●リプレイ本文
闘技場は、地下の閉鎖区域だった場所で工事されている。そこに集まった生徒達は思い思いの仮装をしていた。白雪(
gb2228)が身につけているのは、なにやらごそっとした布の塊だった。
(で?…これ、何の仮装?)
「フェイルノートの格好。折角だから、KV武器とアクセサリもきっちり持ってきたわよ」
今は『中』にいる白雪に問われているので、真白なのだろう。見れば、試合会場の片隅に、煙幕銃からソードウィングまで用意してある。
「フランケンシュタインって所かしら」
ヴィンフリート(
gb7398)の格好を見て、真白がそう言った。大柄な体型にあわせてか、あちこちに鋲を貼り付け、作りものの傷跡を肌に書き込んでいる姿は、この時期ときたま見かける人造人間さんのようだ。
「聴講生・特務部隊:零小隊所属・ヴィンフリート‥‥参・上ッ!」
彼は、格闘ゲームのように言葉を区切りながら告げる。と、そんな彼に、真白は深々と頭を下げた。
「ご丁寧に痛み入りますわ。八葉家の真白と申します。この度は若輩者の私と手合わせ頂き、恐悦至極と存じます」
どうやら、合気道に組み込まれている古武道式の作法なようだ。寺田が片手をあげ合図をする。
「さぁ始まりました。まずヴィン選手が、長い手足を行かして殴りかかって行きます。さしずめ大降りフランケンと言ったところでしょうか!」
それにあわせて、実況を開始する千道 月歌(
ga4924)。亡霊っぽくボロボロなガンマンの格好の彼、試合形式なのを聞いていなかったので、実況を志願した模様。せっかくなので、ここからは彼に任せるとしよう。
「んが〜‥‥てか」
ヴィン選手、必要以上に大きな振りで、真白選手に掴みかかる。
「なかなか、豪快‥‥ね」
しかぁし、真白選手、それを紙一重で避け‥‥いや、受け流したー!
「甘いぜ!」
「それは、どうかしら‥‥」
フランケン、それをカウンターしようとするっ。意外とコンパクトな一撃だが、真白選手は予想して浮いたようで、しっかり身を退いた! そして、逆に相手に下段蹴りだー。
「そんな攻撃が、通用するかよ!」
耐えるフランケン。やっぱりそれに返そうとする。しかし、真白選手、必要以上に踏み込まない!
「く、攻めてこないのか‥‥」
「ふふふ、カウンターは予測済みですわ」
逆に、小さな攻撃を繰り返している。どうやら、ゆったりとした動きながらも、相手の動きを捉えたようです!
「うむ。古武術とゆー奴だな きちんと考えて打ち込んでいる様じゃ」
老師の解説が入っている間に、ヴィン選手、真白選手に腕を取られてしまいました!
「…さすがに鼓膜とか目とか狙いは不味いわよね」
(わかってるならしないでね?)
いつもなら、そこで急所攻撃と行きたいところでしょうが、ここは我慢で相手の腕をひねり上げているー。
「何ごちゃごちゃ言ってやがる」
「あなたが危なくないようにしてるのよ。えい」
真白選手、相手が身動き取れなくなった所で、すかさず投げに入る。豪快に投げ飛ばされるヴィン選手!
「それまで!」
おぉっと! ここで審判の寺田、勝負あったとみなしたようです。ひっくり返ったヴィン選手に、真白選手が手を貸します。
「怪我、しなかった?」
「おう、ちょっとばかり疲れたけどな。んがー、やられたー」
ヴィン選手、フランケンの異名どおりに、やられポーズを取っております。では真白さん、一言どうぞ。
「他流試合も悪くないわね。今度、兵舎のみんなとやってみようかしら?」
是非やってあげてください。
「遅くなってごめんなさい」
おぉっと、ここでカンパネラ学園生徒会長、龍堂院聖那の登場だ! しかも、学園戦闘服のままです! 何か色っぽいぞ! にっこりされて水理 和奏(
ga1500)選手が頬を染めております。
その水理選手が出る第2試合は、くしくも同小隊での対戦です。マッチングの寺田先生が仕込んだ感もありますが、希望も出したって言ってたので、問題はないでしょう!
