●リプレイ本文
秋――実りの季節、そして、それを祝う祭り。
派手ではなく――ささやかな、こぢんまりとした暖かなそんな秋祭り。
そんな、祭りに傭兵達も参加する。
●
「アーオーちゃーん、一緒に遊びにいかんー?」
秋祭りみたいなんあるんやって! 予定開いとったら一緒に遊びに行こや〜」
手をふりふりして日下アオカ(
gc7294)を誘う藤堂 媛(
gc7261)
「ふーん、お祭りですの? 面倒くさいですわね」
と言いながら藤堂についていくアオカ。
「ウチの実家の日本でも、この時期やったら稲刈りとかしよるもんねぇ。 外国のお祭りってどんな事するんやろ?」
アオカから渡された依頼書を読み返す藤堂。
「あ、ご飯作ったりするんやー、ほしたら腕により掛けて作らないかんね!」
ぐっと腕まくりをする藤堂だった。
「どうせやったら日本の食べもんがえぇよねぇ‥‥うん、秋やし「いも炊き」とかえぇかも!」
何か閃いた藤堂――そして考えこむ。
「鍋もんやけん皆で食べれるし、人数がようけ居っても大丈夫やしね〜」
(具は里芋に鶏肉ともやし、厚揚げにニンジンにー‥‥etc、ダシはで甘めな感じやね〜)
「材料や道具はうちが持っていけばええしね!」
半時後、荷物を抱えた藤堂とアオカの二人は目的に向かう車両に一緒に乗り込む。
各々が分乗した車両が目的に着き、止まる。
車両から降りてくる傭兵達。
「久しぶりじゃ」
「お久しぶりです」
「‥‥お久しぶりです」
セシリー・ニミッツ(gz0463)に挨拶してくるのは招待主である老人の「LongFootDaddy」と孤児院の老シスター。
「おお、そこの傭兵さんもひさしぶりじゃの」
「ご無事でなりよりです」
見知った顔を見つけて挨拶する老人と老シスター。
「お久しぶりです♪」
「お久しぶりですわ。招待ありがとうございますわ。今日は皆と遊ぶのを楽しみに来ましたわよ〜♪」
挨拶を受けた伊万里 冬無(
ga8209)と大鳥居・麗華(
gb0839)は以前、樅の木を手に入れる依頼で縁があり、招待状を手にしていた。
「秋祭りとは楽しみですわね♪皆に久しぶりに会いますし、元気なようでよかったですわ♪」
「子供達も元気そうで何よりです♪ さぁさぁ、楽しくいきますですよ〜♪」
子供達を見た麗華と冬無は機嫌がよさそうだ。
「セシリーさんっ、こんにちわ!」
「こんにちわ。パステルナークさん、前の依頼はありがとうございます」
セシリーに挨拶をしたパステルナークに挨拶と感謝を告げるセシリー。
「リズ〜手伝いにきたわよ!」
「わっ!」
クレミア・ストレイカー(
gb7450)がリズ=マッケネン(gz0466)にハグをして挨拶をする。
抱き寄せられハグされるリズはクレミアの谷間に顔を埋める形になった。
「おい、場所が場所だしガキ共もいるんだ‥‥。少しは自重しとけや‥‥」
荊信(
gc3542)がそんなリズに抱きついているクレミアに注意をする。
「よう、久しぶりだな。で、あの後‥‥少しは軽くなったか?」
「なりましたよっ」
荊信の言葉に解放されたリズが少し成長した胸を張って言う。
「こんにちわ! よろしくお願いします!」
クレミアと荊信を見つけたケビン=ルーデル(gz0471)が挨拶をする。
「よう、どうやらまだくたばっちゃいねぇ様だな。で、最近はどうだ?」
「依頼をボチボチ受けてます」
リズを横目で見て「最近の戦闘の依頼は止められるんですよね」と答えるケビン。
「セシリーさん、こんにちわです♪」
「セシリー、こんにちわですわ」
「‥‥セシリー、こんにちわ‥‥」
「冬無さんっ、麗華さんっ、ヴァサーゴさんっ、こんにちわっ。いつも依頼の手伝いありがとうっ」
いつも依頼を手伝ってくれる三人に喜びながら感謝の言葉を述べるセシリー。
「セシリーさん、一緒に手伝いしませんですか?」
「‥‥セシリー、手伝い‥‥」
「折角ですから、ケビンくんもどうかしら?」
冬無とヴァサーゴがセシリーに、麗華がケビンに一緒に行動しないか提案する。
「うん、いいっよっ」
「よろしくおねがいしますっ!」
喜んで快諾するセシリーとケビン。
「ども‥‥大事な話は夜になってから‥‥それまで、出来れば普通に楽しみましょ?」
「あぁ」
御守 剣清(
gb6210)はエカテリーナ・ジェコフ(gz0490)に話しかけ、行動する。
●朝〜準備〜
秋祭りに向けて手伝いをする傭兵達と孤児院の子供達や地元の住民達。
嘗ての宇宙食の依頼のリベンジとばかりに燃える一人の傭兵がいた。
見た目男装の麗人のようにも見えるルーガ・バルハザード(
gc8043)。御年2X歳。
「ん?‥‥あいつ、何処へ行ったんだ?」
共に料理を手伝おうとしていた弟子のエルレーン(
gc8086)の様子が見えない。
「‥‥まあ、そのうちあらわれるだろう」
気を取り直して、調理の手伝いをしようとするルーガ。
「ぬ」
(キメラも叩き斬れる私の剣の腕が、包丁にかわったとて鈍るわけもなしッ!)
