タイトル:【浪漫探求】二輪ON二輪マスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/18 08:46

●オープニング本文


 バイクには2種類ある。
 アナログなバイクと、デジタルなバイクだ。
 前者は古いバイクに代表される、多少の知識さえあれば、かなり奥まった部分まで解体くらいは出来るシロモノ。後者は、専門的な知識がないと、ビス一本外すのすら技量がいるシロモノだ。
 准将の研究室‥‥と言う名のガレージには、翔幻とバイク形態にされたリンドブルムが置かれ、その脇に広げた設定図、あと冷め切ったコーヒーと、いくつかのケミカル用品や工具等が散乱し、その機体のしたで、准将が呻きながら転がっていた。
「うーん、陸戦型だけじゃ、もうあるしなぁ‥‥。次モデルつーほど進化してねぇしなー」
 生きてはいるようだ。
 設計図を片手に呻く准将。と、そこへお茶菓子を運んできたミクが、顔を出す。
「ど、どーしたん? そろそろ死に掛け?」
「ばぁか、まだくたばるには20年はえぇよ。ちょっくら作業中」
 ごろごろと、背中に敷いた作業用の移動台が音を立てる。油で汚れた軍手をぽいっと放り出した准将は、ミクが持ってきたいちごリーフパイにかじりついている。
「バイク変形だけじゃ浪漫しかないから、却下食らうしなぁ‥‥」
 どうやら、准将は、そこまで考えた後、煮詰っていたようだ。ミクがコーヒーを淹れ直し、首をかしげる。
「おじーちゃん、なに作ってんの?」
「‥‥バイクで乗るバイク」
 意味のわからない顔をしているミクに、准将はこう解説してくれる。
「ああいや、バイク型KVに手ぇ付け直そうと思ってなー。そのまんま変形機構だけつけると、需要が限定的過ぎるって却下食らったし」
 サンドリヨン開発時の経緯である。それに、対応するのに最小サイズが4mとか言われるし。
「けど、翔幻もそろそろお古になってきたし、AUKV対応のニュートラルな機体として、装着した人型の状態で運用するのに適した形なら、なんとかなりそーかなーと思ってなー」
 元々、バイクの基本的な構造というのは、さほど変わらない。人の手でやっていたものを電子化しただけのこと。カタログを紐解くと、やたらと横文字が並んでいるのを見れば、なんとなくわかるだろう。例えば、オイルの設定を電子制御にしてみたりと言った感じだ。
 なので、単純に『大きなバイク』と言うのは、技術的にはさほど難しくなかったりする。ようは、既存のものを、細部に至るまで【大きめ】に作り、そしてバランサーの調子を整えれば出来上がる。
 問題は、それをいかに『KV的に使えるか』がネックなのだ。
 もともと、飛行機とバイクの構造は『空気抵抗を抑える』点においては、似通っている。飛行機をイメージしたバイクなんてモンも存在するわけだから、KVと同じ機構で、手足を生やすくらいは、21世紀初頭にも確立されている。そんな『とりあえず的な機体』では、そろそろ傭兵達に申し訳ないので‥‥と。
「み、みく。難しすぎてよくわかんない」
 長々とそう語る准将に、目を白黒させるミクに、ジジィは「阿修羅だののドラグーン版だよ」と身も蓋もない解説をしてくれた。どうやら、最近、初期配布がS−01等から変わった影響を受け、据え置きになっている翔幻からチェンジしようと思ったらしい。
「まぁ、実際使うのは傭兵だしなー。需要が確認できれば、供給許可下りると思うんだが‥‥また頼んでみるか。ミク、依頼書任せた」
「わかったぉー」
 さくさくと書類を作成するミク。程なくして、本部に公示される。

『翔幻に変わる、ニュートラルなドラグーン推奨機体を開発したいので、ご意見徴収』

 平たく言うと、そう言うことである。
「ここででた意見を取りまとめて、UPCに発注許可を取り付けに行くそうだぉ」
