばねぃ」
「くそ、もう少し数がいれば」
ぼやくのは、ゼンラーと同じ様にビーストソウル改で挑むクラーク。見れば、すでに警戒態勢に入っているマンタワームが、他の魚に混じって回遊している用に警戒していた。普通の魚達が逃げ惑う中、クラークはゼンラーを促して、港の制圧へ取り掛かった。
「じわじわと押し返して行こうかねぃ!」
水中仕様にされた機体のパワーを受けて、スラスターライフルがばしばしと泡を上げる。海中でも問題なく動けるその機体は、港付近なら、足場もしっかりしている事もあって、人より動けるその行動力をもってすれば、人型に変形して杯ディフェンダーを振り下ろしても、お釣りが来るくらいだった。
「敵に新たな橋頭堡を築かれる訳にはいかぬからな。出来うる限りのことはすることとしよう」
榊がリヴァイアサンの特殊機能であるアクティブアーマーで、マンタワームの攻撃を受け流しつつ、スラスターライフルを乱射する。それは、1匹を血祭りに上げ、反撃の狼煙と化していた。
「ピンポイントで抑える所抑えちゃえば、何とかしたいわよね。上手く行けばBF破壊に持ち込めれば良いわよ」
悠季のアルバトロスが、ワーム達を近付かせ舞いと、アハトで援護射撃していた。敵と少し離れた場所で、港の制圧に尽力していると、その上で交戦している音声が聞こえて来た。
「絣ー。そちらは大丈夫?」
悠季が心配しに尋ねると、親友の「何とか生き残るー」との声が返ってくる。
「水中戦が専門とは言え、陸上で戦えない訳ではないからな。悪いが、我らの邪魔をするのなら消えて貰うしかあるまい」
「心得ました。私も地上で戦えないわけではありません!」
ばしゃあっと榊のリヴァイアサンに続き、なでしこのビーストソウルが港へと乱入する。
「ちょっと、まだ人がいますわよ!?」
刹那、なでしこが逃げ遅れの島民を見つけた。見れば、何人かが不安そうに船へ様子を見に来たところだ。ヘビーガトリング砲に持ち替えながら確かめると、どうやら係留してある船が気になって、逃げそびれてしまったようだ。見れば、まだ漁労の事務所に数人の人影が見える。
「ゼンラーさん、前衛お願いします!」
「心得た!」
クラークとゼンラーが、空へ浮かび上がったマンタワームが、港に近寄らないようにしていた。その間を縫って、なでしこがマンタワームを空へ追い散らしながら、島民に叫ぶ。
「こっちは私が相手をいたします。さぁ皆さん、港から離れて! 船は後でどうにか致しますから!」
漁労の事務所と敵の間に割り込み、壁になるようにヘビーガトリングを乱射するなでしこ。悲鳴を上げつつ、車に乗り込むまで、そのまま動かない。
「空港まで走れっ。あとは陸戦組が何とかしてくれるっ」
クラークが群がろうとするキメラに、スラスターライフルを掃射する。道を示された島民の車が、悲鳴を上げるようなタイヤ音を軋ませながら去って行く上空で、空戦部隊がHWと交戦中だ。
「上は手一杯ね。余力、ある?」
頷くなでしこ。水中用の『とっておき』は、まだ出番を待っている状態だ。それは、他の面々も同じ。ようやく港のキメラを掃討し、マンタの大半が宙に浮かぶ状態で、悠季はターゲットをその沖合いに向ける。
「なら、このまま進軍するわよ?」
「了解だ。この状況なら、港を取ったと言って差し支えないだろう。次は‥‥BFを落とす!」
空中数mの位置に浮かぶBFの空にはたくさんのワームが浮かび、船長の様にタロスが姿を見せている。既に、陸戦班も展開した頃だろう。
「上手く挟撃できればいいんだけどねぃ」
ゼンラーが挟み撃ちが出来るようにと、ハイディフェンダーでマンタワームの一匹を屠る。しかし、その直後、大型のメガロワームが姿をあらわしていた。引き連れているのは、BFから出撃したであろう新手だ。
「これじゃあ、うかつにBFまで近づけないですわ」