「聴講生の水理・和奏、格闘家だよっ! 大佐のおじさんとか、みゆりお姉さんとか…大好きな人の血を吸っちゃうんだ☆」
水理選手の衣装は、まるで中世の騎士さんのようですっ。せっかくなので、ナイトに決定。わかナイトと呼んであげましょう!
「聴講生、傭兵小隊【シャスール・ド・リス】小隊長代理のクラーク・エアハルトです。行きます!」
対するクラーク・エアハルト(
ga4961)選手は、黒のトレンチコートにダークスーツ、赤のネクタイに付け歯の犬歯と赤のカラコンまで装備ですが‥‥、仮装と言うより正装ですね。こちらはバンパイア・クラークと呼ぶのが相応しいでしょう! おぉっと、わかナイト、まずバンパイア・クラークに飛び込んで行ったぁ。
「行くよ! ミサイル中佐マグナムパンチ!」
わかナイト、さっそくパンチを繰り出す! あれだけ重りをつけているのに、早い早い!
「勝てる気しませんね‥‥。ですが、諦めるつもりはありませんよ!」
何とか避けるバンパイア。しかし、ナイト、体勢を崩していても、相手へ拳を繰り出せないでいる。いったいどうしたー?
「どうしました? 攻めてこないんですか?」
「そうじゃない。そうじゃないけど‥‥。痛めつけるような真似はしたくないし‥‥っ」
どうやら、相手を怪我させたくないようだ。しかし、バンパイアの方は容赦ないっ。
「こないなら、こっちからいきますよ?」
バンパイアが挑発している。わかナイト、覚悟を決めたようで、掴みに行った!
「中佐アッパー!…と見せ掛けてわかなタックル!」
いや、そう見せかけて実は体勢が低い! これはひっくり返すつもりだ!
「隙あり!」
しかしそこでバンパイア、足に出た! まともにすっ転んだわかナイトがひっくり返るー! 喉元にバンパイアの手が届いた。タッチアウト! 終了!
「正面から打ち合うだけが、戦いでは無いですよ? 攻めに転じた瞬間が、最も隙が大きいと思うのですが……」
これは、性格的な問題も加味していると思われますが、クラーク選手の意見、会長はどう思われますか?
「相手が水理さんのように、攻めてくるタイプなら、それも大きいでしょう。しかし、先ほどの白雪さんのように、挑発に乗らないタイプですと、それは難しいかもしれませんね」
つまり、相手を見極めると言う行為が必要と言うことでしょう。わかなナイトさん、混乱してます。
おっと、クラークが食事に誘っている模様。どうやら、2人で学食へ向うようです。兵舎のレストランかどっかかもしれませんね。
では、次の試合に参りましょう。
第3試合は、優勝候補と言われるホアキン・デ・ラ・ロサ(
ga2416)選手が相手ですが、さてどうなる事でしょうか?
「聴講生、無所属新人の紅桜舞です宜しくお願いします」
「我輩はラストホープ忍者──否、カンパネラ聴講生のホアキンにござる。いざ、尋常に勝負でござるよ!」
なんと言う対比。相手の紅桜舞(
gb8836)選手は、巨大なオレンジ色の塊ですが、ホアキン選手は地味すぎる忍者装束。さしずめ、カボチャ対シノビと言ったところでしょうか。口調までそのままです!
「ところで‥‥えーと、何やら微妙な印象だけど…それは何の仮装かな?」
が、シノビなホアキン、相手の衣装がわからない。いや、これはわざとか!?
「かぼちゃさんです♪」
紅カボチャ、手足を動かしてアピールしております。やたらと動きにくそうですが、大丈夫なんでしょうか?