エプロン姿のルーガ――振り下ろされる包丁――まな板を一刀両断する。
それだけでは――なかった――粉砕される食材。
「!?」
粉砕された時の音に注目する皆。
「力を――入れすぎたようだな」
何かの間違いだと思ったルーガは再チャレンジをする。
「ふむ」
用意された具材を炒めるだけの簡単な手伝い――。
「はっ!」
フライパンを振って具材を浮かせてかき混ぜようとするが――。
「あちちち!」
振った際の勢いが強すぎたのか野菜炒めの野菜がルーガを直撃する。
たとえ頑丈なルーガであっても熱いものは熱い。
「大丈夫ですか?」
他の料理を手伝っていたケビンがルーガに声をかける。
「あ、あぁ」
体は大丈夫だ――だが、二度の失敗に気落ちするルーガは手伝うことを辞めて配膳や食材を運んだり、皮を剥いたりといった手伝いをする事になった。
「およ?」
いつの間にか、師匠のルーガとはぐれてしまったエルレーン。
「あ‥‥」
辺りを歩いていると、他の傭兵達と楽しそうに調理をしているセシリーの姿を見つけたエルレーン。
(よっかったの。元気そうで)
嘗ての依頼で、気を失ってしまったセシリーのことを案じていたエルレーンは安堵した。
「‥‥」
目があい、微笑むエルレーン――セシリーも微笑む。
「‥‥う、うぐぐ」
だが、視線を顔から下に向けると――コンプレックスを持っているエルレーンは少しイラッとした。
「?」
セシリーはそんなエルレーンの様子に気がついてないようだ。
「調理、私も手伝いますわよ」
「麗華さんがやったら大惨事ですから…! ヴァサーゴさん、お願いしますです♪」
「‥‥ん、わかった‥‥」
「って、なんでダメなんですの!?むぅ、仕方ありませんわね‥‥」
調理を手伝おうとした麗華を止める冬無にヴァサーゴ。
「セシリー、料理手伝っていただけません?」
「いいよっ!」
料理の手伝いを頼む麗華に喜んでと答えるセシリー。
「ところで、セシリーさん、お料理はどれ位出来ますです?」
「‥‥そう言えば‥‥セシリー‥‥料理、得意‥‥?」
「んー、一人暮らしも長かったらそれなりに出来るよっ」
そんなやり取りをしながら料理をするメイド全開の冬無と麗華とセシリー、それを簡単な手伝いをする麗華だった。
「出たからね、私の料理で。重傷者が‥‥料理時間短縮って、カルブンクルスで焼いたら鍋が無くなったんだよ」
「そんなことがあったのですか!」
ケビンと共に喋りながら調理をする夢守 ルキア(
gb9436)。
「私も孤児だったケド、ずーっと戦ってたからこーいうの、縁がなかったんだよね」
「そうなんですか? でも、これからきっとこう言う依頼もあるかもしれないですね。そんな依頼に一緒に参加できるといいな」
戦う依頼だけでなく、こういう依頼で一緒に参加できればいいなというケビン。
楽しく喋りながらケビンとルキアの調理は続く。
「おねぇちゃーん」
子供に囲まれているのは広場で飾り付けをしている樹・籐子(
gc0214)。
「はいはーい。一緒に飾り付けをしましょーね」
子供達と楽しみながら祭りの飾り付けをしていく。
それはまるで、子供達のお姉さんのような光景だった。
「エカテリーナ殿」
「ん?美具か」
エカテリーナに声をかける美具・ザム・ツバイ(
gc0857)。
何だかんだと言いながらも、この二人もそれなりには付き合いがあった。
「BDUではな、せっかくだからこういう格好はどうじゃ」
「ふむ‥‥」
依頼ということでゴスロリではなく、BDUなエカテリーナに美具が合いそうな服を見繕ってきた。
其のコーディネートは‥‥。
オレンジ(赤に近い)のワンショルダーに、中は黒のタンクトップブラ(肩紐のみ見える)に黒のイージーレギンスパンツ。