なでしこが不満を口にする。練力の消費を抑えつつ、既にガウスガンを使っていたが、流石に残りの消費量を気にしたままでは、中々に難しいようだ。
「ここを確保しないと、BFを落とせないからな。一時的にでもやらないと」
それでも、歩み‥‥いや泳ぎを進める榊。目指す海域には、浮かぶBFの姿がある。落とせるかどうかはわからない。だがせめて、囚われているミクを救出する手助けにはなりたい。
「可能な限り火力を集中してください!」
本来は、タロス相手にするつもりだったが、さすがにそこまで届かない。クラークがガウスライフルをばしばしと放ち、その隙になでしこが水中で手にした「蛍雪」をメガロワームと切り混んでく。効果の底上げされたメガロワームが苦しげに身をよじらせる中、ゼンラーがガウスガンでトドメをさした。
「今です!」
「こんのぉぉぉぉ!!」
クラークが空へと合図した。刹那、低空飛行で突っ込んでくる伊藤のKV。その隙に、一気に近付く水中班のKV達。その手には、各々の切り札が握られている。
「撃破しちゃって!」
悠季がスクリュードライバーで、盾になるワームを蹴散らしている。そこへ、なでしこが蛍雪を切りつける。
「この刃! 受けてとりなさいまし!」
機体スキルを山ほど押し付けた非物理の刃が、BFの外壁を思いっきり切り裂いた。それに合わせる様に、榊の槍斧「ベヒモス」が、その名が示すとおり、ポールアームの遠心力を利かせた、重々しい横払いを食らわせる。たまらず護衛のメガロワームが駆けつけたのを、死角になった横から、ゼンラーのスラスターライフルが、その傷口に全力で打ち込まれる。
「油断大敵ってねぃ!」
その間に、懐に飛び込んだゼンラーの機体には、切り札のレーザークローが握られていた。いかにBFといえど、その攻撃に船体が傾き、水面に着水する。大きく衝撃が走り、水しぶきに吹き飛ばされる水中部隊。だが、その距離を取った事で、BFから煙が昇るのが確認できる。
「アンノーンさんの合図は‥‥あれか?」
煙草に似た細い煙は、1本しかなかった。どうやら、ミクは既に陸上へ運ばれたのかもしれない。空振りなら、追撃するまでだと言っていた事を、ゼンラーは思い出す。
「生身班は間に合うかねぃ」
「おそらく‥‥。ともかく、回収に向かいましょう」
クラークに促され、「了解っと」と、答えたゼンラーさんは、機体を回頭させると、コクピット内に迎え入れるべく、その機体を陸へと向わせるのだった。
「さぁて‥‥敵の注意を引く為にも暴れるとするか」
そう自身に言い聞かせる漸 王零(
ga2930)。そして、今回同行する面々に、指示を告げる。
「敵の数が多い。基本は倒せる敵からだ。特にタロスと本星型の本物がいる場合は、すぐさま我に。機体の損傷が20%を超えたら撤収だ。いいな?」
その声に、各自から応答が帰ってくる。それぞれバディを組み、施設防衛と護衛にあたるよう分担した彼は、自身のバディであるストフェラ(
gc1463)にこう言った。
「さて。まずは暴れるとするか。ストフェラ、ついてこい」
「へいっ」
どこかの威勢のいい板前さんみたいな返答をするストフェラ。その機体は配達にもばっちり、ヘルヘブンだ。
「その意気だ。やる事は分かってるな?」
「おうよ。よくわかんねぇけど、掛かってきやがれ馬愚亜やろーってんなもんだ!」
答えながら、ぎゅいんっと、アクセルを吹かすストフェラ。そして、こう続けた。
「ところでダンナ。こいつにはナビとかってついてんですかい?」
「ゲシュペンストがリンクしてるはずだ。そっちを使え」
事前に調達した古い地図を元に、逐一陸上データを送っている陸戦組。2人が居るのは、地上でも住宅街から離れたエリアだ。
「おう、これだなっ。えーと、研究施設まではっと。結構奥のほうにあるかもしれねーな」
