タイトル:ボリューム・ゼロマスター:水君 蓮

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/04 16:40

●オープニング本文


「隊長は、アクティブノイズコントロールという技術をご存知でしょうか?」
「‥‥?」
 隊員からの突然の質問の意図が理解できないのか、隊長と呼ばれた男性は何も答えなかった。
「能動騒音制御と呼ばれる技術で、発生した音と逆位相の音を発することで騒音を打ち消す仕組みらしいです。
 僕も良くは知らないのですけれど、この間テレビで高速道路の遮音壁としても使っていると言ってました。
 でも実際には完全に音が消える訳ではなく、ある程度抑えられる、という所なんだそうですよ」
「‥‥?」
 隊員の説明の意味する所が分からない様子で、益々隊長は眉間に皺を寄せていた。
「つまり、我々の技術力ではその程度、という事ですよ。
 それをバグアと来たら、こうまで完成させてしまうんですから、全く驚きですよ」
「‥‥!」
 隊長が怒りの表情で口を動かしているが、声は一切出ていない。
 否。声が出ていないのではなく、聞こえていないのである。
 そしてそれは、隊員にも同じ事が言えた。
 周囲は完全に音のない世界で包まれていた。

 ●数時間前
「あれ、ですかね」
 ヘリコプターから下を見下ろして、隊員が声を上げた。
 山間に囲まれた森の中に未確認のドーム状施設を確認したとして、UPC軍の二個小隊が調査に向かっていた。
 隊員の乗り込むヘリコプターの他に、もう1機ヘリコプターが同行している。
「情報に間違いはなかったな。よし、降下するぞ」
 隊長はドーム施設を確認すると、一緒に乗っていた隊員全員に降下命令を発し、ドーム施設への潜入作戦を開始した。

 ●数十分前
「意図不明の施設ですが、バグアの姿は一切確認できませんね」
 一通りドーム内部を探索し終えた後、隊員は隊長にそう話しかけた。
 ドームの内部は壁に沿うようにいくつかの研究機器の揃った部屋と、中央に広大な何もない部屋があるのみだった。
 隊員達は全ての部屋を慎重に調べたが、敵の痕跡は一切発見できなかった。
「恐らく何か実験を行っていたんだろうが、その情報がないんじゃどうしようもないな」
 隊長はしばらく悩んだ後、本部の指示を仰ごうと通信機を取り出した瞬間。
『う。あ、助けて、くれ‥‥』
 通信機の向こうから、同じ突入チームの隊員の声が聞こえてきて隊長は驚いた。
「どうした!? 何があったんだ!」
『やつは、音‥‥消す‥‥』
 息を吐きながら、辛そうに話す通信機の声に、隊員達は動揺を隠せない。
「状況が分からない! ちゃんと説明しろ!」
『‥‥‥‥サイレンサー』
 最後にその言葉を残して、通信機は完全に途絶えた。
 隊長は苛立たしげに「くそっ」と漏らして通信機を投げようとするが、すぐに冷静になってそれをしまった。
「とにかく、同行部隊の捜索を行うぞ」
 隊長の言葉に隊員達は改めて気を引き締め、銃を構えてゆっくりと移動を始めた。
 そんな中、例の隊員だけが不思議に思っていた。
 確かにドーム施設はそれなりに大きいが、同行部隊が敵と交戦したなら銃声の一つが聞こえてきてもおかしくないはずである。
 ドームの廊下は円形に繋がっており、例え逆位置にいたとしても、一切音が聞こえないというのは奇妙だ。
 隊員は言い知れない不安を感じつつ、前方を移動する他の隊員に続いて仲間の探索活動を続けた。

