タイトル:【微笑みの凶刃】幕開けマスター:羽月 渚

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2008/08/25 03:59

●オープニング本文


「ラン、ラーラーラー」
 満月が明るく不気味に輝く月夜の晩、静寂が包み込んだ街の中にその歌は響き渡った。
「ラララーラーラーララー」
 幼い少女の声、鼻歌のように口ずさむその旋律はとても澄んでいて、美しかった。
 軽やかに踊るかのように、街の中心で彼女は静かに微笑み夜空を見上げる。そんな彼女の横に、黒い物体が1つ近寄ってくると‥‥
「きゃ、こら、ダメでしょー。ちゃんとそこの噴水で口洗ってから帰ってきてよね、汚いじゃない」
 その黒い物体に彼女は不服そうにこう言った後、
「‥‥まっ、こんなこと言っても無駄か。あなた達、言葉理解できないもんねー」
 と、ため息をつきつつ『あなた達』と呼ばれた黒い物体の頭を撫で始める。それと同時にクーンとかわいらしい鳴き声をあげた黒い物体は彼女の前に座り込むのであった。
「ねー、あなたも聴こえるでしょ? 素敵な声だと思わない。静かな夜を突き破るようなこの合唱、ふふふ、興奮するわぁ」
 幼い顔立ちからは想像もつかない残酷な笑みを浮かべた彼女は、満足気な顔でまた歌を歌いだす。すると、その歌に呼応するかのように次々に黒い物体が彼女の周りに集まってくる。通ったあとにはただ、赤黒い道しるべを残しながら‥‥

―――――――「以上が、今事件における概要となります」
 UPC本部、オペレーターがまたひとつ新たな事件の詳細を傭兵達に告げる。とある小さな街の住人が一晩にして半数以上、無残にも殺されたとの報告を受けたのだ。その死体の傷跡、及び生存者の報告からキメラによる事件と本部は断定。その捜査のために今回傭兵達は集められていた。
「このように、具体的な敵の目的、数が不明のために深追いは禁物です。尚、同様の事件がこの街に通じるルートに存在する街で、この事件の2日前に起きていること。及び目撃者の情報から今事件が起きた直後、謎の少女と多数の犬型キメラが最寄の街へ向かっている、とのことから指定したこちらの街が次の敵目標になる可能性があります」
 そして、本部から正式に依頼が提示される。何としても、この謎の集団の正体を突き止め、可能であれば全力で排除すること、と‥‥
「それと‥‥恐らくこの事件の犯行はキメラによるものとして間違いないと思われるのですが、キメラがこの用に集団で群れをなして行動している例は稀です。目撃者の情報からも、キメラの近くにいた少女がバグアの可能性が高いと思われますので、くれぐれも気をつけて行動してください」
 不安げな顔で告げるオペレーター。こうして、謎の集団への追求が始まった。そして―――


「ランラン、あら、どうやら次の街が見えたみたいね。あなた達もお腹減ったでしょ?もうすぐご飯にしましょうね」
 その無邪気な微笑みが号令となり、次の惨劇が幕を開けようとしていた。

●参加者一覧

戌亥 ユキ(ga3014
17歳・♀・JG
聖・綾乃(ga7770
16歳・♀・EL
八神零(ga7992
22歳・♂・FT
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
月村・心(ga8293
25歳・♂・DF
天城(ga8808
22歳・♀・ST
RENN(gb1931
17歳・♂・HD
ペンギン次郎(gb2372
20歳・♂・EP

