タイトル:【VD】まぐろInチョコマスター:姫野里美

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/03/01 00:10

●オープニング本文


●奪われたチョコレート
 バレンタイン期間は、バレ活を行う告知があって数日。届いたチョコレートは、公平を期すため、図書館に運ばれた。寺田は『中道派』を表明している。賛成にも反対にも厳しくあたるとの事なので、彼の管理する閉架書庫へと運ばれた。
 ところが。
「まったく。悪い生徒ばかりで困ったものですね」
 自分の事はさっくり棚上げて、眼鏡を直す寺田。普段余り生徒を立ち入らせていないそこには、壁に大きなひび割れが走っている。その誰が付けたのかわからない傷跡からは、正体のわからない銀色のワイヤーがいくつも伸びていた。
「おや?」
 その隙間から覗く、光る目。
「こんにちは」
 めがねを直しつつ、彼がそう言った刹那、それは隙間から抜け出てきた。一見した所、小さな赤い金属の塊みたいなモノだ。しかし、その塊からまるで昆虫のような手足が出てくると、あっという間に散らばった本に取り付き、体から床に散らばっていたのと同じ様なワイヤーを放出する。それは、積み上げてあったチョコレートに取り付き、からめとってしまった。
「おやおや。誰ですか。こんなところに試作品を放置したおばかさんは」
 顔色1つ変えない寺田先生。どうやら、話に聞いていた実験用システムが暴走しているようだ。
彼らは、チョコを抱えたまま、穴の向こう側へと消えてしまう。覗き込むと、どうやら各種ライフラインの供給エリアへ繋がっているようだ。彼らはそこで、まるで不定形の卵のような姿になると、で、エリアの奥深くへと消えて行った。
「まぁ、バレ活の内容としては、会長の意向に従う事になりますかね」
 確か、そのライフラインパイプは、演習場から会長の部屋まで、カンパネラ学園中を張りめぐっているはずである。それは、会長の言いだした『バレ活』にもマッチしている状況になるのだった。

●湯にマグロ、腹にチョコ
 さて、その頃。カンパネラの湯では。
「えーと、会長が湯煎用のシステムを借りたいって?」
「ああ。とりあえず掃除しとけば良いらしい。湯を張って、中に寸胴を入れるんだってさ」
 掃除係の生徒が、空っぽになった湯船の1つを、そう言って磨いている。一応、食品を扱う都合上、直接触れなくても、丁寧に掃除する必要があった。
「よし、流すぞー」
 一通り磨き終えた生徒が、そう言って蛇口を捻る。大きな湯船なので、それなりに大きな蛇口が付いている。普通なら、そこから勢いよく湯が流れるはずだったのだが。
「うわ。なんだこれ!」
 どういうわけか、出てきたのは茶色く濁った液体だった。
「誰か黒湯の配管間違えたのか?」
「いや、あれは反対側だろう!?」
 湯には、体に良い成分の入った湯船もあり、そちらは黒湯と呼ばれて別のセクションに繋がっている。しかし、出てきたのはそれではなさそうだ。
「なぁ、なんだかどこかでかいだ事ある匂いじゃないか?」
「確かに‥‥」
 ある程度たまった湯をかいで見ると、ほのかにチョコレートの香がする。どこから繋がったのかわからないが、生徒が蛇口を閉めようとした刹那だった。
「うわぁっ。吹いたー!」
 蛇口が、音を立てて破裂する。勢いよく噴出する熱湯。その上に、鎮座しているのは。
「ま、まぐろ!?」
「何でこんなところにいるんだよ!」
 まるで噴水の上でふんぞり返るかのように、魚体が見え隠れしている。半透明のその体には、すっぽりとチョコレートを入れたダンボールが収められており、メタリックなボディを誇示していた。
「失礼しますよ。先ほど、チョコレートを飲み込んだ試作機が、こちらに向かってきたのですが‥‥」
 そこへ、寺田が姿を見せる。が、チョコレート噴水の上で元気に跳ね回るチョコ入りマグロを見て「遅かったようですねぇ」と一言。
「あ、あれはいったい?」
「どこかの不届きものが、チョコレートを丸ごと確保しようとして‥‥失敗したようですね」
 平然と言い放つ彼。そう言っているあいだに、チョコ入りマグロは、巨体を翻して、湯船の中へダイブする。
「って。どっか行っちゃいましたよーー!」
「カンパネラの湯からは出て居ないでしょう。チョコレートが融ける前に、何とか捕獲しなければ」
 見れば、チョコマグロは水路を伝って、他のセクションへ向かっているところだ。この湯には、他にもいくつもの温浴施設がある。もちろん、熱を利用した研究用の施設もある。使えなくなるのは大問題だ。
『あら、面白そうじゃないですか。その子捕まえたら、ボーナスポイントが付く事にしませんこと?』
「なるほど。ただ捕まえて来いでは、生徒達に反感を買ってしまいますしねぇ」
 連絡を受けた聖那の弁に、寺田はにやりといつものように笑みを浮かべ、すらすらと依頼を表示させる。