それによると、途中までは車の通れるような幅に相手いるらしい。そこを使えば、HWもKVも入り込めるだろう。住民たちの生活道路だった場所もある。確かに道その者は広くはないが、ヘルヘブンならば、問題なく行き来できそうだ。
「道のりは今、ドラグーン部隊が調べている。その前にやるのは‥‥あれだ」
「合点承知っ!」
暖簾の向こうから聞こえてきそうな返答をして、上空に現れたHWにハンマーをぶんぶん回すが、遠くて当たらない。
「‥‥各機、障害物は我らで引き受けた。今のうちに誘導と防衛線を構築するように」
そのフォローをする為、スラスターライフルを放つ。見れば、西側の海岸線に、何体かのHWが上陸する所だ。護衛と思しきノーマルタイプ、そしてその中央に本星型。タロスはその後ろだ。空中戦力と海中戦力は、それぞれの部隊が切り崩しているのだろう。見れば、BFに大きな煙が上がっている。
「どうやら、こいつを切り崩せば良さそうだな」
人型へと変形したままの雷電。神か悪魔かと称される古えの名前を冠された雷電の巨大なドリルが、上陸して来た本星型の攻撃を受け止める。がりがりと金属音が巻き散らされる中、もう一本のおててに握られたロンゴミニアトがその武器を貫いていた。その刹那、巨大な木をジャンプ台代わりにしたストフェラが、手にしたSAMURAIランスを上から突き刺す。着地したそこに、もう一匹のHWが背中から襲い掛かった。
「おうわぁっ」
避けられない彼。足元の木々が薙ぎ倒される。だがそこへ、背後から王零の機槍が貫いた。ごろりと転がるヘルメットワームを蹴飛ばすストフェラ。あとから続く生身部隊の邪魔になってはいけない。
「とにかく早く施設にたどり着かないと‥‥」
「あせるな。我らの役目は遊撃だ」
一体でも多くの敵を屠る。それが救出の糸口になると、ストフェラに諭す王零だった。
同じ陸地でも住宅街組の湊とゲシュペンスト(
ga5579)は、街中でうろうろしているHWから市民達を護衛しつつ、避難民の誘導に取り掛かっていた。すでに、EQがBFを出発したと言う。ハシェル・セラフィス(
gb9486)はそう報告すると、自身の機体の回りに、地殻変動装置を設置する。カバーできるだけの要領はあった。
それを設置し終わったのと、と気を同じくして、上陸してくるHW達。そのまま一直線に施設へ向うつもりなのか、市民が避難しているど真ん中へと突っ込んできた。
「やれやれ、今日は厄日かねえ」
同じく地殻変動装置を設置していたゲシュペンストは、その反応を見て、ため息をつく。キメラを伴ったそのHWに、ゲシュペンストはメイン武装の殆どを近接用にした状態で距離を詰める。
「喋ってる暇があれば、近付かせないようにしないとなっ」
後ろから、湊 獅子鷹(
gc0233)がスラスターライフルとレーザーカノンの雨アラレを降らせていた。何しろ手数を多くするだけなら折り紙付だ。後ろの避難民への攻撃は一歩も通さないと言わんばかりに、その手にしたストライクシールドを盾にしているが、全てを賄いきれるわけではなく、いくつもボディに穴が開く。
「EQの反応がある。気をつけてっ」
「退くと言ってもこの状況で一体何処に退けばいいのやら…」
ハシェルが自身のいるほうにEQが向っている事を告げてきた。しかし、右も左も上も海も敵だらけ。ここで引くわけには行かないと叫び返すゲシュペンスト。そう思い、湊の弾幕援護を受け、出現位置と思しき場所へと先回りする。リッジウェイの6脚ががりがりと地面を削った直後、現れた巨大なモグラの化け物‥‥アースクエイク。
「攻撃を集中してくれっ」
弾幕がEQへと降り注ぐ。それに合わせるように、横からアテナの一撃が刺し貫いた。が、硬い装甲と言う名のフォースフィールドに阻まれ、肝心な部分にまでは届かない。逆に、捕らえられてしまう。
