タイトル:【Woi】洋上の渡し守マスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/08/06 11:33

●オープニング本文


 さて、シェイド討伐をしていた頃、カンパネラ学園では。
「情勢は、どうなってますの?」
「はい。おおむねこのような感じです」
 シェイド討伐に関し、本部に掲げられていた結果を、聖那へと見せるティグレス。北米大陸の事情と書かれた文書には、こう書いてあった。

 北米では大規模作戦の準備の為、UPC軍が五大湖地域への集結を開始している。
 実際、作戦が動き始めてから、徐々にではあるが北米大陸の各地からULTに持ち込まれる傭兵への依頼が増え始めている。傭兵がこれに迅速に対応できなれば、小規模な駐留部隊をそれぞれの任地へ戻す必要も生じてくるだろう。
 それは大規模作戦における戦力の減衰へとつながりかねないものである。
 助力を願う。

 要するに、北米は大きな行事で人手不足なので、便利の傭兵がひっぱりだこになっている様子が描かれていたが、彼女はそんな事になぞ興味なさそうに、机へしまってしまった。
「えぇと、結構な広さをお持ちですけど‥‥。この中の避難は、どうなってますの?」
 地図のロスに指をとんとんっと置いている聖那。ティグレスからの報告によると、現地のUPCを通じ、傭兵達に支持は出ていたらしい。ただ、それで全てが賄われていたわけではなく、取りこぼしの避難も行われているようだ。との事。と、そこまで聞いたときだった。
「副会長、カラスさんから通信が入っています」
「‥‥繋いでくれ」
 放課後のこの時間は、会長に様々な報告をしているので、緊急以外は控えて欲しいと、相手には言ってある。根は真面目なカラスの事だ。おそらくそれなりの事が発生したのだろう。
『すみませんね、先輩。ちょっと、偵察任務で面倒なモンを見つけちゃったもので』
「構わない。何があったんだ?」
『画像、そっちに回します」
 ぺぺぺっと会長机にしつらえられたモニターが切り替わる。それは、今舞台になっているロスアンゼルスに程近い海上だった。つい先日、作戦上、キメラ達を駆逐できなかったサンタカタリナ島の周囲である。そこには、モササウルスによく似た形のキメラが、そのひれを右往左往させていた。数は3匹。しかも、見慣れない砲台を取り付けている。サイズからするとワームを改造したものだろう。海域はかなり深さがあるようだが、その分、どこから出てくるか分からなかった。
『これだけじゃないんです』
 画像が再び切り替わる。向かう先の海岸には、まるで駆り立てた人々を待ち受けるかのように、あるキメラが、立ちふさがっていた。
「これは‥‥ハーピー?」
『そのようですね。どうやら、モサ達の上位種にあたるようで。数は多くないんですが、何しろアレですから』
 画像がズームアップされる。そのハーピー達の足元には、どういうわけか恍惚とした表情のまま倒されているUPCの兵士達。
「魅了、ですね」
『向こうの好みそうな体型ですから。それで、逃げ遅れた避難民達を何とかするように指示が出ているんですけど、海上にこいつらがいると、うかつに船出せなくて。今回、相手が相手ですし、UPCにもあんまり無理をいえないんですよー』
 先ほどの文章には、こう会った。戦力を集めるということは、他方で戦力が引き抜かれる場所もあるということでもある。小さな町などに駐留する小規模部隊からの戦力が引き抜けば、出没する野良キメラなどへの対応力が低下してしまう‥‥と。
「シェイド討伐‥‥。傭兵達のリッジウェイも数に限りがありますし‥‥。そうだ」
 それを聞いた聖那、ぽむっと手を叩いた。そして、にっこりと笑顔で告げる。
「‥‥キャスター准将を呼んでください」
 困った時は年寄りに聞け! と言う事らしい。

