タイトル:【MO】デマゴーグマスター:後醍醐

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2012/04/20 20:18

●オープニング本文


 ●
 オセアニア オーストラリアのグレンホートン。
 とある噂話が流れていた。
 曰く
「強化人間に囚われている人々がいる」
 と――いった内容の噂だった。
 
 ●
 とある、場所。
「さぁさぁ、踊れ!」
 エカテリーナ・ジェコフ(gz0490)は両腕を吹き飛ばした強化人間の足元を撃っている。
 必死にそれを避けようとする強化人間。
 その様子は――狂相を浮かべ心底愉しんでいるようであった。
「何時もながら、悪趣味だな‥‥腕は立つというのに」
「敵を殺すことには長けてはいるが、アレさえなけりゃな‥‥」
 その様子を遠き巻に見ている仲間の傭兵達。
「カチューシャ(Катюша)、やめろ」
 長年付き添ってきた仲間の傭兵が止めに入る。
 エカテリーナの愛称であるカチューシャを呼べるのは彼だけだろう――死にたくなければ。
「ッチ、白けた」
 次の瞬間――
 強化人間の頭部が弾け飛ぶ。
「ほい、これで依頼は終わりだな」
 エカテリーナのあっけらかんと仲間に告げる。
「あぁ‥‥」
 付き合いが長いといえども彼女の何時もの凶行は心底気分が悪い。
 だが、傭兵になる前から――軍の時から共に死線をくぐってきた仲だ――何度、彼女に助けられただろうか。
 それもあり、止めはするが辞めさせるということは出来なかった。
 
 ●LH
「宇宙、宇宙、宇宙‥‥クソッ、白けるな」
 ほぼ生身専門の彼女にしてみれば宇宙――と言うよりもKVが面白くないのだろう。
「慈善活動‥‥所詮、偽善だ‥‥クソが、パスだパス」
 依頼を検索し続ける――。
「おっ! ナニナニ‥‥強化人間に囚われている人間の救出‥‥おっしゃ! これだ‥‥ぶち殺せそうだな」
 依頼を受けるが――・
「あぁん? その日は無理だって? 来いよ! ‥‥糞が!」
 どうやら――何時ものメンバーとは日程が合わなかったらしい。
「ッチ! 仕方ねぇ! 待つか」
 
 ●
 強化人間が人を囚えれていると言われている場所。
「お昼だよ!」
 「少女」がお玉とフライパンで鳴らし「皆に」合図を出している。
「わーい」
 それに集まるのは年端も行かない子供達。
 (‥‥せめての罪滅ぼしに‥‥)
 少女――被験体103022号――元の名前はエリミー・アリューシン。
 強化人間として前線に出ていたが――脱走以降、こちらへ飛ばされていた。
 その為、強化人間の身でありながら、孤児を世話をしている。
 不思議な事に裏切り者と糾弾されず、食料も提供されていた。
 
 ●
 どこかの場所。
「『牧場』の様子はどうだ?」
「優秀な『羊飼い』のお陰でいいヨリシロや強化人間にできそうだ」
「子供というのは――何かと便利だからな」
 
 エリミーは知らない、その意味を――。
 

●参加者一覧

風代 律子(ga7966
24歳・♀・PN
セレスタ・レネンティア(gb1731
23歳・♀・AA
狐月 銀子(gb2552
20歳・♀・HD
御守 剣清(gb6210
27歳・♂・PN
ソトース=ヨグ(gc3430
12歳・♂・ST
ニーオス・コルガイ(gc5043
10歳・♂・EP
ナスル・アフマド(gc5101
34歳・♂・AA
村雨 紫狼(gc7632
27歳・♂・AA

●リプレイ本文

 オーストラリアのグレンホートン。
 依頼を受けた、傭兵達が集まっている。
 バグア占領地である東部に位置し、グレンホートンの噂を調査するという敵地潜入調査の側面もあった。
 可能な限り目立たず、その上で敵の情報は確実に入手しなければならない。
 失敗すれば、バグアの軍勢が一気に攻め込んでくるリスクもある。
 何処まで情報を入手する事ができるのか。
 それは――傭兵達の活躍にかかっている。

「ども、よろしくお願いしますね〜」
 御守 剣清(gb6210)は軽くエカテリーナ・ジェコフ(gz0490)に挨拶をする。
「よぉ、今回は楽しめそうだな! よろしくな!」
 難しく考えずに敵をなぶり殺しに出来ると考えていたエカテリーナは目付きが悪い、凶相で出迎える。
「くくっ、今回は遅れてしまって申し訳ない‥‥」
 ナスル・アフマド(gc5101)は内心、唯の獣かとため息をつく。
 
