タイトル:奪還、パワープラントマスター:鋼野 タケシ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/02/21 08:17

●オープニング本文


 中国南部のとある区域。比較的バグアの脅威にも晒されていない、まだ安全と呼んで差し支えない地域での出来事だ。
 ある夜、小さな街で局地的な停電が起こった。
 発電施設の予備電源も作動せず、原因は不明。謎の停電発生から、今日で丸二日が経過している。
 ライフラインを突如停止された住民たちは、怒り狂ってクレームを付けにやって来る。電話も使えないからと、わざわざ歩いてまで出向いて来る始末。発電施設の責任者は、激怒する住民たちに必死で頭を下げた。
「ご迷惑をお掛けして申し訳ございません、出来る限り早急な原因の特定に‥‥え、待てない? あと五分で直せ? 大変申し訳ございません、出来る限り尽力いたします‥‥いや、弁償しろと申されましても何を‥‥ああいえとんでもございません。大変申し訳なく存じております」
 技術者たちは発電施設を統括するセンターに集まり、何度もシステムを点検する。一昼夜掛けてメンテナンスをしても、異常個所が発見出来ない。彼らは頭を抱えて呻いた。
「機械自体が故障しちまったのかなあ」
「直接、見に行くしかあるめえ」
 残された可能性の中で、もっとも考えたくなかったもの。それが発電施設の心臓部分である、地下に作られた大型発電機の故障だ。もし機械自体が故障していることが発覚すれば、復旧までに掛かる時間は更に伸びる。その間、住民たちの怒りを抑えることは出来ないだろう。
 憂鬱を感じながら、発電所で働く技術者の二人は、地下に広がる発電施設を確認しに向かった。
 地下の心臓部に通じる階段には、頑丈な鋼鉄の扉が閉められ、施錠されている。万が一にも忍び込まれるわけにはいかないからだ。
「おい、誰だよチェックしたやつ。扉が開きっぱなしじゃねえか」
 舌打ちしつつ、中を覗き込む。非常用電灯が天井に付けられているが、地下は薄暗く、空気はヒンヤリしている。思わず男は身震いした。鍵の部分が物理的な力で破壊されていることに、二人は気が付かなかった。
 地下に続く階段をゆっくりと下る。足音が妙に響き、緊張感が高まる。
 バチッ
 大型発電機のある地下の空間に足を踏み入れた途端、視界の端で何かが光った。何度も何度も繰り返し、小さな電流の光が瞬く。
「ああ? ケーブルが切れてんぞ。なんだこりゃ‥‥」
 中心部分に据え付けられた発電機から、太いケーブルが縦横無尽に延びている。万が一にも断線など起きないよう、ケーブルは頑丈に作られている。チェーンソーでも持ち出さない限りは切断出来ないはずだ。
 首を傾げる男。懐中電灯を手にした相棒が、千切れかけたケーブルを照らす。普通では考えられない切れ方だ。まるで、何かに噛み切られたような跡が‥‥
 ぐるるる。
 唸り声が聞こえる。二人は顔を見合わせた。相手の顔は血の気が引き、真っ青になっている。恐らく、お互いに同じような顔をしていただろう。
 ゴクリと唾を飲み込み、振り返る。
 ナイフのように鋭い牙を剥き出しにした、大型の犬。オレンジ色の毛並みに、燃えるような赤の瞳。闇の中で輝くように、何対もの瞳が二人を睨んでいた。
 こんな犬は見たことがない。たとえ地球上に存在する生き物だとしても、自然が生み出した生命ではないだろう。
 こいつらはキメラだ。
「で、出たぁああ!」
 悲鳴を上げて階段を駆け上がる男たち。背後でキメラの吼える声が聞こえる。
 二人に取って不幸中の幸いだったのは、キメラが腹を空かしていなかったことだ。もし地下に潜むキメラが空腹だったならば、この事件が明るみに出るのはもっと遅れたはずだ。