ワンショルダーの肩が出る方に相手が来るようにし、髪は軽くまとめる程度で足元は編み上げサンダル。といった組みあせだった。
「にあっておるな」
「そう、か」
いつもと違う様子に少し、恥ずかしそうにするエカテリーナ。
「秋祭りか懐かしいの」
北斗 十郎(
gc6339)の背負った風呂敷には大量の芋と栗が入っている。
おもむろに芋と栗を石焼していく。
「おじちゃん、これ何?」
「芋と栗じゃよ」
そんな北斗の様子を伺っていた子供達が周りに集まっていく。
石焼きの栗と芋雨を見る子供達と北斗――そんな時間が流れていく。
「アオちゃんも一緒に作らんー?」
調理の準備をしている藤堂がアオカに声を掛ける。
「‥‥した事無いですわ」
「ほあ、料理とかした事ないん?」
「だ、だって仕方ないじゃありませんの。昔から手を怪我しないように、刃物は持たせてもらえませんでしたし‥‥!」
ツンと照れ隠しに怒るアオカ。
「ほしたらウチが教えてあげるけん、ちょっと練習してみよや〜、包丁は手ぇ切ったらいかんけん一緒に持とか〜」
料理を教えようとする藤堂だが‥‥。
「アオはあちらで手伝ってきますので、どうぞお気になさらず!」
本当に包丁など(他人が見ていて)怖いので持てないアオカが離れる。
「その代わり変なものつくったら承知しませんわよ!」
「まかしとき〜」
念押しするアオカと胸を叩くような仕草で答える藤堂だった。
「ビートにタマネギ、ニンジン、キャベツ、牛肉ーっと。後は忘れちゃいけないスメタナっ」
ボルシチを作ろうとしているのはパステルナーク(
gc7549)。
「寒くなってきたから、暖かいものを皆で囲むのは良い感じだしねっ」
寒くなりつつあるこの時期、温かいもので囲むのも一興。
「他にも何か入れたいものとか、あるかなっ?」
パステルナークは周りで調理の様子を見ていた子供達にリクエストを聞く。
「うーん」
「ソーセージ!」
元気そうな男の子が元気いっぱいにパステルナークの問いに答える・
「いいねっ!」
こうして子供達と賑やかな遣り取りをしながら料理が進んでいく。
楽しい調理の時間は進んでいく。それぞれの思いを乗せながら。
●昼
各々の料理が出来上がる。
「アオにかかればこの程度ですの。誉めても何もでませんわよ」
盛り付けと配膳を手伝っていたアオカが藤堂を驚かそうとして見せる。
「お〜。アオちゃん、さすがやな〜」
アオカの盛りつけと配膳に素直に驚く藤堂。
そんなやり取りがあるなか、皆が集まり始める。
「秋の恵みに感謝しましょう」
短い、祈りと感謝の言葉。そして始まる昼食――賑やかな一時。
「ガッツかんでもまだまだあるの」
芋や栗を頬張る子供達に渡しながら温かい目で見守る北斗。
「ボルシチだよっ! 並んでねっ」
器を持った大人や子供達が並ぶ、中にはおかわりをする者もいるようだ。
その他にも他の傭兵たちが手伝った料理にも人々が並ぶ。
「野球、興味ないかな?」
「野球?」
野球道具一式を持ってきた刃霧零奈(
gc6291)が声をかけて野球に小弓がある子供達を集める。
冬無、ドレスに着替えた麗華、ヴァサーゴの三人とケビンが昼食をとっている。
「せっかくですし食べさせてあげますわ♪ ほら、ケビンくんあーんしてくださいな♪」
「‥‥あ、はいっ‥‥」
麗華が料理を掬ったスプーンを向かいにいたケビンに差し出し、赤面しながら食べさせてもらう格好になったケビン。
「ぶ〜 麗華さん、ケビン君ばっかりです〜」
「‥‥冬無‥‥あーん」
ケビンに構う麗華に可愛く頬を膨らませる冬無、そんな冬無にスプーンを差し出して食べさせようとするヴァサーゴ。