 一部のメンバーが集まり、班分けを行なっていた。
「それじゃ、偵察班と聞き込み班に‥‥」
 狐月 銀子(gb2552)が目標の施設の監視と近隣の街での聞き込みを提案しようとするが‥‥。
「めんどくせーな! サッサッと突っ込もうぜ! どうぜバグアしか居ねーんだから。ぶち殺そうぜ!」
 エカテリーナが苛々しながら、狐月の発言を遮る。
「そんなに戦いたきゃ、自分より強いヤツとやれよ! 強かろうが、協調性ゼロの暴力主義者じゃ依頼なんか無理だ!」
 村雨 紫狼(gc7632)がエカテリーナの発言に憤って突っかかる。
「チッ‥‥わーったよ! わーった!」
(青二才がめんどくせぇ‥‥メインデッシュは最後に取るのがいいか‥‥)
「んじゃま人数的な分担もあるしエカテリーナちゃんはあたしと来てね」
 エカテリーナは狐月と行動することとなった。
 こうして残りのメンバーで班分けされることとなった。
 
 一日目――昼
 監視地点。

 先行して行動を起こしていた風代 律子(ga7966)は監視に適した位置につくことが出来た。
 後からやってきたセレスタ・レネンティア(gb1731)は目星をつけておいた場所でバトルスコップを使用し蛸壺壕を構築し始める。
 軍から借りた携帯用円匙を使って本格的に個人用掩体を掘り始めるのはニーオス・コルガイ(gc5043)。
 深さは約1.2メートル、掩体の中に階段を作ってあり、防寒シートを上に被せて草や木の枝等を適当にばら撒いて偽装を施していた。
 御守と村雨 紫狼(gc7632)、ナスルも各々の場所で監視を始めていた。
 彼らの目に映るのは――建家の周りをキメラなどに注意しながら遊んでいる子供達だった。
 その建家の様子は三角屋根の十字架がない教会といった感じの建物で到底、収容施設には見えず、大きさ的には一家屋より少し大きいといった感じであった。
「あれは子供の様です‥‥人質には見えませんが」
 セレスタは疑問を感じる――何かの間違いではないかと。疑問を感じていた他の傭兵もいた。
 監視を続ける6人。
 エマージェンジーキット内に有る物で昼食を済まして監視を続けるニーオス。
 彼らの眼前で繰り広げられるのは子供とのどかな光景であった。
 それは、世界が戦争をしているのがまるで嘘のように――。
 日は昇り、また、日が沈もうと黄昏が近づきつつ有り、子供の影が大地に伸びていく。
 
 一方、近隣の街――。
 ソトース=ヨグ(gc3430)と銀子、エカテリーナが調査を行なっていた。
「ちょっといい?」
「ちょっといですか?」
 不貞腐れるエカテリーナを他所に二人は道行く人々に声をかえるが芳しくない。
「ちょっと、手伝ってよ」
 狐月がエカテリーナに協力するように言う。
「ったく、仕方ねーな‥‥」
 3人は、あらゆる場所で聞きこみを行うが、異様に避けられ、聞き出すことが出来なかった。

 一日目――夜。
 監視班。
 夜――闇夜が支配する世界――新月の為、闇は一層、濃い。
 戻ってきたソトースが侵入に参加する。情報は手に入れることができなかった。
 建家から漏れる明かりが消えた事を確認した傭兵たちが闇夜に紛れ建家へと侵入する。
 クルメタルP−38の薬室に弾が込められているのを素早く確認するニーオスは抜かりがなかった。
 昼間に潜入口を確認していた御守と味方の暴走を警戒した村雨を先頭にニーオス、ソトースと続く。
「ナスル、風代がいない」
 御守のその言葉に嫌な予感を感じる村雨。ナスルは別行動で建家へ侵入しようとしていた。
 6人は施設へと潜入する。灯が落ちた建家はひっそりとしていた。
 が――。
「キャー!」
 御守達が侵入したその時、子供の悲鳴があがる。
 4人は声のする所へ駆けつけた。
 