 ●数十分後
 ドーム施設を探索していた突入チームはほぼ壊滅。
 生き残ったのは隊員一名と隊長のみとなった。
 原因は簡単。敵がいたのである。
 そして現在も尚、敵の攻撃は続いている。
 それが現在の状況、無音空間である。
 どんなに暴れても、銃を乱射しても、一切音の聞こえない世界。
 たった一つ五感を潰されただけで、隊員は今自分が死後の世界にいるような気持ちだった。
 体力は消耗し、隊員も隊長も壁にもたれるようにして座っている。
 最早立つ事も叶わず、仲間を呼ぶ事も出来ず、二人は絶望感に支配されていた。
 そんな二人の前に、人間ではない影がゆっくりと現れる。
 隊員が何となく視線を向けてみると、そこにはライオンのような体躯をした巨大なキメラが牙を剥いていた。
 額の部分から鉄棒のような突起が飛び出し、背中にも背骨から生えたように二本の突起が飛び出している。
 しかし、隊員は一切恐怖心を感じていなかった。
 むしろ、やっとこの世界から開放されることに安堵さえしていた。
 隊員は自分の額に銃口を当てて引き金を引くように、キメラに向けて銃弾を放った。

●参加者一覧

香原 唯(ga0401
22歳・♀・ER
時任 絃也(ga0983
27歳・♂・FC
遠石 一千風(ga3970
23歳・♀・PN
宗太郎=シルエイト(ga4261
22歳・♂・AA
雑賀 幸輔(ga6073
27歳・♂・JG
黒江 開裡(ga8341
19歳・♂・DF
シャーリィ・アッシュ(gb1884
21歳・♀・HD
七海・シュトラウス(gb2100
12歳・♀・DG

●リプレイ本文

 高速移動艇に揺られる事数時間。
 一行は目的地に到着すると、改めてその全景を眺めた。
 報告にあった通り、緑が生い茂る森の中に一際異質な金属製のドームが建設されている。
 ドームは完全な半球状ではなく、少し押し潰したように緩やかな曲線を描いていた。
 唯一の出入り口部分はドームから飛び出したように設置されていて、どことなく『隔離棟』というイメージを彷彿させる。
「無音が厄介だな。これだけでもあれだがそれに、暗闇が付いたら最悪だろうな」
 時任 絃也(ga0983)は独り言のつもりで呟いたのだが、それは全員の耳に届いており、不安を煽る結果となってしまった。
 この中に、最高危険度に指定されたキメラ──通称『サイレンサー』が待ち構えている。
 突入を前に固唾を飲み込んだ者は少なくない。
 どれだけ覚悟していても拭えない不安や恐怖というものは存在する。
 だが、それらに制され、行動を起こせないのでは覚悟を決めた意味がない。
「相手はかなりの強敵、念入りに準備しないとね」
 遠石 一千風(ga3970)が言いながら改めて自分の武器や道具の点検をして、他の者もそれに続く。
 一千風の気遣いは不安に表情を曇らせていた仲間を救った。
 どれだけ敵が強くても、こちらが準備や警戒を怠らなければ問題ない。
 一千風の言葉にそういう意味が含まれている事を感じ、不安を感じていた者はより一層真剣に再確認を行った。
「さぁて‥‥獅子狩りといこうか」
 宗太郎=シルエイト(ga4261)は全員の準備完了を確認すると、ランス「エクスプロード」を肩に担いで突入開始の号令を発した。