 必死の思いで逃げ出した二人は、一度も振り返らずにULTの支部に駆け込んだ‥‥

●参加者一覧

ドクター・ウェスト(ga0241
40歳・♂・ER
不破 梓(ga3236
28歳・♀・PN
六堂源治(ga8154
30歳・♂・AA
メビウス イグゼクス(gb3858
20歳・♂・GD
ユウ・ナイトレイン(gb8963
19歳・♂・FC
兄・トリニティ(gc0520
24歳・♂・DF

●リプレイ本文

「発電所か。何気に来るの初めてッスね。ちょっとした社会科見学ってところッスかね?」
 六堂源治(ga8154)を先頭に、依頼を受けた六人の能力者たちは地下発電所への階段を下る。光源は弱々しい施設内の灯りと、いくつかのランタン。それから本部から持ち出せたヘルメットライトが一つだけだ。
「光源があるとはいえ暗所に変わりは無いな‥‥その中で獣型相手とは、面倒な‥‥」
 しんがりを務める不破 梓(ga3236)が呟いた。出来ることなら人数分、手に持たずに済む光源を確保したかった。確保したただ一つのヘルメットライトは、先頭の源治が装着している。暗視スコープを付けたドクター・ウェスト(ga0241)を除けば、満足な光源を確保出来ているとは言えないだろう。
「外からも来るかも知れない。梓、後ろの警戒は任せるッス」
 頷いた梓の耳に、かすかな足音が聞こえた。人間の者とは違う、軽く素早い足音。
 咄嗟に背後を振り向く。視線の先、一匹の犬型キメラが牙を剥き出しに飛び掛ってきた。
「一匹にかまけている暇は無い‥‥っ!」
 相手の攻撃にあわせ、半円を描くように回避。踏み込みつつ、抜刀術によるカウンターを放つ。白刃がキメラを両断し、断末魔の声すら上げずに倒れた。万全の体勢から放った一撃ではなかったが、キメラを殺傷するには十分な威力だ。
 首尾良く一体目のキメラを倒したところで、階下からもキメラの唸り声が聞こえる。
「通路で挟み撃ちは面倒だね〜」
「六堂さん、敵が増える前に突破しよう」
 ユウ・ナイトレイン(gb8963)が提案する。狭い通路内での戦闘は得策ではない。一対一ならまだしも、敵の数が多くなり、同士討ちなんて羽目に遭うのはゴメンだ。
「了解、走るッスよ!」
 一息に階段を駆け下りる。待ち構えていたように、階下でキメラが咆哮した。源治は刀を構え、ソニックブームを放つ。キメラは難無くその攻撃を避けた。放たれた衝撃波が、壁面に亀裂を入れる。
 今の一撃はあくまでも牽制。源治は一気に接近すると、刀を振り下ろし、キメラを一刀両断した。
「じゃ、こっからは別行動ッスね」
 階段をくだりきって、六人は施設内部に侵入する。バチバチと閃光が輝き、薄闇の中で散っている。
 三班に分かれてのキメラ探索が始まった。
 
