タイトル:漂流せし異形達へマスター:羽月 渚

シナリオ形態: ショート
難易度: 難しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/01/19 16:53

●オープニング本文


 とある船乗りはこう言った。幽霊船を見た、と。
 別の船乗りはこう言った。あれは正しく海賊船だった、と。

 ――ULT事務局
「何が一体起きているというのか‥‥」
 そこでは、1人の女性が頭を抱えて参考資料と格闘していた。目の前にドサッと山積みされたファイルや、横では絶え間なく稼動しているコンピューター。時刻は既に夜の9時を過ぎようとしていたが、彼女はある『事件』の調査に励んでいたのだ。
「頑張ってるネ、姐御! でも頑張りすぎネ、だからストレスで最近顔に元気がないヨ♪」
「てめぇもちったぁ作業しろ、このバカ局員」
「なっ、せっかくお茶入れたのにネ! もういいヨ、僕はここいらでお暇させてもらうアルね」
 湯気の立つ茶碗を2つお盆に乗せ持ってきた少年は、女性からの冷たい返事にプイッと顔を背けて部屋から出て行こうとする。そんな彼を引き止めるでもなく、無言のまま作業を続ける女性。
 今日の仕事はもう終わった。後は帰ってお風呂に入り、眠るだけ。そう思いつつ足を進める少年だったのだが‥‥ 
「‥‥‥‥。はぁ、仕方ないアルね‥‥」
 さすがにこのまま先輩だけ残業させるわけにはいかないか。そう結論に行き着くと、彼、カイン・クレシア(gz0187)は、そのまま静かに彼女の隣に座り、パソコンを見据えるのだった。

 ――UPC本部
「というわけで今回皆さんには、南米の大西洋側海域に出現した、キメラの乗っ取る軍事兵器輸送船を解放していただきます」
 UPCの依頼用モニターに提示された依頼。そこには、急を必要とする緊急任務が光を放っていた。
 その内容とは、キメラに占領されたと思われる輸送船が及ぼす、これ以上の被害拡大阻止を主とするものだ。
 オペレーターの話では、まず最初に目撃されたのは6日ほど前のことらしい。最初に襲われたのは、漁業を営む男性の乗る中型の船、そして次に客船と、徐々にその被害エリアを拡大しているとのこと。
「尚、今回対象となる敵に占拠された船ですが、2週間前に連絡の途絶えた、軍事用兵器を扱う輸送船となっています」
 更にオペレーターは続け、今回目撃された船についての詳細を告げる。
 その内容からして、恐らくは2週間前に本船はバグア勢力の襲来を受け、そのまま船ごとをバグア側に奪われてしまったと考えるのが妥当だろう。
 だが、気になる点として、その船は目撃者の情報によると、まるで塗装からして幽霊船のようであったという話も伺えたらしい。また、対象のバグア船に襲撃された輸送船では、乗員の殺害に併せ輸送していた貨物(兵器など)も強奪されたとのことだ。
「人間の恐怖を煽るよう、幽霊船と海賊船ゴッコを伴った兵器収集、と言ったところかしらね」
 唇を噛むオペレーター。そして、本依頼を遂行すべく能力者達による戦いが幕を開けるのだった――

●参加者一覧

リディス(ga0022
28歳・♀・PN
赤村 咲(ga1042
30歳・♂・JG
リュイン・グンベ(ga3871
23歳・♀・PN
南雲 莞爾(ga4272
18歳・♂・GP
雑賀 幸輔(ga6073
27歳・♂・JG
ブレイズ・S・イーグル(ga7498
27歳・♂・AA
伊万里 冬無(ga8209
18歳・♀・AA
アセット・アナスタシア(gb0694
15歳・♀・AA