「あーんです♪」
「ヴァサーゴさんも、あーん♪」
「‥‥あ、ーん」
ヴァサーゴに食べさせてもらう冬無に、お返しにヴァサーゴを食べさせる冬無。
互いに互いを食べさせる、そんな仲の良いひととき。
互いに談笑し、様々な料理に舌鼓をうつ昼食の時間がながれる。
昼食の片付けが終わり――自由時間。
「野球教室はじめるね」
開けた広い平地――昼食時間に集めた子供達に野球を教えようとする刃霧。
「じゃあ、最初は‥‥」
ボールを投げてキャッチして相手に投げ返す――キャッチボールの仕方をレクチャーする。
「えいっ!」
「やっ!」
二人組に別れた子供達が教えられた通りに楽しそうにキャッチボールをする。
「そうそう‥‥」
キャッチボールをしている子供達を見て回って投げ方をレクチャーする刃霧。 (バッティングもやってみようかな?)
「みんな、あつまってー!」
キャッチボールをしている子供達を集めてバッティングの実演をする――
カキーン!
思い切って打つとそのまま水平線に吸い込まれていったボール。
「すげぇええええ!」
男の子達があまりの出来事に興奮している。
「じゃ、やってみようか」
夢守達と合流するまでバッティングしたり、ノックをする刃霧と子供達だった。
「いい、此れはスニーキングミッション、諸君、健闘を祈る。目標は夕飯、つまみ食い出来たら勝利者だ」
子供達と夢守が集まって、なにやら作戦会議をしている――どうやら、夕食のつまみ食いのようだ。
ゆっくり、ゆっくりと近づいていく、子供達――だが。
「ん、何をしている‥‥もしかして、つまみ食いか?」
手持ち無沙汰に子供達を遊んでいる様子を見ていたルーガに見つかる。
「えへへ‥‥」
「‥‥少し、だけだぞ」
ルーガも鬼ではない、つまみ食いし過ぎないように注意すると子供達を見逃す。
「ルキアさん? どうしたんです?」
「ケビン君、見逃してくれるカナ?」
「よくわからないですけど‥‥いいですよ」
ケビンに見つかる夢守、事情が読み込めてないケビンはそのまま素通しさせる。
「ミッション、コンプリートだネ」
「えへへー」
つまみ食いに成功した夢守と子供達。
「じゃあ、次は野球をして遊ぼう!」
そう言うと刃霧達が遊んでいる所へ向かおうとするが――。
(ケビン君も誘ってみよう)
「ケビン君、一緒に野球をしない?」
「いいですよ!」
こうして、夢守と子供達、ケビンと刃霧の所へ向かい――。
「ボク達と野球をしようヨ」
「これで、紅白戦ができるね」
夢守と刃霧の子供達とケビンを入れて日が暮れるまで野球を楽しんでいたい。
「さぁさぁ♪ 遊びますですよ♪」
「おーっほっほ♪ 皆、元気でやっててよかったですわ♪ 今日は一緒に遊んで差し上げますわよ♪」
「皆‥‥遊ぶ‥‥」
子供達を前に張り切る三人。
「あら、セシリーにケビンも来ましたのね。皆で遊びますわよ♪」
「セシリーも‥‥良かったら、一緒に‥‥」
「うんっ、いいよ♪」
「いいですよっ!」
子供達にセシリーとケビンを加えて遊ぶことと成った。
「何‥‥して、遊ぼうか‥‥」
「そうですわね〜何がしたいかしら♪」
「鬼ごっこ!」
子供達の要望を聞くヴァサーゴと麗華に答える子供達。
「それじゃ、私が鬼をしますです♪」
「逃げますわよ♪」
「‥‥捕まらない様に‥‥」
「わー!」
冬無が鬼ごっこの鬼をやって皆で楽しむ。
「あはははっ♪ 子供と一緒だと癒されますですね〜♪」
楽しそうに追いかける冬無。
「タッチ!」
「きゃっ、おませさんね♪」
「ふふふ、比べてみるのも良いかもですよ? ねぇ〜♪」
「伊万里、もー」
「やぁん♪ ちょっとしたお茶目ですよ?