●リプレイ本文

「ええっとぉ、ここが被害にあった街‥‥ですよね?」
「ああ、そのはずだ。思っていた光景とは違うようだがな」
 青い空、見渡す限りの平原。美しい風景に四方を囲まれた場所にその街は存在した。先日、キメラの集団に襲われたくさんの犠牲者を出したはずであろう小さな街。しかし、そこにあったのは壊れた家ひとつない、ごく普通の街並みであった。
「被害者の数だけに街は壊滅状態だと思ったんですが、違ったみたいですねぇ」
 不意打ちをくらったような表情で回りを見渡すかわいらしい少女、聖・綾乃(ga7770)。涼しげな風がワンピースを靡かせている。
「とはいえ、この街で大量虐殺があったのも事実。まずは情報を集めなければ」
 小柄な聖の横に並ぶと、その長身が目立つ八神零(ga7992)。2本の刀を携えた、銀色の美しい髪が人目を引く青年はそう呟くと
「何にせよ、討伐に移るには不明な点が多過ぎる‥‥」
 こう付け加え、足を進めだす。
「あ、では私もご一緒します」
 その後に優しげな笑顔で続く天城(ga8808)。
「私達は町長や警察とか事件に詳しそうな人達をあたってみますね」
 ニコッと残りの6人にこう告げて、八神と共に街へと入って行った。  
「いってらっしゃぁい」
 2人を見送る聖の横で
「さて。俺達はどうするかね」
 黒を身に纏った、とでも言うべきであろうか、鋭い眼光の月村・心(ga8293)が街の方を見ながら腕を組む。実は彼、かなり異色の経歴を持つやり手なのだ。
「とりあえず俺達もまずは聞き込みが先だ。他に有力な情報が聞きだせる可能性がある場所は、医療関係の施設とかか」
「ん、なるほど。確かにそこなら敵キメラがどんな傷を与えたかどうかが分かりやすいな」
 鋭い提案を持ち出したのは、首にロザリオをかけたどこか神妙な雰囲気を漂わせる美青年、夜十字・信人(ga8235)。
「うう、でも私その役はパスかも‥‥」
 不安げな顔で信人の提案に付け加える戌亥ユキ(ga3014)は傷ついた被害者がいるかもしれない場所に、足を運びたくないのが本音であった。優しい心の持ち主は依頼と割り切ったものの、やはり心苦しい気持ちである。
「では病院へは俺が行こう。心配するな、よっちーにかかれば安心だ」
 整った顔立ちの信人が、自分の胸をポンッと叩き主張する。何だろう、何かが違う気がするのは気のせいか。
「よっちー?」
「ん、呼んだか? ああ、言い忘れたが、俺のことはよっちーと気軽に呼んでくれ」
 聖の問いかけに指を立てて応える信人。ああ、そうか、このギャップに違和感があったんだ!
「じゃあ病院はよっちーに任せるとして、僕達は一般の人たちに聞き込みだね」
 カンパネラ学園、その真新しい制服に身を包んだ少年、柿原錬(gb1931)はまだ幼い顔で街を見据えた。
「そうと決まれば早速行動に、有益な情報入手に期待ですね」
 丁寧な口調でペンギン次郎(gb2372)が続くと
「それじゃ、また夜に会おうね。誰が一番情報訊き出せるか競争かな?」
 そうユキが言うのを合図とばかりに、各々が散会した。ミッションスタート―――


「これは‥‥酷すぎるよ」
 街の中心部へとやってきた柿原。彼が目にしたのは、街中心部に設けられた噴水を、所狭しと囲うたくさんの花束であった。そう、犠牲者に手向けられた悲しみの象徴ともとれる、幾つもの住民の嘆きの具現物。
「こんなにたくさんの人が‥‥なんでこんなことを」
 ただ呆然と立ちすくむ、まだ幼い少年にはあまりにも荷が重い事実であった。一方、その噴水に近接する民家から出てきた聖。なんだか顔色が優れないようである。
「ど、どうしたの聖さん。大丈夫?」
 心配そうに話しかける柿原に目を向けると、いつもはしっかりした彼女だが、涙を堪えた声で、
「家ね‥‥外から見ただけじゃ分からなかったんだけど、中がすごくって‥‥まだたくさんの血の跡が残ってた」
「あ‥‥」
 傭兵とは言ってもまだ幼い2人。そんな2人が直面している事実は理解しづらく、また恐ろしいものである。
「こんなとき、私もお姉ちゃんみたいに強くなれればいいのにな」
 いつも笑顔で明るく強い姉を思いながら、少女はそう呟くのであった。