●リプレイ本文

 その日は風も弱く、海上は穏やかな波と輝く太陽の光を反射し青い空を映していた。
 まるで鏡の様に彼方へと広がる青いカーペットの中、ポツリと浮かぶは黒く巨大な船。ボロボロの外装でゆっくり海上を進む船だが、その後方から、4機のKVと1機のヘリが近づいてくる。
「海賊船の上に幽霊船ね‥欲張りなやつらだな」
 目標を発見し一気に接近を試みる4機のうち、十二枚の可変翼が特徴的なシュテルンを操縦する雑賀 幸輔(ga6073)は呟いた。
「それじゃ、食いついて来ることを祈って。作戦開始かな」
 かなりのスピードで海上ギリギリを飛んでいたこちらも雑賀と同じシュテルンの赤村 咲(ga1042)は、十分な接近を確認した瞬間照明銃を発射。船の上空で炸裂する閃光、そして彼の翼は船めがけて大きな孤を描く。
「さて、生存者の状況は絶望的と聞いているが‥一人でも生きているんだぞ」
 赤村の照明弾が合図とばかりに、リディス(ga0022)ら船に向かっていた4機のKVは一斉に作戦を開始。今、穏やかな海を舞台に激しい戦闘の幕が開けた。


 初動、船の上甲板に居座るキメラへ真っ先にアプローチをかけたのは赤村。彼が放った照明弾にキメラ達が一斉に振り向いた直後、シュテルンはその閃光の中を突っ切る。轟音が耳を劈き、周囲に旋回した突風はキメラの翼を取り巻く。
「ギシャア」
 その突然の出来事に気を取られたキメラは、何事かと赤村の威嚇に気を逸らすわけだが、刹那
「何処を向いている」
 翔け抜けた一閃。周囲を彩る赤い血飛沫が太陽光に反射し、その赤い渦の中にはキメラの半身が舞っていた。
「リディスさんナイスだ! このまま一気に電撃戦を仕掛けるぞ!」
 今回、ヘリから船内へと進入する他のメンバーを援護するため、先制でキメラ達を殲滅する予定だったKV班。赤村の奇襲に意識を持っていかれたキメラの横を翔け抜けたリディス機のソードウィングは、瞬きの間にキメラ1匹を切り裂いていた。
 その瞬間劇に笑顔で声をかけながら、彼女の僚機であるシュテルンを操る雑賀は、自機を船へと着艦させつつPRMシステムを作動する。
「さぁて、まずはそこをどいてもらおうか」
 数秒後、相応の練力を糧に雑賀のシュテルンが形態変化。美しい機体に装着されたソードウィングが煌めき、目標に刃先が向けられた。

「幽霊船に海賊船の真似事‥‥行き着いた先に何が待っているんだろうな」
 一方、こちらは赤村とペアを組む南雲 莞爾(ga4272)。船の上空に回り込んだ彼は、下に見下ろす不気味な船を青く澄んだ冷たい瞳で見つめる。その視線に応えるわけではないが、残り3匹となったうちの1匹が飛翔したかと思うと、翼を羽ばたかせ甲高い鳴き声を発声し急上昇。狙いを定める先――そこには、南雲のディアブロ。
「南雲さん、今援護に」
 南雲の機体に迫るキメラを視認した赤村がKVの向きを変え、彼の援護に移行。そのまま赤村機を待ちつつも迎撃を開始する南雲機。
 1発。スナイパーライフルの銃口から噴出された弾丸が奔りキメラの翼を貫く。その衝撃に悲鳴を上げつつも、なお上昇してくるキメラ。とはいえ、ディアブロの破壊力の前に怯まざるおえないその姿は、移動力、攻撃力、全てにおいて翼竜型キメラの能力ではKVに及ばない現実を物語っていた。そして
「これで、2匹目!」
 赤村のシュテルンから放射されたエネルギー集合体がキメラを捉え、光に包まれた影は、そのまま力尽きた翼とともに青い海へ真っ逆さま。その光景とスピードは、正に彼らの連携と作戦の効率の良さ、そして機体能力の高さによる賜といえよう。
「一先ずは順調な出だしってところか。さて、次は甲板上だ」
 2匹目の絶命を確認した赤村は上甲板のキメラへと目を向ける。それに続き南雲も着艦体勢へと移行するのだが‥

