タイトル:愛しさと切なさと嫉妬心マスター:水君 蓮

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/12/31 16:34

●オープニング本文


 年末年始。年の暮れに年の明け。
 この季節になると、人間は無性に寂しさと孤独感を覚えてしまうものである。
 街を歩けば幸せそうな笑顔の恋人と家族で溢れ、まるで自分だけが異世界の住人のよう。
 自分には素敵な恋人なんていないのに。自分には温かい家族なんていないのに。
 やがてその羨望は醜い嫉妬となり、邪悪な力を人に宿し始める。
『いっそ今年のクリスマスは中止にすべきではないか』
 誰かが囁くその言葉に、貴方は頷いていないだろうか?

 ある時、見事に先述したケースに当て嵌まった能力者が居た。
 彼は見ず知らずの他人を恨み、孤独な自身を憎しみ、世界を呪った。
 しかし、いくら嘆こうが、喚こうが、世界はその姿を変える事はない。
 だからといって無実の人間を傷付ける事がどれだけ愚かな過ちであるか、彼は知っていた。
(「それだけは絶対にしてはならない」)
 そういつも自身に言い聞かせていた。
 だが現実とは残酷なものである。
 ついに彼は衝動を抑える自信がなくなり、限界の時を迎えようとしていた。
 そんな時である。
 買い物のために活気溢れる街を歩いていたら、ある男に出会った。
 それは彼によく似た、孤独と憎悪の宿主だった。
 彼と男はお互いの瞳を一目見た瞬間、同時に理解する。
 『こいつは同じ種類の人間だ』、と。
 そうと分かれば何も遠慮はいらなかった。
 抑え続けた衝動を開放し、獣の如く咆哮した。
 それは、彼が先であったか、男が先であったか、それとも同時であったか。
 そんな些細な事など一切気にならない出来事だった。
 檻から開放された二頭の凶暴な野獣が、互いの欲望を満足させるためだけに暴れた。
 戦闘中、相手の攻撃を喰らいながらも、男達は終始嬉しそうであったという。

 それからであろうか。
 毎年この時期になると、郊外の廃墟にて大喧嘩大会が開催されるようになったのは。
 主催者の一言で集まった者達が一斉に喧嘩を始め、己の欲望を満たそうとするのである。
 最初は警察も止めようとしていたのだが、次第に規模が大きくなり、ある程度のルールが構築されると容認するようになり、ついには警察関係者まで参加するにまで至った。
『今宵は無礼講。ただその凶悪な衝動を解き放てばいい』
 笑顔で主催者はそう語り、飛び掛ってきた男の顔面に掌底を叩き込んだという。
 おまけにこの喧嘩大会はある程度治まると大宴会へと一瞬にして変貌し、夜通し馬鹿騒ぎをするとか。

 丁度今日がその大喧嘩大会の日なのですが、貴方はどうしますか?

●参加者一覧

ミア・エルミナール(ga0741
20歳・♀・FT
ベーオウルフ(ga3640
25歳・♂・PN
サヴィーネ=シュルツ(ga7445
17歳・♀・JG
ビッグ・ロシウェル(ga9207
12歳・♂・DF
まひる(ga9244
24歳・♀・GP
アリス・L・イーグル(gb0667
18歳・♀・SN
七ツ夜 龍哉(gb3424
18歳・♂・GP
エミル・アティット(gb3948
21歳・♀・PN

●リプレイ本文

 普段は人の近寄らない郊外の廃病院に、その日は溢れんばかりの大人数が押し寄せていた。
 最近フラれた者。己の限界に挑みたい者。暇潰しで参加した者。ストレスに悩まされている者。
 そこに居るのは様々な種類の人間だったが、皆目的は同一だった。
 即ち、『暴れ』、『弾け』、『砕ける』。
 自身の戦闘本能を解放し、ひたすらに暴力の波となる。
 その夜は身分も経歴も一切関係ない、ただ力と力のぶつかり合う、獰猛で謙虚な『祭り』が開催されようとしていた。