「それで、集まった情報を纏めるとこんな感じか」
 夜、聞き込みを終えた8人は宿に集合し、それぞれの情報を共有していた。
「敵の具体的特長についてだが、信人が聞き込んだ病院で大分成果が出ているな」
 八神がみんなの意見を纏めていると
「待て、俺は信人であるが、同時によっちーでもある。むしろよっちーと呼ぶといい」
 八神にすかさず突っ込む信人。
「じゃあ‥‥その、よっちーの集めた情報を詳しく伝えてくれ」
 少し言葉に詰まりながら応える八神。
「了解した。まずは敵についてだが、被害者は犬のような獣に襲われたと言っている」
「事前情報に間違いはなさそうですね」
 次郎が言うと、更に信人が続いて、
「しかも被害者の傷跡を見るに恐らく敵の武器は何かの鋭利な刃とみて問題ないだろう」
「その点については俺も同意見だ。あまり気が乗るものじゃなかったが、遺体も見せてもらった。大抵が引き裂かれるか、食い千切られるかが原因の出血死だったな」
「ひどい話だね‥‥」
 より念の入った調査をした月村の報告に悲しみを隠せない様子のユキ。
「被害者の数もそうですが、警察の話では敵もかなりの数がいたようです」
 天城が更に補足する。
「複数の統率された犬型キメラ」
 次郎が思案顔で呟き、
「となると問題は、ユキさんの聞いた少女ですか」
 皆の視線がユキに集まる。
「えっと、噴水近くの家で聞いたんだけど、女の子が歌を歌ってたって」
「歌?」
「うん、暗い上に、部屋に隠れてたからよく見えなかったらしいけど」
 その言葉に柿原が息を飲み込み、静かに目を閉じた―――


「ふぅ、つきましたね」
「とりあえずは様子見か」
 目的地へと着いた一行。見張りをしていた本部の能力者と交代し、まずは市内を捜索することに。
「僕はこいつの能力も試すいい機会ですね」
「え、何それ、すごい」
 柿原の所持するAU−KV、リンドヴルムに興味津々といった様子の天城。
「ほう、AU−KVか」
 と月村が珍しげに鋭い眼光で見つめると、
「へへ、何だか恥ずかしいな」
 そう言って顔を赤らめる柿原であった。

―――夕暮れ時
「一通り街の人への連絡はできましたね。後は敵を待つだけですか」
 2日目、施設に頼み住民に事情を放送し終えた8人は、各々配置につき敵を待つこととなった。
「敵の実数不明に謎の少女‥‥緊張するなぁ」
 実戦で使用するのは初めてとなる白銀の洋弓アルファルの手入れをしつつ、緊張顔の天城。今までの犯行は何れも深夜に行われていたので、各々夜に備えるメンバー。そんな、まだどこか気が抜ける2日目だったのだが、
―――バタン
「え。何‥‥って!」
 急にドアから表れ床に倒れる男、背中から大量の血が流れている。
「しまった、予想以上に早かったですね。この方は私が手当てしておきます。皆さんは早く討伐へ」
 想定していた日にちよりも早い時期にその姿を現した敵。しかし、咄嗟に次郎が倒れた男の手当てに回ると、
「私はまずみんなの誘導と安全確保をしてくるね!」 
 住民の避難を誘導するユキが真っ先に飛び出し、それに続いて6人が外へ飛び出した。
 いざ、戦闘開始!


