●リプレイ本文
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埼玉 所沢
攻めあぐねていた基地の攻略に投入されたのは傭兵達。
自力での攻略を諦めて依頼を出したのだ。
UPC陣地
「済まないな。呼び出して」
エカテリーナ・ジェコフ(gz0490)は集ってくれた傭兵達に感謝の意を伝える。
一時期はどうなるかと思ったが、これだけの傭兵に集まってくれた事を感謝していた。
幾人かは見知った顔だ。個別に感謝を述べるべきなのだろうが、今は時間がない。
「これが基地の地図だ――」
エカテリーナは机に基地の地図を開けると集まった傭兵達とブリーフィングを始めた。
「どうだね? 君達」
ブリーフィングをしているところに現れたのは、UPCの現場指揮官だ。
「ハッ! 攻略に向けて最終確認を行なっているところであります!」
軍人然とした態度で答えるエカテリーナ。面倒くさい人間にはこう対処するのが一番だ。
「あれの準備は出来ている。この程度なら経費も掛からなくて大助かりだ」
援護の攻撃を頼まれるかと思ったのだがな と続けて小声で言う指揮官。
「パイロットが、捕まってるって聞くケド」
夢守 ルキア(
gb9436)は気になっていたパイロットのことについて聞く。
「ああ、我が軍のパイロットだな。あの基地に移送されたという情報がある」
そこで、なにか閃いたような表情をする指揮官。
「ああ――無事に救出できればボーナスを弾んでやろう」
「おじさま〜♪ 素敵〜♪」
「ハッハッハ! イチから育成することを考えれば安いものさ!」
(人の心を捨てたわけじゃないのに‥‥)
トゥリム(
gc6022)が本心を隠しながら指揮官に媚を売り、それに機嫌を良くした指揮官。
そうしている内に指揮官の部下が偵察に参加していたKVパイロットの顔写真付きの一覧をエカテリーナに渡す。
「それじゃあ、頼んだぞ」
機嫌の良くした指揮官が部屋から出ていく。
「クソッタレ!」
出ていった途端、キレるエカテリーナ。そして、ソレを見てビクッとするトゥリム。
「あぁ、すまん」
吃驚したトゥリムに謝るエカテリーナ。
「使い捨て、上等。トコトン命が軽いのが、傭兵さ」
呟く夢守の言葉が虚空に消え、各々の傭兵たちが『それ』を携行して基地攻略へ挑む――。
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出撃
基地へと進む傭兵達の目の前に現れたのは、兵士たちを取り込んで体中に顔や手足を取り付けた悪趣味なキメラが三体。
「グロイうえに、悪趣味な事してんじゃねぇよ!? 全力でぶっ壊してやらあ!!」
その姿に、其の有り様に嫌悪感ではなく、憤ったのは砕牙 九郎(
ga7366)だ。
「急がなきゃなりませんし‥‥早く眠らせてあげましょう‥‥」
御守 剣清(
gb6210)は嫌悪感より先に、「コレ」を作った者達へ静かな怒りを表情を変えずに出す。
「苦しみから解放‥‥します」
その見た目に嫌悪さよりも哀れみを抱くが、倒さなければ犠牲者が増えることに決意し、武器を向ける。
迫る人形の巨体、それに対して傭兵達の動きは素早かった。
接敵と同時に怯える暇もなく『瞬天速』で接近して『連剣舞』を使い『アーミーナイフ』で手足を狙ったのは風代 律子(
ga7966)。
それと同時にもう一体のキメラの四肢を『四肢挫き』を使い『クルメタルP−38』で撃ちぬくのはエドワード・マイヤーズ(
gc5162)。
御守もまた、残りの一体の四肢を接近して抜刀して『刀』で切りつける。