ぎゅいんっと無遠慮に回るドリルを斜めに受け流し、何とか背中に回りこもうとするゲシュペンスト。タロスほどではないが、充分取り逃がすと厄介な相手だ。確実にしとめようと、その足に仕込んだドリルを高速回転させるゲシュペンスト。形こそ似ているが、こっちは魂が違う。邪悪な螺旋を描くドリルに負けはしない、と。
「究極! ゲシュペンストきぃぃぃっく!」
がきょぉぉぉぉんっと、ドリル同士のぶつかる盛大な音が響いた。自らの名を冠した魂の一撃は、その中心部品である生体パーツを、豪快に斬り飛ばす。いや、蹴り飛ばす。たまらず、元来た穴を引き返すEQ。
損傷は激しいが、どうやら撃退には成功したようだ。ほっと胸をなでおろす2人のモニターに、AUKVを示す緑色の軌跡が、施設内部へ入り込んだ事を教えてくれていた。
その施設の入り口では、タロスが、HW達を伴いながら、ずんずんと施設へ向っていた。思わぬ大物の出現に、目論見が外れた事を臍噛みつつ、それでもハシェルは相手にこう毒づく。
「こんな観光地まで来てやる事って、人攫い? はっきり言って迷惑さ。君たちの奪ったもの、全部返して貰うよ!」
装輪駆動開始。ブースターを加速させるハシェル。生き残ったらメカニック達に最大限の労力を支払わなければなるまい。そんな駆動力が、相手へと迫る。伝説の鳳を冠したその刃と槌、そして連装機関砲が波打ちながらその名が示すとおり、焔の攻撃と化す。だが、相手は流石に腐っても有人機。げしっとその攻撃を受け止めてしまう。
「む、手練‥‥。いざ、参ります!」
そこへ、高回避設定にした米本 剛(
gb0843)が、やはり焔の名を持つ幻魔炎をぶっ放した。周囲の森が盛大に燃え上がる中、どれだけの幻惑を産んでいるかは分からないが、ともかくそれをめくらましにしながら、手にした双機刀「臥竜鳳雛」でもって斬りかかる。
「指揮官機! 頂く!」
接敵したところで、神天速を起動して右腕に取り付けた機杭をお見舞いする彼。至近距離で放たれたそれが、タロスにめり込む‥‥筈だったが、どうやら跳ねられてしまったようだ。それを見計らうと、米本は左腕のマシンガンでもって牽制し、距離を取る。
「一度だけ。力を貸して!」
それでも、かなり大きなダメージを与えたらしく、再生機能が働きつつある。それを見たハシェルは、自身の機体をグルグルと高速回転させる。接近戦可能な距離まで踏み込み、その周囲に煙幕を発生させた。
それでも、タロスは構わずレーザーのようなものを発射させてくる。狙いは落ちているが、一発一発は重い。重ねがけた妨害の力がなければ、ハシェルの装甲など貫いてしまうだろう。
「さぁ限界を超えて! Zukunft! 僕達を阻む壁を砕く為に!」
歌うようにそう言って、自身の機体の特殊能力を発動させる。防御力はさらに落ちるが、当たらなければ意味はないと、昔の偉い人が言っていた覚えがある。その素早い行動のまま、同じ場所へ槌を打ち込むハシェル。がつりと大きく手ごたえがあったのは確か。
だがその刹那、大きく吹っ飛ばされ、したたかに背中を打つ。相手に大きなダメージを与えられたが、その代償として、自身も盛大にダメージを追ってしまった。
「撤収は、厳しいか‥‥」
「江戸っこは我慢の文化ってやつでさぁ。風呂は熱い方がいいんですぜ」
既に、各機体とも、残りの練力は20%を下回っている。そう提案する王零に、真っ向から反応するストフェラ。そのまま転がる残骸をハンマーで壊しまくりながら、施設の奥へと向ってしまう。
「待ってろよミクちゃん! プリーズシングアロンウィズミー! 萌え萌えだぜぃ、ひゃはー!」