「見つけたはいいが、1匹2匹、ずいぶんと少ないな」
 場所は広場。そこにはキメラと傭兵が同時にお互いに気づき、静止していた。
「目撃情報通りならどこかに少女がいるはずだが」
 ふっと対峙するキメラから視線を外した八神めがけて
「バウッ」
 先制で飛び出してくるキメラ。
「ふん、避けるまでもない。その程度の牙で僕を倒すつもりか?」
 しかし、余裕顔のまま月詠で攻撃を受け止めると、同時にそのまま一気に敵を押し付ける。
「そのまま抑えておいてください!」
 側面にAU−KVに身を包んだ柿原が回りこみ、体重を乗せた一撃を叩き込む。ガッと弾き飛ばされたキメラの横にすかさず聖がダッシュすると、
「お前の奪った命の重さ‥‥己の身で味わえ!」
 覚醒し金色の瞳へと変わった聖がトンッと軽やかにスカートを円心に廻しながら、トドメの一撃を刺す。一方、もう一体を相手にしていた月村は、アーミーナイフで牽制しながら敵の攻撃を捌き続けていた。
「月村さん、援護します!」
 横へ走りながら敵へと距離を縮め、射撃姿勢へと移行した天城。そのまま敵死角からアルファルの一閃が煌く。
「他愛ない」
 攻撃を捌いていた月村であったが、天城の支援により隙の生じたキメラを視認した瞬間、前方に踏み込み地面を一蹴。空中で体を回転させアーミーナイフの斬撃を叩き込む。2人の連撃でひるんだキメラの動きが停止、それと同時に背後から
「残念。亡霊に睨まれた時点でお前の明暗は決まった」
 両手に十字架にも映る大剣を携えた信人が両断、そのまま地面に亀裂を生んだ。流れる血を割れ目は吸い込みながら、倒れるキメラを覚醒により現れた黒の翼を持つ少女が見つめていた。すると

「バカな子豚がやってきた、飢える野獣のもとへとやってきた」
 どこからともなく聴こえてくる歌。
「この豚ちゃん悪い子だから、私の玩具を壊す悪い子だから、ここでお仕置きみんな死ぬ」
 6人が顔を向ける先は民家の屋根。そこにいたのは
「なるほど、あいつか」
 まだ幼い少女が一人、不気味に微笑んでいた。
「くっ、やっと本格的にお出ましか」
 そして建物の影から姿を現す3匹の犬型キメラ。
「ランラン、さぁ皆やっちゃえー」 
 歌を口ずさみながら観戦を楽しむ少女。するとそこに
「夕日をバックに歌うのも中々趣がありますね。どうですフロイライン、私にも歌っていただけますかな?」
そう言いながら、ロープを翻し登場する次郎。
「あら、お仲間さんのご登場? でも残念。1人加わったぐらいで‥‥」
――バシュ
「!?」
「残念だけど、1人じゃないんだよね」
 華麗に次郎が登場したかと思うと、今度はどこからか放たれた弓がキメラを射抜いていた。
「8人か‥‥厄介ね」
 ユキが住民の避難も済ませ、敵を叩くのみとなった一同‥‥かと思われたのだが
「何でこんな酷いことしたの?」
 そこには少女を上に見上げながら、そう問いかける柿原。そうだ、彼を始めとして8人の中には少女に疑問を抱かずにはいられない者達もいた。
「貴女は一体何なのですか? 何故こんな事をっ」
 柿原に続け聖も問う。すると、少女はふっと笑いこう切り返した。
「あら、あなた達私と年いっしょぐらいじゃない? じゃあ、あなた達も分かるはずよ? 命を奪うことの快感が」
 あはは、と笑い平然と言う彼女。その残酷な言葉に柿原は、声を震わせながらも力を込めて呼びかける。
「そんな、間違ってる、君は間違ってるよ! まだ間に合う、だから降りてきて僕と話そう」
 ぐっと拳を握り、それに続く言葉を詰まらせる。ただ、真っ直ぐな瞳だけが少女を見上げていた。
「ふーん。じゃあさ、あなたはあたしを満足させられるの? この遊び以外、なーんにもないのよ、あたしには。なーんにもね」
「え」
 一瞬ではあったが確かに寂しげな表情を見せた少女に柿原は気づいた。が、