「この程度か‥‥」
 どうやらその必要はない様子。溜息をこぼすリディスの前には、ズタボロの姿で立ち続けるキメラの姿。赤い血をハイ・ディフェンダーに滴らせたリディスのディスタンと、雑賀のシュテルンが見せつける圧倒的戦力差の前には、この程度のキメラは正しく雑魚にしかすぎなかったのだ。
 特に、絶対的な破壊力を持つリディス機の前にキメラはほとんど成す術もなく、ただひたすら振り払われるハイ・ディフェンダーの前に傷を重ねるだけ。おそらく直に決着はつくだろう。しかしながら
「上手いこと敵の目は引けたみたいだが‥早いに越したことはない。スラスター最大出力、少々強引なタッチダウンだが」
「そうだな。俺達もなるべく早く船内に向かおう」
 先に船内に先行しているメンバーも気になる。こうして、時間の短縮の為にリディスと雑賀の加勢に入る赤村と南雲。そして、合計4匹のキメラ討伐を迅速に遂行した彼らは
「こちらKV班、これより船内への潜入を開始する」
 ヘリ部隊の4人に続き、少々遅れて船内へと足を踏み出すのだった。

 ――数分前
 時刻は遡る。そこでは、激しいヘリの轟音に包まれた4人の能力者が、迫ってくる作戦開始時刻を待っていた。
「幽霊船ゴッコとは‥恐怖心増幅だか知らんが、奪回の機会をむざむざ与えるとは馬鹿の極みだな」
 ヘリから船への突入準備へと入っていた4人のうち、長髪の銀髪を風に靡かせながら、幽霊船を見て呆れた口調で呟くリュイン・カミーユ(ga3871)。彼女の手に握られた直刃の鬼蛍は、まるで持ち主自身に呼応するかのように不気味に輝いている。
「うふっ♪ ですが、おかげで今日は本気で遊べそうです♪」
 一方、鬼蛍以上に不気味な笑みを見せるはアサルトメイドこと、伊万里 冬無(ga8209)。上は特注のカチューシャから、全身を隈なく黒と赤で彩る彼女オリジナルの装備達。そんな独特の雰囲気を持つ少女は、首から紐を結んで提げた手乗りサイズの兎人形に頬を寄せ、今から起きるであろう戦闘を想像しながら身震い中。そして
「始ったようだな」
「作戦開始、だね‥‥コンユンクシオ、今日も頼りにしてるよ」
 前方で確かに煌めいた照明弾の光。リュインの言葉に続き、アセット・アナスタシア(gb0694)は自らの相棒を握りしめると、勢いよく4人は船へ飛び降り――任務開始。


「こうやって組むのも久しぶりだな‥リュイン、宜しく頼むぜ」
「ふっ。しっかり我を護れよ」
「ああ、任せな」
 リュインの強さは良く知っている。護る必要などないほど彼女の戦闘能力は高いが、それでもブレイズ・S・イーグル(ga7498)は静かに笑うと彼女に相槌をうつ。
 まずKV班がキメラと対峙している上甲板の反対側、船尾に着艦した4人はそのまま船体内へと潜入。作戦では、そこから船首側と船尾側の両端へ別れる手はずだ。
「さて、どっちが強い敵と当たるかだな」
「是非とも私達に当りが回ってきてほしいところですが‥ふふ、どちらにせよ敵は粉砕するのみです♪」
 分岐点。それぞれが広い船内の反対側に向かうだけに、2班が合流して戦う可能性は低い。なるべく強い敵を望み意気込むブレイズの横では、伊万里が腰にクロスして携えた2本の斧刃をなぞり、恍惚の笑み。
 今回のミッションは船内に存在する全ての敵対勢力を駆逐すること。どちらが敵を多く狩るかではないが、伊万里に関して云えば、1匹でも多くの敵を切り刻みたいという衝動が抑えきれない様子だ。
「それじゃ、いくとするか」
「往きましょうです、アセットさん♪」
 互いの相棒に声をかけて駆けだす2班。その先では、ただ底の知れない闇が手を招いていた。