 ミクが解説してくれる。
「上手く行ったら、本当にミクも乗れるバイクが出来上がるかもしれないし。その為には、みんなのパゥワァが必要なんだ。これも集めてきてね☆」
 そう言って彼女が差し出したのは、署名用紙。より多くの賛同者を集める為だそうである。

●参加者一覧

流 星之丞(ga1928
17歳・♂・GP
三島玲奈(ga3848
17歳・♀・SN
竹林娃鳥(ga4534
21歳・♀・SN
瑞姫・イェーガー(ga9347
23歳・♀・AA
火絵 楓(gb0095
20歳・♀・DF
美空(gb1906
13歳・♀・HD
鬼道・麗那(gb1939
16歳・♀・HD
ミク・ノイズ(gb1955
17歳・♀・HD

●リプレイ本文

「ちょっといいですか? ドラグーン用の新配布機体について、署名運動にご協力ください」
 本部の前で、黄色いマフラー靡かせながら、笑顔で署名を促すジョー。会議の場所は、その本部にある会議室になった。
「で、宿題は出来たのか?」
「これだニャ」
 ピンクの鳥さん姿の火絵 楓(gb0095)がそう言って、持っていた書類を見せる。若干よだれの跡で文字が滲んじゃったりしてるが、見ないふりだ。
「ふむ。搭載武装案の方を重視か‥‥。寝オチったわりには、しっかり考えてるな」
 てへっと笑顔になる楓。ほっぺがぴんくに染まってる。
「先に本体の方を確定しないと、これが載せられるかどうかわかんねぇな」
 バイク形態に異論はない。むしろそのタイヤ分を存分に生かそうと、搭載武装を考えている。詳細は後で、他の搭載案と一緒に検討しようと、准将は本体の仕様書をめくる。
「スペックは‥‥と」
 それには、回避>防御、生命>錬力。攻撃>命中>知覚>抵抗の順の数値にする事が描いてあり、搭載量を翔幻よりも上げるのを希望していた。
「重武装にすると、せっかく回避上げても落ちるんだが、構わないのか?」
「その為の搭載武装にゃっ」
 ごーろごろと喉を鳴らすようにして、鳩胸をそらす楓。
「じゃーん、これこそが美空が考えたサイコーのバイクKVなのでっす」
 2番目に出したのは美空(gb1906)だ。笑いながら出したその書類には、なんというか、小学生の僕の考えた最強のKVみたいな風の企画書とイラストが描いてある。機体名欄には、オールラウンダーと書かれ、変形機構を排除したコアユニットに、オプション装備を組み合わせる事で、陸海空と戦える汎用性の高いKVとなっていた。
「一番の問題は、フレーム換装がまだ技術確立されてねぇよ。やるとしたら、アクセフレーム一個消費で、アイテム扱いだなぁ」」
 システム的には面白いんだが、美空の出してきたフレーム案には、コアユニットKVにセンサーと操縦系を、陸戦には足回りのボーナス、空戦には飛行システム、海戦には水中戦用のボーナスをつけていたが、そうすると、都合4体を開始時にプレゼントとか言う、貰いすぎな状況になってしまう。ただ、整備のしやすさや、宇宙に乗り込む事を考えた各種フレームを、『鎧』として採用するには、賛成のようだ。
「けど、そうすると能力が大幅に低下‥‥」
 コアユニットKVの戦闘力の低さを指摘する美空に、流 星之丞(ga1928)がこんな事を切り出す。
「では、3段階変形してもらうと言うのは、どうでしょうか」
 初期配布を考えると、空を飛べないのは厳しいと、彼は主張する。なので、人型、バイク型、さらに飛行型の三種類が必要だと。
「だよねぇ。両方欲しいよねぇ‥‥」
 竹林娃鳥(ga4534)もそう言って賛同する。戦場は、何も舗装された綺麗な道路ばかりではない。むしろ、少ないと言っても良いだろう。空を飛べば良いんじゃ‥‥と言うのも、ちらりと頭をよぎったが、制空権をしっかり握っているとは思えない。
