●リプレイ本文
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宇宙 崑崙近辺
けたたましく鳴り響くアラーム、次々と離陸していくKV、旗艦CICは慌ただしく各護衛艦隊から敵情報が入り込んで来る。
「敵バグア艦隊! HWを射出! 単縦陣へ陣形移行し、中央突破を図る模様!」
敵艦隊はHWを射出しながら縦列単縦陣から一本の単縦陣に移行し中央突破を図る。
奇しくも――傭兵達を載せた護衛艦隊は其の敵艦隊との矢面であった。
●戦闘開始
「敵見ユ」の報告に迎撃にあがる傭兵達。
「今、輸送している物資も人員もすべてこれからの崑崙に必要とされるもの。ここでむざむざと失わせる訳にはいきませんわ」
ピュアホワイト『Habicht』で上がるのはクラリッサ・メディスン(
ga0853)。
「招かれざる躾のなっていないお客さんには早々にお引き取り頂かなくてはいけませんわね」
『ロータス・クイーン』を使い戦域管制任務を行い敵情の収集と増援の警戒を行う。
「情報を連携致しますわ」
得られた情報――敵艦の形状を僚機へと連携していく。
「『ヴィジョン・アイ』を使い、『ロータス・クイーン』で探知に成功したBFやHWの慣性制御装置の場所や影響範囲のデータも連携していく。
こうして初戦が始まる
「美味い飯が食えるってのは大事なことだからな。しっかり送り届けてやるさ」
スレイヤー『ゲシュペンスト・フレスベルグ』を駆るのはゲシュペンスト(
ga5579)。
「一番槍‥‥頂く!」
クラリッサから様々なデータが連携されていく、その中から攻撃箇所を選択していく。
他の僚機とともに宇宙を翔けるゲシュペンスト――近接戦闘でHWを狙いに行く。
「馴染む、馴染むのでありますよ、このKV」
『ガルーダ』と名付けられたフィーニクス――数多くのKVを遍歴してきた美空・桃2(
gb9509)はついに自分が求めてきたKVに出会った瞬間だった。
異星のKV――それをコピーしてできたのがフィーニクス。
自分なりに調整したコックピット、桃2のパーソナルカラーであるショッキングピンクへ変更された『ガルーダ』は、戦場を共に一陣の風となりHWへ向け一直線に駆け抜ける。
「この大事な時期での崑崙への人員と物資を討たせはしませんよ」
クラリッサからデータ連携と位置情報を共有し他の僚機と連携してドレイク――『silberner Drachen』で攻勢に当たるのはヨハン・クルーゲ(
gc3635)。
初撃は『高分子レーザーライフル「プレスリー」』を用い、その長距離射程を生かしてHWへ攻撃を行おうとする。
「輸送艦を沈めさせる訳にはいかんな。早々にお引取り願おう」
他の皆と同じようにHWへ『Huckebein』と命名されたタマモを操り攻撃を敢行するのは黒羽 拓海(
gc7335)。
「毎日のお食事がうどんと乾パンだけ‥‥うう、考えただけでも憂鬱です。月面基地の皆さんが美味しい食事を食べられるよう、精一杯頑張らないと!」
そう、意気込むのはおっとりとした空気をまとうミレーユ・ヴァレリー(
gc8153)がラスヴィエートを操縦しBFに対して打って出る。
(必ず‥‥無事に送り届けてみせます‥‥っ)
決意を胸に戦闘機状態で幻龍――『Cya』で敵探知のリスクを追いながらも『蓮華の結界輪』を使用し、逆探知しつつ中和して攻めるのは入間 来栖(
gc8854)。
「輸送艦隊には絶対近付けさせないよ! 一人も欠ける事無く、崑崙に行くんだから!」
リヴァティー『マンサ・ムーサ』のコックピットで御名方 理奈(
gc8915)は入間・クラリッサからのデータを他の僚機へ知らせながら歩調をあわせてHWへ攻撃を行う。
戦闘の火蓋が切って落とされた。
二機のBFへ対し、7機のKVが殺到する。
桃2が『レーザー砲「凍風」』で攻撃しながら二機のWHの間を駆け抜け、ヨハンがプレスリーで狙撃し、『アサルトライフル』と『84mm8連装ロケット弾ランチャー』を使い接近していく黒羽。
入間は敵に探知されながらも『ミサイルポッド』を使い攻撃し、御名方は『ホーミングミサイルBT−04』を連射しながら攻撃する。
同じく、ゲシュペンストも『ホーミングミサイルBT−04』を使い弾幕を張り速攻をかけ、『スナイパーライフル』で援護するミレーユ。
管制機からのデータと入間の結界輪が功を奏し、7機の攻撃が正確にHWへ当たる。
流石のHWもこの攻撃には耐えられず撃破されてしまう。
残るはBF一隻――だが、3機のHWを射出して壁にする。その様子はすぐに傭兵各機へ知らされる。
「増援です!」
すぐに観測したクラリッサが先ず対応に動いた。
「HWの増援を確認しました。予定通りそちらの排除に向かいます」
更に、増援を予想していたヨハンがHWの対処へ向かう。
「ろじゃーですっ!‥‥こちらも増援HW確認しました! 真っ直ぐこちらに向かってきますっ!」
入間も先の2機とともにHW対応に当たる。
「すぐにっ! 排除するよ!」
BFに向かう御名方も障害であるHWの排除に動き出す。
4対3――彼我兵力に於いては優勢だ。クラリッサの管制範囲も問題無い。
「させませんわ!」
『G放電装置「ブレナー」』を使い、遠距離攻撃を仕掛けるクラリッサ。
「堕ちろっ!」
BT−4、ライフルを使い分け攻撃を展開する御名方。
「ふぁいや!」
ミサイルポッドで弾幕を張り、行動を抑止させる入間。
「向かわせないっ」
その弾幕を強引に突破を図ろうとする一機のHWに対してブーストと『High Mobility Boost』、『アリスシステム』を起動し全速力で要撃するヨハン。
戦闘機動を描きながらドッグファイトの様相になる傭兵とHW。
先ずHWの一機がG放電を喰らい、其処に次々と当たるBT−4とライフルによって撃破された。
全速力で要撃するヨハン――HWに近接し、得たデータから『高出力レーザー砲「種子島弐式」』をほぼゼロ距離で慣性装置にあて撃破する。
入間のミサイルポッドの弾幕で行動を阻害されたHMに残りの三機が一斉に攻撃を仕掛け、瞬く間に残骸へと姿を変えた。
一方――。
HWを迂回してBFへ向かうゲシュペンスト、桃2、黒羽、ミレーユ。
ゲシュペンストはデータを上手く使いながら接近戦でBFの発進口や砲台をねらい、桃2はBFの周りを飛び回り対空砲座を引きずり回すのであった。
黒羽も接近しこれ以上の増援を阻止しようと発進口を一番にねらい、ミレーユは攻撃を阻止すべく砲台を優先的に狙うのであった。
「さて、鯨獲り開始と行こうか!」
ゲシュペンストはBFに接近するまでの間、射撃武器で牽制を兼ねて攻撃を敢行した。
『大口径ガトリング砲「ブーリャ」』がけたたましく唸りを上げ、激しく排莢され撃ち出される弾丸――その名の通り弾幕の嵐がBFを襲う!