若さゆえか、その刹那、ストフェラが施設のほうへ走り出していた。周囲のキメラまでぶち殺しているので、戦力になっていないわけではない。まぁ、出口をふさいでしまえば挟み撃ちには出来るので、ハシェルはHWの通り抜けた後へと向った。ゲシュペンストもそれへ続く。市民誘導は引き続き湊と、入れ代わりで米本が担当だ。
「帰るのは、もう少し後になりそうだな」
無理をしているようには見せない隊員達の姿に、王零はぼそりとそう呟くのだった。
その陸戦のもう1つ。救出班は、いくつかの手段を用いて、ミク奪回を試みていた。
「これだけの戦力を相手にするなら持ち堪える、ではなく押し返す気概で臨まないとな」
空戦班の1人である白鐘剣一郎(
ga0184)は、シュテルンのサブシートにUNKNOWN(
ga4276)こと通称『不明』を乗せ、母艦と思しきBFへ向っていた。
「上手く行けば反撃の糸口になる、か。いささか無茶だと思うが」
苦笑しつつも、白鐘は、手元のレバーを操作する。シュテルン特有の推力変更ノズルが変形し、フル稼働する。いわゆる垂直離着陸状態になったシュテルンのキャノピーを開け、不明を放り出す。制御噴射され、水面が大きく波打つ中、手にした細い荒縄で、パイロットルームから降りていく不明。
しかし、途中で、細い荒縄が切れてしまった。ぼちゃんっと盛大な水柱が上がる。
海戦班が上手くひきつけてくれているおかげで、不明を影がワームに囚われる事はなかったが、それでも水面に無理な着水をしたせいで、体中がずきずきと痛む。なるべく手足を使わず、魚のように体をくねらせながら、不明はBFの巨大な影を追った。
「ここからならいけそうだな‥‥」
近付くと、海戦班があけたらしい巨大な傷跡が見て取れた。そこへ釣り針を引っ掛け、よいせと上る。甲板の先端部分に張り付いた不明は、気取られないようこっそりと中を覗いて見た。
「何かデータを見つけられればいいのだが‥‥」
あわただしく行き来するキメラ達。指揮しているらしきバグアの姿。そこから運びだされていくのは、巨大なアンテナを分割したようなシロモノだった。見慣れない装置の姿は、新たな実験装置か兵器と言ったところだろう。そう、ミクの声を使って。
「離すぉー!」
と、その本人の居場所はすぐに知れた。よく響く大声が、HWの出てくる辺りから聞こえてきたから。
「キミ達なんか、後でけちょんけちょんにしちゃうんだからっ」
両脇を抱えるバグアの姿に、指をびしっと突きつけるミク。彼女の声は、バグアでもうるさいと思ったのだろう。後頭部に一撃を食らってしまう。
「ふむ。どうやら生命を奪う気はなさそうか‥‥。ミク、キミの救出はもう少し時間が掛かるようだよ」
ぐったりとその場に崩れ落ちるミクを抱えるバグア。先ほど積み込んでいた増幅装置と共に、本星型ワームに積み込まれていく。それが陸上へと向う事を確かめた不明は、海へと戻り、その後を追うのだった。
「これ、別れた方が良いと思う」
アーク、PRMシステムを起動させながら、こう提案してくる。HWの猛攻は続いてくる。群の向こうで、おそらくはニヤニヤと笑いを浮かべている彼らを攻撃したくても、それが邪魔だった。
「プラズマライフルなら残ってる。CWの殲滅を最優先にするの」
ぶしゅぶしゅとプラズマライフルが飛んで行く。余力は残りわずかだ。早めに決着をつける方がいいだろう。その証拠に、タロスが存在する事によって、周囲の動きが変わっている。おかげで、被弾数が増した。
「例え数で不利でも・・・頭さえ潰せばっ!!」
リア、ブーストをかけて、指揮官タロスへと一気に接近する。相手にとって不足はない。そのまま駆け抜けたリアは、ググっと機体を傾ける。急旋回を行追うと言うのだ。ブースターの軌跡が弧を描き、機首を持ち上げる。
「慣性制御…っ、回れ…!」
それにあわせるように、ダブルブーストでタロスに肉薄する悠。ミサイルが発射され、その返礼を回避する為か、機体が急転する。残りの機動力はG放電装置へと突っ込んでいた。