「伸ばした両手と膝で折り曲げた足の間にタイヤと駆動パーツを挟み込むようにして、バイクにチェンジ。タイヤは人型時は肩か両腕に盾のように付いていて、一部差し替え変形です」
 てきぱきと、転がっていたAUKVの試作型プラモデルを折りたたむジョー。が、准将はむりやり魔改造しちゃったプラモを見て、ボソッと一言。
「それ採用したら、そいつを作ってるプラモ会社が怒鳴り込んできちまうわ」
 どうやら版権的な理由で、どっちかに絞るしかなさそうだ。
「バイクよりは、スノーモービルに近い形状の方が良いんじゃないかな。思い切って格闘性能たたっ斬ったんだけど」
 柿原ミズキ(ga9347)が出してきた案では、人型にならない状態で、バイク型と飛行型に特化してある。能力は命中と回避が高く、防御力と生命力が低め。装備力はR−01に近い。どちらかというと、軽戦士的な機体のようだ。
「ふむ。この形だと、今までなかったしな。問題は、人型に出来ないって事と、コストで初期機体じゃねぇって事だが」
 陸上形態がバイクなのは言うまでもないが、飛行形態はまるで西洋の凧のような形になっている。射撃や爆撃など、ヒットアンドアウエイに重きを置いた、奇襲撹乱機体のようだ。で、細かいお手手は、マニュピレーターみたいなので我慢する模様。
「私のも、似たような感じですわねぇ。さすがに、初期期待が陸戦って言うのは、初心者の敷居が高すぎますし‥‥」
 鬼道・麗那(gb1939)もそう言って、自分が用意した提案書を出してきた。搭載力が翔幻よりになる事、通常形態がトライク型になる事以外は、ミズキとさほど変わらないが、こちらは戦闘アームをつけて、空中で格闘武器を使えるようなデザインになっている。
「ドラグーンの位置づけが、今ひとつ明確でないので‥‥。強襲任務を前提にしてみたのです。初期の操縦値リスクを補う為のドラグーン特別機能を搭載して、AUKVで搭乗すると、通信が強化されるようにしてみたのですが‥‥」
 その流線型のボディは、空に特化してあった。錬力を余分に消費する事によって、さらに機動力が上がっている。
「楓も、人型は放棄した方がいいとおもうー」
 寝てるんだか起きてるんだかわかんない声で、楓もそう言った。が、それにはジョーが反対意見を唱える。
「んー。そうでしょうか。初期配布機体である事を考えて僕は反対です。まずは人型基本かなと」
「だよなぁ‥‥」
 准将も、どちらかというと人型は捨てたくない模様。バイクと飛行機だけって、何かロボットものっぽくないダロと言うのが、その根底にあるようだ。
「後、操縦席をバイクのコクピットに似せるのはどうでしょうか。ドラグーンの方だと、最初は外れてて、AUKVをそのままドッキングさせて操縦とか」
「一理あるな‥‥」
 頷いた准将、でかい紙に『シート外す』と書き込む。
「偵察の為には、機動力のあるKVは必要ですよ。支援機をプラスすれば良いんじゃないでしょうか」
 そこへ、三島玲奈(ga3848)がそう提案してくる。アースクエイクや、バグア兵が潜入している事を考えると、地上戦の重要性は否定できない。特に、彼女の小隊では連名によって声高に叫ばれていた。先のDRで、敵軍に地上発令所を襲撃された事も影響しているらしい。
「デフォルト2台は無理だろ」
 機動力のある地上偵察KVと、支援機種を提案する彼女に、准将は首を横に振る。
「そっかなー。人型変形に関しては、ケンタウロス型で良いと思うんだけど‥‥」
 彼女の提案ではこうだ。リッジウェイとスカイスクレイパーの中間を埋めるようなタイプ。従来の人型KVでは歩行が鈍足であり、装輪形体では格闘戦に難がある。頑丈なメトロニウム製車輪を付属し、走行性と格闘性を高めようと、変形後の姿はタイヤを履いたケンタウロスという結論に至った模様。
「人間の頭に馬の体にタイヤの足‥‥。妖怪になっちまうんだが‥‥」
「そこはちゃんとこーする感じで!」
