タイトル:BlackBoxOnTheSeaマスター:後醍醐

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/11/22 13:36

●オープニング本文


 某所港
 晴れ渡る空――嵐の後の澄み切った青空に海鳥の声が聞こえる。
 嵐の中、急いで輸送した『黒い箱』は無事、研究員とリズと共に着いた。
 空を見上げた研究員が呟く――
「ふむ、良い研究日和になりそうじゃないかっ!」
 そして――リズを見る。
「今回は――フム。彼女に任せるか――私よりも適任だしな」
 仄暗い計算が――彼の頭脳ではじき出された。
「まさしく――贄たる巫女か‥‥ククッ」
 そう言えば、『アレ』を運んでいた輸送機は――どうやら、寄せられた多数の小型キメラの追突に寄るものだったらしいとのことだった。
 ある意味――人為的に――大規模なバードストライクを引き起こしたと言っても過言では無いだろう――計算違いで墜落してしまったが。
「科学の進歩には犠牲がつきものだ」
 彼らは尊い犠牲になったのだ――進歩のための犠牲として。
「しかし――」
 黒い箱に視線を落とす。
「フム、勘の良い奴は気がつき始めたか――」
 一部、情報を公開する必要があるか――連絡して確認を取るか。
 RRRRR‥‥‥
「例の箱ですが‥‥」
 もう一人の研究者にあったことを報告する。
 情報開示が認められ――効果を計測せよとのことだった。


 リズは――空を見上げていた。
 まるでさっき迄の嵐が嘘のように澄んだ良い空――幼い時、養父であるエリックと行った海を思い出す。
「また、行きたいな――」
 今は――任務中だ――無事、あの箱を送り届けなくてならない。
「良い潮風‥‥」
 潮風が――リズの頬と髪を撫で揺れる。
 父は――心配しているだろう――だからこそ――元気な姿を見せて安心させたい。
「でも‥‥」
 そんな、リズの心に暗雲が立ち込める――無事に――届けることが出来るのだろうか?
 そう――陸路のことを思い出していた。
 無事に辿りつけた――が、異様な数のキメラが向かって来た事を思い出す。
 船の装備に目をやる――目に入ったのは――ジョット推進式の高速魚雷艇。
 備え付けの機関砲、ドラム缶型爆雷等が見え、比較的この手にしては重武装に見える。
 速度を出すために魚雷は撤去されているようだ。
 40ノット以上の高速で目的地の島まで行くことになっている。
 さすがの――キメラも早々、襲撃することはできないだろう。
「それに、傭兵さんたちもいるしね」
 父を助け――自分と研究員を守って連れて来た傭兵たちの顔を思い出す。
「きっと、あの人達なら――」
 ――無事に終わりそうな気がする――
 