四肢を攻撃された三体のキメラは立つことできなくなり、倒れ込もうとする所を風代と御守は巻き込まれないように後退するする。
入れ替わるように倒れようとしているキメラに攻撃を入れるのは砕牙、夢守、トゥリム。
砕牙は『アラスカ454』を轟音轟かせヘッドショットする――銃弾がキメラの眉間に吸い込まれ着弾――頭が弾け飛びその生命を刈り取る。
「はっ、汚い花火だぜ」
冷静に戻った砕牙は辺りを警戒して見渡す。
同じく、夢守も『超機械「カルブンクルス」』を放ち、火炎弾が四肢を斬られたキメラが炎に包まれ、取り込まれた顔から呪詛の声を上げながら倒れた。
「お仲間になりたくなかったら、殺す必要がある」
そう、ポツリと呟く夢守。
四肢をアーミーナイフで斬られたキメラに『クルメタルP−56』を発砲するトゥリム。発砲によりキメラは絶命する。
「念には念を入れないとね」
エレナ・ミッシェル(
gc7490)は『拳銃「CL−06A」』の二丁拳銃で夢守が倒したキメラの眉間に連続して撃ちこむ。
「さて、行くかね?」
三体のキメラの絶命を確認したエドワードが皆に語りかけ、先へ進む。
基地の入り口をくぐった傭兵達は足止め班と潜入班に別れる。
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足止め班――
傭兵達がゲートをくぐった先は――阿鼻叫喚であった。
其処には秩序はなく、暴れる人々――その中には強化人間もいるのだろう――混沌とした状況が展開されていた。
「‥‥何とかしなきゃ」
トゥリムは盾と銃を解除すると『ソレ』――砂袋を手に持ち「小型超機械α」を直ぐに使えるように準備をする。
「これからが本番だな」
砕牙は用意した砂袋を腰に付け、『閃光手榴弾』を使えるようにしておく。
「‥‥全部倒したほうが楽なんだけどなぁ‥‥」
ボソッと呟くエレナはペイント弾に装弾し直し実弾が入ってないか確認する。
「歌ってる間、無抵抗になるから悪いケド、守って」
夢守は『子守唄』の準備をする――尚、子守唄は無差別に同じ所にいる対象を眠らせるため使いようが肝心だ。
「ソレじゃ行くぞ!」
砕牙を先頭に基地に投入する。
「FF反応っ!」
早速、砕牙か掛けた砂にFFが反応して敵味方の判別が行われる。
「えいっ」
トゥリムの超機械が強化人間を攻撃し、其の隙に接近した砕牙が至近距離で発砲して倒す。
『〜〜♪』
強化人間を排除したのを確認すると夢守は『子守唄』を発動させる。
「危ないっ!」
「ぐあああああああああ!」
夢守に襲いかかろうとした凶悪化した一般人をエレナはペイント弾で『目』を狙い撃つ――ペイントが目に入りもんどりを打つ一般人。
「軽傷程度、ダカラ、大丈夫みたい。気にしないでいいよ」
倒れた一般人の様子を見てダメージというダメージではないのを確認した夢守は一般人を拘束する。
こうして派手に動き、基地内の暴れている一般人や強化人間を誘き寄せて突入班の支援を行なっている。
基地の近くの上空をKVとHWが戦っている――。戦場は此処だけでない。
空もまた戦場だ。
潜入班――
「久しぶりね。フフッ、例え使い捨て要因だとしても、多くの人の命が守れるのならそれでいいんじゃないの?」
「確かに。――だけど、あたしはあいつの態度が気に食わない」
共に潜入する風代はエカテリーナに話しかけ、答える。
「将来(さき)は貴女次第、とは言いましたけど、オレとしちゃ出来るだけ血の流れない道をお勧めしたいんで、ね」
「御守、『卵を割らなければ、オムレツは作れない』そんな時もあるさね」
エカテリーナに足止め班でなく、潜入班を薦めて承諾を得た御守にかの空軍元帥の言葉を返し、せざる得ない時があると言うエカテリーナ。