『不届き者が、争奪戦に使うチョコレートを、試作品に封じ込めて、どこかへ持って行ってしまったようです。ある一定の場所に潜伏している可能性がありますので、バレ活として、試作品を捕獲してください』

 その文章がモニターに映し出されるのと時を同じくして、表示横の排水路を、マグロが水音けたてて爆走していくのだった。
 ‥‥伝説の木に向かって。

●参加者一覧

メアリー・エッセンバル(ga0194
28歳・♀・GP
愛輝(ga3159
23歳・♂・PN
夏 炎西(ga4178
30歳・♂・EL
アヤカ(ga4624
17歳・♀・BM
志烏 都色(gb2027
19歳・♀・GP
五條 朱鳥(gb2964
19歳・♀・DG
鈴木 一成(gb3878
23歳・♂・GD
アーサー・L・ミスリル(gb4072
25歳・♂・FT

●リプレイ本文

 アーサー・L・ミスリル(gb4072)の案で、2人一組になって巡回する事になった。
「青いところは、水量調節が可能なエリア。番号と名前は、水路の管理責任者よ」
「わかったニャ。五条さん、行くニャ」
 メアリー・エッセンバル(ga0194)から、水路の管理者リストと、図面を受け取って、そう答えるアヤカ(ga4624)。一緒に行くのは五條 朱鳥(gb2964)だ。
「これ持ってって。食べちゃ駄目よ」
「むう。おつまみにちょうど良さそうな板チョコニャのに」
 ミカエルに積んである板チョコを、うらやましそうな目で追いかけるアヤカ。そんな彼女に、五條は「捕まえたら、あげるって」と言いながら、担当セクションの熱湯管理をチェックしている。
「えぇと、お湯が出そうな場所の管理は‥‥」
「あの人がちょうど良さそうニャ」
 アヤカが指し示したのは、ちょうど事務所に入っていくところだった、作業着姿の生徒だ。ミカエルを止め、2人はその事務所でもって、聞き込み調査を開始する。それによると、この辺りで研究を行っていた教師の1人が、銀色の大きな影を見たと言って、寝込んでいるそうだ。
「それ、どこで見たのニャ?」
 アヤカが場所を聞くと、その生徒は地図上にマルをつけてくれる。少し離れた場所ではあったが、五條は彼女をミカエルの背中に乗せ、該当のエリアへと向かった。
「いないニャー」
 きょろきょろと周囲を見回すアヤカ。だが、魚影は影も形も見えない。
「そう簡単に見つかるとは思わないけど‥‥。何やってるの?」
 と、五條はそんな彼女が、ミカエルから板チョコを下ろして、なにやら籠のようなものの下にセッティングしているのに気付く。
「罠ニャ」
 つっかえ棒に紐が付いていて、引っ張ると倒れるアレだ。やたらとでかい籠は、おそらく学食から借りてきたボウルだろう。
「んじゃあ、こっちふさいでおくわねー」
 水路に槍を突っ込んで、逃げ道をふさぐ五條。そこへ、反対側の通路から、水音が聞こえ始める。見れば、水路の水がほんのりチョコレート色だ。
「あ、いたニャ!」
 その姿は、まるで、すし屋に置かれたマグロのオブジェだ。1つだけ違うのは、お腹の部分‥‥中オチやトロに当たる場所が、透明な素材で出来ており、中にチョコレートが詰まっているところだろう。
「待つニャ!」
 アヤカ、その口調どおり、猫科の猛獣が狩猟をするように、身を低くして覚醒する。空調の行き届いているカンパネラの演習場では、風上も風下もないのだが、そこは本能とゆー奴なのだろう。
「OK、カモンあたしのチョコっ!」
 五條もまた、向かってくるメカマグロに対応するように、ミカエルを起動させる。装着した直後、
アヤカは肉食獣が追い立てるように、水路のメカマグロめがけて飛び掛る。が、猫に引っかかれ、びよんと跳ねたマグロは、板チョコの置かれた籠に向かってダイビング。
「「あーーー!」」
 籠が金属的な音を立てて跳ね飛ばされ、板チョコが水の中へと消えた。
「失敗しちゃったニャ」
 てへっと爪を元に戻すアヤカ。籠は真っ二つに割れていた。どうやら、あのメタリックなボディには、かなりの強度があるようだ。
「逃げられちゃっただけよ。追うわよ!」
 が、五條はそう言ってミカエルをバイク形態に戻すと、後ろにアヤカを乗せ、マグロが消えた方へと、愛機を走らせるのだった。