 港湾施設 会議室
 
 そこには――リズと研究員が箱のおかれた机の前にいた。
 ホワイトボードには地図と海図が貼り出されている。
 リズは集まった傭兵たちに依頼の内容を書いた紙を配ると早速、説明を始めた。
 リズはいままの出来事――輸送していた航空機が墜落し、最寄りの基地へ運ばれた事や陸路での移動で事を掻い摘んで解説していた。
 一人の傭兵が挙手をする。
「話を聞く限りでは、キメラがこの箱を狙っているように思えるのですが――」
 説明された内容からそうではないかと――容易に想像できる。
「それは――私から説明しよう」
 リズの隣にいた研究員が得意げに説明を始める。
「これは――詳しくは言えないが、ある一定のサイズのキメラを誘引する可能性が高いものらしい――」
「まぁ、Need to Know というやつで開示できる情報はここまでだな。ちなみに彼女も知らないぞ」
 どうやら――届けるには多数の困難が待ち構えているようだ。
「‥‥分かりました」
 疑問が払拭されたが――腑に落ちない様な表情をして着席する。
「今回ですが、港に停泊している高速魚雷艇での移動となります。40ノット以上の速度で移動するので襲撃はあまり無いと思えます」 そのことを聞いてか傭兵たちはホッとしているようだった。
 説明している依頼の内容としては40ノットで移動できたら、数時間で着く距離ということもあったが。
「諸君――残念だが――襲撃は結構あると言えるぞ」
 研究員がホワイトボードにB4サイズの写真を二枚マグネットで貼り付けた。
 トビウオの写真を指して解説する。
「この地域にいるキメラで――トビウオキメラ――結構な距離を飛び、自爆する厄介なやつだ」
 自爆といっても大したダメージでは無いが、魚臭くなることは請け合いだそうだ。
もう一つの写真、鳥らしきものをさして続いて解説する。
「もう一つが――海鳥キメラ――空から襲いかかってくる。主に爪だな――あとはトビウオキメラを落としてくると言うこともあるそうだ
「で、だ――気をつけるべきは――こいつに箱を奪われないようにしてくれ」
 どうやら、トビウオよりも海鳥キメラのほうが厄介そうだ。
「結構な――数が来るんじゃないの?」
 その話を聞いていた傭兵が疑問の声を上げる。
「ああ、その為の船の装備だ。好きなように使ってくれたまえ」
 弾薬等は請求されないと言う事らしい。さすがにSES装備ではないようだが、一定の効力は有るだろう。
「ちなみにだが――私は計測をする必要があるから箱を持つことはできない――それに、船内に機材を持ち込むので船の操舵に必要な人員しか船内に入ることができない」
 悪びれることなく言い切る研究員。
 そして――研究員はリズの方へ向くと――
「なので――箱は、君、リズ君に頼むよ」
 襲撃されるかもしれない甲板に居ろというのと同義だ。
「え、私ですか?」
 いきなりの指名にリズは戸惑う。
「俺たちでは駄目なのか?」
 わざわざリズに危険な目を合わせる必要はないだろうという気持ちで一人の傭兵が割り込む。
「フム――任務上、責任上、委任されている彼女が持つべきだと思うのだがね――君たちにはその権限が無いのだよ」
 研究員は割り込んだ傭兵に対してきつく言い捨て――再びリズの方へ向き目を見て優しく問いかける。
「君の――父上もよくやったと褒めてくれるかもしれないぞ?」
 リズは――撫でて褒めてくれる養父を思い起こす――一人前になったと褒めてくれるかもしれない。
 思案した後、リズは――養父である父を想い――
「分かりました。」
 ――承諾した。
「それは有り難い。きっと君のお父さんも喜んでいるだろう――名誉なことだと言う事で」
「すみません。傭兵の皆さん。私を――この箱を護ってください」
 かつての時のように涙は無いが、真剣な表情でリズは頭をさげお願いをした。
 

●参加者一覧

ロゼア・ヴァラナウト(gb1055
18歳・♀・JG
市川良一(gc3644
18歳・♂・SN
那月 ケイ(gc4469
24歳・♂・GD
滝沢タキトゥス(gc4659
23歳・♂・GD
リズレット・B・九道(gc4816
16歳・♀・JG
明神坂 アリス(gc6119
15歳・♀・ST
皆守 京子(gc6698
28歳・♀・EP
クラフト・J・アルビス(gc7360
19歳・♂・PN

