タイトル:【AS】樅の木と子供たちマスター:後醍醐

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/12/10 09:25

●オープニング本文



 LH セシリー個室
 人が訪ねてきても通せるぐらいには整理された部屋。
 「あの依頼」以降、セシリーは前向きになった――それは部屋の様子からも見て取れる。
「コレをこれで返済して‥‥」
 貯金と請求書を付きあわせて計算しているセシリー。
「そんでもって‥‥えーと‥‥足らない?」
 ちょうど依頼一件分のローン支払が足りない。
「この金額なら‥‥カジノ‥‥ダメダメ、依頼で稼ごう!」
 煌くカジノでドル箱を積み上げた様子を幻視したが、頭を振りかぶった。
「借金を無くしてやりたいことをするんだ!」
 グッとまくった腕を突き上げて宣言するセシリー。
 彼女は今、また一歩踏み出そうとしていた。
 

 LH本部
 モニターには色々な依頼が提示されている。
「どれどれ‥‥セクハラ猿退治? ‥‥パス」
 (今回は真面目なのがいいなぁ‥‥)
 旅館の女露天風呂に現れる猿キメラの討伐依頼のようだ。
「うーん、他はないかなぁ?」
 「生身」をジャンル指定して他の依頼を探してみる。
「うーん‥‥」
 探してみるもののピンとくるものがない。
「ん?」
 一つの依頼がセシリーの目に映った。
「クリスマス用の樅の木依頼?」
 詳細は孤児院にクリスマス用の樅の木を送るという内容のようだった。
 依頼者は「LongFootDaddy」と書かれていて、孤児院の個人的な支援者の様だった。
「うん、これにしよう!」
 (こういうのもいいよね。クリスマスだし)
 

アメリカ某所 孤児院
 教会に併設された孤児院、歴史を感じさせ綺麗ではあるものの老朽化が否めない。
「ねぇ、シスター本当?」
 六歳ぐらいの男の子だろうか、老齢のシスターに問いかける。
「えぇ、本当よ。お手紙には書いてありましたから」
 「LongFootDaddy」から寄付と共に月一で届けられる手紙をいつも子供たちに読み聞かせている。
 子供たちが送った手紙に対する返信や子供たちや老齢のシスターを気遣う手紙は子供たちの心を暖かくさせる。
「私は会えなくて寂しいが、君たちと共に樅の木をとおして共にクリスマスを過ごしたい」
 老シスターが読みあげた手紙には――クリスマス用の樅の木を寄付すると言った内容だった。
 子供たちはその手紙に歓喜した。モノが与えられる喜びと言うよりも樅の木を通して共にクリスマスを過ごせるということに対して。
 ここの子供たちに必要なのは――モノも必要だが、愛情はそれ以上に必要だ。


 アメリカ某所
 豪華とはいかないが歴史の重みを感じさせる応接室。
 そのソファーにはサンタクロースのようにヒゲを蓄えた老人と傭兵たちがいる。
「依頼を請けてくれてありがとうじゃ」
 そう言うと、老人は依頼について説明しだした。
 老人の所有地である土地から樅の木を掘り起こすか伐採する必要があるとのことだった。
「私達じゃなくてもできそうですが」
 セシリーは老人に気になっていたことを質問した。
「出来れば、儂の代わりに子供たちと遊んでやって欲しいのじゃ」
 故あって老人が孤児院へ行くことができない代わりを努めて欲しいとの事だった。

●参加者一覧

秘色(ga8202
28歳・♀・AA
伊万里 冬無(ga8209
18歳・♀・AA
皆城 乙姫(gb0047
12歳・♀・ER
大鳥居・麗華(gb0839
21歳・♀・BM
堺・清四郎(gb3564
24歳・♂・AA
エイミー・H・メイヤー(gb5994
18歳・♀・AA
樹・籐子(gc0214
29歳・♀・GD
エレシア・ハートネス(gc3040
14歳・♀・GD