「これだけ不気味だと、本当に幽霊が出てきても不思議じゃないね‥」
「うふふ、幽霊はダメですね♪ やはり斬ったなら斬った感触が、潰したなら潰した感触が味わえないと意味がありませんです♪」
「あはは」
 伊万里の冷たい瞳に、どこか幽霊船以上の寒気を覚えるアセット。久々に思う存分暴れられる伊万里は、覚醒と同時にやってくる狂気で既に満ち溢れている。彼女にとってあと必要なものはただひとつ。自らの欲求を満たしてくれる敵の存在だけ。
「うーん、ここも外れ。次はあの部屋か」
 しかし、そんな伊万里の願いも空しく、広い船内の中、キメラを見つけるのは中々難しい様子。
 とはいえ、どこかで敵が自分らを待ち受けているであろうことは確かな事実である。慎重に、慎重に、2人はひたすら足を進めるのだった。

「おい、ブレイズ」
「なんだ?」
「汝‥‥そうまでして死を急ぐか」
「ああ?」
 一方その頃、とある一室を捜索していたリュインは、腰から下にかけてピタピタと嫌らしい手つきで触ってくる不快な感触に顔を顰めていた。
「だから、この手は何だと言って‥‥!?」
 ガシッとリュインが勢いよく後ろに手を回し、つかんだ手の先。そこにあったのは、なんとまさか、ブレイズの腕! ‥‥ではなく、タコの足!
「ちっ、離れろリュイン! キメラだ、今俺が――」
「‥‥こぉのエロタコがぁ!」
「は‥」
 先手をとられた。そう思いつつ振り向きながら咄嗟にコンユンクシオを構えたブレイズ。しかし、数秒後自分の横を掠めながらそのキメラは吹っ飛んでいく。それに続き、ぶっ飛ばしたキメラに追撃をかけようとリュインはダッシュ。
「ったく、手間かけさせんじゃねぇよ」
 そんな彼女に若干苦笑しつつも、とりあえず彼も加勢に向かおうとすると
「!? こいつらは‥」
「エロタコが1、2、3匹。ふん、後で食えるか試してみるか」
「雑魚の救援か。まっ、これはこれで良い準備運動にはなるだろ」
 先程リュインから受けたダメージでぐったりしたタコを囲むように、3匹の新手が出現。しかし、特に動じる様子もない2人は
「いくぞ」
「おう」
 覚醒。邪魔な存在に向け、互いの刃を的へ突き付け――

 ――数分後
「ふー、弱すぎだろ、コイツラ。それで、伊万里達が何だって?」
 キメラの殲滅を終え、横に4匹の死骸を見据えるブレイズ。予想以上の弱さに肩を落としつつも、戦闘中にリュインの無線へ通信されてきた内容を尋ねる。
「残念なお知らせだ。どうやら向こうがドクロを発見したらしい」
「カァー、何だよツイてねぇなぁ。仕方ねぇ、俺たちはこのまま捜索を続けるか」
 伊万里達が当りを引いたという知らせを聞き、更に肩を落とすブレイズ。悔しそうな顔ながらも、とりあえずは報告にあったタコ型キメラの残りを探す彼だったのだが
 ――ガシャ
「これは‥」
「ふん‥良かったな。どうやら退屈せずにすんだようだ」
「そうみたいだな」
 突如として前に響いた金属音に足を止める2人。彼らの前に現れたのは
「中身のない鎧‥船長の下っ端といったところか」
 3体の鎧型キメラであった。