 玲奈が出してきたのは、盾に出来るメトロニウムホイールと、アキレス腱とも言える場所に、スプリング状のSESサスペンションが搭載されている。
「何かますます初期機体じゃなくなってきちまったなー」
 検査を受け、カンパネラに来て、入学して渡される機体である事を考えると、いささか偏っている気がするそうである。
「軽量級で、小隊の皆にも賛同受けたのに?」
「用途が限定されんのは、汎用機とはいわねぇだろ」
 主に偵察や遊撃に特化している仕様書。アクセにデフォで地殻測定器、錬力を消費する事で、移動力を大幅に上げる、スタビライザーの地上みたいな特殊能力がつけてある。
「ここまでやったら、ぜってぇバランス維持できねぇが、まぁやってみるか‥‥」
 起動特化はともかく、地上スタビライザーは、いくつか改良の余地こそあれ、面白そうだと思った模様。地殻測定器は保留になった。
「じゃあこっちはどうなんです?」
 もう1つ、怜奈は機体案を出してきた。パージ可能なサイドカー付属の、重装備タイプである。リッジウェイのサポートメカみたいな立ち居地だった。
「おまい、まだサイドカー諦めてないのな」
「当たり前です。小隊の希望だし」
 力説する怜奈さん。特殊能力欄に、行動力1で3目標同時に一斉攻撃可能なモンを書いてある。その分、錬力は盛大に消費するんだが、どうもこの娘さん、派手に動き回る兵器がお好みな模様。
「多足機をベースに、通常使用する足にでかいタイヤつけらんないのか?」
 ミク・ノイズ(gb1955)がそう言い出した。だが、彼女の提案する通常使用する足とは別に、車輪を取り付けた補助足を取り付けたタイプにすると、バランスを取る為に、どうしても4本以上の足が必要となる模様。
「うーん‥‥。移動補助期待があれば良いんだと思ったがなぁ‥‥」
 飛行機能を取っ払う事には反対のミク。空戦とバイク変形の両立を考え、通常より時間をかけ、人型を廃して変形。飛行型はその空力抵抗の低さから、その分簡単に飛行形態に進化出来る様にしたいと提案したのだが、さすがにそれは技術的に難しいようだ。
「うーん。あ、そうだ。じゃあこんな搭載武装はどうかにゃ。スペックで回避と生命力と攻撃を重視して、搭載力を挙げたいー」
 そう言って楓が、設定図と称したイラストに、でかいタイヤを書き加える。あらかじめ強化したそれを、最大速度でぶつける武装だ。またがったまま攻撃は出来ないので、体当たりした時のダメージをタイヤごと大きくしたらしい。名前はメガホイール。と、同じサイエンティストの娃鳥が、こう自身の案を述べた。
「装甲を厚くすると、起動性能が落ちますからねぇ。知覚系の兵器を内臓すると言うのが、一番だと思いますよ」
「軽くするなら、内蔵能力で対応だろうなぁ。やっぱ高軌道機体にするしかないかー」
 まずはタイヤの幅を太くして‥‥と。そう書き加える准将。
「あと考えたのは、サテライトシステムとかですが‥‥」
 小型の衛星を射出して、地形データや敵の分布を分かりやすく3Dにして、見やすくするというものだ。
「それなら、私の考えた龍脈とも繋がりそうですわね」
「でもまぁ、浪漫兵器ですから」
 麗那が、自分の考えたKVに搭載する『予定』の特殊能力を引き合いに出す。人型を廃し、高軌道型にしたいのはほかと一緒だったが、特殊能力として、AUKVのリンク機能を生かした通信網を付随させる事を提案していた。これは、初期のリスクを、集団で補う為のものらしい。
「どうやって衛星打ち上げんだよ。制宙権ばっちり握られてるのに」
 上げたとしても維持出来ない模様。低空では重力に縛られるし。
「やっぱり、幻霧か後学迷彩引き継ぐとか、ソードウィングとか欲しいな。あとは、ファランクスとか」
 傭兵達の案では、高軌道派が多い。それに追加オプションをつけて、汎用性を高める感じだ。ソードウィングは、人型の件をどうするか決めないと無理が、身を守る術としてのファランクスなら、つけられるかもしれないそうだ。