鬼になった子供が冬無の入れ知恵で麗華の胸をタッチしてみたり‥‥。
「‥‥冬無、妙な悪戯は‥‥自重‥‥」
「ふっふ〜♪」
鬼からのタッチということで悪戯をする冬無に、それを受けいれるヴァサーゴ。
麗華、冬無、ヴァサーゴ達は子供達が疲れ果てる晩まで皆との遊びが続いた。
「ふふっ、元気いいわね」
蹄鉄投げをして遊ぶクレミアと子供達。
「やったー!」
どうやら、投げた蹄鉄がうまく引っかかった様だ。
微笑ましく子供を見守りつつ、好みの子が居ないかを探すクレミアだった。
「ここにコイン、良く見ててね?1、2、3っ。何処にいったでしょうかっ」「「おおー!!」
片付いたテーブルの上でコインマジックを披露するパステルナーク。
子供達はパステルナークのマジックに夢中だ。
「当てた皆にはこれをプレゼントっ。仲良く遊んでね」
「おー! すげー!」
「あ、おかし。いいな‥‥」
トランプやすごろく、お菓子等を見せると俄然やる気になってきた子供達。
「それじゃ、もう一度するよっ」
真剣な眼差しの子供達の前でマジックをするパステルナーク。
(わざと当てれれるようにしようっと)
「あ、わかったー!」
「せいかいっ!」
「ねー。もう一度〜」
「もう一回するねっ」
当てた子供ともう一度とねだる子供達――ワイワイとパステルナークのマジックは続く。
「こっちー」
時折、楽しそうにする子供達をカメラで撮影するパステルナークだった。
「犠牲者にも‥‥罪を背負う側にも‥‥させないのが大人の役目ですよね」
「あぁ‥‥」
子供を眺め、エカテリーナに話しかける御守。
「‥‥こういうのも悪くはないな」
木にもたれ掛かるように座り、タバコを吸いながら大徳利から酒を注ぎ子供達が遊んでいる様子を見つつ、危険が無いか見ている荊信。
日は暮れていく――子供達を見守っている荊信の影が黄昏時の陽を受けて長く伸びる。
●夜〜夕食〜自由時間〜撤収
籐子とウェイトレス姿のクレミアが配膳して回っている。
「糧を得られたこと、収穫に感謝いたしましょう」
老シスターの言葉で食前の祈りをする参加者。
祈りが終わると賑やかな夕食となった。
自身も味わいつつも子供を食べさせるヴァサーゴ。
夕食も終わり僅かな時間だが各々が自由時間をゆっくりと過ごす。
片付けが終わり、少し落ち着いた頃。
「そうや〜、アオちゃんの演奏聴かせてくれん〜? 音楽しよんは知っとるけど、ちゃんと聴かせて貰うた事なかったんよ〜」
藤堂がアオカに演奏を聞かせて欲しいとお願いをする。
「いいですわよ」
アオカがそう答えると、持参してきたフルートのケースを開き、ピッチ調整等の演奏の準備をはじめる。
其の様子を見た人々が、演奏を聞こうと周りに集まり車座になる。
「それでは、はじめますわ」
おじぎをするとフルートを構え演奏をはじめるアオカ。
演奏した曲は――バッハのBWV1013 無伴奏パルティータ。
フルートの心地良い音色が辺りに響き夜空に吸い込まれていく。
フルートの音色が響く中、少し離れたところでは――。
「リズ〜着替えてみない?」
「??」
クレミアの提案にクエスチョンマークを浮かべるリズ。
「これなんてどうかしら?」
クエスチョンマークを浮かべるリズにクレミアは手に持っているセーラー服とブレザーを見せる。
「可愛いですね」
「そうよね〜。じゃあ、一緒に着替えるわよ」
と、クレミアとリズが着せ合いながら着替える――リズがセーラー服にクレミアがブレザーだ。
「あ、写真どうですか?」
丁度、通りかかったパステルナークが二人に話しかける。
「いいわね」
「記念にいいですね」
「じゃ、撮るねっ。はい、チーズ!」
まるで歳の離れた姉妹のような二人をファインターに捉え写真を撮るパステルナーク。
カシャリ。 とカメラのシャッターが下りて二人をフィルムに記録する――楽しかった思い出として。
「せっかくだから、用意した他の衣装も着てみないかしら?