 少し前――。
 風代は煙突より侵入する事に成功し、寝室らしき所へ移動すると――。
 其処には子供達の寝顔を見ていた少女が居た。
「!?」
 風代にびっくりする少女。風代は人差し指を口に当てて静かに、と言うポーズを取る。
 少女もそれに気がついたのだろう、子供に被害が出ない様に静かに風代と共に寝室を出た。
「私は風代 律子。貴方は?」
「‥‥エリミー‥‥エリミー・アリューシン」
 警戒した様子で風代の名乗りに子供に対する危害を守るため、渋々答えるエリミー。
「エリミーちゃん、貴女達に危害を加えるつもりは無いわ、少し貴女と話しをしたいの。大丈夫、子供達には何もしないわ」
 しかし、その言葉でも未だ警戒が取れないエリミーに風代がこの施設の調査を依頼された事、そして危険な人物がいる事を話しかける。
「私達は貴女達を助けたいの。だから、貴女達の事を教えてもらえないかしら?」
「‥‥」
 だが、エリミーの警戒はそうそう解けない。
「これで私を好きにしなさい」
 風代は自身の装備であるナイフをエリミーに差し出す。
「これは、私の覚悟の証、もし、貴方が襲って来ても、攻撃は全て私が受け止めるわ」
 受け取ったナイフと風代を交互に見るエリミー。
 その刹那。
「キャー!」」
 風代とエリミーの後方で子供の叫び声がした。
 エリミーが、風代が、声の元へ急ぐ!


 ナスルは窓から建家へと侵入を図り、入ることに成功したが――。
「ん〜」
 廊下で風代とエリミーの会話の間に夜中に起き出していた子供とT字路の廊下で遭遇するナスル。
「!? ‥‥キャー!」
 自分達以外の――しかも、辺りでは見慣れぬ中東風の姿のナスルを見つけた子供は悲鳴をあげた。
 とっさにFFがないか調べるナスル、だが、FF反応はなく唯の子供だ。
 押さえつけようとするが、子供が逃げようとする為に怪我をさせないようにするのは加減が難しい。
 そうしている内にナスルのいたT字路の廊下へ――御守達とエリミー達がやってきた。
「貴方達は!?」
 子供に向かい抱きあげ、明らかに警戒するエリミー。バツの悪そうなナスルとそれを睨みつける御守と村雨、エリミー銃口を向けるニーオス。
「彼女に銃口を向けないでください、ややこしい事になりますから」
 ソトースがニーオスに警告し銃口を降ろさせる。
「敵対意思はありません ただ噂が本当なのかどうか確認したいのです」
 ソトースがエリミーに誤解を解くように言う。
「脅かして、ごめんな。俺は御守 剣清。其処の風代と同じ仲間。君は?」
「‥‥エリミー‥‥エリミー・アリューシン‥‥」
 銃口を向けられたことに非常に警戒した様子で御守の名乗りに答えるエリミー。
「エリミーさん――」
 エリミーに誤解を解くように説明する御守、そしてエリミーへの射線を塞ぐように立つ村雨。
 ナスルとニーオスは村雨に阻まれ若干不満そうであった。
 因みに――エリミーはFF反応が有った。とっさに出くわした時にナスルが確認し、皆が目撃している。
 御守は説明の中で今回の依頼のことを説明し、子供達やエリミーの処遇についても説明をした。
 人類の戦況を考えると何れはバグアが敗走し、見捨てられ子供が世話できなくなることを。
「何れ、別れる時が来るのは――この体になっているのでわかりますが‥‥」
 彼女も、理解はしているものの、ハプニングな出会いに不信感がそうそう拭えない。
「こっちも信じてもらうしかないからね、まずは君を信じないと‥‥」
 そう言うと、御守は自らも、皆に武器から手を離すようにいった。
 少なくとも、武器を手にしていれば信頼関係は築けないものと御守は考えていた。
 
 しばしの――沈黙。

 そこに存在するエミリーの葛藤。

 何故?
 エミリーが、強化人間だから?