 呼び出された准将、話を聞くなり、大声を上げる。
「なぁにぃぃぃ? ガッコの小型艇を、外行けるように改造しろぉ?」
「あれなら、たくさん乗れますし、安全です」
 いや、乗れるだけだろうと言うツッコミはさておく。カンパネラには、ラスホプから通う生徒の為に、小型の飛行艇が用意されていた。サイズから小回りが利くのは確かなので、これを足がかりに、モササウルスの討伐と、出発した避難民の護衛に使えるようにして欲しいと言うのが、聖那のお願いだ。
「その間、ガッコの送り迎えはどうするんだよ」
「こちらでどうにかします」
 日付を指定し、その日は寮に泊まるなり、翔幻での発着を許可するなど、対応策はあるようだ。
「わぁった。そう言うことなら何とかしとく。ただ、資材運びや現地の掃除までは面倒見切れん」
「それはこちらでどうにか致しますわ」
 つか、自前で用意しろということだろう。

『海上で待ち受けるモササウルスと、それを仕切っているハーピー達を除去します。足場には学園の小型艇を貸す事になりました。いると避難できないので、なんとかしてください』

 なお、機体や資材の持ち込みは出来るだけ傭兵達で賄って欲しいそうだ。
 どこも台所事情は厳しいと言う事だろう。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
威龍(ga3859
24歳・♂・PN
百地・悠季(ga8270
20歳・♀・ER
シン・ブラウ・シュッツ(gb2155
23歳・♂・ER
ハミル・ジャウザール(gb4773
22歳・♂・HG
フィルト=リンク(gb5706
23歳・♀・HD

●リプレイ本文

 それぞれのKVに乗った傭兵達は、該当の海域へと向かっていた。
「早々にご退場願いたいものですね」
「被災行為は最小限に抑えたいしね」
 穏やかな口調でそう言うシン・ブラウ・シュッツ(gb2155)。百地・悠季(ga8270)も、会長である聖那から依頼された事件という事で、とっとと安心な場所を提供したかった。
「機体が変わると、なんだか落ち着きません…。でも、今後に備えそろそろ慣れておかないといけませんよね…」
 フィルト=リンク(gb5706)、海中戦に向けて機体を変えていたらしい。が、中々慣れない様で、所在なげに周囲を見回していた。
「避難する人たちの安全確保‥‥大事ですよね! その為にも‥‥頑張らなきゃ‥‥ッ!」
 ハミル・ジャウザール(gb4773)、普段の話し方と変わらないながらも、ぐっと拳を握り締めている。と、そんな中、フィルとがぼそりとこう答えた。
「しかし、魅了…掛かると、どういう感じになるのでしょう…」
 ちょっと、ほんの少しだけ興味がある模様。横から百地が「掛かってみれば分かるんじゃないかしら」とか言っている。
「んと、いるのは海のモササウルスと‥‥島のハーピー‥‥あれ? 何でハーピーが‥‥モサの上位なんでしょう‥‥??」
 素朴な疑問を浮かべるハミル。が、その理由は実際見て見ないとわからないだろう。
「避難民を無事救出させる為にも、邪魔になるものは排除しておく必要があるからな。まあ、微力を尽くすとしようか」
 すでに、避難民がまだいるという町には、別の傭兵達が向かっている。彼らを安全に脱出させる為にも、そう呟く威龍(ga3859)。
「えと、全体はこれでいいでしょうか?」
 そこへ、シンが今回の作戦ベースを、皆に通信する。モニターに映し出されたミッション表には、モサを先に殲滅した後、上陸しハーピーを撃破する旨が書かれていた。場合によっては前後するそれを、3班にわけて挟撃すると書いてある。班分けはA班:威龍、藤田あやこ(ga0204)・B班:フィルト、百地・C班:シン、ハミルと割り振ってあった。
「では、各機幸運を祈ります」
 シンがそう言ったのを合図に、傭兵達はそれぞれの戦場へと散って行くのだった。