「ですから、オレは『出来るだけ』と言うことですよ」
「だったら『御守』、お前があたしに示してみな。できたら、あたしを『カチューシャ』って呼ばせてやるさ」
御守の言葉に挑戦的な笑みをこぼすエカテリーナ。
「さっさと行きますよ。エカテリーナ氏」
「ああ、そうだな」
足止め班の支援を受けた潜入班は問題なく基地へ潜入を果たす。
伏兵や罠の存在に警戒しているのはアルヴァイム(
ga5051)――そう、ここは敵地だ。
「探査の目には――今のところ不審なのはない」
エドワードも『探査の目』を使い、アルヴァイムと連携して罠や不審なものに警戒をしていた。
基地内を進むと司令部らしき建屋を見つけ、潜入する――建屋内にいる強化人間や一般人は足止め班に誘き出されていない。
「ん‥‥? もしかしてアレは――」
違和感を感じ取ったアルヴァイム――依頼に辺り幾つかの報告書に目を通していて気がついた――予想が正しければ‥‥。
「FF反応!」
違和感を感じた2体の対象からFF反応が出るのを見たアルヴァイムは「自爆タイプ」の強化人間であることをハンドサインで知らせる。
「させない!」
「させるか!」
御守とエカテリーナが一撃で仕留め、行動する余裕を与えなかった。
「少しの間、眠っててね」
風代が反応しなかった一般人を気絶させて回る。
こうしてエドワードとアルヴァイムは連携して警戒を担当し、御守とエカテリーナは強化人間に対処して風代が一般人の保護に務めた。
「ここの様ですね」
エドワードは基地内の探索の時に手に入れた地図を片手にパイロットが捕らえられていると思しき部屋を見つけた。
「営倉――確かにな」
刑務所のような施設のない基地において唯一ある施設――営倉。エカテリーナは襲いかかってこない様に警戒する。
「施錠されているせいで出てこられないようね」
『瞬天速』でドアに行き、確認して戻ってきた風代が告げる。
「となると‥‥」
御守は考える――風代がドアを引っぺがし、御守は『閃光手榴弾』を営倉に放り込む。
「FF反応はなし――リストの写真に一致している」
「閉鎖空間での閃光手榴弾は効きますねぇ‥‥」
エドワードが写真と確認し、念の為にFF反応をチェックし、問題がなかったので気絶したパイロットを御守が保護する。
こうしてパイロットを保護した傭兵達は最後の目標――司令室へ向かう。
最奥部の司令部に近づくにつれて人と強化人間の割合が強化人間のほうが多くなる。
だが、時間の問題もあり、極力戦闘を避けながらも進む傭兵達。
そして遂に――改造電波塔の制御装置があると思われる司令室にたどり着く。
「どうすっかな‥‥下手に壊せば」
そう、下手に壊せば暴走した機器によって電波の出力を上げてしまいかねないのだ――その為、悩むエカテリーナ。
「止めないわけにはいけない」
「困りましたねぇ‥‥」
「さすがにあたしも――というか、バグアの機械だしな」
「バグア製の機械――」
「アルヴァイムさん?」
考える様子のエドワードに途方に暮れる御守、幾らなんでもバグアの装置は操作できないと言うエカテリーナ。
「バグアの装置」と聞いてなにか考える様子のアルヴァイムにそれを気にする風代。
「攻性操作なら――」
そう、『攻性操作』はバグア製の機械を操作することの出来るスキルだ。元は自爆タイプの強化人間に使うつもりであった。
「失敗しても効果がなくて無反応で超機械がオシャカになるだけ――やる価値はあるな」
下手に壊すよりリスクが少ないと判断するエカテリーナ。
「アルヴァイムさん、お願いします」
御守がそう言うとアルヴァイムが『小型超機械α』を持ち、『攻性操作』を使う――。