●リプレイ本文

●出港
 晴れ渡る空――見あげれば蒼い空は雲ひとつなく太陽が燦々と降り注ぐ。
 それは――まるで航海を祝しているようにも見えるが――嵐の前の静けさかもしれない。
 岸から速度を上げ、海面を飛ぶように進む高速魚雷艇。
 そんな船の甲板で展開している傭兵たちの思いは様々だ。
 純粋に任務として参加している、ロゼア・ヴァラナウト(gb1055)とリズレット・B・九道(gc4816)。
 共に――リズと共に歩み続き依頼に参加している、滝沢タキトゥス(gc4659)と明神坂 アリス(gc6119)。
 LHから帰還し、この依頼が帰還初の市川良一(gc3644)。
 家族のために依頼に参加した皆守 京子(gc6698
 体を動かそうと思い参加した――ら、銃器を使う必要が高く、戸惑っているクラフト・J・アルビス。(gc7360
 『父の為』と危険な仕事を請け負ったリズに心配して参加している那月 ケイ(gc4469)。
 それぞれの思いを胸に船は海を割いて進む。
 海原を進む船の甲板、その上の遮蔽物は殆ど無く、有るのは船室部分の構造物ぐらいだ。
 その船室部分を背にリズは託された箱を持って――否、抱えている。
 それはまるで大事な赤子を守るが如く、抱き抱えた形だ。
「コレを無事に届けないと‥‥」
 彼女にとってこの箱は――戦災孤児であった自身を育ててくれた父に対して、父の役に立ちたいと思って受けた仕事だった。
「お父さん‥‥」
 彼女がオペレーターとして仕事を始めたのも父のため、広義的には父が救おうとしている世界のために彼女が出来ることで助けられるように志願したのだった。
 そんな思いに耽っているリズに声を掛ける傭兵が居た。
「箱が無事でも、君が無事でなきゃお父さんは喜ばない。‥‥だから、もっと自分を大事にね」
 リズを心配した那月が声を掛ける。
「‥‥はいっ」
 素直に答えるリズ――確かに、自分が心配させるようでは本末転倒だ。
「この箱が? 今回の護衛対象? ‥‥ただの箱にしか見えんけどなぁ‥‥」
 那月と会話している姿を傍目に、アルビスはリズの抱えている箱を見て感想を漏らす。
 見かけには唯の30cm四方の黒い箱に見えるが、実際には唯の黒い箱ではないことをが後で知ることなる。
「初めまして」
 そんな時、市川がリズに挨拶をした。今回リズを護衛する担当との事だった。
「此方こそはじめまして、よろしくお願いします」
 市川に対してリズは頭を下げて護衛についてくれたことに対するお礼をした。
「乗りかかった船ってこの前言ったよね? ま、大船に乗ったつもりでどーんと‥‥って、今回の船はそこまで立派なのじゃなさそーだけど」
「アリスさんもああ言っているし大丈夫ですよ」
 アリスと滝川もリズの所にやって来た――どうやらこの二人もリズの護衛の様だった。
「滝川さん、アリスさん。前回から引き続きよろしくお願いします」
 知った顔が護衛につく事にリズは安堵の表情をした。
 リズは無事に終わることを祈りながら――
 
