●リプレイ本文
冬の空に響き渡る花火の音。巨大な天井の開いたドームには、冷たい風が吹き溜まる。だが、そこに集まっていた数多の観客達は、そんなもの関係ないというほどの熱気に包まれていた。彼らが一斉に熱い眼差しを送る先。そこには、2人1組サバイバル?と書かれた巨大な看板――
●開会式〜二人三脚
「おーほっほ。さぁ、奇創蓮華再び、ですわよ!」
「今回もこの2人がやって来た! 漆黒ダークなメイドさん、伊万里 冬無(
ga8209)と、眩い輝き超絶お嬢様、大鳥居・麗華(
gb0839)の2人組、奇創蓮華のご登場だぁ!」
二人三脚のコース前に、スタートを控えた10人、計5組のチームが颯爽と現れる。その中からまず紹介されたのは、前回観客から最もアツい声援を受けていた奇創蓮華の2人であった。
「うふふ〜♪ ファンからの声援に応えるべく、再び帰ってきましたですよ!」
観客の男性は前に乗り出し、会場全体に割れんばかりの声援が響き渡る。
「ファンの為に参加したとは言え、やるからには勝ちますわよ!」
そう意気込んで、着ていたドレスをズバァーっと脱ぎ捨てる麗華。清楚なドレスの下からは、隣の伊万里同様、平仮名名前入り体操服+ブルマの絶対コンボがお目見え。しかし全く同じというわけではなく、伊万里のブルマは紺で麗華はまさかの赤色がポイント。
「さて、それじゃあ足を結びますわよ‥‥って、あら。ぎゃぅん」
早速スタートラインに並び、お互いの足を固く結ぼうと屈み込んだ麗華だが、するとどういうわけか、そのままバランスを崩し伊万里に凭れかかってしまう。
「開始5分も経っていないのに‥大胆ですね、麗華さん♪」
「ち、違いますわ! この体操服、キツすぎるような」
モジモジと起き上がる麗華に、見事企みが成功し邪笑する伊万里。どう見てもサイズの小さい体操服に苦しむ彼女は、完全に体のラインが浮き彫りとなる羽目に。やはりこのサバイバル、出だしから既にカオスである。
「今回は怪我してるわけじゃないし。ま、楽しむとしよう」
一方、次に紹介されたのは、前回惜しくも重傷のため優勝を逃したジェイ・ガーランド(
ga9899)と、彼の恋人、紅 アリカ(
ga8708)の2人だ。ジェイの優しい声に静かに返事するアリカ。伊万里達のような派手さこそないものの、静かに佇むその光景は、大人の魅力と底知れぬ能力者2人のオーラが感じられる。
「胸が大きいからって偉いわけではありません!」
麗華の著しい凹凸ラインに目が釘つけの男性客を歯がゆそうに見つめつつ、微乳教信者の2つ名を持つ二条 更紗(
gb1862)は静かに闘志を燃やす。ちなみに彼女も体操服なのだが、その胸には2のB二条と意味深げな記載が。
「まずは二人三脚、頑張りましょう」
ググッと小さな体で拳を握る二条だが、その無邪気な仕草に、伊万里達に負けずとも劣らない応援を受けていたことを彼女は知らない。
「えーと‥サバイバルって‥野戦じゃなかったんだ‥」
「ハァっ!?」
寒い風を吹き飛ばすかのように燃えあがってくる会場であったが、そんな中、よく分からない顔でポツンとイスル・イェーガー(
gb0925)は状況把握に努めていた。ボソッと出た彼の呟きに、思わず呆れ顔のショータ。依頼の題名から、野外戦におけるペア行動を学ぶための勉強だと思い参加していたイスルにとって、この状況は正に行き当たりばったりである。
「今日は二人で思いっきりイこーね、ルティ♪」
「ええ、観客を魅了する内容にしたいですわね」
ド派手な登場で早くもアピールを開始する奇創蓮華の横では、レイチェル・レッドレイ(
gb2739)とルティエ・カルティエ(