「まずは‥‥モサ、ですね。いったい‥‥どこに行ったんでしょうか」
 ハミルが、空中からモサを探している。が、波打つ水面は、光を乱反射して、肉眼では良く分からない。バグアの妨害波が激しくなっている事から、すぐ近くにいる事は確かだったのだが。
「やはり空中からだと見えづらいですね。少し高度を下げましょうか」
「は、はいっ」
 シンに言われ、水面の波が確認できるギリギリの高度まで下げるハミル。管制の経験はないが、管制の仕事は見た事があるので、何とか索敵をこなそうと思う彼。そうして、目視で周囲を見回していると、遠くでまるでサメの群が回遊するがごとく、特徴ある三角ヒレが見えた。
「あれは‥‥」
 それは、シンも同じものを見つけたらしい。数を確かめる為、水中へ向けて目を凝らした。と、その水中に、長く細いモノがかすかに見えた。
「砲台が付いてるって事は、該当しているのはアレですね。気をつけてください」
 シンがそう言う。まだ撃つ気配はないが、警戒しておいたほうが良さそうだ。それは、ハミルも伝わり、該当箇所を確認する。
「気になりますね。もしかして、他に仲間が‥‥」
 回りを見回した刹那、足元から光が発射された。それを見たシン、慌てて機体を旋回させる。
「避けてっ」
「わぁぁっ」
 ハミルもそれに続き、ちょうど左右に分かれた真ん中を、青白い光が扇状に分かれていた。かすった機体が、衝撃でエラーを発進している。それを確かめながら、モサのところまで戻ると、既に海中へ逃げた後だった。
「しゃれになりませんね‥‥、法則性があるのかもしれません」
 対空能力まであり、潜行深度も結構なもの。パターン化しているようには見えなかったが、非実弾へ行きの存在を、シンはハミルに伝えるよう指示するのだった。

