タイトル:【百合】禁断の扉マスター:羽月 渚

シナリオ形態: イベント
難易度: 普通
参加人数: 45 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/06/04 02:29

●オープニング本文


 性的興奮を異常に高める物質を散布する機械が、世界の2か所にてばら撒かれました。
 ――UPC本部
 突如として舞い込んできたその報せは、あまりに驚愕であると同時に、バグアの思惑を疑うものであった。
「何でも、その物質を吸引した者は、とにかく異常な性的興奮を覚えるそうです」
 媚薬。その歴史は古く、精力の付く薬や食品の総称とも捉えられてきたが、要は正真正銘なソレをぶちまける機械が、あろうことかバグアによって開発されてしまったとのこと。
「現場に駆け付けた能力者達によって、その機械をばら撒いたバグア一派はある程度討伐できたのですが‥‥」
 と、その後に続く言葉に顔を引き攣らせるオペレーター。
「そ、それが、能力者達がその媚薬効果にやられたせいか、街中であんなことやこんなことを始めてしまい、収拾がつかなくなっている模様です」
 ‥‥ある意味、最恐の兵器である。
 恐らくは、何故かふと開発してしまい、ぜっかく開発したからには使ってみようと試験的に用いたのでろうが、予想以上に効果抜群だったのでろあう最恐媚薬精製マシーン。
 形状は1メートル四方の正四面体っぽいものらしいのだが、どうやら同じ街に複数設置されているようだ。

「ばら撒かれた場所は、アメリカとヨーロッパ地方の二か所です。本部からは、それぞれに傭兵を派遣し、何としても対象の機械を破壊せよとの通達です」
 真剣にオペレーターは力説するが、ぶっちゃけどうしようもない内容な気がするのは内緒である。
「尚、散布されている媚薬効果を持つ物質ですが、とにかく効力が強い為、なるべく同性で構成されたチームを推奨します。それでも、効果があるかは謎なくらい強烈らしいですが‥‥」
 そこまでしますか。とは言え、本部側からの正式な提案だ。確かに、なるべく性的対象になりにくい同性間なら効果も薄い‥‥かもしれない。
「先生! 同性が恋愛の対象になる人は、どうすれば良いんでしょうか!?」
「もうどうにでもなって良いと思うよ!!!」
 解説するのに疲れたオペレーター。瞬間、何かが吹っ切れた。
 かくして、ヨーロッパとアメリカを舞台に、壮絶なミッションが今、開始される――

 ***

「今回、皆さまが担当されます地域は、アメリカになります。ヨーロッパの方には別に派遣隊が組まれますので、安心してください」
 正直、あっちの方面を心配している余裕はないだろうが、会議室には米国に派遣される傭兵達の姿が見受けられた。
 だが‥‥。気のせいだろうか、比率的かなり女性が多い気がする。
「尚、説明しましたように、対象がばら撒く媚薬物質の効果を軽減する為にも、米国には女性を中心に構成した能力者で臨みます」
 なるほど、そういうことですか。確かに、男×女で均等なイチャイチャ空間を築かれるわけにはいかない。
 とは言え‥‥
「ですが、先に言いましたように、性別に関係なく、とにかく人間の興奮を司る器官に直で働きかけてきますので、くれぐれもご注意を」
 既にカオスになることが容易に想像できるのは、気のせいだろうか。
「いっそ、その街に百合の大輪を咲かせてみるってのはどうかな」
 参加者の誰かが、ポツリこんなことを呟く。何をするつもりですか、あなた。
「と、とりあえず、具体的な説明に入りますね。それでは――」

 こうして、まだ誰も知らない魅惑の世界が手招く楽園へ、参加者達は知らず知らずのうちに導かれていくのだった。

●参加者一覧

/ ナレイン・フェルド(ga0506) / 御山・アキラ(ga0532) / 皇 千糸(ga0843) / 如月・由梨(ga1805) / 翠の肥満(ga2348) / 漸 王零(ga2930) / 王 憐華(ga4039) / 百瀬 香澄(ga4089) / 金城 エンタ(ga4154) / UNKNOWN(ga4276) / ミオ・リトマイネン(ga4310) / ファルル・キーリア(ga4815) / クラーク・エアハルト(ga4961) / 神森 静(ga5165) / 藍紗・バーウェン(ga6141) / シャレム・グラン(ga6298) / アンジェリナ・ルヴァン(ga6940) / ティーダ(ga7172) / L3・ヴァサーゴ(ga7281) / 月夜魅(ga7375) / 伊万里 冬無(ga8209) / メティス・ステンノー(ga8243) / 水無月鈴(ga8700) / 赤宮 リア(ga9958) / 烏谷・小町(gb0765) / 桐生院・桜花(gb0837) / 大鳥居・麗華(gb0839) / 紅月・焔(gb1386) / 二条 更紗(gb1862) / 周藤 惠(gb2118) / レミィ・バートン(gb2575) / 直江 夢理(gb3361) / 鷹代 アヤ(gb3437) / シェリー・クロフィード(gb3701) / 冴城 アスカ(gb4188) / アーク・ウイング(gb4432) / 空木 更紗(gb4681) / 空木 有紗(gb4682) / ふぁん(gb5174) / 美環 玲(gb5471) / 緋桜 咲希(gb5515) / 千早・K・ラムゼイ(gb5872) / グロウランス(gb6145) / 冴木氷狩(gb6236) / アリステア・ラムゼイ(gb6304