gb3593)が、揺蕩う2つの魔丘で弾けんばかりのバニースーツを着用し、待機中。しかもこのバニースーツ、レイチェルが赤でルティエが黒と色違いだ。
「むむ、麗華さん! 強敵現る、ですよ!」
「あなたの強敵の基準は何なんですの‥‥」
そんな2人を見て、伊万里は瞳に炎マークを浮かばせる。
「ルティ、あの2人、できるよ!」
体操服ブルマとバニーガール、ぶつかる視線弾ける火花。何だか別の意味での対戦も、始まる予感がするような‥
こうして、それぞれの思惑を胸に、熱い戦いは幕を開けるのであった――
――位置について〜
ドーンという銃声とともに、勢いよく走りだす5組のペア。
「‥まずは様子を見つつ、だよ」
「お、おう」
今日が初対面のため練習もできず、ぶっつけ本番のイスルペアは相手の出方を伺いつつゆっくり進む。とは言え、しっかりショータをエスコートしている辺りは、さすがと言ったところか。
「‥あ、ごめんなさい」
「おっと、慌てなくても大丈夫。軽くこなすとしよう」
友情でイスル達が試練に臨むと例えるのなら、こちらは『愛』という表現が近いだろう。体格に差のあるジェイとアリカは、本来二人三脚には向かないはずが、それも考慮に入れたジェイの優しいリードで着々と距離を進めていく。
「‥まずはハードルね‥せーの」
最初に能力者達を出迎えた障害はハードル。二人三脚でとなると案外難しいが、アリカの掛け声に合わせ2人は難なくそれを乗り越える。
「やっぱり‥服がキツすぎ‥」
「麗華さん、次はローションゾーンみたいですよ♪」
「何ですってぇ!?」
一方、こちらは服のサイズに苦しみながらも、幸い体格差が少ない利点を利用し2位のポジションにつけていた麗華達。だが、伊万里が前方に見つけた次の障害への一言に、麗華は以前どこかで聞いたような叫びをあげる。
「ここは慎重に行きますわよ! 絶対に転んではいけm」
「あはっ♪ 滑ってしまいましたですっ♪」
速攻かよ! と表情が激変する麗華を突き飛ばすよう二人は地面へダイブ。勿論そのおかげでローションがベットリ付着しまくるわけだが、ピッチリサイズの体操服を着た麗華は‥‥その、完全に透けてます。
「よーし、こうなったらボク達も!」
勝負を度外視している気もしなくはないが、こちらはレイチェルがルティエを押し倒したかと思えば、絶好のマウントポジション。
「ふふ、ルティのカラダって思った通りやわらかーい♪」
「あ、そこは‥さすがに‥ダメ」
足が完全に結ばれている状況と、粘着性の増したローションで思うように体の動かせないルティエは、完全にレイチェルの為すがまま状態である。
「ローリタさん‥御免なさい、もう我慢できないんです」
「ふぇ」
そんなレイチェル達を見ていた二条はと言うと、何故かムラムラしてくる衝動に後押しされ、気づけば相方のローリタに馬乗り。
「組んず解れつ、キャッキャッウフフ」
最初に思ったことはネタの為。これで喜んでくれる客がいれば、それも良い宣伝になる。そんな、ふとした出来心であった。だが、ネタのつもりが引っ込みが付かなくなった二条を待っていたのは、『マジ』という2文字の言葉だったらしい(本人後日談)
「いやぁ、凄いですね。この状況、マッスールさんはどう見ます?」
「観客席に、健全な青少年がいないか心配です」
「以上、解説のマッスールさんでした!」
実況にも思わず精が入るローションゾーンは置いといて、アリカ達とイスル組はいよいよ残り200メートル圏内に突入。ただ、先のパン食いゾーンで身長差からややイスル組みは遅れ気味だ。
「あともう少しだアリカ」
「ショータ君、あと‥少し」
それぞれが最後の力を振り絞り、いよいよ最終関門平均台が姿を見せ――