「今夜は例年よりも多くの方々にお集まり頂き、主催者としては大変嬉しい思いで御座います。
 今よりここは最低限度の規定のみが残された闘争地域となり、地域内の人間には皆その規定が強制的に適応されます──」
 騒がしかった病院内をたった一声で沈めると、主催者を名乗る男が院内放送を使用して挨拶とルールの説明を始めた。
 男の歳は四十代前半ほどで、質素でありながら高級そうな材質の衣装を身に纏い、その下に鍛え抜かれた鋼鉄の肉体を隠している。
 髭を生やしたダンディズム溢れる顔立ちをしており、礼儀正しい言動が無法者達を苛立たせはしたが、誰一人として飛び掛る事はなかった。
 何故ならば男の動きには一切の隙がなく、それでいて殺気には敏感に反応するため、安易に奇襲を仕掛ける事が出来ないからだ。
 仕方なく、その場に居る全員が大人しく男の言葉を聞き入れ続けた。
 だが男もそんな連中の心情を察しているのか、簡単にルールの説明を終えると、早速開始の合図に取り掛かった。
「それでは、皆様大変お待たせ致しました。
 これより内に潜む獣を檻から解き放ち、存分にお暴れ下さい!」
 直後、男の背後で影に隠れるように立っていた美しい秘書らしき女性が手元のゴングを持ち上げ、それに思い切り金属のハンマーを打ち付けた。
 『カーン』という小気味のいい音が病院中に響き渡り、喋っていた男のマイクがオフにされる。
 その時を待ち侘びていた者達は誰一人例外なく、同時に理性ある人間から本能のみの獣へと変貌し、行動を始めた。
 その中には無謀にも主催者に向かっていく者が数名いたが、主催者はそれを嫌な顔一つせず笑顔で迎え、無傷で全て迎撃するのであった。

 大喧嘩大会が催されて一時間としない内に、参加者の半分が再起不能の事態となった。
 その要因としては、興味本位で来た者と実力を試すつもりで来た者の増加が大きいと考えられた。
 前者で例年の流れを知らない者は早急に退場し、後者で力強き者は残り続けた。
 そんな敗者の中に、ビッグ・ロシウェル(ga9207)の姿もあった。
 彼は開始と同時に近くにいたとある能力者に決闘を申し込み、見事初戦で大敗した。
 しかし相手の情けのおかげで再起不能を免れた彼は、その心意気に甚く感動し、土下座をしてまで同行を申し出たのであった。
 特に深い考えがあった訳ではない相手──サヴィーネ=シュルツ(ga7445)は仕方なくその願いを受け入れると、彼と共に病院内を徘徊し始めた。
 サヴィーネは飛蝗に似た奇妙な形状の仮面で素顔を隠し、ビッグはボロボロのレザージャケットとパンツを着用しており、奇妙な容姿の二人組だった。
 特にビッグは外見も中身もまだ十二歳の少年なので、お世辞にもその格好は似合っているとは言えず、むしろ痛々しい印象さえ与えていた。
「汚してやる‥‥クリスマスなんてー!」
 おまけにそんな台詞を大声で言われては、苦笑を浮かべるなと言う方が難しい。
 その場に居た数名の人間が、思わず鼻で笑った。
 ピクリ、とその声に反応し、ビッグが周囲に視線を向ける。
「誰か俺を笑ったか?」
 その言葉に続くように、サヴィーネが仮面を人々に向けた。
「私の相棒を笑ったのはお前か? ‥‥私も笑ってもらおうか」
 サヴィーネから放たれる強烈な殺気に気圧されつつも、腕に覚えのある一般人達が勇敢にも二人に歩み寄って来た。
 殺気を感じつつも挑もうとする心意気は天晴だが、実力を見誤ったのは愚かだと言えた。
 耐え切れなくなったのか、一人がストレートのパンチを繰り出し、後を追うように他の者達も攻撃を仕掛ける。
 刹那、ビッグは拳を、サヴィーネは蹴りを、誰よりも早く命中させた。