●リプレイ本文

「色欲地獄とはこのことか‥」
「随分と悲惨な光景ですねぇ」
 米国のとある街。
 目の前に広がるおぞましい光景を眺めつつ、金城は思わず息をのみ込んでいた。
「心配するな、エンタは私が護ってやるよ」
「え、あ‥、はい。よろしくお願いします」
 不安な気持ちが顔に出ていたのか。金城を心配してポツリと呟いたアキラの一言に、彼は顔を赤らめて頷く。
 媚薬精製マシーン。この言葉に対する人々の反応は様々であろうが、今日は、そんなある意味最恐の敵と対峙する破目になっていた能力者が、この街には集っていた。
 その数総勢45人。果たして、短くも長いめくるめく世界にて、彼、彼女らは一体どんな光景を描き出すのであろうか。
 これより先の報告書は、覚悟がある方のみの閲覧を推奨するとしよう。

 ・
 ・
 ・

 さぁ、覚悟はできたかな? それでは、今開かれる禁断の扉へ――いざ、ご招待。


●発症数分前。悪魔の潜伏期間
「えっと‥よく、分りませんが‥機械、壊せば‥いいん、ですよね?」
 被害にあった街に一歩入り込むや否や、精神的にひどく毒されるシーンの連続を前に、周藤は若干目のやり場に困りつつ隣の鳥谷に話しかけた。
「うーん、そやなぁ‥。ウチとしてはキメラも気になるところやけど」
「えっと‥どうしましょう」
 周藤の問いかけに対し、鳥谷は周りを見渡すようにして応える。女子高出身の為、百合な光景に対し多少の免疫はあった周藤。だが、それでもやはり恥ずかしくないと言えば、嘘になる。
 そんな彼女とは違い、何故かテンション高めでやる気満々なのは鳥谷だ。
(「ウチは、できればドサクサにまみれて皆の乳を揉みたいんやけどね〜」)
 なんて本音を吐き出せるわけもなく、とりあえずは周囲の探索に移っていた彼女。
(「それにしても‥相変わらずデカイ乳やね〜。揉み甲斐がありそうやわ」)
 と、それでもやはり目の前の2人――周藤とレミィがどうしても気になってしまう様子。とはいえ、それも無理はない。鳥谷にとって、この2人の様な服がはち切れんばかりの胸の持ち主は、正に格好のターゲットなのだから。
「あー、また変なこと考えてるでしょ〜。あたしには分るんだからね」
 すると、鳥谷の異変に気付いたのか、レミィはクスッと笑いながら鳥谷に囁きかける。アホ毛がクルンと天を指す彼女だが、意外と鋭かったりもするのだろうか。
 何でもないと返す鳥谷を見て、ふ〜んとレミィは邪笑する。しかし、せっかく仲の良い3人で受けた依頼だ。この先に何が待ち受けていようが、レミィにとって楽しみなことなのには変わりなかった。だからそれ以上の追及もせず、そっか、と一言笑って彼女は再び歩み出す。
 その後をついていく周藤。傍から見れば、何ら変哲もない可愛らしい仲良し3人組。
 が、この時点では誰も気づいていなかった。既に、3人の周囲には魔の粉が煌きだしていた事を――

「媚薬をばらまくなんて、何て素敵‥もとい危険な装置を。早めに破壊しないと‥少し勿体無いですけどね」
 場所は変わり、こちらは周藤達とは反対側から街へと入り込んでいたミオと水無月の二人。ちなみに、水無月は今回が初任務とのことだ。初任務、素敵な響きただが、それがコレと思うと若干悲しい気もしなくはない。
「初めてだけに、緊張してしまいます」
 少しおどおどしつつも、気を引き締め頑張ろうと意気込む水無月を見て、ミオは優しく微笑む。その笑顔は、水無月から見て何よりも頼もしく感じられた。そう、何よりも。

「本部の意向とは言え、やはり女性の数が多いな。直江さん、気をつけて下さいね?」
 2人、3人、或いは単独で。ミオ達のようにペア以上で作戦の遂行に当たるメンバーが多かった本依頼だが、やはりそうなってくると必然的に媚薬の影響が気になってしまうものだ。
 今回、ある意味一番心配する念が向かう先の対象を見つめ、クラークは心配そうに語りかける。
「あ、はい‥。この直江、命をかけてでも月夜魅お姉さまをお守り致します!」
「いや、自分が心配しているのはむしろ貴女の方なのだが‥」
「どうかしましたか?」
 そんな彼の気を知ってか知らずか、隣のサラサラな髪が美しい少女――月夜魅の傍を片時も離れない直江。満面の笑顔で意気込むものの、やはりこの娘と月夜魅を2人っきりにしていいか悩みどころではある。
「私はそろそろ行くぞ。‥こんなわけのわからない物体、早々に排除するしか無いからな。何としても広範囲に媚薬が散布される前に‥」
「アンジェリナさん、単独行動は危険ですが‥何かあればすぐに呼び出してくださいね」
「心配は無用だ。この程度の任務、早々に終わらせてやる」
 と、直江の他にももう一人気がかりな女性、アンジェリナが今すぐにでも街中へと入ろうとしているのを見て、クラークは彼女に無線を指さして声をかける。
 何かあればすぐに無線で。そう念を押すクラークだが、そこは色恋沙汰と今まで全くの無縁だったアンジェリナだ。大丈夫とは強がるものの、正直、媚薬の恐ろしさをまだ理解していないことも事実。
 心配そうな顔のクラークを残し、ありがとうと一言残して駆けていくアンジェリナ。彼女の目に映る景色とは、如何なるものなのであろうか。
「さて、そろそろ僕達も行くとしましょう」
「そうですね。色々と気がかりではありますが‥今回も頼りにしてますよ、相棒?」
 アンジェリナが街中へと溶け込んでいくのを最後まで見つめていたクラークの横では、彼から相棒と呼ばれた男、翠の肥満が、クラークの肩に手をかけ、クイッと街に親指を向けた。
 いよいよ、作戦開始、と言ったところか。全身重装備な上に、何故かエアタンクまで抱えている翠の肥満の頭からは、キラッと装着式小型ビデオカメラが光に反射しているようだが、何するつもりですかあなた。