「多弾装ドリル式ロケットランチャー‥‥」
「アイテム扱いで良いなら申請しとく」
 玲奈が推奨兵器をぼそっと言った。小型のドリルが雨アラレと頭上から降り注ぐ浪漫兵器である。一応、MLRSとゆー兵器らしい名前を考えては見たのだが、准将はしっかりはっきりと『小型ドリル乱舞』と書いてしまった。
「なぁ爺さん。いくら支持を集めようが机上の空論じゃ意味がない。どうせならば、確実に形にしたいからな。無理な案は無理だとはっきり言ってもらいたい」
 一項に意見のまとまらない会議に、痺れを切らしてミクが言う。麗那も、たくさんの署名を積み上げて、こう訴えていた。
「その通りですわ。私だって、小隊のお友達や他の兵舎の方々、なによりたくさんの人達にご賛同いただいたんですもの。無駄になっては困ります」
 小隊の数だけで言えば9小隊、人数にすれば4〜50人はあるだろう。怜奈の方も、小隊が丸ごと名を連ねている。暫し考え込んだ准将、重い口調でこう答えていた。
「‥‥わかった。ORシリーズと同じで、通るモンは通るし、通らねぇもんは通らねぇ。現時点で分かる事だけ言うとだ」
 相手はまだ若い少年少女ばかり。それゆえ、傷つけないよう気を使っていたのだろう。准将なりに。
「まず悪路走破用偵察機としての位置づけなら、陸戦専用の方が通りやすいだろう。ただ、それだと初期機体としては絶対にとおらねぇ。それに、仕様書をそっちに偏らせると、ちと推し辛い。で、汎用化する為に、空を飛ばすとすれば、まずバイク型が消える」
「それじゃ意味ないであります」
 美空がずびしっとツッコむと、准将は「戦略っつーのはそんなもんだ」と、お上の都合である事を示唆する。
「で、ミズキが盛大にお勧めしてるバイクと飛行型だが、巨大ロボットに乗れるのが売りのUPCで、人型じゃありませんって、通用すると思うか?」
 実も蓋もない言い方だが、ジョーの指摘にもあるように、やはり人型にならないのは、厳しいのかもしれない。
「さすがに入ったばかりの子は、そんな限定能力じゃ、やりたがらねぇ。一応、要望には出しとくが‥‥」
 だが、実際多脚動物型は販売されている。ので、いくつかバリエーションを持たせて、提案してみようという判断のようだ。
「これだけ署名があると言うのに? ですか」
「ショップ売りの新機体としてなら、ちょっと弄るだけでどうにかなりそうなんだがな。交換機としては、問題ねぇし」
 麗那の問いに、そう答える准将。付属武装と内部構造を少し弄る必要があるが、コンセプト的にはまったく問題ないようだ。
「形状としては、エイとかで問題ねぇだろ。こいつを見てもらえりゃ分かると思うが、近い形してやがるし。問題は、ヤンキー仕様なんだけどな」
 既存のステルス機や、ビッグスクーターもまた、似たような形状をしているので、大雑把なデザインはそれくらいで良いだろう。サイドカーは美味くつけられれば良いんだが‥‥と、言っていた。
「爆撃機としての能力はカットですか」
 そのミズキが、残念そうに言った。准将が、爆撃作戦そのものがキライだと知ったのは、グラナダの報告書を見てからである。
「よし、ふるいにかけよう。どうも絞りきれん。まぁ、次の依頼でだが」
 准将がそう決断した。細かい事は別の話だが、何とかしようと思ったらしい。
「これが実現できれば、ドラグーンはあと10年は戦えるであります」
「何だか高機能で高くなりそうかな。でも今までには無いとは思うな。オフロードが得意なのって無いし」
 ミズキも見積もりを組んで見たが、それなりに『いいお値段』になりそうだと予想。
「早く戦争を終えて普通のバイクで風になりたいですね‥‥」
 どこまでも広がるまっすぐな路を、愛車と共に駆けたいと願う娃鳥だった。