「そりゃあ見れば分かるが‥‥。そんなんで戦えるのか?」
「はっ! しまったです〜これ身動きとれないです〜」
どうやら、大丈夫じゃないようだ。ちたぱたしている紅カボチャは、意外と可愛いかもしれないっ。
「はっはっは。隙あり。いくぞー」
が、シノビの道は非情の道! 感情に囚われる事なく、ホアキン選手、いきなり殴りかかったぁ!
「い、痛い‥‥。ちょ‥‥これ一体何が‥‥」
凄い音がして、シノビが手を押さえてうずくまっている。逆に紅かぼちゃは笑顔で踏ん反り帰っている!
「はい、金属突っ込みましたから。ああ、作るのに3日程徹夜したですよー」
よく見ると、カボチャの表面は磨いた鉄板に塗料を塗ってあるぞ。うずくまって動けないシノビに、近寄って攻撃を開始する模様! しかし、シノビにはまったく効いていない! 効果は今ひとつのようだ。
「全然痛くないなー。えい」
おぉっと、シノビがクナイの代わりに、その辺に転がっていた建材を投げつける!
「そ、そんなもの投げちゃ駄目です! これ、バランス悪いんで‥‥あっ」
紅カボチャのボディを直撃だ! 衝撃でカボチャ転倒! 思わず手足を引っ込める! 丸くなったカボチャが行き着く先はぁ!?
「おわーーーーー! 転がってきたぁ!?」
シノビに回転アタックだ! しかし本人も止められない! 回転したまま、壁へまっしぐら!
「おーい、大丈夫か?」
走り回って避けたホアキン選手が、カボチャに近寄って行くぞ。一体紅カボチャはどうなったんでしょうか!?
「きゅ〜」
気を失っていますが、何とか平気なようですね。審判によるドクターストップが入った模様です。では、次の試合です。
第4試合は‥‥どうやら、僕の出番のようですねっ。
「聴講生で現在フリーの流月翔子。いざ参る」
流月 翔子(
gb8970)さん、全身ふりひら衣装に、ふわもこの耳飾。作りものの尻尾まで完備してます。
「猫耳魔女っ子ですわっ。新ジャンル開拓で、今局地的ブームなんですの」
くるくると回ってみせる翔子さん。いや、多分局地的じゃないブームでもあると思います。リングネームは、猫耳ショーコと呼んであげましょうっ。では、カメラにバトンタッチします!
「でわいくにゃ〜‥‥てやっぱ恥ずかしい」
「だったらやらなきゃ良いのにっ」
翔子が猫パンチのように唐突に拳を繰り出してきたのを、屈んで避ける月歌。じっと狙いを定める彼女に対し、左目をかばうように右側へと体をずらす。
「む‥‥これは‥‥経験上いける!?」
そのまま右を前に、半身で構えた状態で、右拳を繰り出す。そのまま、ラッシュをかけるように、拳を連打していた。
「いかせないのですす‥‥にゃにゃにゃにゃ」
最初、少し恥ずかしそうにしていたが、やっている間に慣れたらしく、にゃごにゃご言いながら、拳を受け止めている。そこへ、チャンスと見た月歌、ローリングソバットと言う名の回し蹴りを打ち込んでいた。
「いつもは飛び道具で戦っているから、素手での戦闘って、新・鮮」
足を取られてしまい、ひっくり返る翔子。なんだか満足そうにそう言ったのだった。
いやー、お見苦しい所をお見せしました。さて、決勝戦へと参りましょう。決勝に残ったのは、人の左目狙ってきた辰巳 空(
ga4698)選手と、バンパイアと真白さんを沈めたホアキンさんです。
「さっきから、当たり運がないみたいでな。寺田の野郎、仕組んだっぽいぞ」
「ほほう。それは良い事を聞いたなー」
おや、乱入者の模様! 学食のおば‥‥バイトさん? バンパイア曰く、UNKNOWN(
ga4276)さんと言うようですが、話す相手は審判の寺田センセのようです。
「怪しい、な」
何やら寺田教諭の方が、長く答えているようなのですが、全く聞こえません。聖那さんが交渉しに行きましたねー。
「寺田先生。後は私がやっておきますので、暫しの逢瀬を楽しんでいらっしゃいませ」
なるほど。では、お邪魔してはいけないかもしれませんね。いや、そこで謎のダンディ割烹着の岡持ちから、何か出てきました。美味しそうなチャーハンですが‥‥まさか毒でも入っているのでしょうか、寺田教諭、止めております
「邪魔をするなら、相手をするが」
謎の御仁が、黒光りする縄を取り出した。ああっ、姿が消えた!? と思ったら、壁際から音もなく忍び寄ってくる! まるで流れる水が侵入してくるようだ! 寺田教諭に絡みついたー。黒縄でしっかり巻き取っていますが、きっと大人の楽しみと言う奴なんでしょうっ。ああっ、カメラが! カメラが!