 2組目は、鈴木 一成(gb3878)と愛輝(ga3159)のペアだ。
「だいたい、バレンタインは個人の自由だと思うんだよな」
 ぶつぶつとそう言っている愛輝。
「まぁ、そう思えない方もいらっしゃるんですよ。きっと」
「ならば、俺達も女性達の頑張りに答えるとするか‥‥」
 出なければ、こんな騒ぎに発展などしないだろう。一成のセリフにそう答えた愛輝は、首から提げた専用カードに『推進派』と記入していた。
「このエリアの管理生徒は、あのクラスですね」
 で、彼らはそのまま、そのエリアの管理生徒を尋ねる。カンパネラの湯は広い。その為、ある程度の区画ごとに、担当が決まっているようだ。いわゆる『掃除当番』みたいなモンである。
「失礼します。ちょっと伺いたいんですが‥‥。試作品を探していまして‥‥」
 その掃除当番の管理部員に、そう尋ねる愛輝。マグロの出現場所を確かめると、やはり一度は出現しているようだ。
「詳しくお願いします」
 そう言って、続きを話させる彼。それによると、移動する時に水音は立てるが、あくまでも大きな魚がざばざばと進んでくるレベル、また、アヤカ達からの連絡では、チョコレート・トラップを粉砕されたそうなので、ある程度の効果はあるようだ。
「‥‥何か残して行ったものはありますか?」
 数時間前に通り過ぎたと言う水路を指し示す掃除当番。まだ掃除していないと思われるそこには、冷えて固まったチョコレートがこびりついていた。
「色々と不思議な事件ですね」
「他に何か手がかりは‥‥。あ、濁ってます」
 感想を言う愛輝の手助けを使用と、一成も水路を覗き込んだ。と、その水が急速に濁り始める。
「すみません。水栓、閉めて貰って良いですか?」
 次第に濁り度数は濃くなっている。どうやら近くにいるようだ。それを知った一成は、掃除担当に言って、一時的に水栓を締めさせる。そして、念のため救急セットを用意し、誘導用のチョコレートを引っ張り出す。
「大体の位置は‥‥」
 水に手を突っ込むが、素のままではよくわからない。仕方なく、覚醒する一成だが。
「ヒィーーハァーーー!! 近いぃぃぃ。近いぜぇぇぇぇ! ひゃははははははっうわははひーっひっひっひ!!」
 超ハイテンションな笑い声を響かせて、その距離を告げる彼。
「‥‥素敵なキャラだ」
 マグロに向かって移動を開始する一成を追いかけながら、愛輝はそう呟くのだった。