だが、タロスがくるりと振り返った。急停止出来るわけではないKVは、そのまま至近距離での攻撃を受けてしまう。いくら何でも、HWのように横滑りは出来ないのだ。
それでも、リアはDR−02が乱打。しかしその刹那、彼女の機体のエネルギーが急速に低下、60を下回ってしまった。ふふんと勝ち誇ったように放り出される機体。
「ハーモニウム! 極北のあなた達が何の用ですか!」
『うん、ちょっとした実験。それだけ』
悠がそう言うと、中身はそう答える。それでも、その機体はかなり損傷していた。ほっと胸をなでおろしたのもつかの間、肉薄した結果距離が詰まっているのが災いする。
『あんまりまともに相手をする気はないよ。特に君みたいなのはね』
ぐしゃ、と嫌な音がして、機体が吹き飛ばされる。大きく後退する悠の機体と入れ替わる用にして、絣がそのスピードを上げた。砲塔が、白く輝く。
「一発しかないけど‥‥やらせない!」
悠とおなじように、ダブルブースとされたその機体で、メイン武装であるオメガレイを叩き込む。反撃を警戒すると、そのまま回避行動へ移る。タロスが、HW達を盾にして、高度を下げて行く。見れば、HWの半分ほどが地上に降りて、何やら捜索を開始する。残りの半分は、ビッグフィッシュに撤収したのだろうか。何とか引きずり出したいが、それは海上にいる面々と協力しないと難しそうだ。
「対艦攻撃は、どれだけ高度を下げられるかにかかっている‥‥主よ、我に力を‥‥」
それでも、雄二はコクピットの中で祈り、古の戦法に則って、高度を出来るだけ下げながら、BFへと侵入を開始する。と、その影に重なるように、1機のシュテルンが低空で接近していた。
「待たせて済まないな。遅れた分はきっちり取り戻させて貰おう」
立ちふさがったのは、白鐘剣一郎。彼が相手にしたのは、強敵とも言える存在だった。姿を現した本星型。そのトゲトゲした外見は、とても硬そうだ。
「偽物の外装などっ!」
それでも、スラスターライフルを放つ。射程に合わない今は、ソードウィングを使うべきではない。そう判断した白鐘だったが、弾丸は張り巡らされたフォースフィールドによって阻まれてしまう。
「さすがに本星型。壁は中々厚いな」
どうやら、本物と偽物が存在するようだ。中身そのものは強化されたヘルメットワームなのだろう。近付いて‥‥打ち込めばわかるが、そうする前に攻撃を食らってしまう。
「だが衝くべき隙は必ずある。無ければ作るまでだ」
それでも、白鐘は諦めなかった。攻撃をしながら近付いていく。
「見えた!」
お互いの射程が届く位置になって、その翼が刃となった。体当たりの側面を持つその兵器は、がつりとお互いに強い衝撃を与え散らすのだった。
「ミクちゃん浚われちゃうなんて‥‥」
先ほどから行く手を遮る触手キメラが、ミクのなきに等しい胸に絡み付いていると思うと、女の子としてはお嫁にいけなくなってしまうかも知れない。コクピットでこっそり顔を真っ赤にしつつ、水理 和奏(
ga1500)が立ちはだかる障害物を、物理的に倒して、密林の奥へ向う。同じ様に捜索しているのは、嘉雅土(
gb2174)と大神 直人(
gb1865)、須磨井 礼二(
gb2034)だ。
「この辺りでしょうか?」
ドラグーンなので、AUKVでの作業を続行している。このあたりに搬入搬出を行う出入り口があるはずだと。その最中、礼二がようやく搬入口のサインが書かれた鉄製の扉を見つける。そう答えた直人が、金具を外すと、ひんやりとした風が吹き込んできた。
「気をつけろ。外では始まったようだ」
直人が上空を見上げて告げた。密林の入り口では、銃撃戦の音が聞こえてくる。おそらく、もう少し立てばここに避難民が押しかけてくるだろう。