 ●接敵
 40ノットの速度で船は進む――彼らを載せて。
 平穏無事が続けばと思った時――嗚呼、それが平穏の終焉の時。
「スピード出ていますし、振り落とされないように気をつけないと。およそ4時間、楽なクルーズ‥‥とはいかないでしょうね」
 船の前部で「探索の眼」と「GooDLuck」を使い警戒している京子。
 海原に異変が現れ、空はけたたましい鳥の声に包まれる。
 先ず異変に気がついたのは双眼鏡で警戒をしていたリズレットと前部にいた京子だった。
「敵、来るよ!」
「‥‥敵発見」
 言葉と共にハンドサインを出すリズレット、声を上げて知らせる京子、傭兵たちが警戒する。
『ニャーニャー』
 猫の鳴き声にも似た海鳥キメラの鳴き声が辺りに響き、空を覆い尽くす!
 そして、船の後方と両サイドから海の上を跳ねるトビウオキメラが現れた!
 対海鳥キメラ班のリズレット・ロゼア・京子が迎撃を開始する。
 また、対トビウオキメラ班のクラフト・那月も迎撃を始めた。
 リズレットは重機関銃を備え付け、夥しい薬莢を排莢しながら弾幕を形成し牽制する。
 が――幾匹かは落としたものの、高度を上げられ射程圏外に移動してしまった。
「誰でもいいので撃ってください!とりあえず弾バラ撒いて!」
 並の武器では射程が足りないのを悟った京子が声を上げて指示を出す。
「わかったっ!」
 リズの護衛をしていたアリスが銃座につき20mm機関砲を操作し、海鳥キメラに対し射撃を開始する。
 鈍い音を出しながら排莢されていく薬莢、海鳥キメラにHITし撃墜するまでには至らないが気絶し墜落していくのが出てきた。
 海鳥キメラはそんな接近できない状況を打破すべく攻勢に出てきた。
 ――そう、トビウオキメラを掴まえ投下しようと近づいてきた。
「余計なもんを、落としていくものだなー」
 言葉とは裏腹に市川の眼は厳しい。
 もちろん、機関砲の砲撃がトビウオキメラに当たり撃墜してくのもあったが、多勢に無勢で結構な数の海鳥キメラが船に近づいてきた。
「数の暴力はテレビゲームだけにしてほしいな、全く」
 リズの護衛をしている滝沢はそうボヤきながら海鳥キメラが持つトビウオキメラに銃撃を入れていく。
 リズレットは「探査の眼」を使い、接近してくるトビウオを搭載した海鳥キメラを探し重機関銃で攻撃を行う。
 同じように、ロゼアは「強弾撃」を使いならがSMGでトビウオを抱えたキメラを攻撃している。
 そんな二人を援護するように京子はガトリングで突破・接近しようとする海鳥キメラを牽制していく。
 海鳥キメラとの戦闘の間にも海面からはトビウオキメラが船を襲い続けている。
「このキメラ、やっぱりあの箱を狙って‥‥!?」
 那月は海面を小銃で撃ち牽制をしながら船に上がりそうなのを撃破し、体当たりしてくるのは盾ではじき飛ばして撃破していった。
「悪いけど、そっちには行かせねぇッ!」
 幾つかが抜けリズに向かおうとするが――「仁王咆哮」で引き付け、盾で弾き飛ばした。
 クラフトは拳銃を使い迫ってくるキメラを撃ち落としにかかる。
「銃器、めっちゃ苦手!」
 どちらかと言うと格闘が得意なクラフトには辛いものが在った――が、今は撃てば当たるほど敵がいる。
「爆弾が近づいてくるなー!」
 こまめにリロードしながら撃ち落とすが、一部が接近してきたので「キアルクロー」で叩き落す。
 海上からはトビウオが空からは海鳥からと二面攻勢を受けている傭兵たち。
 海鳥の投下攻撃は傭兵達の要撃をうけ数を減らすも、爆発したキメラが目隠しになり一部が投下に成功する。
 投下されたキメラがリズを襲う!
 

 一方、リズ護衛班。
 平穏だった海が騒がしくなる。
 空から襲いかかる海鳥キメラ、海面から襲いかかるトビウオキメラ。
「大丈夫だよっ、僕達がいるからっ!」
 不安そうな表情をするリズを見てそれを払拭させようとするアリス。
「そうだ、なんとしても護るからな」
 滝沢もそんな不安そうな表情のアリスに声を掛ける。
「アリスちゃん、大丈夫☆」
 明るくおどけた感じで励ます市川。
「あ、はい。みなさんお願いします」
 リズがそれを言うやいなやキメラ達の攻勢が激しくなっていく。
「誰でもいいので撃ってください!とりあえず弾バラ撒いて!」
 京子の声が甲板に反響し、それを聞いたアリスが動く。
「わかったっ!」
 アリスは近くにあった銃座につくと20mm機関砲を操り砲撃を開始した。
 リズの耳に鈍い音と排莢される薬莢の金属音が聞こえ、思わず「箱」を抱えたまましゃがんでしまう。
 鈍い音と銃撃の音、キメラの鳴き声、爆発音の戦場音楽が辺り一帯を支配する。
 前とは違う圧倒的な戦力差による本格的な戦闘だ、出航前に想像していたのとは違う。
 いくら気を張って強がっていても幼い少女、『記憶』の恐怖が体を支配しガタガタと体が震える。
「もー、やめてよねっ!」
(リズちゃん‥‥本当は無理をして‥‥)
 アリスはリズを励ましたかったが、迫り来るキメラという現実が許さなかった。
 アリスは機関砲で傭兵たちのアウトレンジから来るキメラを牽制しながら、他が接近を許したキメラを落とす。
「自分の爆弾で自爆ほどカッコ悪いものはないぞ!!」
 迫り来る敵にぼやく滝川、多忙なりにも恐怖で震えているリズも心配だ。
「できれば、こないでほしいなー」
 市川も気にはなりながら、スナイパーライフルで狙撃から小銃に切り替え迫り来るキメラを撃ち落としていく。
 キメラの猛攻が続く、要撃を逃れたトビウオキメラが船にリズに向かって落下してくる。
 十匹のうち、六匹はキメラ・海鳥班が落とし、残りの二匹を護衛班で落としたが、残りはリズに向かって落ちてきた。
「危ないッ!」
 滝沢はリズを庇い、背中で受けたトビウオキメラが爆発した。
「痛くないさ‥‥このぐらいな!!」