 こうして、翠の肥満の様にマジで何するつもりか予想もつかない者達を含んだ能力者一同は、一斉に街の奥へと入り込んでいく。
 あぁ、呼吸器をかの粉が通り、何時の間にか浸食されていく身体。魔の症状発症まで、リミットは残り1分――

●芽吹き
 媚薬。未だ謎な部分は多いが、やはり発症までの時間や、症状の度合には個人差があるのだろう。が、そういった欲求が強い者ほど、もしかしたらその効果は高いのかもしれない。そんな仮説を裏告げる光景が、街の片隅では繰り広げられていた。
「くぅ、これが必要とはいえ、やはり何か気持ち悪いですわね」
「うふふ、仕方ないですよ♪ 大事な大事な貞操を護る為なのですから♪」
 一声突入が開始されてから1分あまり。事前に伊万里から装着させられていた貞操帯を気にしつつも、ひたすら目標を探し走り続けていた麗華。
 貞操帯がガッチリとロックされている為、下着を着用できていないが、そこはあえて気にしないでおこう。
「貞操‥守る為、已む無し‥。然れど、多少‥不快」
 一方、こちらも麗華と同じ状態にされていたのはヴァサーゴ。勿論、原因は伊万里なわけだが、ヴァサーゴは比較的大人しく彼女の指示に従っていた。と言いますか、貞操帯を付けている辺り、意外とお二人はまだ清い体でおられげふんげふん。
「あぁん! 良いですよ2人とも♪ その表情、これは楽しそうなことになりそうです♪」
 そんな2人の傍から離れず、ある意味観察しているかの如く追従する伊万里は、既に胸の高鳴りが抑えられないまでに達していた。おそらく、徐々に媚薬の効果が行き渡って来たのだろう。爆発まで、あと僅かと言ったところか。
「早く機械を壊さなくてはなりませんわね」
 一刻も早くこの貞操帯を外したい麗華は、足に力を入れ地面を蹴りあげる。直に彼女達を待ち受ける結末が、麗華の想像を絶するものとも知らずに。

「なるべく風上を位置取って!」
 さて、そろそろ参加者の中にも媚薬効果が目立ち始める者が出始める頃。
 こちらでは絶対に媚薬は吸いこむまいと、風上に立って機械の破壊に臨む田中の姿が。
「あぅぅ‥なんか頭がくらくらして体かぽかぽかうずうずするのですよぉ〜」
「大丈夫? ‥何かあれば、遠慮なく言ってね」
 今回は、【ひかりん隊】として計5人で行動を共にしていた田中達。その中の1人、シェリーが胸を抑えて息を荒くしている様子に気づき、アリステアは心配そうに肩に手をかける。
「うう、ボクがもしもの場合になった時は、助けてね、アル君?」
「え、あ、う、うん。必ず俺が護りますよ」
 アル君。そう呼べる親しげな仲なのだろう。シェリーの頼りにしているとの一言に、顔を赤めて頷くアリステア。が、そのもしもになった場合、どう助けていいのか必死で彼が今自問自答していることについては、深く触れないでおこう。

「ゆりりんな光景‥何と素晴らしき耽美作品か」
 まず1個。【ひかりん隊】の働きで機械が爆発音を上げたそのすぐ付近では、自慢の一眼レフカメラ片手にグロウランスが別の意味での獲物を追いかけていた。
「おお、あの表情、素晴らしい! 違う、手はもっと伸ばして‥。そう、そこだ。ふふ、そのままそのまま」
 パシャっ。ゴクリと生唾を飲み込みつつ、念を入れてシャッターをひと押し。ソフトからハードまでの全ての百合を撮影する為、双眼鏡でターゲットを捕捉した後は、時に電柱を垂直に駆け登り、時にビルの壁をゴ○ブリの如くはい回っていたグロウランス。
 その姿は、正にゆりりんな耽美を追い求め流離う1匹の孤狼――と言うよりも、変態。
「なんという芸術! 素晴らしいっ。これでUPCはあと10年は戦えるな! ふはははっ!」
 ここまでくると、UPC云々と言うよりバグアの血も流れてないかと疑いたくなるほどであったが、それでもひたすら人類(?)の為にグロウランスは撮影を続けていく。
「ぬう、あちらにも桃源郷がっ」
 おっと、そうこうしているうちにどうやら次の舞台を見つけたようだ。こうして、彼は全ての魂を昇華しつつ百合が呼ぶ方へ。誰にも止められない衝動のままに、走り、駆け、その先で彼が見つけた珠玉の光景とは――