 ●B班、行動1
「ここには大きな断裂だね〜」
 内部地図を片手に、ドクター・ウェストは破損箇所のチェックを続ける。世史元 兄(gc0520)が仲間へ通信しながら、ドクター・ウェストのチェックした危険箇所を報告する。
「応急処置だが、まあ、こんなところだろう〜」
 バチバチと電流の流れる断線部分を、簡単に修理する。電源の復旧には至らないとしても、少なくとも二次的な被害は防げるはずだ。
 修理に専念するドクター・ウェストをかばうように、兄が周囲を警戒する。機械音がまるで獣の唸り声のように、辺りに反響していた。
 暗がりの中に、電流の光とは違う何かの閃きが見えた。暗闇の中に輝く、赤い瞳。
「コチラB班! キメラ発見!」
 うなりを上げて突進するキメラに、兄は壱式を振りかざして応戦した。暗がりの中を、キメラは縦横無尽に走り回る。交戦の音を聞き付けたのか、二体目のキメラが背後に現れる。だが、加勢することなく唸り声を上げながら、周囲を回りながら様子を伺っていた。
 兄の手にする壱式に、ドクター・ウェストが『練成強化』を加える。壱式が淡く輝き、暗闇の中で鬼火のようにきらめいた。
「あの牙と爪は脅威だとしても、フォースフィールドは貧弱で統率もまるでない。一体一体の戦闘力は大したことないね〜」
 キメラの戦いを見て、冷静にドクター・ウェストが敵の戦力を分析する。
 兄はドクター・ウェストの声を聞きながら、突きを繰り出してキメラを牽制した。薄暗闇を切り裂き、キメラの爪がきらめく。爪は兄の腕を浅く捉えた。痛みに怯むことなく、胴体目掛けて刃を突き出した。犬型キメラを背中から一撃で貫く。
 控えていた二体目のキメラは襲い掛かることなく、後ろを振り返ると走り去った。
 ふぅ、と息を吐くと、別働の仲間に向かって通信機で呼び掛ける。
「コチラB班。キメラ一匹討伐、続けて周囲の探索!」
 ぴくぴくと痙攣するキメラの傍らに、ドクター・ウェストがしゃがみ込んだ。
「こんなところにまで入り込んで、ノーマルの生活を脅かすとはね〜。まったく許せない連中だね〜」
 細胞のサンプルをいくつか採取する。立ち上がったドクター・ウェストの視界に、敵の影が映る。暗視スコープがかすかな光を増幅し、敵の姿を浮かび上がらせていた。
「兄君。増援が来るようだ」
 スコープ越しに、薄緑に見える景色。爛々ときらめくいくつもの赤い眼差し。どうやら先ほど逃げたキメラは、仲間を集めて来たらしい。
「少しは知恵があるようだね〜」
「ちょ、敵が多い! アー、クソ、すいませんが来て貰えます!?」

 ●C班、行動1
 キメラの姿を発見し、すかさず梓が突進する。放った刃の一撃がキメラの胴体をかすめる。足場が悪く、渾身の平突きには踏み込みが一歩足りない。
 梓は慌てることなく、即座に制動を掛けて横薙ぎに剣を払った。手応えがあるが、仕留めるには至らない。キメラは瀕死の重傷を負いながらも、ケーブルを足場に宙に飛び上がった。くるりを体を反転させると、メビウス イグゼクス(gb3858)目掛けて鋭い爪を振り下ろす。メビウスは敵の攻撃を華麗に避けると、剣を振るう。今度こそキメラは絶命し、ケーブルの上にべしゃりと落ちた。
「この程度なら二人でも問題無いな‥‥いくぞ、メビウス」
 梓の呼び掛けに答え、メビウスは剣を構えた。記憶を取り戻してから初の依頼。これは復帰戦だ。肉体は以前と同じように動く。何の問題もない。
 新たなキメラが姿を現し、二人に向かって唸りを上げる。鋭い牙を光らせ、犬型がメビウスに向かって飛び掛った。
「魑魅魍魎跋扈する‥‥この地獄変、メビウス イグゼクスはここに居る。ウラノス‥‥爆現!」
 キメラの牙はむなしく空を噛む。流れるような剣捌きで、メビウスは刃を振るう。白刃がランタンの光を照り返す。無駄のない華麗な動きで、速やかにキメラを切り捨てた。
『ちょ、敵が多い! アー、クソ、すいませんが来て貰えます!?』
 無線機を通じて、雑音交じりの兄の声が聞こえる。周囲を見渡すが、キメラの姿はない。
「C班だ。こちらは片付いた。B班、今援護に向かう。どこにいる?」
『地図の右下、二号装置のそばです!』
 ザッと通信を終えると、梓は施設の地図を広げた。前もって関係者から借り受けたものだ。電子地図と違い、仲間の居場所も正確にはわからないが、贅沢は言っていられない。おおよそのポイントを目算すると、梓とメビウスは暗闇の中を駆けた。