えー、あの後何やら大人の世界が繰り広げられていたようで。
「で、何の騒ぎだったのだね?」
「ただの授業ですよ。これから最終戦をやるのですから、出前持ちは学食戻るか、おとなしく見学していてください」
寺田教諭の服装が乱れているのは、仕様なのでしょうか。何やら体調がよろしくないようなので、ここからは老師に審判をやって貰う事になりました。解説は聖那さんにお願いします。あ、割烹着のダンディさんは、そのまま見物に回ったようですね。では、再開です!
「決勝に残ったのが、他校所属の聴講生で申し訳ありませんね」
「構わんさ。俺だって聴講生だ」
申し訳なさそうに一礼する辰巳さん。お互い、名乗り上げを済ませた所で、老師が片手を上げました。開始の合図です!
「それじゃ‥‥いざ尋常に‥‥勝負願います!」
「応!」
流石に決勝、お互い動きが早い! 試合前、辰巳選手は胸を借りるつもりだと語っていましたが、結構拮抗してきているようですっ。
「微妙な印象ってわけでもないから、仮装挑発は使えないかっ」
シノビ、相手を挑発しようとしているが、辰巳選手はごくごくまっとうな執事服! 突っ込まれるような隙は見せていなかった!
「貸し衣装なんで、傷つけるわけには行かないんですよっ」
「なるほど。なら、こうするまでだっ」
おぉっと! シノビの銭投げスキルが発動した模様! その辺に転がっていた建材を手当たり次第に投げつける!
「挑発には、乗りませんよっ」
しかし! 対ホアキン戦略を練ってきたのか、執事は中々近づいてくれない! 距離を取って、足元ばかりを狙うっ。お互い距離が離れたまま、にらみ合う格好だ!
「では、機動力を奪うかなっ」
いや、シノビが先手必勝! 先に動いた
「く‥‥。さすがに、早いですね。でも、そこが隙です!」
が、執事もそこはケモノの力を持つ傭兵! 瞬速縮地で距離を一気に縮め、円閃で迎え撃つ! これは、正面衝突になるかーー! ああっ、これは!
「えぇい、さっさとギブアップしろ‥‥っつーの!」
「嫌ですよっ。そっちこそ、このこのこのっ」
えーと、執事がプロレスの立ち極め技をかけ、シノビがレスリングの要領で組み付いて‥‥いる? お互いの四肢が絡み付いているこれは、タコとイカの絡み合いバトルに見えますが、どう判定されるんでしょうか‥‥。
「10カウント。両者リングアウト」
老師の判定が下されました。どうやら、両者ドローのようです。ああっ。見れば闘技場の外ですね。移動しているうちにアウトしちゃった模様!
どうやら、相手の動きも考えようと言うのが、今回の授業の教えのようですね。では、失礼しましたー。