「んふぅっ‥。何、何でなの。だめ、もう、抑えられない‥。ごめんね、ティーダ‥!」
 ――ファルルとティーダの、あらぬ劇的シーンだった。
「大きいわね‥。どうやったらこんなに育つのかしら」
「あぁ、ファルルさん、そんな‥」
 悲しいことに、どうやら完璧に媚薬が回ってしまった能力者の犠牲者1号と2号は、この方達のようだ。
 自身の胸が小さいのを、やはりどうしても気にしていたファルル。目の前に憧れの塊を前にしては、やはり抑えていた欲求が爆発してしてしまった様子。
「んふふ‥。困った子猫さんね、こんなになっちゃって。あら、どうしたの? ここが気持ちいいのかしら?」
「はぁ‥はぁ、あ、そこだけは‥あぁん!」
 そんなファルルのコマンド、ガンガン攻めろに対し、普段とは完全にキャラの変わってしまったティーダ。ファルルの成すがままに身体のアチラコチラを弄られる。
「ふふ、焦らされちゃったから我慢ならないのかしら? 震えてるわよ?」
 と、唇と唇とを重ねながらも、巧みに右手を這わせたファルルは、トドメと言わんばかりに囁きながら指を動かした。ろくに呂律も回らず悶えるティーダを見て満足気に微笑んだファルルは
「そろそろ、私にもご奉仕してくれるわよね?」
 こう一言。一瞬だけ見つめあう視線。そのまま腕で恥ずかしそうにティーダは顔を隠しつつも、コクリと頷いた。
 第2ラウンド、開始――

「困りましたね‥。リアさんは一体どちらに」
 一方、場面は変わり人通りの多い大通り。目の前に広がるヤバすぎる光景には目もくれず、憐華は戦闘の途中で逸れてしまった赤宮を探していた。
「銃を使うのは初めてですし、リアさんが傍にいてくれないと私‥」
 心もとなく手に握る銃を見つめつつも、憐華は人の波をかき分けていく。その可愛らしい容姿が祟ってか、途中何度も住民男性から襲われかけたが寸前で逃げ切っていた彼女。
 早く赤宮を見つけなくては。そう一身に想い足を進める憐華だが、突如として胸の奥底から湧き上がってくる衝動に足を止めてしまう。
「え‥。なんでしょう、この湧き上がる衝動は‥。あ‥あそこにおいしそうなお団子が‥」
 瞬間、それは何かのスイッチが入ったようにも見えた。突然お団子などと言いながら、虚ろな瞳の彼女が向かう先は――街の女性の、胸元。
「はふ‥はふ。ふふふ、柔らかい」
 無垢な子供の様に胸に顔を埋める憐華だが、我慢し切れなかったのか、相手の女性も憐華の豊満な双丘を揉み揉みし始める始末。と、その時
「憐華さん!? いけません‥‥こんな所、誰かに見られたら」
 遂に探していた憐華を見つけた赤宮。目の前では完全に媚薬にヤラレてしまったのであろう、憐華の哀れな姿が。
 このままではまずい、そう考えた赤宮は彼女を止めに入ろうとする。のだが――
「あら‥リアさんも大きなお団子をお持ちですねっ。うふふ‥」
「え、憐華さん、何を言って‥‥あぁっ!?」
 突如意味不明な言葉を投げられ、応答に困った赤宮に、一瞬で近寄ってきた憐華は何と左胸を一掴み!
 刹那、駆け廻って来るおかしな感覚に見舞われる赤宮の反応を楽しむかの如く、憐華は左手を優しくもう片方のふくらみに当てると、円を描くようにフニフニ。
「こんな‥はずでわっ‥」
 抗おうとしつつも、言うことを聞かない身体。そのまま憐華に押し倒された赤宮は、気づけば完全に2人だけの世界へダイブ。

「まったく何をやっているのですか‥君達は‥」
「?」
 どれ程の時が経ったのだろう。いや、もう時間など関係なくなりかけていた2人。 
 尚も治まらない衝動の為すがままに、完全に溶けあう破目になっていた時だった。ふと、気づけば目の前で女性が自分達に声をかけてくる。
「誰ですか、あなた。‥‥胸の小さい人が邪魔しないでください」
 その人物を寝た状態で見上げつつ、吐き捨てるように呟くともう一度赤宮へと手を伸ばす憐華。
 しかし、数秒後彼女に奔った戦慄、それはかつてないものであった。
「ああ‥そうか‥このままではわかりませんか。‥‥‥‥ふむ、これで分かったかな?」
 パサッ。着ていた女性物の服を脱ぎ捨て化粧を拭き取り、いざ憐華達の前に現れたその人物とは――
「え‥れ‥零!? ‥何で、うそ」
 何と言うことだろう。まさかの最愛なる夫、王零ではないか。実は、友人の手を借り女装していた彼。偶々2人のことが気になっていたとはいえ、見つけてみれば案の定なことになっていたのだ。さすがに、呆れてしまうのも無理はない。
「それで‥これは一体どういうことかな」
「あ‥これは‥その‥‥ええっと‥リアさんが‥急に」
「憐華さんッ!? ち、違います! ああ‥こここ‥これは違うんですよッ!」
 勿論、こうなってしまえば必死の弁明タイムへ突入である。どう見ても非がある憐華は罪を赤宮に擦り付け様とするが、それは誤解だと釈明する赤宮。
 とりあえず、王零のおかげで無事に媚薬から解き放たれたのだ。これもまた、1つの愛の形ということにしておこう。

「素敵‥大きいのに張りがあって‥それにとても可愛い声」
 一方、王零達のいる大通りとは少し離れた裏路地。そこでは、恥など完全に捨てた1人の少女が、あろうことか本能の赴くままに友人を押し倒していた。
「ぁぅ、ミオさん、ダメですよ‥私、初依頼で緊張して汗もかいていますし、そんな、汚ないです」
「大丈夫、私だってほら、もうこんなに‥。これなら、お互い様でしょ」
 オーマイガッ。超えてはならない一線を超えた気もしなくはないが、目に入る可愛い顔、胸に惹かれてしまったミオは、もう周囲のことなど全く目に入っていなかったかった。これでもかと、限界突破な勢いで弄り倒すミオを前に、何だかんだでバリバリの受けに回っている水無月。ちょっと刺激の強すぎる光景であったが、愛の恐ろしさを、垣間見た瞬間であったとも言えよう。