●リプレイ本文


 出発
 依頼者の土地の入り口に今回、参加する傭兵たちが集まっていた。
「心優しき御老と童達の心が共に過ごせるよう、力を尽くそうぞ」
 秘色(ga8202)がセシリーに話し掛け、心強い申し出をしてくれる。
「此の依頼でローン完遂とは縁起も良いですね♪」
 伊万里 冬無(ga8209)はそう言ってセシリーの頭を撫でる。
「セシリー‥‥カジノでなんとかしようとしなかったのは成長ですわね♪ いいことですわよ♪‥‥何をやっていますの!」
 伊万里を猛烈に誘ったという大鳥居・麗華(gb0839)が伊万里に撫でられて赤くなっているセシリーに話しかける。
「はじめましてっ。孤児院に樅の木をプレゼントかぁ〜。素敵だねっ」
 伊万里との会話で照れているセシリーに皆城 乙姫(gb0047)が話しかけ、会釈するセシリー。
「無粋な連中にはとっと退場してもらい子供たちと遊ぶとするか」
 解った傭兵たちはこれからの行動について相談しはじめた。
 放された頃を見計らってセシリーに話しかけるのは見かけ少し怖そうだが心根の優しそうな堺・清四郎(gb3564)。
「セシリー嬢、よろしく」
 唯一の男性の清四郎から挨拶を受けていると、ゴスロリ衣装に身を包んだエイミー・H・メイヤー(gb5994)から挨拶を受けた。
「今回は空気読んで、全年齢対応するわよー」
 得意のアコースティックギターが大活躍しそうな樹・籐子(gc0214)がセシリーに挨拶する。
「ん‥‥セシリー‥‥人見知りっぽいから‥‥手伝ってあげよう‥‥」
 セシリーが心配で参加したシスター服を着たエレシア・ハートネス(gc3040)が心配そうにセシリーに挨拶した。
 集まメイヤーと秘色が乗ってきたジーザリオに分乗し採掘地まで移動して手頃なサイズの樅の木を搭載して孤児院に向かうことが決まった。


 樅の木と修道院
 二台のジーザリオが舗装された森林管理用の道を往く。
 どうやら樅の木の採取用の場所に到着したようだ。
 麗華と籐子はキメラの襲撃に備えて警戒をし、その他の傭兵たちは手頃な樅の木を探していた。
「うむ、良い木じゃ」
 秘色は1.8mほどの樅の木を見つけると、メイヤー・伊万里と共に根の方から掘り起こしていく。
 伐採せずに鉢植えにすれば来年も利用することが出来るだろう。
 残りの傭兵たちも麗華と籐子共に警戒に当たったことでキメラの襲撃もなく無事にジーザリオに積み込むことができた。
 傭兵達が行くことが知らされていているが、料理などを行う為に孤児院へ連絡を入れるとその提案は孤児院からも歓迎されている様だったのか喜ばれていた。
 傭兵達は料理以外の飾り付けなどの買い出しに孤児院近くの街に出かけた。
 ちなみに料理の買い出しは秘色の提案により、子供達と買い出しに行くこととなった。
 色取り取りなツリーの飾り付けやツリーを入れる植木鉢を購入して孤児院へ向かう。
 到着前に傭兵たちは各々、着替えや子供たちに配慮して武器を車に収納し始めた。
 麗華がサンタコスを伊万里が着替えようとすると‥‥。
「なっ‥‥!」
「ゆきだるまのきぐるみ」が入っていた驚愕する伊万里。
「あら‥‥何故かちょうどいいものが荷物の中に入ってましたわよ? 伊万里♪」
「麗華さん、終わったらご褒美頂きますですからね?」
 そんな驚いている伊万里をニコニコと見ている麗華に逆らえずきぐるみに着替える。
 それから、持ち込んできたチョコやマシュマロを大きな袋に詰めていく。

 到着した孤児院ではたくさんの子供達、幼いのは三歳程から中学生高学年までとシスターが教会の前で待っていた。
「皆の衆、LongFootDaddyからMerry Xmasじゃよ!」
 子供たちに声をかける秘色に注目が集まる。
「わぁ、お姉ちゃん達ありがとう!」
 子供達が積み下ろされる、思ったより本格的なツリーを見てはしゃいでいる。
「はいはぁーい♪ 皆さん、こんにちは〜ですよ♪」
「ゆきだるまだー!」
 伊万里の着たきぐるみを見て歓声を上げる子供達が集まっていく。
「シスター、ご依頼で樅の木を届けに来ました」
 そんな喧騒の中、クリスチャンであるメイヤーはシスターに挨拶をする。
「あなた方に主の御加護と恵みがありますように」
 老シスターは感謝を述べると十字を切って祈った。