 ビッグとサヴィーネが戦闘を行っている階の一つ上では、ベーオウルフ(ga3640)が老齢の能力者と対峙していた。
 全身皺だらけで細身だが健康な肉体をしており、実際の年齢よりは随分と若く見えていた。
 その実力は足元に倒れている一般人の山を見れば容易に想定出来る。
 ベーオウルフは礼儀正しく申請し、覚醒状態で戦闘を行う約束を取り付けた。
 老齢の能力者──リュウゴと名乗った老人はそれを快諾すると、ベーオウルフと同時に覚醒状態へと移行する。
 すると忽ちリュウゴの弱々しい肉体が一変。
 内側から溢れるようにリュウゴの肉体が岩のような筋肉質のものへと変化し、皺だらけの肌に張りが戻っていった。
 一瞬にして若々しく脳まで筋肉で覆われてそうな肉体へと変貌を遂げたリュウゴは、野太い掛け声と共に正拳突きをベーオウルフへと放つ。
 ベーオウルフはそれを素早く身を反らして回避すると、隙だらけの顔面目掛けて裏拳を仕掛けた。
 しかしリュウゴは事前にそうなる事を察知しており、素早く顔を横へ動かして攻撃を避けようとした。
 ベーオウルフにとって、裏拳は相手の実力を試すテストのようなものだった。
 その裏拳の軌道を即座に変更し、リュウゴのこめかみに向けて横に振るう。
 これにはリュウゴも驚き、慌てて右腕を裏拳を防御しようと構えた。
 ベーオウルフの真の狙いは、正にその動作だった。
 隙だらけとなったリュウゴの右の脇腹へ、半身を捻った膝蹴りを思い切り叩き込む。
 顔の横を腕で覆ってしまったリュウゴに、その攻撃を見切る術はなかった。
 ベーオウルフの一撃をまとも喰らい、リュウゴは脇腹を押さえながら数歩後退した。
 無論、ベーオウルフは止めを刺すために距離を詰めようとしたが、リュウゴの狙いはその行為であった。
 近付いてきたベーオウルフに向け、再度正拳突きを放つ。
 多少慌てたものの、ベーオウルフは問題なく正拳突きを回避することに成功した。
 しかしリュウゴは突き出した拳を素早く開けると、ベーオウルフの服を掴み、その行動を完全に制御してしまった。
 当然ベーオウルフは急いで抜け出そうとするが、リュウゴの握力はかなりのもので、まともに動く事が出来ない。
 空いている方の腕が持ち上がり、その拳が迫り来るのを冷静に見届けながら、ベーオウルフは尚も諦める事はなかった。

「サヴィーネ! ミア! どこにいるのっ!!」
 仲間の名前を必死に呼びながら、まひる(ga9244)が病院内を奔走する。
 声に振り向いた数人から何の警告もなしにいきなり攻撃を仕掛けられたが、彼女はその頭の上を飛び越えるように跳躍したり壁を走ったりして、全てまともに相手しなかった。
「腕試しどころじゃないよ、まったく‥‥。何処に居るの、まってなさい!」
 悪態を突きながらも疾走はやめず、仲間を呼び掛け続けるまひる。
 名前を呼ばれているミア・エルミナール(ga0741)は、そんな事など知りもせずに大男と正面からぶつかり合っていた。
 大男は二色の簡単な作りの衣装を装着し、顔の半分以上を柄の入ったマスクで隠している。
 誰がどう見ても、いつかどこかで見た事あるようなプロレスラーである。
 大男は一般人だったが、覚醒していないとはいえ能力者のミアとほぼ互角の勝負を展開していた。
 今も両の掌を合わせて、力比べの真っ最中である。
 とは言え、身長の高い大男の方がやや有利ではあった。
 このままでは押さえ込まれてしまうと考えたミアは、突然抵抗するのを止め、逆に相手の掌を引いて体勢を低くした。
 驚いて前のめりになった大男の股の間を抜け、体勢を整えようとする大男の首筋へ一撃。
 綺麗なフォームで踵落としを決めると、大男はそれだけで気を失い、そのまま受身も取らずに前に倒れた。
「ちょっと危なかったかも‥‥」
 ミアが額の汗を手の甲で拭って一息ついていると、そこへ丁度まひるの呼び声が響いてきた。
 まるで猫がご主人に呼ばれたように疲れも忘れて駆け出し、まひるの元へと向かっていく。
「まひママー!」