●咲き誇れ、大輪の花
「一射必倒!」
 さて、完全にカオスの波動に包まれてしまった街だが、こちらではキメラ♂の1体を見つけた藍紗が、ペアの如月とともに討伐に移っていた。
「はぁはぁ‥あと少しだと言うのに‥。媚薬のせいか‥だいぶ‥足腰にキテおるようじゃ」
「藍紗さん、後ろです!」
「くっ」
 が、既に全体を覆い尽くしていた媚薬にやられ、気の遠くなってしまった藍紗の横をキメラの触手が一薙ぎ!
 その一瞬の早技に成す術もなく絡みとられた藍紗の身体を、触手はこれでもかと攻め立ててくる。
「なっ、破廉恥な‥。待っていてください、今私が‥」
 そんな、とても直視できない光景を前に、二刀小太刀を振るい触手を切り裂いた如月は藍紗の救出へ。しかし、それが全ての始りだった。
「ダ、ダメじゃ! 今、そこに触れられたら‥んくぅ!」
「え。ちょ、ちょっと、藍紗さん何を‥ひゃぅっ!?」
 びくん。確かに藍紗の身体が一度大きな脈を打ったかと思うと、そのまま気づくと押し倒されていた如月。
「すまぬ‥もう、限界じゃ」
 そう藍紗は言うや否や、一気に両手で如月の着物を剥ぎ取る!
 あまりの出来事に声も出せなかった如月だが、何故か振り払おうとするも、自身の体がそれを拒んでいることに気づく。
「い、いい加減に私も怒りま、う、くぅっ」
 瞬間、真っ白になる頭。もう如月は何も考えていられなかった。何時の間にか、完全に媚薬に毒されていたのだ。そして、
「どうじゃ‥女の身体は女が一番良く解っておるのじゃ。ここを擦ると‥堪らないじゃろう?」
 そう耳元で如月の耳を甘噛みしながら、囁く藍紗。そのまま唇を下へと動かしながら、それは如月の口元を塞ぎにかかる。
 絶妙に舌を這わせながら如月を堪能する藍紗だが、その理性は完全にすっ飛んでいた。巧みな攻めで、ピクピクと藍紗に乗られながら身体を震わすことしかできない如月。
「ここから先は‥由梨殿の大切な人のものじゃな。残念そうな顔をするでない‥その時が来るまで大事にとっておくのじゃ」
 こうして、最後には不敵に微笑む藍紗の微笑みだけを残して、2人は建物の影へと消えて行くのだった。めでたしめでたし。


「理由‥不明‥、なれど‥‥身体‥疼く‥」
 一方、こちらはもう一体のキメラ♀を探していたヴァサーゴ達だが、思いの外発見までに時間がかかっていた。そのせいで知らず知らずのうちに媚薬を吸引してしまったヴァサーゴの息は荒く、既に絶え絶えだ。
「あら、ヴァサーゴどうしましたの? うふふ、まるで犬のようですわね♪」
 そんな彼女を見て、今まで感じたことのない衝動に駆られたのは麗華だった。こんなつもりはないのに、何故か知らず知らずのうちにヴァサーゴの方へと手が向かってしまうわけだが、言うまでもなく麗華も媚薬にヤラれかけなわけでして。
「‥またですか? またなんですね!」
 しかし、やはりこればっかりは許せないのが伊万里である。徐々に犬化し麗華に埋もれていこうとするヴァサーゴに対し、全身から身の毛もよだつ禍々しいオーラを発する彼女。
「麗華‥身体、とても柔らかく‥気持ち良い」
「くぅ、ヴァサーゴさんそればっかりは‥!」
 と、遂に我慢しきれなくなったのか、すかさず伊万里が腕を伸ばした――その時
「伊万里、後ろですわ!」
「!?」
 かろうじて理性の残っていた麗華の発した言葉の先には、1体のキメラが既に触手を展開していた。

「殲滅‥を‥。ッ、冬無‥何を」
 キメラを見つけ次第、少しだけ我を取り戻したヴァサーゴは半ば反射的に大剣を抜くのだが、そこをすかさず押し飛ばしたのは伊万里。抜け駆けした罰です、などと後ろで伊万里が笑っているが、もう後の祭りである。
 そのまま見事に触手にからめとられたヴァサーゴは、
「何故‥身体‥熱い」
 次々と巻き付いてくる触手の刺激に抗うこともできず、そのまま全身の衣服を剥ぎ取られていく。一方その横では、ヴァサーゴを助けに入ろうとした麗華も捕まり案の定ヴァサーゴと同じ破目に。
「あぁん、これは素晴らしいです♪ ビデオカメラスタンバイですね♪」
 こうなれば何より絶頂なのはこやつだ。何時の間にかビデオカメラを取り出した伊万里は、触手から攻め立てられている2人以上に興奮した息使いで撮影を開始。もう末期とかそういう次元すら超越している気もします。

「ふふふ、そう簡単に私たちから逃げられると思‥‥って、これはっ!?」
 一方、伊万里達がパネェ状態に陥っているとはいざ知らず、最初に♀キメラを見つけ追いかけていた百瀬とアスカ、ふぁんの3人は、キメラに追いついた途端広がるヤバい光景に我が目を疑っていた。
 1人、2人。絡まる触手、露わとなる艶やかな肌。その上を触手がをこれでもかと責め立てている状況を前に、さすがに発する声も失ってしまったか――そう思われた、瞬間!