「‥‥ゴクリっ」
皆の息を呑む声だけが辺りを支配し――。
カシャン と音を立ててペンサイズの『小型超機械α』が壊れ――改造電波塔の出力を表示しているメーターが0になる。
「こちら潜入班。電波塔の無効に成功した」
アルヴァイムが冷静な面持ちの声で無線機を持ち外にいる足止め班へ連絡を入れる。
「そっちはどうだね?」
足止め班に続けて連絡を入れるエドワード。
「終わりましたね」
「これで皆、助けれるわね!」
「おお、神よ!」
アルヴァイムの其の言葉に張り詰めていた緊張を解くエドワード、安堵の表情の御守に、助けられたことに喜ぶ風代に柄になく神へ感謝するエカテリーナ。
一方、足止め班。
少し、遡って潜入班が突入後。
「千客万来だな!」
「こうなったら、意地でもパイロットを救出してもらわないとね!」
「ボク達が頑張らないと‥‥」
「ここが、踏ん張り時ダネ」
砂かけ婆の如く近づく人らしきものに砂を掛ける砕牙。
思ったより重労働になって追加ボーナスが欲しいとごちるエレナ。
皆のために――自分たち傭兵や罪のない一般人の為に頑張るトゥリム。
スキルの連続使用が錬力の消費が負担になりっつつある夢守は力を振り絞って頑張る。
ワラワラと集まる凶悪化した人らしきものたち。
幾ら傭兵が強いといっても圧倒的多数と四名――僅かづつであるが押され始めている。
「こうなったら!」
砕牙が閃光手榴弾を投げ、防御体制をとる他の傭兵達――刹那、閃光手榴弾が炸裂する。
かなり集まっていたせいか、ショックで気絶する。
「始末しないとね」
エレナは気絶した中でFF反応のでた強化人間の処分を行う。
「もう少しの辛抱です‥‥」
トゥリムは気絶した一般人を縛り拘束する。
「少しは――時間を稼げそうだな」
「ウン」
押し寄せてきた殆どの一般人と強化人間を片付けられたお陰で砕牙と夢守は一息つくことが出来た。
だが――またしても迫り来るが――。
いきなり、気絶した様子で倒れる人々。その時、一本の無線が入る。
「こちら潜入班。電波塔の無効に成功した」
そう、潜入班のアルヴァイムからの無線は作戦の成功を告げる。
「よかった‥‥」
ほっと息をついて胸を撫で下ろすトゥリム。
「そっちはどうだね?」
エドワードからの無線が入る。
「コッチは大丈夫。電波が止まったら、皆、倒れちゃった」
電波によって動かされれていた人々は気絶してしまった事を告げる夢守。
「強化人間だけはどうにかしないとな」
アルヴァイムから『自爆型』の強化人間が居た事を知らされた砕牙は行動に移る。
「パイロットも無事救出されたみたいだから、私もがんばるよ」
エレナは危険の排除で更なる報酬の積み上げを期待して動く。
こうして、UPC軍が来る頃には強化人間の排除が終わっていた。
基地に展開するUP軍が制圧を行なっていく――傭兵達に無力された基地を。
「『民間人を助ける英雄』が来タヨ」
皮肉げに言う夢守。
「ハッハッハ! 君達のお陰で大戦果だよ!」
満面の笑みで満足気な指揮官。
「パイロットも救出できたよ」
エレナは指揮官にそう報告する。
「おお! そうか! そうか! なら、約束通り報酬の上乗せだな!」
「あと、自爆する強化人間もいたから排除したよ」
「ほぉ! 危険手当も欲しいのか! 私も気分がいい! やろうではないか!」
(所詮、傭兵‥‥金か‥‥だが、その方が扱いやすい)
民間人に死者を出すことなく傭兵達は基地を攻略し電波を止めることが出来た――それは快挙であった。
足止め班、潜入班――何方かが欠けていれば成功はなかっただろう。
このメンバーだからこそ、なし終えたといってもいいだろう。
【埼玉】所沢奪還・潜入 Fin