その弾丸の向かう先は桃2によって翻弄されている幾つかの対空砲座――次々と当たる大口径の砲弾に砲座の装甲が穿ち、轟音をあげ爆発する。
「当たらなければどうってないであります――見たか、これぞ、残像なのであります」
『残像回避』を使いBFの対空砲座を翻弄する桃2、対空砲座を一手に引き受ける形となったお陰で他の僚機に攻撃が向くことがなかった。
次の瞬間、閃光が走り幾つかの対空砲座が爆発し擱座する。桃2の撹乱が、ゲシュペンストの攻勢が結実した結果だった。
「湧いて来られると面倒なんでな」
「長居は出来ない身の上なんでな、スピード勝負で往かせてもらう!!」
砲座を攻撃していたゲシュペンストと共に発進口を攻撃する。
『84mm8連装ロケット弾ランチャー』と『アサルトライフル』で接近しながら攻撃をする黒羽とガトリングで攻撃するゲシュペンスト。
流石に発進口となると頑丈な為、接近して攻撃することとなった。
対空砲座が桃2に引きつけられている為、ブーストと『FETマニューバA』を併用して吶喊をかけ、接近することに成功した黒羽。
『機刀「陰」』と『機刀「陰」』を使い発進口の装甲を攻撃する黒羽。
「その馬鹿でかい図体に風穴を開けてやる! ここで腹の中身を吐かせる訳にはいかんのさ!」
ゲシュペンストもまた『量産型機刀「凪」』で攻撃する。
「あれがBF‥‥実物を見るのは初めてだわ」
近く肉眼で始めてBFを見たミレーユ。
「砲台辺りに上手く当たってくれるといいんだけど‥‥そこですねっ!」
桃2がBFの周りで舞い、ゲシュペンストが幾つか対空砲座を潰し、黒羽が接近している時、ミレーユは砲台を攻撃していた。
対空砲座が桃2により拘束され、ゲシュペンストの攻撃で減っている為、砲台に対しての攻撃は難なく行えた。
一撃では撃破は難しかったものの、何度も当てることにより沈黙させる事に成功した。
「まだ、いけますわ」
ゲシュペンストと黒羽が発進口を攻撃に移る時、桃2が拘束している残存の対空砲座を攻撃に移った。
砲台ほど耐久力の無い対空砲座はスナイパーライフルの攻撃を受けて残存していたのも全滅した。
フリーとなった桃2とミレーユは発進口の攻撃に移行した。
4機が発進口へ攻撃をする――ゲシュペンストと黒羽の攻撃により蓄積したダメージがミレーユの狙撃と桃2の『プロトディメントレーザー』により潰される事となった。
艦橋や推進部を攻撃するゲシュペンストと黒羽と桃2――そして、HWを相手していた傭兵たちが合流する。
「伊達や酔狂で地上兵装を宇宙にまで持ち出したと思うなよ‥‥!」
勝負手の地上兵器を持ちだしたゲシュペンストを筆頭に惜しみない攻撃をする傭兵達。
それはまさしく蹂躙。取り囲まれた傭兵たちによってBFは撃滅されてしまった。
●優勢〜そして
矢面に立ち、敵の攻勢の出鼻を挫いた傭兵たちの活躍により敵艦隊の突破は頓挫する事となった。
それは十分な管制と連携による大戦果であった――故に戦闘は増援が有ったものの難なくHWとBFを殲滅することが出来た。
余裕が出来た傭兵達は他戦域の友軍の救援に向かい、劣勢で有った戦線を押し戻すことに成功した。
こうして、傭兵達の助力により優勢になった護衛艦隊による包囲により、殲滅されていく敵艦隊の崩壊は時間の問題であった。
傭兵達はさらなる増援を警戒するも敵が出てくることがなかった。
出撃した艦艇へ帰還する傭兵達や兵士達に待ち受けていたのは――。
重力制御ができる艦艇限定ではあったが、「宇宙食」ではない手作りの食事が待っていた。
そう――守られる立場であった彼らもまた彼らなりに応えようとしていたのだった。
それは兵種の枠を超えた共同作業でもあった。
傭兵達は無事に生き残ったことを祝い、そして守れたことを祝い、ささやかな祝宴が開かれた。
Fin