こうして、ナース服のリズに巫女装束のクレミア――はたまた、ハロウィンな衣装の魔法使いの衣装のリズにセクシーな妖精の衣装を着たクレミア。
といった風に一時間毎に着替える二人だった。
空を見上がれば、満天の夜。
「ま、もうすぐ(戦争も)終わるだろうが、お前さんは、後はどうするつもりだ?」
夕食後、一人になったケビンに荊信が話しかける。
「後ですか‥‥」
なにか考えこむケビン。
「ま、今すぐ決めろとは言わねぇが、考えておかないと間に合わなくなるかもしれんぞ‥‥」
「間に合わなく‥‥」
「俺の見立てじゃぁ、傭兵はお前さんにはそう向いているとは思えんがな‥‥」
「‥‥」
荊信の言葉に考えこむケビン――。
「実は――」
前の依頼で『オファー』があった事を告げるケビン。
「ま、決めるのはお前さんだ。自分で信じられる道を選ぶんだな」
「はい。‥‥荊信さんは?」
「なぁに、俺みてぇなのは『戦の匂い』ってのが判っちまうんだ。なら、そっちに行くだけだ。それに、他に食べる方法を知らんからな‥‥」
「そう、ですか‥‥」
しばし、二人で語り合う――空には一筋の流れ星。
「子供‥‥かぁ‥‥あたしもいつか‥‥あはは、なーんてね‥‥」
刃霧は夜空を見上げると満天の空に一筋の流れ星が流れていく。
そんな夜空に物思いにふけつつ休憩している刃霧だった。
「Trick or Treat! お菓子くれなきゃ、悪戯しちゃうぞ!」
子供達と夢守はシーツをかぶってお化けの仮装をしてお菓子をもらいに回っていた。
子供達が満足したのを見計らって、そっと屋根に上る夢守。
「ルキアさん?」
屋根にいた夢守を見つけたケビンが声をかける。
「んー、上りたいなら、手を貸すよ?」
星を数えながら、ハーモニカを吹いている夢守がケビンに気が付き、うでを差し出して屋根に引っ張り上げる。
「どんなトキでも『ジブン』でいられたら、良いと思わない?」
空を見上げながらケビンに言う夢守。
「どんな時でも――そうですね。それは良いことだと思います」
問いに答えるケビン――どんな時でも――それは大事なこと。
「ULT傭兵が要らなくなっても、対人傭兵は無くならない。絶対に」
争いが無くならない限りはネ と言う夢守。
「飲みこまれたくないんだよ、この世界に」
世界もセカイも両方、大切だから『ジブン』でい続けたいと言う気持ち。
「共に隣にいる人が掴んでくれていたら――世界に飲み込まれ無いようにその手を掴んでくれたら飲み込まれないかもしれないですね」
ケビンは答える――一人よりも誰かとともに居ることで『ジブン』が『ジブン』で居られるのではないかと。
無言で空を見上げるケビン、ハーモニカを吹いている夢守。
更にケビンと夢守から離れた場所にいるのは―― 御守 剣清(
gb6210)とエカテリーナ。
「‥‥彼女がいんです、もう付き合って十年になる‥‥こんな身だから待ってもらってるけど、落ち着いたらケジメつけなきゃなって思ってて‥‥」
「そう、か」
「すみません…やっぱオレにとっては、アイツが一番大事なんです」
「あぁ」
ただ、ただ、じっと御守の言葉を聞くエカテリーナ。
「それになんとなく‥‥エカテリーナさんが好意を持ってくれた男なら、一度決めた相手を放っぽって、他のヒトと一緒になる、なんて半端なこと、しないんじゃないかなって‥‥」
「‥‥」
「オレも、そういう男で在りたいし‥‥実はブレてるって時点で、情けねぇ浮気者ですけどね」
「‥‥そう、か」
「ただ‥‥貴女の望むカタチで『共に』は行けませんけど‥‥それでも‥‥オレと居ることが辛くないなら‥‥エカテリーナさんが幸せになるのを、その幸せを守るのを手伝わせてください。貴女がずっと『こっち側』に居られるように‥‥『こっち側』に巻き込んだ者として‥‥‥‥貴女はやっぱりオレの大切な人だから」