 ●A班、行動1
 ランタンを掲げながら、ユウはキメラの姿を探す。
「にしても発電施設って、また面倒な場所に住み着いたな」
「入ったのも初めてッスけど、戦い辛い場所ッスね」
 バチバチと電気の弾ける音、まだ稼動している機械の発する音。辺りから聞こえる音の全てが、キメラの気配を消しているようだった。
 床にはケーブルが乱雑に走り回っている。足を取られないように注意しながら、源治とユウは探索を続けた。
 ヘルメットライトの白光が闇を裂き、うなる機械を照らす。刀を構えたまま、源治は周囲を警戒する。
 ぐるるる。
 周囲の雑音と違う、明らかな唸り声。ユウの手にしたランタンの明かりが、キメラの影を捉える。
「一匹か。なら、俺たち二人で十分だな」
 毛を逆立たせて警戒する犬型のキメラに向かい、ユウは二刀を引き抜いて構えた。
 敵との距離はわずかに離れている。ソニックブームなら仕留められる位置だが、回避された時のことを考えれば迂闊には使えない。
 一気に接近して攻撃を仕掛ける。だが、ユウが一歩近付くと、キメラはケーブルを足場に飛び回り、物陰に隠れる。野生のカンかキメラとしての能力なのか、犬型キメラは器用に地形を活用していた。
 ユウが敵の反撃を警戒して構える。もし迂闊に飛び込んでくれば、すかさず二刀でトドメを刺してやる。
 だが、キメラはもう一度姿を見せると、二人を無視して背後に走り去った。
「なんだ、逃げたのか?」
 ユウが呟く。しばらく待っていたが、敵は戻って来る様子もない。
 二人は周囲を警戒しながら、キメラの姿を探した。
「油断してると失敗するッスからね。心配しすぎなくらいが良いッス」
 やがて、中心部にある大きな機械の下に辿り着く。地図に記されている名前によれば、一号装置。
 天井付近は暗闇に覆われ、見通すことが出来ない。源治が頭上を見上げると、ヘルメットライトの光が真っ直ぐに伸びる。頭上に張り巡らされたケーブルの上に、赤く輝く瞳が見えた。
 先ほど見たキメラと比べ、体格が一回り大きい。恐らく、こいつが犬型キメラたちのボスだろう。あの位置に居られたのでは、ソニックブームによる攻撃は行えない。
「こちらA班。リーダー格を見つけたッス」
 リーダーを囲むように、二体のキメラが姿を見せた。ボスが咆哮を上げる。それを合図として、二体のキメラが牙を光らせて飛び掛って来た。

 ●B班、行動2
 キメラに囲まれながらも、ドクター・ウェストは臆する様子も無い。機械剣αを構えると、不敵な笑みを浮かべた。
 『電波増幅』で自らの知覚を高める。柄を強く握りこむと、機械剣αが圧縮したレーザー光を放った。暗視スコープが光を一瞬だけ増幅し、ドクター・ウェストの目が眩む。
「うわ、これは眩しい」
「ちょ、ドクター!」
 暗視スコープが自動的に光を調整する。その瞬間をわずかな隙と見たのか、キメラがドクター・ウェストに飛び掛った。だが、キメラの攻撃はわずかに彼のわき腹を掠めただけに過ぎない。輝く機械剣αを払うと、レーザーブレードが敵の体を焼き切った。
 仲間の死にも怯まず、キメラが一気に飛び掛って来る。手数の多さで押し切られるのでは分が悪い。
 兄が果敢に壱式を繰り出し、多数のキメラを牽制する。強く踏み込もうにもケーブルが邪魔をして、思うような動きが出来ない。
 