 買い出し
「買い物について来てくれる者はおらぬかえ?」
 秘色が子供たちの高さに屈めて話しかける。
「お姉ちゃん、私いくよー」
 いつも買い物の手伝いをしているという小学生低学年ぐらいの女の子達が呼びかけに応じた。
「男手が必要だろう?」
 清四郎が幼子と秘色だけでは大変だと思い、手伝う旨を提案した。
「すまぬな。清四郎」
 こうして、秘色と清四郎の間に子供たちという形で買い物に向かうのだった。
 マーケットでビッグサイズのカートを押す清四郎と食材を選別している秘色、そしてそれを誘導する子供達。
 子供が一人、二人であれば仲いい夫婦にも見える暖かな光景がそこに有った。
 ちなみにお菓子の材料や食材の費用も依頼者の老人から出ているので当分の食料ということもあってたくさん買い込むことにした。
 買い物を済ませて揚揚と孤児院へ戻る子供たちと手をつなぐ緋色、沢山の荷物を傭兵というスペックを生かして運ぶ清四郎。

 一方、買い出しに出ている間‥‥
「さあ、良い子の皆にはサンタからプレゼントですわよ♪ 皆の分ありますから並びなさいね」
 サンタコスプレをした麗華と伊万里が子供たちに板チョコとホワイトマシュマロを配っていく。
「ありがとう!」
 子供たちはプレゼントを貰えるという事とプレゼントをくれるということに喜んでいた。
 そんな子供たちも見て麗華も伊万里も楽しそうだ。
「こんにちわーっ!」
 そんな集まった子供たちに元気に挨拶するのは乙姫。
「こんにちわー」
 そんな乙姫に負けず劣らず元気に返事を返す子供達。


 ツリー飾り付け
「みんなー飾り付けをするよー」
 籐子が室内に運び込んだ樅の木に飾り付けをしようと呼びかけたのはメイヤー。
「はいはいー、これが本当のクリスマスツリーだというものを見せてあげるからねー」
 籐子はそんな子供たちの飾り付けの手伝いと万が一怪我をしないようにチェックにも当たる。
 子供たちに混じって飾り付けをする乙姫。
 メイヤーは樅の木の頂上に星を飾る子供を落ちないように支える。
「えへへっ」
「いいなーいいなー」
 星を飾って得意げになる子供とそれを見て羨ましがる他の子供達。
「僕も付ける?」
「君も付けるかい?」
 籐子とメイヤーが羨ましそうにしている子供に声をかける。
「うんっ!」
 籐子とメイヤーは子供たちを交代で抱えて飾り付けをしていく。
 姫リンゴにモールやLED電飾等々色々と飾り付けられていくツリーはクリスマスが近くなってきたことを彷彿とさせる。
「わぁー」
 出来上がったツリーを見て歓声を上げる子供たち、それを見て笑顔の籐子とメイヤーと乙姫。


 みんなと遊ぶよ!
「うふふぅ〜♪ ほら、次は誰がもふもふされたいですか♪」
 雪だるまのきぐるみを着た伊万里が子供たちとキャッキャと戯れている。
 もふもふと抱きしめられる幼い子供たちと麗華やセシリーは少し顔を赤らめている。
「よぉし、皆。私と一緒に麗華お姉ちゃん、セシリーお姉ちゃんに突撃です♪」
「わーい♪」
 子供達が麗華やセシリーへ殺到する。さすがの能力者と云えどももみくちゃにされてしまった。
「ああん、こら悪戯はダメですわよ! そんなことする子には擽ってあげますわ♪」
「わっ、わわ‥‥」
 群れてやって来る子供にテンパるセシリーと楽しそうに接している麗華、対照的な二人な光景が展開されていた。
 一方、元気な男の子達は‥‥
 エレシアがキーパーになってPK合戦を行なっていた。
「えいっ!」
 子供の割には鋭いシュートを放つ男の子をセーブするエレシア。
「くっそー!」
 悔しそうにするが、その表情は楽しそうだ。
「これもお姉ちゃんの能力?」
「ん‥‥ガーディアンというクラスの能力だよ」
「すげー! すげー!」
 こんなやり取りをしながら、時には見逃しながらも楽しく子供達と遊んでいた