「フフフ‥‥このALICE様に歯向かうとは‥‥死ぬしかないなッ!」
 別の階層では、アリス・L・イーグル(gb0667)が実に楽しそうに戦闘を行っていた。
 既に腕利きと噂される者達を何人も倒し、その実力は充分に同じ階層の人間に知れ渡っている。
 それでも尚、彼女に挑む者は後を絶たなかった。
 しかしまともに相手をしていたのでは、彼女の身が持たない。
 そこで、アリスは閃くのであった。
「イーグル家‥‥いや、あたし達兄妹には伝統的な戦いの発想法があってな‥‥。ひとつだけ残された戦法があったぜ。
 それは! 『逃げる』」
 即座に反転し、廊下の角の向こうまで全力疾走するアリス。
 一瞬唖然とした後、憤怒の表情を浮かべて後を追ってくる挑戦者達。
 アリスの狙いは正にそこだった。
 怒りに駆られて正常な判断の出来ない挑戦者達を次々と罠に嵌めて葬っていく。
 それこそがアリス流の勝利への系譜だった。
 だがしかし、そんな彼女にも唯一誤算があった。
 それは──。
「うぐぉあああ!? なぁにぃぃぃ!? このALICEがァァァ!?」
 見に覚えのない地雷トラップが発動し、爆風に巻き込まれるアリス。
 彼女の唯一の誤算。それは、同じ考えを持つ者の存在をすっかり考えていなかった事であった。
 先に曲がり角の向こうで待ち構えていた人物は、そんなアリスの様子を見て不気味に微笑むのであった。

 眼前の相手を見定めると、男は諦めるように深く息を吐いた。
「女性とは戦いたくないんだけどね。仕方ないか」
 七ツ夜 龍哉(gb3424)が構え、向かい合った相手も同じく構えを取る。
「よっしゃ〜。あたしが相手だぜ! どっからでもかかってこぉい!!」
 エミル・アティット(gb3948)は早く闘いたくて仕方がないというように、ピョンピョンと小さく跳ねた。
 露出度の高いサンタ娘をイメージした衣服が乱れ、やや目のやり場に困る。
 既に大会が始まってから二時間以上経過し、こうなると残っているのはかなりの実力者のみである。
 最初は狭く感じられた病院内もすっかり自由に動ける空間が広くなり、エミルは自身の身軽さが活かせる事を喜んでいた。
 一方対立する龍哉はこれまでに何度も何度も戦闘を行い、大分疲労気味である。
 特にスタート直後に何故か集団で一斉に襲われたせいで、龍哉の体力はかなり消耗されていた。
「さっさと終わらせてもらうっ!」
 短期決戦を持ち掛けるように、龍哉が一声を放ちながら先制攻撃を行う。
 あっという間にエミルとの距離を詰めると、エミルの顎を狙って思い切り右足を振り上げる。
 そのまま倒れるように上半身を低くすると、地面についた手を主軸に独楽のように回転し、連続で回し蹴りを放つ。
 エミルは初撃を危うい所でかわした以外は上半身をバネのように左右に動かして避け、尽く龍哉の攻撃を外していった。
 そして次第に龍哉の蹴りの威力が弱まり、彼が疲れている事を察知すると、エミルは大きく一歩後退して龍哉と距離を開ける。
 その様子を見て龍哉が元の体勢へと戻ったのを確認すると、エミルは一気に走り始めた。
 凄まじい勢い迫り来るエミルに気圧され、龍哉は思わず蹴りを放った。
 しかしエミルはその蹴りを両手でしっかりと受け止めると、まるで曲芸士のようにその上で逆立ちをし、クルリと一回転して龍哉の頭に自身の足を添える。
 そのまま手を離して一瞬だけだが完全に龍哉の頭の上で直立した後、膝を折って屈み込み、龍哉の後頭部を全力で蹴り飛ばして前方宙返りをした。
 片足を上げた状態でバランスの保ち難い状態だった龍哉はこの衝撃を耐え切る事が出来ず、コンクリートの床に熱烈なキスをしてしまった。
 本来ならその程度の負傷では再び立ち上がる龍哉だったが、度重なる疲労で意識を留めて置く事が出来ず、悔しい思いを抱きながら龍哉は失神した。
 そしてその瞬間、大会の終了を知らせるゴングがうるさい位に幾回も院内に響くのであった。