1位:イスル組 2位:ジェイ・紅 名誉の除外:その他大勢
●二人羽織
「それでは次の競技、二人羽織ちゃんこ鍋スタート!」
レースを終え、いよいよ第二競技が開始を告げるわけだが、二人三脚という、ある意味2人の絆をアピールするには最高のこの競技。だが
「ぁ、あつっ‥ううぅ‥! ショータ君、そこちが、ぁ、あむっ‥っ!」
「え、ここか!? ここがいいのか!?」
なんという光景だろうか。簡易的に敷かれた畳の上にはコタツとちゃんこ鍋。そしてそこでは、いたいけな少年が顔面のあちこちに熱い肉を突き立てられていた。しかも、アツアツの鳥肉は口に入っても尚、イスルの口を熱する。
「二条さん、もうらめぇ」
「え、何ですか? 見えないのでよく分りません!」
そんな可愛げな少年達の横では、同じく可愛げな少女達が具材と格闘中。とはいっても、悪戯な心に任せ動く二条の腕は、次から次へと具をローリタの口に突っ込み、気づけば少女の頬はリスのように膨れている。スピードはとにかく速いが、具とともに涙の味がするのは気のせいか。
「‥ストップ」
一方、スピードこそ特筆はできないものの、アリカの確実な指示にミリ単位で調節を入れるジェイ。見事なまでにシンクロしたその二人羽織は、プロ(?)も絶賛と言ったところ‥‥だったのだが
「なぁ、アリカ。ふと思ったんだが、この体勢って、私らが家に居る時よくやってないか?」
「‥‥」
その発想はなかったよ! 突如として呟くジェイの一言に、動揺したのかアリカの口の動きは止まる。とは言え、これもまた美しい愛の形、ということにしておこう。
「はぁぅん♪ この熱さが‥麗華さん、もっと、もっとですっ♪」
「変な声を上げないでくださいな!」
速さ、或いは確実性を重視する各チーム。それぞれが一様の光景を見せる中、ここでは他に比べ圧倒的差で鍋の具を消していく一人のメイドがいた。
「もっと底の具です! ほら、そこのキノコなんかとっても熱くておいしそうですよ!」
「そこってどこですの!?」
四苦八苦しつつも手探りでキノコを探し当て、そのままアーンと口をあける伊万里の元へソレを届ける麗華。速さでも確実さでもなかった。伊万里が求めたもの。それは、自らの性癖が作りだす欲望‥‥
「う、うーん。ルティの胸大きすぎて、窮屈」
「あら、しっかり私を感じてくださいな、レイチェルさん♪」
最早異質な空間を作り上げているのはこちら、レイチェル・ルティエペア。彼女達にとって、その巨大な胸が邪魔する二人羽織は正に苦戦必至だろう‥‥と思えば
「それじゃ、体を柔らかくしてさしあげますわ」
そう言って、レイチェルの耳をルティエが甘噛みすると、少女の体が少し震える。こうして、完全に勝負を捨ててじゃれ合う2人。だが、それがいい! こんな叫びとともに、その様子を見守る男性客の盛り上がりはピークに達するのであった。
1:伊万里・麗華 2:二条組
●ゴム相撲
「ダブルパインスマッシャー!」
解説しよう! ダブルパインスマッシャーとは、レイチェル・ルティエペアの生み出した、二人が相手を左右から挟みこみ、ゴムの反発力と二人の乳圧を利用して敵を押し潰す必殺技である!
――2人をゴムで繋いだ状態での相撲戦。とりあえずは相手を土俵から落とした方の勝ちということなのだが、レイチェル達の対戦ペア、伊万里・麗華は、その超必殺技の前に成す術なく押されていた。
「あぁん、これは想定外です♪」
頬を赤らめ、2人の胸の感触を堪能する伊万里は、しっかりしなさいと隣で一喝する麗華の言葉など上の空。完全に陶酔モードでレイチェル達に挟み込まれたままズルズルと端へと持っていかれる。何とか踏み止まろうとする麗華だが、奈何せん一人の力では限界が‥‥その時!