 レッツ料理!
 そんなこんなしていると、秘色と清四郎達が帰ってきて早速、料理となった。
「ジンジャーマンクッキーを作るよー」
 飾り付けの終わっているメイヤーが子供たちにお菓子作りを呼びかける。
 色々な形に型を抜きオーブンに入れていく。
「焼きあがったら『足長おじさん』と『シスター』にプレゼントしよう!」
「賛成ー」
 こうして楽しいお菓子作りは続くのだった。
 一方、秘色と清四郎達は食事の料理を始めた。
 ワイワイガヤガヤと孤児院の――少し大きめ厨房が活気づく。
「おお、綺麗に作れたのう。では此れに飾ってくれぬかの?」
 出来上がった具の盛り付けを子供達に任せる秘色。
「和風に脂っこすぎるとな…おにぎりで日本に興味をもってくれるといいな」
 せっせと慣れた手つきでおにぎりを握っていく清四郎を興味深く眺める子供達。
「これってライスボールって言うんでしょー、知ってるよー」
 眼鏡を掛けた物知りそうな女の子が他の子達に解説をする。
「ほら、火傷しないように気をつけろよ」
 揚げ物にとりかかるが、覗き込む子供に注意をする清四郎。
 こうして料理はつつがなく終わりを迎えようとしていた。
 

 パーティー開始
 広めの食堂に並ぶ色々な料理。
 ステーキ肉やマッシュポテト、和風なので言えば「洋風ちらし寿司」「和風唐揚げ」「魚の香草焼き」「おにぎり」等々
 どれも育ち盛りな子供達にとって好きそうなものばかりだ。
 まず、老シスターの食前の祈りを終えてから食事となった。
「おいしー♪」
 子供達の楽しそうな声と美味しいという言葉が辺りを包む。
 用意した食事はあっという間になくなってしまった。
 小さい子達は眠たそうにし、大きめの子たちはまだ遊びたらなそうだった。
「ん‥‥カードする?」
 それを見たエレシアは子供達にトランプを見せ遊びに誘う。
「やるー」
 子供達と乙姫やセシリーを交えてトランプをする。
「ん‥‥カードをシャッフルするね‥‥」
「すげー!」
 ショットガンシャッフルを披露するエレシアに驚く子供達。
 そんな光景を微笑ましく見ながら籐子はアコースティックギターを取り出し曲を演奏し始める。
 その曲にあわせて歌う麗華や伊万里、途中から片付けを終えたメイヤーや清四郎と秘色が歌に参加し始めた。
 暖かなアコースティックギターの音に綺麗な歌声があたりを包む。
「さあー、皆もどんどん唄ってちょうだいねー」
 それを見ていた子供達にも一緒に歌うように勧める籐子。
 子供達の混じった歌声が孤児院を包みより一層暖かな空気に包み込む。
 こうして夜もふけ、楽しかった時間が終わろうとする。
 
 最後に、子供達が老シスターの演奏するピアノに合わせて傭兵たちの前でお礼に歌を披露した。
 その光景にセシリーを含め涙ぐむ傭兵もいた。
 
 こうして長いようで短かった一時に幕が降ろされる。
 傭兵たちは手を振る子供達を背にジーザリオで出発した。
「そうですわね。それなら‥‥」
 伊万里に「ご褒美」を耳元で囁く麗華。
「‥‥セシリー楽しかった?」
 セシリーに尋ねるエレシア。
「‥‥うん‥‥グスッ」
 孤児院をでたセシリーは久しく感じていなかった『人の温かみ』に思わず号泣してしまった。
 そんなセシリーを抱きしめてやるエレシアと宥める傭兵たちであった。
 
 彼女の心を温める人の優しさ。
 前に進むには何時か――『過去』と対峙せねばならない。
 遠からず、そんな時が来るだろう。
 
 Fin