「‥‥ふふ、ふははは! R指定が怖くて傭兵ができるかー!」
 ぶっちゃけたーー!? 百合がどうしたと言わんばかりに、辺り一面に魂の叫びを轟かせた百瀬。更にその横では、調教開始と言わんばかりにお手製の乗馬鞭をビシィィと地面に打ちつけているふぁんの姿も。
「ふーん、相手もどうやらかなりのS気があるみたいだね。ここはひとつ、Mの領域に引きこれないようにするのがポイントか」
 何言ってるんですか、あなた。ヴァサーゴと麗華が受けている辱めを観察しつつ冷静に呟くふぁんは、何故か顔にヒーローマスクという、これから何かを犯すかのような格好である。
「さて、それじゃあ思う存分楽しませてもらおうかしらね」
 と、謎の台詞をポツリとアスカが残したかと思うと、そのまま3人はキメラへと地面を一蹴り!
 あぁ、感染の拡大するカオスの波は、なおも止まることを知らないようだ――

「翠さ〜ん! あなたの恋愛成就を願って私、頑張るわよ♪」 
 さて、キメラ♀に突撃した3人の結果は後々のお楽しみとして、ここで場面を変え『媚薬を持ち帰ろうとした猛者達』にスポットを当ててみるとしよう。
「これでヴェレッタは、いや全世界の女共はオレのものよオオッ!」
 まさかの大将の名を高らかに叫びながら、ひたすらエアタンクに媚薬を回収していたのは翠の肥満。媚薬のせいか、或いはそれが本能の成せる業なのか。完全に頭のネジが解放された彼は、一人称まで変わり阿修羅のごとく媚薬を吸引中。
「L・O・V・E〜ラブファイタ〜翠さん♪」
 そんな彼とは少し距離を置いた状態で、何故かチアガールの格好をしたナレインはボンボンを振りながら彼の応援に励んでいた。
「うおお!? あんな所に可愛い2人組が百合な光景をぉ!? ‥はっ、いかん、落ち着け俺! 普段から変態で通る俺だぞ、あんな安いエロで俺を買えると思うなアッ!」
 周囲には本来の目的を忘れさせてしまうほどの光景が多々広がっているわけだが、そんな誘惑には負けじと彼は邪念を払う。ちなみに。彼の足からはドクドクと血が流れ出ているのだが、全ては自我を保つために自らがナイフで傷つけた為という発狂ぶり。変態もここまでくれば神になれる気がする。
「ふ、ふふふ、待ってろヴェレッタ。あと少しで君は俺のもの!」
 こうして、翠は最後までエアタンク一杯に媚薬を詰め込んだのだった。
 
「ふむ、中々、面白い効果のようだが、機械は、あちらか」
 一方、こちらは今回、最もこの戦場に似つかわしくない格好で参加していたUNKNOWN。見るからに高級そうなスーツ一式に身を包み、周囲であふんおほんとなっている者達には特に目が向かうわけでもなく、彼は懐から密封性の高い袋を取り出すと、そのまま媚薬マシーンの方へ。
「ほう、これ、か。次の学会に向けて、良い題材が、出来たかもしれないな」
 目の前でガコンガコンと起動している機械に優しく袋をかぶせると、しばらくたった後、しっかりと密封した彼。パンパンに膨れた袋の中にとんでもない秘薬が混ざっていると考えると恐ろしくなるが、特に気にする様子もない彼は慣れた手つきで街の出口へと向かう。
 如何なる時でも、咥え煙草とダンディズムは大切に。途中幾人もの女性が近寄ってきたが、全員甘いキスと目力で墜とすと、そのまま彼は何もなかったかのように消えていく。
「では、諸君。頑張ってくれたまえ」
 最後に、この一言だけを残して。

●欲望の暴走
「この下手糞! その程度のテクニックでこの私が感じると思ったかーー!」
 では、再び舞台を如何わしい場所へと変えるとしよう。
「こういうのはね、こうすんのよ!」
 キメラ♀とは百瀬達が対峙している中、こちらではキメラ♂の触手をわざと受けながらその感触を楽しみつつも、いまいち物足りないテクに怒り突撃していたメティス。
 白い肌に薄紫のかかった髪を靡かせ、触手の波に身を投じていく彼女だが、傍から見ればもうシュールとか言うレベルではない。
「私の受講料は高くつくわよ‥‥ふふふ」
 じゅるりと獲物を見つめた彼女は、キメラだけでは満足しなかったのか、横の桐生院に猛烈なる魔の抱擁。これが、この怒涛の攻めこそが、百合の女王たる所以だろうか。
「ふふふ、そうよ、そうこなくっちゃ。前から味わってみたかったの‥‥あぁ、さすがのお手前ね」
 が、その攻めに怯むことなく全身で受け止めた桐生院は、自ら巧みな動きで濃密な百合結界を形成! 筋肉の付きが良い為に胸囲はある程度あるのだが、胸はそこまで大きくはない桐生院。しかし入念に手入れされたお肌の美しさは、ピカイチだ。きっとこれなら、メティスもおいしく頂けたことだろう。