 ●C班、行動2
 レーザー光が松明のように輝いている、ドクター・ウェストの振るう機械剣αだろう。遠目からでも二人の姿は良く見えた。
 梓は一気に跳躍し、距離を詰める。
「無事か、二人とも!」
 梓とメビウスが合流する。敵は新手の二人を警戒するように退くと、頭上に伸びたケーブルに飛び乗った。施設への攻撃を避けていることに、犬型は気が付いているのだろう。こちらからは迂闊に手が出せない。
 剣の射程内ギリギリのところを逃げ回り、キメラは四人を牽制する。
 ドクター・ウェストが超機械「白鴉」をキメラに向けた。放たれた電磁波が敵を直撃し、衝撃を受けたキメラがケーブルから落下する。
 兄の体から炎が吹き上がる。『紅蓮衝撃』により瞬間的に破壊力を増した壱式を、落下するキメラに向かって突き出した。敵は回避も防御も出来ず、肉体を貫かれて絶命する。
「よし、順調順調」
 飄々と兄が言う。壱式を振り、残りのキメラの姿を探す。
 突然、千切れたケーブルが電流を発しながら落下した。キメラに意識を集中していた梓の反応が一瞬だけ遅れる。メビウスが梓を突き飛ばす。重量のあるケーブルは、埃を巻き上げながら二人の間に落ちた。
「すまない、メビウス」
「大丈夫ですか? 貴女に怪我でもさせたら、彼に申し訳ないですからね」
 ケーブルに遅れて、三体のキメラが落下してくる。どうやら奴らが爪を突き立て、ケーブルを切断したようだ。
「今のが切り札ってところか。所詮は浅知恵だね〜」
 もう頭上に逃げ場はない。四人はそれぞれ獲物を構えると、真っ赤な目で睨むキメラに立ち向かった。
「この場で私が死刑を申し渡す。その命、神に返しなさい‥‥」
『JudgmentTime!』
 蒼雷の闘気を纏い、メビウスの瞳が微かに蒼く光った。

 ●A班、行動2
 覚醒したユウの目が赤く輝く。暗闇の中、キメラのおぞましい赤とユウの煌く赤が交錯する。
 頭上から飛び掛るキメラの爪を避けると、すかさず敵の側面に回りこむ。二刀を振るい『流し斬り』で一体を倒すと、二体目の牙を刃で防ぐ。そのまま力を込めて、アゴから真っ二つに敵を切り裂いた。
 行動の隙を逃さず、リーダー格らしきキメラが飛び降りた。着地の勢いを殺さず、ユウに向かって爪を振り下ろす。キメラの爪は頬を掠めるが、間一髪、直撃を回避した。
「集中攻撃かよ」
 ユウが体勢を立て直すよりも早く、キメラは飛び掛ろうと四肢を縮める。回避は間に合わない。だが、キメラが動き出すよりも早く、敵は何かの衝撃を受けて怯んだ。
『間に合ったようだね〜』
 ドクター・ウェストの声が無線機を通じて聞こえる。キメラを直撃したのは、遠距離から放たれた超機械「白鴉」の一撃だった。
「こっちも忘れてもらっちゃ困るッス」
 敵の足が止まった瞬間、源治が『流し斬り』による連続斬撃を叩き込む。本能からか、咄嗟に身を翻して刃から身を避けようとする。だが、振り下ろした一撃がキメラの足を捉えた。
 怒りか諦めか、キメラが最後の咆哮を上げた。
「こいつでトドメだ」
 瞬時に機械剣を抜き放ち、左手で横薙ぎに切り裂く。レーザー光が闇と共に、リーダー格キメラの体を貫いた。

 ●戦闘終了後
「こちらA班。キメラの殲滅を確認。念のため、探索を続けるッス」
 三班それぞれに遭遇したキメラを撃破。敵の気配がなくなった後も、六人は討ち漏らしがないかを探し回った。
 最後の探索を終了すると、六人は施設を出て合流する。互いの無事を確認し合い、すぐに無線で本部への報告を行った。
「梓と一緒の依頼に入ったのも、久しぶりッスね」
「ああ、そうだな」
 梓は自分が所属する小隊の隊長で、個人的にも深い仲だ。男女の仲というよりは、戦いに寄り過ぎるお互いを日常に繋ぎ止める鎖。お互い、相手を自分と言う『刀』が納まる『鞘』であると思っている。キメラに遅れを取るとは思わなかったが、やはり安否がわかれば安心する。
「施設内のキメラ殲滅と、施設の奪還。無事に完了、っと」
「けひゃひゃひゃ。我が輩に掛かれば朝飯前だね〜」
「これで‥‥人々の暮らしが安定すればいいんですがね」
 帰路に付きながら、互いの思いを漏らす。
「これなら大成功でしょ」
 順調に依頼をこなし、兄も満足げに頷いた。
 敵を一体残らず打ち倒し、施設へのダメージも抑えた。報告を受けた依頼主も、過剰なまでにお礼を言っている。
 彼らの戦闘は無事終了した。これでまた、人々の生活に光が戻るだろう。