「じゃあ、なんとかなりそうだね。これ、仕掛けておくよ」
そう言って、地殻変化計測器を設置するのは、芹佳(
gc0928)。これで、内部に進んでも、EQの接近を知る事は出来るだろう。ひんやりとした空気の中を、がしがしとKVとAUKVの足音だけが響く。
「電源ってありそうです?」
「ああ。じいちゃんの言ってた事を照合すると、スイッチはこの当たりに‥‥これかな」
真っ暗ではあったが、一般民家と同じく、壁に設えられているであろうスイッチを手探りで探すと、程なくしてカチッと音がした。
「ふむ。どうやら通信設備はまだ奥にあるようですね」
ばちり、と埃を焼くような音がして、いっせいに廊下の明かりがつく。これだけの電力を賄うには、相当のエネルギーがいる。だとすれば、どこかにそれ相応の発電装置が合って叱るべきだろう。EQがその電源装置を確保しに行く事は充分に考えられる。
幸い、搬入路はKVが通れるほど大きなものだったので、一行はそれぞれの機体を持って、奥へと進む。電源ケーブルをたどって行くと、広場のような空間に出た。何らかの実験をしていたのだろう。中央に発生装置と思しき機械の塊がある。レーザーの発射装置にも似たそれが、音波発生装置に転用出来るシロモノなのは、礼二にも見た目でわかる。
「よし、じゃあこれ仕掛けるぞ。手伝ってくれ」
嘉雅土が取り出したのは、よく滑ると評判のワックスや油の缶だ。それを、今まで通ってきた所に、がりがりとばら撒いて行くよう指示してくる。
「少ない量で、最大の降下を出せる用に設置しないとね」
その割には、中々乾かないようにたっぷり目にバラまく芹佳。こうして、通路がつるつるぴかぴかになり、上の所々切れかけた電球の光をきらきらと反射していた。
「終わったら電源落とすから、気をつけろよ」
とてとてと、芹佳が積み上げられた部品の陰に隠れ、嘉雅土が電源を落とした直後、ビービーとアラームが鳴り響く。地面をうごめく大質量の音がして、閉めておいた筈の入り口が轟音を上げて吹き飛んだ。
「いくよ。ミクちゃんを返せっ!」
頭が出た。と思った瞬間、和奏がドリルナックルを打ち込む。人の視界からは広いとは言え、KV数機とHWが立ち回るには狭いエリアだ。ましてや、中央にはEQがででんと穴を広げ、その周りからコバンザメのように触手キメラがうごめきながら肺出てくる。その気持ちの悪さに、以前の依頼を思い出した彼女、若干気分が悪くなりつつも、そのドリルを駆使して対処する。
「ぬるぬるがいっぱい‥‥。ま、まさかハーモニウムの子って、そう言うのがすきなのかなっ」
「んなわけあるかいっ!」
かなり間違った解釈に、思わずツッコミを入れる嘉雅土。
「バグアに操られて、ミクちゃんが使っている可能性もあります。そいつは後回しで!」
礼二がEQを相手にしながらそう言い出した。るぷすで体表の刃をどかし、白雪で攻撃しつつ、開いた口にグレネードをお見舞いする。きしゃあと咆哮を上げたキメラが、盾になる用に群がると、彼は機関砲に切り替え、その身を肉片に買えて行く。しかし、相手の勢いはまだ衰えない。
それでも、出てきているのはEQが1機、それに本星型が1機、HWが3機と、ごく少数だ。他は、上空とそして陸上が引き寄せているのだろう。しかしそれは、精鋭といえるべき存在。
「ミクさんの乗ってる乗り物は‥‥。陸戦さん達はなんだって?」
そのどれかに、ミクがいる。カメラを見回す礼二に、すぐ横で黒服の影がした。
「‥‥本星型だ」
よく見れば、いつの間に海から上がってさらに着替えてここに来たのか、いつものダンディ不明さんである。
「気を失わせて、指揮官機に詰め込んでいた。おそらく、施設で使うつもりだろう」
そう言って、指し示したのは、EQの上に陣取る本星型だ。嘉雅土が通信機越しに尋ねてくる。