「うわきゃーっ!? ああっ、こらっ‥変なところに、巻きつくなぁっ」
「ね、姉さんっ。待ってて、今私が助け‥‥ああっ!?」
 更にこちらは、普段から仲の良い双子の更紗と有紗のツープレイが見受けられていた。まず突撃して触手につかまってしまった更紗を見て、すかさず助けようとダッシュした有紗。が、イアリスを抜いたまでは良いものの、案の定触手の餌食となってしまうと、そのまま2人は仲良くピッタリと触手から締め付けられることに。正に、ミイラ取りがミイラとはこう言った状況を言うのだろう。
「あぁ、ダメ、そこは。入ってくるなっ、入ってくるなってばぁ‥‥」
「姉さん!? あ‥や、そんな‥きゃぁ!」
 健全な少年が観れば、多分鼻血を吹きだして気絶しかねない光景だが、大好きな姉の露わな姿を見せつけられながら、自分にも執拗に迫ってくる触手の数々。
「有紗‥大丈夫? あたしは、大丈夫‥‥じゃないわ! もう我慢、出来ない!」
「え、ねえさ‥んん!?」
 そして、遂にその時はやってきてしまう。完全に媚薬の回ってしまった更紗は、最早妹姿を見るだけで込み上げてくるものが抑えられない状況にまで達していた。
「そ、そこはダメっ‥さっき触手に‥ああぁ!!」
 気づけば、触手からは解放されているのに止まらない更紗の欲求を受け止めていた有紗。もうどうなっても良い、大好きな姉さんと一緒なら。そう少しでも思ってしまった有紗は、悲しくも姉の成すがままに沈んでいくのだった。

「最近ご無沙汰だったからね。今度は私の番よ‥‥ヒィヒィ言わせてあげるわ!」
 さて、キメラ♂が報告可能レベルを超えたので、再びキメラ♀へと視点を変えるが、既にこちらでもその光景は壮絶なものとなっていた。
 ナニがご無沙汰だったのかはともかくとして、キメラに捕まった瞬間計画通りと言った顔で邪笑したアスカは、そのまま流れに身を任せ百瀬とふぁんの方へ。
「前から気になってたんだけどさ‥覚醒中は感度ってどうなるのかな? ってコトで触診入りまーす!」
 が、その攻めに対し受けて立ったのは百瀬。抱きついてくるアスカの身体中を、それはもう、じっくりたっぷりねっとりと堪能し始め出す。
「あたしゃ〜ノーマルなんだけどね。でも‥偶にはこういうのも良いじゃないか!」
 そんな2人に加え、ふぁんも鞭を片手に参戦。女王様とお呼び、そう台詞を叫びながら2人に怒涛の鞭捌きで襲いかかる。この3人は一見すると3人とも『S』な気がするのだが、なるほど、S気質な方が3人揃うとこの様なことになるのか。メモメモっと。

 ところで、対キメラ班がカオスな為目立ちがちだが、忘れてならないのはやはり機械の破壊状況についてだ。
「媚薬かぁ。これがあれば、アイツももう少しは積極的になってくれるのかしら‥‥。というかあの野郎、未だに手ぇ出してこないでやんの。もうそろそろ次のステップに行ってもいい気がするのよね。キスにしたっていつも私からだし」
 目の前で煩わしい駆動音を立てる媚薬マシーンを見つめながら、ブツブツと小言を呟いていたのは皇。
 彼氏持ちにも関わらず、奥手なのか天然なのか中々アプローチをかけてこない彼に対し不満を募らせていた皇は、目の前でイチャつく男女を見て更にその気持ちが爆発しそうになっていたのだ。
「ふん、何よ、見ず知らずの相手とイチャイチャしちゃって。媚薬なんて、愛さえあれば関係ないのよ!」
 と、遂に目の前の光景に耐えられず機械に単独で突撃してしまった彼女。‥‥だが、普段は銃を得意としているにもかかわらず、見ればその手に握られているのは何故かモップが1本。
 と言うのも実は、所持している銃の全てをメンテに出していたのが原因だったり。真の愛を持っている私には媚薬など効くはずがないという究極理論で、あえて機械を叩きにいっていたのだが、ある意味、その勇敢さには脱帽である。
 だが、覚悟した乙女は強いというものだ。さぁ、今こそ我々に見せてくれ、最後に勝つのは愛なのだと!
 ↓(5秒後)
「どいつもこいつも自己主張の激しい胸しやがって、自慢か揉ませろこのー!」
 やっぱりアウトーー!! ただ、愛を信じた彼女は間違っていなかったはずだろう。だからこそ、我々は忘れてはならない。皇もまた、モップに踊らされた犠牲者の1人にすぎないということを。

「これが、欲望に対し歯止めのきかなくなった者の末路なのでしょうか。あたしだって、その‥‥自分で‥した事も、何度もありますけど‥‥やはり我慢は大事です」
 欲望の暴走。結局吹っ切れて周囲の乳を揉みだした皇を見つめながら、年頃な女の子、緋桜はさり気なくヘヴィーな一言を呟く。子孫を残していく為には必要な行為だし、何より人間の3大欲求とまで言われる性欲だ。
 その本能に忠実になることを悪いとは言わない。だが、やはり理性のなくなってしまう瞬間を目撃した彼女は、どうしても悲しい気持ちを抱かずには居られなかった。
「あ‥‥でも、中にはケダモノにならずに済んだ人もいるようです‥‥」
 すると、できる限り襲われることを避けていた緋桜は、目の前で媚薬の効果を受けながらも、熱る身体に鞭打ちながら戦う、1人の少女を見つける。
 その勇敢な姿に心打たれてしまった彼女。ケダモノにならずに済んだ、緋桜からこう称えられた少女とは――
「‥ん‥‥はぁぁっぁ‥うぅ‥くぅっ‥わたくしは‥こんなものでは‥はぁ〜」
 ――悶えながらも必死でイアリスを振るう、二条であった。
「はぁ‥んくぅ‥わたくしに‥さ‥さわ‥るなぁ!」
 周囲の男から全身を弄られながらも返り討ちにしつつ機械を破壊していく二条は、媚薬のせいで全身の感度も高まり、肌が触れるだけでとろけそうな快感を覚えるにもかかわらず、ひたすらに任務をこなしていく。
 快感に身を委ねる、そんな人間の性に逆らってでも戦い抜いた彼女。その姿は、正にUPCの誇りと言っても過言ではなかろう。‥‥悶えながらも戦う光景は、さすがに異様だったのは内緒だけど、ね。