 アレほど空にいた海鳥キメラは片手で数えるのみとなり、水面から襲ってくるトビウオキメラの対処に人員を割ける様になっていた。
 そんな状況な為、アリスは銃座から降りリズの方へ走っていった。
 戦闘が緩やかになったのもあってリズの震えもわずかになっていく。
「もう、大丈夫だよ」
 そんなリズをアリスは抱き寄せて頭を撫でるとリズの震えもなくなってきた。
「あ、ありがとうございます‥‥」
 震える声で答えるリズを更に抱き寄せるアリス――その光景は親子のようにも見えた。
 最後とばかり強襲してくる海鳥キメラを、リズレットが銃撃して全滅させた。
 それを確認したアリスは爆雷の方へ行くと船後方から爆雷を落とし始めた。
 落とした爆雷を撃ちぬき――爆発させ、水柱が立つとみるみるうちにトビウオキメラの数が減っていった。
 
 その後、第二波を警戒したが、キメラ達が出てくることは無かった。
 

 ●寄港
 無事、傭兵たち一行は目的地である孤島にたどり着いた。
 港から上陸してくる傭兵とリズ達、箱もリズもダメージもなく無事だ。
「おつかれちゃん☆」
 市川が腕を上げ陽気な感じでリズに対して話しかける。
「お疲れ様ですっ」
 それに応じるように陽気に答えるリズ。
「やぁ、ご苦労さん。さすがにコレほどまでとは思わなかったよ。ハッハッハ」
 先程までの激しい戦闘をそ知らぬ顔で逆なでするように言うのは安全地帯にいた研究者。
「ん?それが君たちの仕事じゃないか。私は私の仕事をしたまでだ」
 幾人かの傭兵が研究者を睨みつける形になったが、そんな事を気にしない研究者。
「じゃあ、これは持って行くよ」
「あっ‥‥」
 リズの持っていた箱を受け取るとそそくさと消える研究者だった。
「あ、えっと。みなさんのお陰で無事にたどり着きました。ありがとうございます」
 険悪な雰囲気を払うか様に傭兵たちの前で頭を下げてお礼をいうリズ。
(お礼を言ってばかりだな――何かできたらいいのに‥‥)
「‥‥依頼だから」
 そう簡潔に答えるのはリズレット。
「依頼でも‥‥こうして依頼を受けてくれるのはありがたいですっ」
 リズにとっては依頼の為でもあっても受けてくれてくれたことに感謝しているのだ。
「皆さん、大丈夫ですか?」
「あなたも無事で何よりですね――まあこの匂いは簡単に落ちそうもありませんが」
 苦笑しながら答える滝沢、リズ自身もだが傭兵たちもキメラとの戦闘のせいか魚臭さがしている。
「クリーニングをしないとこれは‥‥落ちなさそうですね」
 滝沢のボヤキに他の傭兵たちも同意を示す。
「ともかく、無事に終わってよかった」
 京子が煙草を取り出して一服すると、紫煙があたりに漂う。
 その煙草の匂いはリズに離れた父を思い出す。
 
 
 かくして「箱」は無事にたどり着き、傭兵達に守られた少女も無事にたどり着いた。
 彼女の任務もあと少し。
 どのような結末に至るかは――傭兵達次第。