「やはり、仕込み済みですか」
「いや、そうは見えなかったがな」
一応、拘束具は用意していた。洗脳されている可能性もあった。だが、不明が見てきた限り、その可能性は低いだろうと指摘する。あの娘は、そんな器用な演技が出来る子ではない‥‥と。
「射程ぎりぎりで狙うしかなさそう‥‥!」
正倉院命(
gb3579)が援護をしてくれている。放たれた弾は、弾幕にしかならなかったが、それでも力を存分に発揮できる時間を稼いでくれた。
「この戦力なら、駆け抜けられるっ! 吼えろ、竜の力よっ!」
直人がそう言って、攻撃に合わせてバイクをブーストさせた。ツルツルと滑りやすくなってはいるが、濡れた路面を走るのと要領は同じだ。ブーストをかけると、龍の咆哮で邪魔なキメラを吹き飛ばす。刹那、操縦者と思しきハーモニウムが、ミクを抱えた姿で表へと出てきた。
「相手しやがれっての!」
「逃がさないよ‥‥。えぇい」
続く嘉雅土が閃光弾を放つ。そこへ、芹佳がKVで本星型にスラスターマシンガンをお見舞いしている。そこへ畳み掛けるように、嘉雅土が大量のペイント弾を放った。だが、相手も本星型。食らうばかりではない。お返しといわんばかりに、その刃が振り下ろされる。至近距離といえる攻撃に、次々と被弾していくKV達。後ろにいた芹佳とて例外ではなかった。
「前に依頼で会ったノアが独りで耐えて頑張ってるけど元気だったぞっ」
「何の話だよ‥‥」
そんな中、そう告げる嘉雅土。返す声に苛立ちが混じる。だが、嘉雅土は畳み掛けるようにこう叫んでいた。
「お前ら裏切れないからあいつは苦しいんだ。でも軍があいつにしてる以上に惨い事を俺らの仲間にしてるお前らは更にムカつくんだよっ」
と、その本星からの返答は。
「そうか。じゃあ‥‥仕方がないね」
至近距離で、レーザーの砲塔が向けられる。アームが伸びてきて、嘉雅土の翔幻を思いっきり掴み、細かい光がいっせいに降り注いだ。まるで、ノアが受けているかもしれない拷問を、その身に代用させるかのように。狭い空間で、襲われたのは嘉雅土ばかりではなく、全体攻撃になっていた。
「ぐぁぁぁっ。負ける‥‥もんかっ」
その悲鳴に、ミクが目を覚ましていた。
「‥‥こらぁっ。友達に何するんだよっ」
そう言った直後、彼女はがぶりとハーモニウムの腕に噛み付く。その好機を、礼二は見逃さなかった。ブーストと竜の翼で一気に距離を詰め、ハーモニウムに竜の咆哮を浴びせかけ、突き飛ばす。ぽろりと落ちたミクが抱えられたのは、不明の腕の中。
「しっかり目を瞑っていろ」
それを、不明はまるでボールのようにぽいっと放り投げた。天高く舞うミクを、直人が受け止め、竜の翼で素早く後退し、KVに跳びのる。
「ミクちゃん、大丈夫? 変な事されなかった!?」」
「バグアにはされてないけど〜」
和奏が心配そうに尋ねると、ミクは潤んだ声でそう訴えている。どうやら、元気そうだ。
「それじゃ、叩き返そうかっ。必殺‥‥わかな粒子砲いくよっ!」
和奏がSESエンハンサーのスイッチを入れた。閉鎖空間でラージフレアは使えないが、粒子砲なら狙いは一つ。そう‥‥青白い粒子が、本星型へと叩きつけられる。
「覚えとけよ」
視界が白く染まる。ダメージは多いが、どうやら相手も撤収していってくれたようだ。
「迎えに来ましたー」
クラークの声がしたので、見上げてみれば、ゼンラーと共に陸地へと上がってきた彼の機体がいる。陸上の侵入口には、ストフィラにゲシュペンストの姿もあった。
「協力してくれて、ありがと〜。助かったよ」
芹佳が感謝の意を示している。陸も終わったのだろう。コクピットを開けて、にこやかにおててを差し出すゼンラーさん。
「お洋服着てほしいぉ‥‥」
ミクの頬が染まっていたのは、恥ずかしさのあまり‥‥と表記しておこう。