「言葉で説明してどうにかなる相手ではありませんよ、柿原君」
「あ、待って」
「そうだな、まずはとりあえずそこから降りてもらおうか」
 しかし、そんな柿原の意思も空しい願い。ここは戦場、何より優先されるは敵目標の速やかなる排除であった!
「自分は高みの見物というのが気に入りませんね」
 次郎が聖の隣を走り抜け、言葉を投げかけると同時に、同じく飛び出した月村と2人並行に並び、下方から一気に少女に飛び掛る。跳躍、一瞬にして間合いを詰め少女を射程圏内に捕らえる2人。そして、それぞれの武器が刃を向けた刹那、
―――ガシュ
「なっ、こいつ後ろに隠れて」
 後方に身を潜めていたキメラが一気に2人に襲い掛かった。咄嗟の不意打ちに、空中で回避が遅れた2人、攻撃を受け止めるものの下へと一直線。
「ちっ」
 錐揉み回転をしつつ着地する月村の横に、敵攻撃が直撃した次郎が叩きつけられる。それを見た聖が駆け寄ってくるやいなや、
「敵が来ます、聖さん!」
 すかさず上空からキメラが飛び降り、追い討ちをかけてくる。
「くっ」
 天城の声に反応して、氷雨でとっさに攻撃を逸らし何とか回避する聖、そのまま体を半回転させ逆の手の朱鳳でキメラの半身を抉り取る。
「ギャウン」
 追い討ちをかけたはずが手痛い反撃にあったキメラ。
「対象ダメージ、半歩前に踏み出しその後停止。よーし、ここだ!」
 味方が固まっているにも関わらず、敵の動きを予測し弓の軌道と照らし合わせ照準を定める天城。ハイテンションだが冷静な一撃として放たれた矢が敵の足を見事に貫く。
「畜生の分際で随分とやってくれましたね。そろそろ倒れなさい」
 さっきの痛みの倍返しと言わんばかりに、次郎が刀を敵腹部に突き立てる。鈍い音と共にその場にひれ伏すキメラ。その様子を見ていた少女が
「あーらら。負けちゃったぁ」
 と残念そうにため息をつく。
「まぁいいわ、ほら何やってるの皆、こいつらさっさと始末しなさ‥‥!?」
 少女が向きを直し八神の方を見た瞬間、そこには3体の死体が転がっていた。
「そんな、いつのまに‥‥」
「無駄さ。この双月にかかればこんなキメラ、敵ではない。それよりお前、観戦気取りはいいが後ろにも気を配ることだな」
「後‥‥ろ!?」
 すかさず振り向いた少女の後ろには、大剣を構え既にいつでも斬りかかれる態勢の信人がいた。
「ふーん。思ったよりやるじゃん」
「斬る前にひとつ訊いていいか?」
「あら、何かしら」
「先ほどの柿原達ではないが、己の行動を理解していること前提で問う。楽しいか?」
「ええ、楽しいわよ」
 そう言って微笑み返した瞬間、両手に携えた大剣を上段から叩きつける。その強烈な斬撃が少女を真っ二つに切り裂く‥‥かに思えたのだが、
「!」
 紙一重で信人の攻撃を回避した少女が屋上から落ちていく。
「今日のところはあたしの負けね。でもいいわ、もっと強い玩具じゃないと勝てないことが分かっただけでも収穫よ」
 そう言って、逃げ行く少女。
「残念でした。私は逃がさないよ!」
 建物に隠れていたユキが狙撃を試みる、が
「えっ」
 不意に目の前に飛び込んでくるキメラ。
「ま、まだいるっていうの」
 天城が驚きの声を上げ、更にもう1匹が少女の後を追おうとした傭兵達の前に立ちはだかる。
「残念だが、まずはこいつらの駆逐が優先のようだな」
 再び武器を構えた8人、しばらくして、彼らの前に8匹のキメラが転がった。


「あの子は逃がしちゃったけど、街の皆は護れたから良かったね」
 戦いを終えた夜、ほっと安堵の溜息をつくユキ。
「そうです、とりあえずは成功ですっ」
 笑顔で聖が手を合わせる。ただ、少女に対しての疑問が晴れることはなかったが‥‥