 重厚そうな金属の自動扉を抜けると、しばらくは天井の低い狭い直進路が続き、そこを通過すると空間は一気に広大となった。
 事前報告にあった外周に沿うように円形を描く廊下は思ったよりも幅があり、天井も見上げる位にかなり高い位置にある。
 照明装置や空調機能は未だに作動しているようで、内部は至って快適であった。
「俺が先行する。合図と閃光には注意していてくれ」
 雑賀 幸輔(ga6073)の言葉を合図として、事前に相談して決めていた陣形を組んで行く。
 一行は全方位を見渡すように円陣を組むと、慎重に探索を開始した。
 いつ無音状態に襲われても良いように、ハンドサインによる意志の疎通と連携行動を行っていく。
 途中で扉を発見すると、七海・シュトラウス(gb2100)が扉の横に待機して、シャーリィ・アッシュ(gb1884)に突入命令を下す。
 その後、他の者達が一斉に中へと進入して行き、内部の安全確認を実行する。
 その方法で3つ目の部屋に突入した時、一同は音信不通となった調査部隊と遭遇した。
 全員見るも無惨な肉塊へと変貌しており、飛び散った四肢は最早どれがどの隊員のものであったかなど見分け出来ない。
 香原 唯(ga0401)はあまりの惨状に眉を寄せつつ、静かに前に出て調査部隊の冥福を祈った。
「‥‥仇は必ず‥‥」
 その後ろでシャーリィは悔しそうに奥歯を噛み締め、無意識に言葉を漏らしていた。
 一行は警戒を怠らないように注意しながら、同じように追悼を行って部屋を出た。
 以降も今までと同様の手段で部屋を確認して行きながら、廊下を時計回りに進んでいく。
 面積は大きいが部屋数の少ないドームの調査は、1時間もしない内に再び玄関へと戻ってきてしまった。
「何も出てこないのですよー‥‥」
 七海が不服を唱え、他の者達も同調している空気である。
 黒江 開裡(ga8341)は今こそ得意の駄洒落を言う場面だと踏むと、「コホン」と咳払いして注目を集めるように仕向けた。
「おっと、音が聞こえないなぁ。‥‥うん、誰にも聞こえてないからツッコみもない、と」
 自分では会心の洒落だと思い、目を閉じて胸中で何度も頷いておく。
 しかし周囲の対応は冷めたもので、本当に誰一人でツッコミを入れてくれず、おまけに苦笑いすらも聞こえてこない。
 流石に開裡が不安を募らせ始めた時、初めて開裡は異変に気付いた。
 今しがたまで聞こえていたはずの周囲の音声が、いつの間にか全て消去されている。
 元々静かな廊下ではあったが、空調の稼動音や機械の動作音がどこでも僅かに聞こえていた。
 しかし現在、一切の音が世界から失われ、まるで聴覚が麻痺してしまったような錯覚を受ける。
 現に目の前の仲間達は何か言おうと口を動かしているが、その声は誰にも届く事はない。
 あまりに自然で突然の無音空間だったので虚を突かれたが、これは間違いなく事前報告にあったサイレンサーの特殊能力である。
 周囲を警戒するように絃也がハンドサインを行い、一行は背中を合わせるように改めて円陣を組んで周囲に視線を向けた。
 調査を開始するために進んで行った道。
 大半を捜査し終えて戻ってきた道。
 一同は廊下を隅々まで見渡し、サイレンサーの姿がないか視覚に意識を集中させる。