「‥‥‥‥‥‥」
「そだ。前に言った『簡単に殺したり死んだりはナシ』っての‥‥オレの一方的な約束でしたけどコレ、エカテリーナさんにも約束して欲しいな、って‥‥今は特に、死んだりはナシです。幸せ前にして‥‥なんて、理不尽にも程がありますからね」
「‥‥すまない‥‥できない‥‥もう、あたしは‥‥『戻る』」
決心したようなエカテリーナの言葉、そして嗚咽にまじる拒絶の言葉。
いつの間にかエカテリーナの頬を伝う涙。
御守にそう言うとかけ出してしまった。
美具視点――。
少し離れたところで心配した美具が御守とエカテリーナの様子を見守っていた。
(‥‥なにやら話しておるようじゃの)
エカテリーナが項垂れている様に見える。
(‥‥だめ、じゃったか‥‥)
駆け出すエカテリーナ。
(‥‥追ったほうが良さそうじゃの)
「エカテリーナ殿」
「すまない‥‥一人にさせて」
追いかけた美具が黄昏れているエカテリーナに声をかけるが、返ってきたのは拒絶の言葉、そして、逃げるように走りだす。
「どうじゃ正義の味方になってみんかね」
広場で演武を披露していた北斗が話しかける。
「‥‥すまない」
「残念じゃがしょうがないの、お主には素質があると思ったんじゃが。お主は戦いの空しさや悲しみを知っていると思ったから誘ったのじゃよ」
「‥‥すまない」
ただ、ただ、すまないと謝り続けるエカテリーナだった。
夜も遅くなろうとしている。
「リズ、とりあえず、前に聞いてたことは解決しているようだな?」
「須佐さん、こんばんわ。‥‥はい」
一人でいたリズに声を掛けた須佐 武流(
ga1461)。
(まぁー前みたいにまたなんか無茶なんかしてやがるとかはなさそうだからな‥‥そこだけは安心できるな)
「まったく、胸ばっかりでかくなりやがってまだガキんちょなんだからよ? 悔しいか? 悔しいなら‥‥見返してみるとイイゾ?」
「むー、ひどいです」
須佐の言葉に頬をふくらませて抗議するリズ。
「そうだ、リズは今後どうするんだ? このままオペレーターでも続けるのか? それとも別の何かを探すか?」
「‥‥まだ、わからないです。須佐さんは?」
「俺?俺は‥‥ま、どこに行ったって相変わらずだろうと思うがね」
「あ、セシリーさん。お疲れ様ーっ」
「お疲れ様です」
セシリーを見つけたパステルナークが話しかける。
「今日はねっ――」
撮って回った写真を見せながら今日の出来事を話すパステルナーク。
「今日。楽しかった?」
「うん」
「思い出、増えた?」
「皆のお陰で増えたよ。感謝だね」
とりとめない会話を続けるパステルナークとセシリー。
「それじゃっーとるよっ!」
参加した傭兵たちで集合の記念撮影を撮る――タイマーを設定したパステルナークが戻るとシャッターが落ちる。
今日の日というのを残すために。
「今日は楽しかったですわね♪ 皆が元気なのもわかりましたしよかったですわ♪」
ケビンとセシリーを待っていた冬無と麗華とヴァサーゴの三人。
五人で車両を置いているところまで歩いて戻る。
「ケビン♪」
「れ、麗華さんっ」
麗華はケビンを後ろから抱き胸に頭が埋まるようにすると赤面してしまうケビン。
「麗華さーん。ぶ〜」
そんな、光景にちょっとジェラシーを感じる冬無。
「‥‥冬無‥‥」
ぎゅっと、冬無の手を握るヴァサーゴ。
4つの人影が並ぶ。
秋祭り FIN
数日後 LH ??
「‥‥経験者は大歓迎だ。士官が不足しているからな。手続きが完了次第任地へいってもらう」