 さて、そうしてあちこちのチームに、姿を見せているマグロ。と、そんな中、メアリーと夏 炎西(ga4178)は、最初に現れた図書館セクションに赴いていた。
「どうやら湯船からだんだん樹に向かっているみたいね」
 メインの配管から、一番近い湯管を全開にし、濁りを確かめるメアリー。伝説の樹とは少し離れている為か、さほど濁りはない。
「水路配置図だと、ここを押さえれば‥‥」
 マグロの進入ルートは、ランダムだ。だが、犯人は現場に戻ると言う俗説もある。ので、メアリーは図書館に繋がる水路の元栓をぐりぐりと締めていた。
「製菓用チョコ投入しますー」
「スパークマシンΩ、準備します」
 彼女が元栓を締め、一箇所だけになったのを見て、炎西も攻撃がしやすいようにセッティングしている。これで、マグロの退路は絶たれた筈‥‥と。
「アヤカちゃん達のところは、数時間前に出た見たいよ」
 無線からの報告では、湯から校庭を突っ切って行ったそうだ。と、その直後、一成の高笑いが、図書館の外を通り過ぎて行った。
「あれは鈴木さん‥‥? いや、間違いないが‥‥。笑い声が移動しているな‥‥」
 多少驚いた顔をしつつ、窓から顔を覗かせる炎西。と、一成がマイク片手に、伝説の樹へと向かっている真っ最中だった。
「移動経路はこう‥‥。と言う事は、ここから先には入らない。伝説の樹に向かいましょう」
 どうやら、図書館にはこないようだ。そう判断したメアリーは、急いで伝説の樹へと向かうのだった。

 その頃、アーサーは、志烏 都色(gb2027)と共に、AUKVの研究棟で警戒を強めていた。
「‥‥アーサーさん?」
 その志烏に呼び止められ、はっと気付くアーサー。並んでいるAUKVのパーツについ見入ってしまっていたようだ。見た目はどうみても、バイクパーツを選んでいる若者である。
「なかなか、興味深い品だからねー」
「今はお仕事に集中、ですよ。‥‥終わった後で、見学させてもらいましょう?」
 ごめん、と一言謝るアーサーに、にこりと朗らかに答える志烏。仲の良い友達だから、この辺りは気兼ねなく言える。
「そうさせて貰うと嬉しいんだけどね。あ、連絡が」
 そこへ、愛輝から通信が入った。それによると、あちこちで囮に利用したチョコレートに反応しているようだ。それを知り、志烏は周囲を見回す。そこには、作業員達が持ち込んだおやつやら、薬品のようなものやら、甘い匂いを漂わせるモノが山ほどある。
「とすると、ここも危険ですね。研究員さん、解決まで協力願いませんか?」
 事情を説明する志烏。しかし、そう都合よく行くわけではなく、中には『止めるとまずい』水路もあるようだ。仕方なく、逆に水を全開にさせ、液体の様子をぎりぎりまで見守る事に。こうすれば、少なくとも誘導は出来る‥‥と。
「水がだいぶ濁ってきましたね。今です!」
 志烏の合図で、アーサーが一気に元栓を締める。覚醒のパワーで締め上げられた栓は、瞬く間にその水流を弱めた。直後。がんっという音がして、何か大きなモノがぶつかった衝撃が伝わってくる。
「誘導できたみたいだね。急いで向かいますよ」
 くるりと回れ右した先。それは、伝説の樹に水を供給する水路だった。