 その報告は、まず追い立てる役であるA班に伝えられた。
『こちらハミル。モサを発見。シンさんが追いかけてますが、既に交戦状態です。すぐに作戦を開始してください!』
「了解しました。やっぱり、空からだと無理があったみたいですわね」
答えたのは先頭を滑るように潜航するあやこだ。爆雷を積んでいるとはいえ、やはり餅は餅屋。自分達の出番と言ったところだろう。
『こちらシン。敵の警戒機を確認。やはり、タダでは通してくれないようです。気をつけてください』
 と、そこへ上空を旋回していたシンから、警戒が発せられた。どうやら騒ぎを聞きつけて、巡回のワームが、様子を見に来た模様。未だに制空権を奪われている証だった。
「本隊がこないうちに、何とかしましょう」
「心得た」
 が、あやこはそう言って、周囲の状況に目を凝らす。ハミルの報告から察するに、まだただの偵察部隊だ。と、威龍もそう言って、ビーストソウルを水中へと躍らせている。そこへ、あやこのソナーがエラー音を発し、ごぼごぼと気泡が大きく視界に写っていた。
「おいでなすったわねー」
 ジャミングで姿こそ見えないものの、すぐ近くにいるようだ。同じ状況に、威龍もあっているようで、彼が「さて、どうする?」と指示を問う。
「こっちから敵へつっこむ義理はないわ。まずは相手の出方を見るわよ」
 敵の接近は許したものの、自ら突っ込んではいけない。そう思ったあやこ、相手が仕掛けてくるのを待つ作戦のようだ。
「そうだな。武装は限られてるんだし‥‥と」
 距離的には中距離のようだ。そう判断した威龍は、ガウスガンをセットし、いつでも撃てるようにする。と、その直後、強い衝撃が二人の機体を揺らした。
「向こうも小手調べ‥‥かしら」
 シン達の遭遇した砲とは特徴が違う。射程も、被弾時のダメージも小さいそれは、自分達で言うところのマシンガンのようなものなのだろう。流石に普通の魚やトカゲと同じというわけではなさそうだ。
「何とかおびき寄せられれば‥‥。わぷっ」
 後方には、待ち伏せ班である百地とフィルトが待機中だ。そこまで引っ張りこまれるより先に、相手方から青白い非物理砲が発射された。強い衝撃と共に、機体がエラーをがなりたてる。どうやら、シン達が被弾したその砲を使い始めたようだ。
「音波砲あたりと思ってたけど、この頭痛は、どうやら違うみたいね‥‥」
 予想とはだいぶ違うようだ。自分の射程が届かない場所かあの攻撃を防ぐ為、ジグザクに泳いでいるが、衝撃は絶え間なく襲い続けており、そのせいか頭痛まで起きていた。
「確実に仕留めたい所だが‥‥深度に注意しろ」
「わかってるわよ☆ そぉれ!」
 ガウスガンで牽制するあやこ。進路を変えたところで、スナイパーライフルを打ち込む。連射の聞かないD−06は、そのたびにリロードを要求してくる。その間の牽制を威龍に任せていた時、ハミルから通信が入る。
『あやこさん、避難民達が、船に乗って出発したそうです』
 該当の町にいる住民の事だ。ミッション表を見ると、かなり前倒しになってしまっている。
「ええぇ、早くない?」
 まだ、扇形の陣地に敵を追い込んでいない。ハミルの報告では、敵の手により色々あって、予定よりも早く出向せざるを得なかったらしい。
「相手も考えているみたいね」
 中々うまくいかないものだ。しかし、ならばなおの事、ここで失敗するわけには行かない。
「確実に追い詰めたい所だが、な」
「乱戦上等っ」
 そう言いながら、2人はモササウルスのいるであろうエリアを囲むように深度を上げる。と、彼らも回りこまれぬよう、近づいて来た。そのせいか、海の底が見えてくる。その様子に、あやこはにやりと笑た。
「チャ〜ンス! いくわよ、サーベイジ始動!」
 海底に降り立ち、人型へとチェンジする。ごぼりと泡だつそこへ、モサが獲物にしようと迫ってくる。そんな彼女を守るように、威龍からホーミングミサイルが放たれ、周囲の光景を真っ白に染めた。
『こちらハミル、爆雷行きます。退避してください』
『シンです。ハーピー達が既に活動を開始しているので、注意してください』
 上からは、そんな報告が耳に届く。ばしゅうっと盛大な泡が上がり、上から降ってくる爆発物。少し離れた場所で、稲光のような色のプラズマ弾が投下されていた。音と光で、各個の状況が分からないが、百地には逆に敵の位置が分かりやすかった。
「あのあたりね。派手に行くわよ」
 そう言うと、彼女は初手からいきなりパニッシュメントを発動させた。妨害でざらついていたモニターがクリアになり、爆雷と援護射撃で視界の聞かなかった海域が、手に取るようにわかる。
「一斉射撃、いきます!」
 クリアになった視界に、フィルトがいっせいに弾を乱射する。砲台は、こちらには向いていない。しかし、新たな増援にその砲台がくるりとこちらを向いた。
「反撃、来ます!」
 その砲台の動きを見ていれば、射線は予想できる。そう思ったフィルト、予想着弾地点から逃れるように、脇へと逃れた。
「気をつけて。接近されたら向こうの方が有利よ!」
 砲台の向きに気を払っていたのは、百地も同じだ。その射線上にいないよう、彼女もまた、反対側へと逃れて行く。
「通常の方は、砲塔が向いている先しか攻撃出来ないはず‥‥」
 そう呟くフィルト。が、直後、異変が起きた。発射されたそれは、距離こそないが、扇状に広がったのだ。
「ちょっと、まっすぐに飛んでこないわよっ」
「それぞれ、特徴が違うのかもしれない‥‥」
 文句言う百地に、そう答えるフィルト。ばしゅうっと飛んで行った青白い光は、海面まで達しているが、威力はさほど大きいようには見えなかった。
「く、潜られたか‥‥」
 その威力で追い払って行った直後、威龍がそう呟く。姿を消して行くモサは。ビーストソウルにも対応しきれない深さへと身を躍らせていた。
「追うわけに行かないわね。手傷は負わせたと思ったのだけど」
 残念そうに言う百地。敵の状況を確かめるに、処理できたと考えるほうが良さそうだ。
「先にハーピーを牽制した方が良さそうです」
 フィルトもそう言った。あの体では、体当たりなどの物理的な心配をされることもなさそうだ。砲台の事は気になったが、来ないならそれで良い。
『全機、該当の浜辺に向かってください。先に安全に上陸させた方が良さそうなので』
 シンからの誘導を契機に、彼らはハーピーの待つ浜辺へと向かうのだった。