「──それでは、乾杯!」
 主催者が高々と手元のジョッキを持ち上げると同時に、病院内の至る所からジョッキのぶつかる音が鳴り響いた。
 大会終了後、集中治療が必要な重傷者以外は全員廃病院へと舞い戻り、大会の後の宴を楽しんでいた。
 酒を飲み交わし、用意された豪勢な食事を喰らう。
 場所がさきほどまで戦闘が行われていた廃病院のために少し複雑な心境の一行であったが、すぐにそんなものは慣れてしまった。
 あれだけ憎しみあって殴りあいをしていた連中が、一瞬にして仲良くしている風景はこの大会でしか見られないだろう。
 それがこの大会の名物でもあり、こうして独り者だと嘆いていた者達は心の隙間を埋めていった。
 ただ一人、輪から外れて騒ぎ続ける一行を傍観する者が居た。
 サヴィーネである。
 彼女は大会中にどれだけ暴れようと、その心が決して晴れる事はなかった。
 気だるげに盛り上がる集団を眺め、時折手に持った飲み物を口に運ぶ。
 そんな彼女を心配して声を掛ける者はいたが、皆彼女に拒絶されて退散してしまった。
 結果、ただ二人だけが、彼女に歩み寄った。
「め〜っけたっ」
 そう言って油断していたサヴィーネを背後から思い切り抱きしめたのは、まひるだった。
 傍にはミアが微笑みを浮かべて佇み、両手に沢山食べ物を抱えている。
 サヴィーネは必死に暴れてまひるから離れようとするが、まひるはしっかりと彼女を抱きしめて放さない。
「はは、そんなに喜んで暴れなくてもいいじゃない、ね?」
 その口調は穏やかだが、明らかにまひるはサヴィーネの異変に気付いていた。
「‥‥っ! 触るな! どうせお前も、お前も私から離れていくんだろう! どうせっ、どうせっ!!」
 サヴィーネはまひるの腕を爪で傷つけたり、思い切り噛み付いたりしたが、やはりまひるは離れなかった。
 むしろより強く彼女を抱きしめ、不意に口調を変えると、
「大丈夫、私はちゃんと信じてるから」
 と、耳元で囁いたのである。
 その後もしばらくサヴィーネは抵抗を続けたが、次第にそれは涙声と共に弱々しくなっていった。
「‥‥っ‥‥ごめ‥‥ごめん‥‥」
 まひるは優しく微笑むと、その頭をゆっくり撫でた。
 まるで包み込まれるような温かさに、サヴィーネはどこか懐かしいものを感じて、更に涙を零した。