「あぁ、これです、この刺激が欲しかったのです! もっと、もっと、アハハハッ、堪りませんですぅ♪ アハハハハッ!」
 同時刻、赤村達に救援を求めた伊万里達は既にキャプテンドクロとの激戦に移っていた。
 4本の腕から次々と繰り出される斬撃でその身に多数の切り傷を作りながらも、伊万里は斧を振り回す手を止めない。
「はふぅ、やってくれましたですね♪ アハハハ、アハハハっ!」
 顔には狂気を含んだ笑みを浮かべつつ、傷を受けることをまるで快感ともいうように血の飛び交う舞台で踊り続ける彼女。
 受けた傷は活性化で回復しているとはいえ、ミニスカートを翻し身を挺すその姿は、まるで壊れた人形といったところか。
「これがキャプテンドクロ‥相手にとって不足はない!」
 前衛で超近接戦闘を繰り広げる伊万里に比べ、こちらは後方からソニックブームを打ち込みつつ敵の隙を観察するアセット。彼女の周囲をエネルギーが円心上に包みこんだかと思うと、瞬間、敵に向けて一直線の衝撃波が地を奔る。が
「くっ、思ったより硬い‥」
 強力なFFがその威力を緩和するとともに、複数の腕がその衝撃を吸収してしまう。
「あの腕さえなければ」
 確実に敵へダメージを与える隙を作ろうにも、やはり伊万里と自分だけでは限界がある。そして
「きゃぅん。アハハハ、まだです、まだですよ」
 遂に敵の猛攻に屈してしまった伊万里。既に麻痺した腕へと伝わった衝撃は、彼女の手から2対の斧を手放させ宙を舞わせた。
「伊万里さん!」
 ガシャンと地面に突き刺さるハルスヴァルド。しかし、素手になりながらも、携帯品の武器に持ち換えようと伊万里は怯まない。だが、その頭上から迫りくるドクロの剣。駆けるアセット。間に合うか、彼女が剣を振りかざした――刹那
「ギシャア」
 不意に顔面に多数の弾丸を受け、ドクロの頭に激しい痛みが奔る。
「どうやら間に合ったようだ」
 その弾丸が描いた直線の先。そこにいたのは、SMGを構えた赤村と、既に抜刀しキメラの目の前へ間合いを詰める南雲!
「今だ」
 その隙をすかさずアセットが衝く。それを阻もうとするドクロの4本腕。しかし
「抜く前に、斬らせて貰うぞ」
 何よりも速い一閃。横から介入してきた南雲の月詠は、ドクロの半身にある2本の腕を切り裂いていた。更にもう半身の腕は
「今‥ですよ、アセットさん」
 自慢のメイド服も所々破け、既にボロボロとなった伊万里がなんと体ごと2本の腕を抑えつけている。そして――
「これで‥終わらせる!」
 両断剣。地を一蹴したアセットから繰り出された超絶な一撃が、2人の作った隙で無防備なドクロの体を捉え
「グガ」
 ドクロは地へと首を垂れるのだった。

「カーネイジファング! 砕けなァ!」
 ドクロとの激戦が行われる反対側では、こちらもリュインとブレイズによる激しい戦闘が幕を切っていた。
 豪破斬撃による突進突き後、スキルの多重使用により下段からとてつもない斬撃を繰り出すブレイズ。下から上へ、巨大な衝撃のベクトルが刻みつける刻印に、鎧型キメラはたたらを踏む。
「遅いな」
 ブレイズの戦いを豪快と称すなら、リュインの戦いは華麗と表せよう。誰よりも速く駆ける彼女は、1歩、2歩、その全てが蝶のように美しい舞いとともに強烈な斬撃を繰り出す。
「次は足だ。おっと、すまん。右腕もいっしょにいただこう」
 絶え間なく繰り広げられる連撃で金の髪を靡かせるリュイン。戦力差は圧倒的、だったのだが‥‥
「オイオイ、増援かよ」
「どうやら誘い込まれたようだな」
 いつのまにか前方から更に迫りくる鎧達。その光景に足を止めた2人の後方から
「悪い、遅れた!」
 聞こえるは雑賀の声。そしてリュインが後ろを振り向く間もなく
 ――ドガガ
 リディスの瞬天速から放たれた風林火山の急所突きが、キメラの腹部に空洞を作りだしていた。


「やっと太陽が拝めたな」
「まったく、あんな辛気臭い場所は勘弁だ」
 こうして船内の敵を見事に殲滅した8人は、解放された船とともに帰路に着く。
「おかしいな‥船を乗っ取っていたにも関わらず、ヨリシロやバグアがいなかったとは」
 ただ、今メンバー中唯一ヨリシロを警戒していた赤村の謎だけが、傾いていく夕日の中へと消されていくのであった。