「素晴らしい技ですが、やはりコレがあるともっと良いと思いませんか?」
「えっ!?」
気づけば、キュルっと何故か伊万里の体をなぞる様に滑ったレイチェルとルティエが、そのまま正面衝突。
「急に‥‥何が」
体勢を立てなおす2人が見たもの。それは、第一競技の際こっそり伊万里がビンに詰めていたローションであった。
「くっ、そんな隠し道具があったとは!」
ローションの滑性効果に救われた伊万里達を前に、再び臨戦態勢に入るレイチェル達だったのだが
「勝手にローション持ち出した罰ですわ!」
そう麗華が言い放ち伊万里を鷲掴みしたかと思うと、なんとそのままクルクルと彼女を人形の様に操り、襲いかかって来るではないか!
「麗華さんっ! さすがにこれは酷く‥‥まだまだ振りが足りませんよ!」
武器として扱われることで、ドMな心を刺激され悦に入る伊万里。こうして、2組の壮絶な必殺技がぶつかり合い――
1:ジェイ・紅 2:レイチェル・ルティエ
●2人をゴムで繋いでキメラへGO
「はい?」
「ですから、今からこの状態のまま、キメラ目撃のある地域へ行ってもらいます」
3競技目を終え、そこではローションまみれで伊万里と体をゴムで繋がれたままの麗華が、審査員に怒りマークを浮かべ口論していた。何でも最終競技は、場所を変えこの格好のままキメラと戦えという。
「あはははっ♪ やはりソレがないと盛り上がりませんよね!」
何だか隣で邪に満ち溢れた笑いが聴こえるが‥‥覚醒した伊万里と体を結んで戦えと? ふ、冗談‥‥そう考え、麗華はただただ顔を曇らせるのであった。
「‥標的発見。まずは、牽制を」
牽制、と言えるのだろうか。まず、対象を発見したジェイ・紅ペア、初撃にアリカの真デヴァステイターが火を噴いたかと思えば、キメラの腕が吹き飛ぶ。そして、痛みに悶え動きの止まったキメラに
「一発必中、吹き飛べ!」
口調の変わったジェイがそう発した刹那、彼のライフルから放たれた一筋の弾丸。それが描いた直線の先、そこには、頭から血を吹きだす1匹の異形物。
「これで敵は‥‥!? アリカ、後ろだ!」
叫ぶジェイ、振り向くアリカを庇い、彼はライフルでキメラの爪をせき止める。
「‥ありがとう、助かったわ」
そう言い放ち、アリカが持ちかえた武器はガラティーン。突き立てられた直刃、刃身を赤い血が滴る。そして数秒後、同行したカメラマンが映したのはアリカが下から上へとキメラを切断した瞬間劇――
「この晴れ姿しかと眼に焼きつけよ」
一方、こちらはなんとスク水姿でキメラとの戦闘に望んでいた二条。カメラの前に佇み、その凹凸のない身体を惜しげもなく晒すが、内心はかなり恥ずかしい。
「あ、二条さんキメラですぅ」
そして、二条の髪は銀色に変化し、イアリスが太陽の光を反射した。
「うわぁ、兄ちゃぁん」
気づけば、いつのまにかすっかりショータに懐かれていたイスルは、戦いに慣れないショータを庇いながら必死にライフルを構えていた。動きが素早い敵だが
「‥そこだ!」
細い獣じみた瞳孔で鋭く敵を見据え照準を定めると、一気に敵の急所を撃ち抜く。
「ほら‥ショータ君の出番だよ」
そして、怒り向かってく敵を前に、イスルは剣を震えて握っているショータの手へ自らの掌を優しく重ねて――
かくして、全ての競技を終えた10人だが、今回収録されたこの映像も絶大な人気を得ることとなる。
彼らの絆。それは、紛れもなく、世界を平和に導くための道しるべとなるだろう‥‥
優勝:ジェイ・紅
編集箇所数:88(原因内訳:伊万里・麗華ペア45%、レイチェル・ルティエペア:53%)