 志烏が行った先では、既にチームの面々が集まっていた。
「皆さん‥‥気をつけて下さいね」
 そう言って、警戒しつつ、捕縛班の側に控えるように、後ろへ回り込む志烏。と、運悪くそこにいたのは、バレンタインデーを前に、管理部秋山部長言うところの『不純異性行為』に及ぼうとした学生カップルさん。
「えぇい、潔く、寺田先生にお仕置きされて下さい」
 炎西が瞬天速であっという間に、カップルへ近づき、ぽいっと画面外へ排除してしまった。そこへ、ばしゃあんっと水音がして、マグロがその全身を空中へと躍らせる。
「はわわっ‥‥ホントにマグロだ‥‥っ!」
 慌てて覚醒し、持ってきたショートボウを打ち込む志烏。が、元々牽制がわりの矢は、マグロの進行方向に突き刺さるだけだ。
「こらぁっ。そこのマグロ、動くニャーーー!」
 そこへ、アヤカがまるで魚にじゃれ付く猫のように、爪を出し入れしている。完全に進路を止められた格好となったマグロだが、メカの証に、呼吸困難になってぷっかり浮かび上がってくるような姿にはならなかった。
「ヤァーハハハハ! さぁ、鮪が配水管の中を寮方面へと突き進む! 配水管の海は俺の海、まさに王者の貫禄だ!そこのけそこのけ鮪が通る!」
 その様子に、駆けつけた一成が、覚醒状態のまま、実況を開始していた。
(え‥‥別人‥‥?)
 その変貌ぶりに、後ろの志烏、思わず唖然としてしまう。しかし、そのすぐ後には、逃げる方面の地面に矢を放ち、マグロの動きを抑えていた。
「おおっとぉ、分岐だ、鮪、どうする!どうするのか鮪!右か左か左か右か!右だー!」
 一成の実況が、周囲に木霊する。見れば、メアリーがチョコを鮪付近の排水路に突っ込み水路へと誘導をかけている。そこへ、炎西がスパークマシンΩを発動させ、マグロはくるりと回頭した。
「伝説の木方面へと再び爆泳ー!!」
 どうやら、上手く誘導できたようだ。
「よし、誘導に引っかかった。釣り班は頼んだよー」
 アーサーがそう言って、進行方向へと合図する。「わかりました」と答え、槍を竿代わりに、チョコを取り付けたのは、愛輝だ。
「背鰭と腹鰭狙って! 其処がスピードと方向を調整している場所だから、其処を壊せば楽になる!」
 メアリーのアドバイスに、愛輝が槍竿を振るった。鼻先にぽとりと落ちたそのチョコへ、マグロがカプリと踊りかかる。
「釣り餌に見事に食いついたー!それでいいのか鮪、王者のプライドはどこへ消えたのかー!」
 いつの間にか、実況の一成には、紛れ込んだ新聞部がカメラを構えていた。が、彼はまったく気付かず、捕獲場面を実況し続ける。
「さあ行くぞ!一本釣り勝負!!鮪も負けじと意地を見せる!力と力のぶつかり合いはどちらに軍配が上がるのか!」
「とったどー!――――なんて、誰が言うかぁぁああっ!」
 どこかのバラエティ番組調に、力の限り陸上へと引っ張り上げようとする。
「揺れにタイミング合わせて! 衝撃を腰で吸収っ、足はしっかり鮪の腹を押さえる!」
 捕獲ケースを手に、アドバイスしているメアリーに、マグロからワイヤーが射出される。それはちょうど、メアリーの胸の辺りへと引っかかった。
「ああっとぉ、ここでワイヤーが射出されたぁぁぁ! しかも、狙ったように女の子ばかりの方向だーーーー!」
 いや、メアリーばかりではない。志烏や五條の服にも、ワイヤーが引っかかっていた。
「させませんよっ!」
「乙女の鉄拳制裁を食らえっての!」
 志烏がそれをナイフで切り落とす。五條は逆にそれを利用し、愛輝の方へと加勢するように引き寄せていた。
「いまだねっ。とりゃあああああっ!」
 アーサーが覚醒して、その背中へとジャンプする。ちくちくと体力を弱らせたマグロは、その飛び掛り攻撃から避けきれない。そこを捕まえたアーサーは、マグロにまたがり、その背びれを押さえ込む。その姿に、一成が興奮した様に叫んだ。
「なんと、まぐろデオだー!早春に跳ねる鮪に乗った王子様!!伝説のまぐろデオがここに再臨!!我々は今伝説の生き証人となったー!」
「うひゃああああ!」
 しかし、まぐろデオ中のアーサー、振り落とされないようにするだけで必死だ。三人がかりとなったそのマグロを、五條が引っ張りながら竜の翼を発動させる。
「陸上を‥‥‥‥なめんなぁー!」
 ばしゃあああんと尾びれが水から上がり、マグロがアーサーごと引っ張り揚げられる。そこへ、炎西が、疾風脚でもって命中を上げ、方天画戟でその頭上へと振りかざす。
「名の通りの性能を見せて頂きたい‥‥!」
 突き刺されたマグロ、もはや動きも鈍い。今がチャンスとみたメアリーが瞬天速と限界突破を発動させた。
「皆、振り回せーー」
「力の使い方が間違っている気もするが、郷に入っては郷に従え、だ!」
 愛輝もまた、同じ様にスキルを発動させている。そこへ群がる他の面子。
「せーーーの!」
 炎西の合図で、マグロの尾びれをつかんで引っ張り、反対側の地面へと叩きつける傭兵達。機能を停止したメカマグロが、用意したケースに押し込まれ、研究所送りとなったのは、そのすぐ後の事だった。
 なお、その後元に戻った一成、寺田智之(gz0131)に目を合わせずに謝り倒してたり、片づけをエスケープする奴がいたり、チョコを貰っている奴がいたりと、色々あったが、残念ながらテープが時間切れなので、割愛しておく。