 この展開は誰もが予想外であった。
 『音が消えれば敵も近くにいるはずだから、すぐに見つけることが出来る』という一行の考えは、油断以外の何物でもなかった。
 サイレンサーを常に音を消すのではなく、そのタイミングを自らの意志で制御出来たのである。
 そしてこのような奇襲攻撃を想定していなかったことも、ミスの重複であった。
 ミスは焦りを生み、焦りは更なる失敗を発生させる。
 音のない世界で緊張状態に追い込むサイレンサーのその行為は拷問と呼ぶに相応しかった。
 しかし、サイレンサー自身はそのような事など全く意識しておらず、ただ己ために思考を働かせているに過ぎない。
 静かに時が流れ、一同は無駄に練力を消費していく。
 こちら側から仕掛けるべきかと何人かが思案し始めた時、急に辺りが薄暗くなった。
 一瞬停電かと心配したが、廊下の先にある電灯は全て正常に動作している。
 嫌な胸騒ぎを抱えながら、ゆっくりと一行は頭上を見上げた。
 一定間隔で並ぶ天井の埋め込み式電灯の1つ──傭兵達の真上に設置されたものが、『何か』に覆い隠されている。
 その『何か』は鋭い眼光で一行を睨み付けると、天井に突き立てていた四肢の爪を開放し、重力に従って地上へと急降下した。
 無論、そのままでは下に待ち受ける一同が下敷きとなるため、慌てて一同はその場を離れた。
 刹那、サイレンサーが激しい風圧を伴って、一行の中央に降臨する。
 一行が戦闘準備を整える暇もなく、サイレンサーの最初の攻撃が開始された。
 飛び掛るような前足による一撃を右へ放ち、宗太郎の体を易々と殴り飛ばす。
 宗太郎は間一髪の所で武器による防御に成功したが、殴打の衝撃で壁に強く叩きつけられた。
 さらにその際に後頭部を打ち、意識を朦朧とさせる。
 幸輔は宗太郎の身を案じながら、携帯していた照明銃をサイレンサーの顔の下に向けて発射する。
 直後、放出された弾丸が床に当たって弾け、眩しい光を炸裂させた。
 本来ならば事前に使用する旨をライトで伝えるのだが、そんな暇はなかった。
 結果、サイレンサーの視界を奪う事は成功したが、閃光は仲間にも効果を発揮してしまった。
 おまけに視覚を奪われたサイレンサーは冷静さを失い、無闇やたらと周辺へ攻撃を始めてしまう。
 普段であれば目標を見定めない攻撃など当たりはしないのだが、現在は敵、味方共に視界を失っている。
 運の悪い事にシャーリィ、七海、一千風がその被害に遭ってしまった。
 防御する事も回避する事も叶わず、3人は宗太郎と同じように壁に殴り飛ばされてしまう。
 その後も何度かサイレンサーは攻撃を行ったが、それらは全て空振りに終わった。
 一分ほど経過してやっと視界が戻ってくると、サイレンサーは絃也を飛び越えて廊下の先へと逃亡してしまった。
 同じ頃に一同も元の視界に戻り始め、目の前の状況に驚きを隠せない様子だった。
 壁にもたれるようにして倒れている4名は皆かなり負傷しており、唯が慌てて『練成治療』を発動させる。
 すぐにでもサイレンサーを追跡したいと思うものは誰もいなかった。
 皆、無音とそれを制するサイレンサーに恐怖を抱いたのである。
 そして、自分達の計画と連携の甘さを恥じていた。