「これで8機目‥。大分破壊できましたね」
 さて、30分ほど前までは見るに絶えない光景があちらこちらで展開されていた街中だが、さすがにその混乱も終わりに一歩近づき始めていた。今回最も多くの機械を破壊して回っていた【ひかりん隊】の神代が満足気に言ったその先では、田中の一撃を最後に駆動音を停止する媚薬マシーン。
 途中【ひかりん隊】は何度も変態から襲われこそはしたものの、主にお色気担当(?)のシェリーと、男のアレだって縮こまりそうな一言で威嚇を担当した氷狩の働きにより、何とか難を逃れていた。

「あら? 紅くなっているの? 可愛いわね? ふふ、気持ちよくさせてあげるわ、此処が良いのかしら」
 更に、こちらは別の意味で自体の鎮圧に貢献していた神森。本人も媚薬の効果を受けていたのかもしれないが、普段と何ら変わりない魅力を武器に街の男女を手玉に取っていた彼女は、ある意味住人の暴走による2次的、3次的被害を抑えていたのだ。
「いい思い出できたみたいね? これ以上の事期待するのなら、私を本気にさせる事ね」
 そう残して、次のターゲットを探し歩いていく魔性の麗人。濃厚なキスと、焦らすテクを有したその愛撫の前では、そこら辺の男や女など神森の相手にすらならないのであった。

「お姉さま、お姉さま何処ですか‥!」
 こうして、徐々に街も落ち着きを取り戻し始めていた頃。1人迷子になってしまったのか、大切な姉的存在である月夜魅と逸れてしまった直江は、目に込み上げるものを浮かべながら街中を歩きまわっていた。
「あぁ、月夜魅お姉さま‥せっかくドサクサに紛れてお姉さまのハートを奪うと同時に、結婚の提案を持ちかけようと思っていましたのに‥」
 さり気なく危険な発言を残しつつも、姿の見えない月夜魅を探し疲れて身も心もボロボロとなってしまっていた直江。もう諦めるしかないのか、そう彼女が思った矢先、
「あら、顔に汚れが付いているわ。可愛い顔が台無しじゃない。私が取ってあげるわね」
「あなたは‥」
 そこに現れたのは、まるで天使と見間違えるほど――そんな気品にあふれた1人の少女、美環だった。彼女に言われ、直江は自分の顔に泥がつくまで愛しき人を探していたことに気づく。
「お姉さま、早く見つかると良いですわね。見つかった際には、百合の花を是非咲かせてください」
 そう美環は囁くと、最後に「その光景を写真に撮り、私個人で楽しみますから」と付け足し、別の百合スポットへと消えていく。そんな最後の意味深な発言を直江が聞いていたかはともかくとして、
「そうです‥そうですよね! これはきっと神様の与えられた試練に違いありません。待っていて下さい、お姉さま! 必ずや私、この試練に打ち勝ち、憧れのお姉さまと‥‥(ぽっ」
 相変わらず色々と間違った方向ながらも強く生きる少女は、揺るぎない決心と共に再び歩きだすのでした。

「大分片付きましたわね‥。後はこの媚薬を持ち帰り、研究するのみですわ」
 こうして、ほとんどの媚薬マシーンの破壊が完了した街は、静寂に包まれていく。騒ぎの治まった街を見つめながら佇むシャレムの顔は、どこか清々しい。
「媚薬マシーンにドS触手キメラ‥‥バグアにもそういう趣味の奴がいるのかな」
 目の前に倒れているキメラの死骸に目を配りつつ、こう呟いたのはアークだ。
 その横では、貞操帯のおかげで全く弄られず疼きの止まらないヴァサーゴと麗華が、伊万里に貞操帯を外すよう懇願している最中。どうやら、無事にキメラも倒せたようだ。
「あぁ神様。俺、明日KVが突っ込んできて逝ったりしないよな」
 一方、伊万里の身体に隠された鍵を探して彼女を弄る麗華達を遠目越しに、煩悩力者ホムランこと紅月は、今日見た光景全てを思い出していた。きっと、今日一日彼が体験したことは、永久に忘れられないものとなっただろう。


「‥まだ怒っているか? まぁ、許せとは言わんがな。偶々覚醒を解いた時に媚薬の効果が出てしまったとは言え、結果的にエンタを襲ってしまったのには違いない」
「べ、別に怒ってなんかいませんよ。そ、その‥あんな所で始めちゃったのは‥確かに薬のせいですけど‥大好きって気持ちは‥薬のせいじゃないですから」
「エンタ‥‥」
 赤く染まっていく街を背に、赤く染まる頬を隠すように呟いたエンタの一言。その言葉に、「そうか」とだけ返したアキラの顔は、どこか微笑んでいるようにも見えた。
 
 後の話だが、後に報告書を受け取ったULT職員の通報により、能力者たちが持ち帰った媚薬は全て没収されたという。やはり、人間が持つには危険すぎるという判断なのだろう。

 愛があったから生まれる命がある。愛を受けて育つ命もある。誰かを愛せることは、きっと素晴らしいことなのだろう。種族、性別、年、如何なるものも2人の愛を阻む権利など持ち得ない。
 これは、一日だけ百合の咲き誇った、とある街のお話。だが、生命の源たる種子は今日もどこかに飛んでいく。
 もしかしたら、次はあなたの住む街にも百合の大輪が――