 ハーピーの待ち受ける浜辺は、それさえなければ、リゾート地と言っても過言ではなかった。
「きぃぃぃぃ」
 盛大に奇声を上げるハーピー達。何故それがモサのいる浜にいるのかはわからなかったが、何か異変を察知している事は確かだ。
「全て退治しているわけじゃないが、モサが上陸してくる気配はなさそうですね」
 その浜から少し離れた場所に、KVを止めるよう指示するシン。このままモサが来なければ良いのだが、念には念をと言う奴で、戦闘空域ではない場所で、KVのハッチを開く。
「敵に悟られないうちに、電撃戦を仕掛けた方が良さそうだ」
 同じ場所に威龍も着いていた。奇襲には、見つからない事が上策である。他のメンバーも、それぞれの場所からこっそりと島へ上陸していた。
「嫁にされる前にとっとと除去るわよ!」
 トレンチコートを翻し、ちゃきりとエネルギーガンを取り出すあやこ。浜と岸壁を隔てる木々の隙間から、ハーピーを狙い定める。
「あ、いたいた。シンたちはもう少しかかるって」
 そこへ、違う場所から上陸した百地が合流してくる。そして、同じ様にあやこの相対しているハーピーの様子を見た。
「数は‥‥8匹? 増えてない?」
 確か、あまり多くないと聞いた覚えがある。もう少しよく数えなおしてみると、浜の向こう側にモサらしき影。どうやら、傭兵達の攻撃で上陸を余儀なくされたようだ。
「かもしれません。あ、各自、集合したようです」
 ハミルが状況を教えてくれる。それに頷いた百地は、あやこに目で合図すると、まずガトリングをぶっ放した。
「きぃぃぃぃぃっ」
 気付いたハーピーが金切り声を上げる。それは脳みそを直接揺さぶるような悲鳴だった。頭がくらくらし、思考回路を奪って行く。
「男女見境なく盛るなんて電波ね。電波には電波増幅を!」
 木々の影にもぐりこんだあやこが、その木と自身のトレンチコートで身を隠しつつ、エネルギーガンを打ち込む。しかし、ハーピーも羽を撒き散らしてその攻撃を防いでいた。
「あの羽、すぐ再生するみたいです。気をつけてください」
 フィルトがその羽が、時に防具となり武器となる事に気付いた。その直後、羽はまるで細いナイフのように傭兵達へとぶつけられる。避けた所に降り注ぐ、魅了の技。あやこ、慌てて森の中に逃げ込む。
「向こうから見えなきゃ魅了も光線技も出来ないでしょ」
 が、残念ながらこちらもうかつにエネルギーガンを撃てない。仕方なく距離を取るあやこさん。援護射撃はフィルトだ。
「きぃぃぃぃ!!」
 そんな彼女達を追撃するべく、距離を詰めてくるハーピー達。しかし、その行軍をさえぎるように、シールドを片手に百地が立ちはだかる。振り下ろされた爪をはじき返し、流し斬りを叩き込んだところ、一匹はそのまま退散とあいなった。
「切り裂ければいいんだがな!」
 追いついた威龍が、改造した突撃しようガトリングをお見舞いした。そうして、浜辺の林とを行き来していた直後、反対側から、きらりと光る銃口が向けられる。
「残念ながら、そちらばかりではありませんよ」
 シンの声がして、浜辺を一発の弾丸が駆け抜けた。背後から撃ち抜かれた格好となり、どうっと倒れるハーピー。これで残りは3匹。
「一目ぼれされる前に振るわよ」
 一気に肩を付けたいあやこ、そう言うとと、百地の持っていたガトリングシールドに、練成強化を施す。
「本当は後方援護のはずなんだけどね!」
 それでも、逃げ道をふさぐべく、両断剣の強化を施す彼女。そして、フィルトとシンが牽制を行っている間に、狙い撃つ。発射されたそれは、味方の援護もあってか、2匹を血祭りに上げていた。
『敵、離脱を確認しました』
 半分に減らされたハーピー達は、追撃をやめ、島の奥深くへと飛び立って行く。ハミルの報告からも、もう大丈夫なようだ。
「女に貰われる位なら爺さんに嫁ぐ方がマシよ」
 何とか撃退し終え、あやこさん。ぼそりとそう呟くのだった。