 負傷した4名の意識が戻るのを待つと、一同は改めて会議を行った。
 奇襲を危惧して一度ドームを脱出し、最初の時と同じように扉の前に並んでいる。
 一千風と絃也はドアの横にあるロックを破壊してキメラを封印することを提案したが、他の者達はそれに反対した。
「閉じ込めるなどという選択肢は不要‥‥切り捨てるのみ!」
 中でも怪我を負わされたシャーリィは憤慨している様子で、一向に考えを譲ろうとしない。
「人は誰でも心に音楽を持っているのですよ。
 音はなくともリズムさえ掴めれば恐れることは何もないのですよー」
 同じく七海も反対意見を提唱していたが、こちらは随分と落ち着いている様子であった。
 一同は口論にも近い論議の末、封印推奨派の妥協によって終結した。
 それは、これ以上戦力が削られた場合は引き摺ってでもドームを逃げ出し、扉の封印を行うというものだった。
 一向はその結論で納得し、改めてハンドサインの確認や作戦を立て直した後、再びサイレンサーを討伐するために動き出した。

 ドーム内は先程の事件が嘘のように音で包まれていた。
 奇襲を警戒して一応天井を見上げてみるが、そこには爪跡が残っているだけでサイレンサーの姿はない。
 先刻と同じような方法で陣列を整え、部屋を確認しながら廊下を進んでいく一同。
 そうして廊下を半周した時、何かが動いた音が扉の向こうから聞こえ、一気に一同に緊張が走った。
「ここは‥‥」
 開裡が扉を見て無意識に呟き、一同も同じような考えを浮かべる。
 今までドームの外側に向けて扉は並んできていたのに、その扉だけはドームの中心に向かって作られていた。
 おまけにドームの中央に進める扉はそこだけで、他には一切出入り出来るものがない。
 それこそが報告書にあった『中央の何もない広大な部屋』であり、先ほど一回調査した時に内部の構造は把握していた。
 一同は無言で視線を絡ませあった後、呼吸を整えて一挙に部屋の中へと押しかけた。
 扉を中心に散開するように扇状に広がり、部屋の隅々まで気配を配る。
 その部屋は半球状に造形されていて、ドームの中に小さなドームがある感覚である。
 本来ならば壁は白一色だったのだろうが、今は肉片やら血飛沫やらで所々彩られている。
 その中央、まるで一同の登場を待ち詫びていたかのように、サイレンサーが座していた。
 一同が戦闘態勢に移行するのと合わせるように、再び周囲から音がなくなる。
 しかし、サイレンサーは腰を浮かしただけで、攻撃を仕掛けてこようとはしない。
 傭兵達はハンドサインで連絡を取ると、こちら側から攻撃を開始することを決断した。
 一斉に攻撃出来るように、宗太郎がエクスプロードを地面に突き立て、その爆発を合図とする。
 無音の世界で、それぞれが何かしらの思いを口から溢れさせながらサイレンサーに詰め寄っていく。
 サイレンサーは迫り来る一行を静かに見据え、その距離が後僅かという所で行動を開始した。
 サイレンサーは空気を大きく吸い込むと、一瞬だけ無音状態を解除し、その隙にドーム全体に響き渡る大轟音を発した。
 無音状態で機能が縮小していた聴覚に、突然限界を超える音量が無理矢理届けられ、一瞬にして全員の視界が真っ白になった。
 元々無音の世界で進化を遂げてきたサイレンサーに、聴覚というものは存在しない。
 故に視覚や嗅覚が発達しているのだが、その補足は充分過ぎるほど備わっていた。
 まるで体内に溜め込んだ音を一気に放出するように咆哮を上げ、無音の世界に足を踏み入れた者を蹂躙する。
 サイレンサーにはその咆哮がどの程度の大音量なのか測る術がなかったが、その有効性は本能で理解していた。
 現に目の前の傭兵達は皆鼓膜に激しい損傷を受け、その痛みと衝撃でまともに戦うことすら出来ない。
 ──唯一の例外を除いて。
 サイレンサーは初めて、表情と呼べるものを浮かべた。
 その顔に表れたのは、驚きと恐怖。
 傭兵達がもがき苦しむ中、一人だけ悠然と起立している者がいた。
 彼女の名前は七海・シュトラウス。
 事前に無音世界に慣れるために耳栓を装着していた彼女だけが、サイレンサーの隠し手に耐える事が出来たのだった。
 とはいえ、彼女はまだ傭兵となって間もない新人である。
 高い戦闘能力を誇るサイレンサーに立ち向かう行為は無謀と言えた。
 それでも、彼女はやるしかなかった。
 唯一無傷な者として、全員を守らなければならない。
 その使命感が彼女を突き動かした。
 彼女のこの行為が全員を救ったと言っても過言ではない。
 その後、聴覚がまともに機能しない一同がドームを脱出するまでサイレンサーの攻撃を防ぎ、最後に『竜の翼』を使用した突進でダメージを与えたのは彼女に他ならない。
 高速移動手段を応用した彼女の最後の攻撃はサイレンサーを廊下の奥まで弾き飛ばし、ドームの入り口を封鎖するのに充分な時間稼ぎを行った。
 サイレンサーが煩く何度もドームの扉を叩いたが、誰にもその音は届かない。
 一同は命の危機を脱した事に喜びつつ、損傷を受けた鼓膜が回復するまで誰一人会話を行うことはなかった。