 だが、彼女はバグアから逃げ出した。
 では、何故――沈黙を守っているのだろうか。

 傭兵は、エミリーを黙って見守った。
 すべては、エミリーの心次第だ。
「‥‥‥‥‥‥私は‥‥」
 長い沈黙の後で口を開いたエミリー。
 彼女から語られた情報は、普段食糧を運搬するバグアとは違う、彼女の知らないバグアがやって来る事だけだった。
「もしかしたら、ということもあるから警護させてください」
 ソトースがエリミーに提案する。そう、現状ではエリミーも子供達も裏切り者として処理される可能性が有るのだ。
「ですが‥‥」
 未だに傭兵達を警戒するエリミーの為、バグアと遭遇するまでは武装解除に近い形で警護することとなった。
「ゴメンな〜、起こしちゃったか〜」
 騒ぎに集まってきた子供達に笑顔で答える御守だった。
 こうして、寝室に風代が、寝室のドアの横に御守と村雨、少し離れた所にソトースとナスル、ニーオスが警護にあたった。
 

 一方、孤月はエカテリーナと共に近隣の街で聞き込みを行っていた。
 だが、聞きこみを行なっても人々に避けられていて、未だに有力な情報を引き出す事ができなかった。
「‥‥‥‥妙ね」
 孤月は、呟いた。
 バグア占領地域への潜入している事は分かる。
 だが、それにしても――周囲の人間は、孤月達を異常なまでに警戒している。
 よそ者だから?
 そうだとしても、周囲の人間は孤月達を敵視しているように感じられる。
 ここまで敵視する理由が思い至らない。
「‥‥へっ、こっちの聞き込みは無駄足だったって訳かい」
 思案を巡らす孤月の傍らを、エカテリーナはゆっくり歩く。
 本当に無駄足――?
 いや、無駄ではない。
 この街は、いやオーストラリア東部には何かがある。
 人々を狂わせている何かが‥‥。
 

 二日目――。
 朝、教会。
「喧嘩でもしたのかな」
 夜間に連絡を受け、来るであおうバグアを見張っていたセレスタの双眼鏡に映る二人。
 ボロボロに成りながらも教会についたエカテリーナと狐月は教会に入っていく。
 その二人の姿に驚く他の傭兵と納得している傭兵も。
 因みに、村雨はエカテリーナの姿を確認するとエリミーとの間の射線上に移動した。
「ヘッ! 面白そうなバグアが来るんだろ。それを血祭りにしてからさ」
 村雨の行動を見たエカテリーナが吐くように言う。
 怯えるエリミーに大丈夫と落ち着かせる狐月と風代、ソトースに村雨。
 念入りな打ち合わせをする傭兵達。エリミーと子供達の為にも失敗は許されない。
 派遣されたバグアを倒したことで異常を察知したバグアにより戦禍が広がることを期待するナスルもおとなしく参加していた。
 そうしている内に――来るであろう昼になった。
 教会に目指して幌付きのトラックが――セレスタの双眼鏡には運転手がバグアであることが確認できた。
「敵性対象を確認」
 セレスタの無線機から情報を得た傭兵たちが飛び出す。
「攻撃します」
 セレスタのスナイパーライフルが運転手を狙撃し倒すと車から白衣の着たバグアが助手席と後部座席から飛び出してきた。
「悪いが、商売の為に死んでくれやぁ!」
「神様へのお祈りは? 部屋の隅で震えて命乞いをする心の準備はOK?」
「あたいは機嫌が悪いんだよ!」
 ナスルが切り込みにかかり、ニーオスが紅蓮衝撃を使いバグアの足を撃ちぬき、エカテリーナが銃撃し腕を吹き飛ばす。
 他の傭兵は3人がドサクサにまぎれてエリミーを攻撃しないか警戒していた。 3人によってバグアは文字通り跡形もなく潰された。
 セレスタは停まったトラックから書類を回収することに成功する。
「‥‥なんだこれ?」
 手に入れた書類を見た村雨は怪訝な表情を浮かべる。
「‥‥これは‥‥」
 書類を覗き込む傭兵達。
 そこにはオセアニアの地図が描かれており、数カ所の都市に「シェルター」という文字が書き込まれている。
 (ふぅん。シェルターねぇ‥‥)
 まだまだ稼げそうだ。
 ナスルの脳裏にそんな言葉が浮かんだ。。
 

 これ以上の調査は難しいと判断した傭兵は、エミリーを連れてグレンホートンを後にした。
 あまりグレンホートンに居れば、不審に思った敵部隊が現れるかもしれない。
 その傭兵達の判断から、宵闇に隠れる形でアリススプリングスへと舞い戻った。

「強化人間ってだけで憎む人もいるわ、子供達を巻き込みたくのは君も同じよね‥‥」
 別れる前にエリミーに声をかける狐月。
「はい‥‥ですから」
 と、軍に引渡わたされるのを渋々ながら承諾したエリミー。
「本来なら、君達は彼女から‥‥逃げなくてはいけない」
 そんな引き渡されるエリミーをみて泣いている子供達に相容れない物と、訥々と説明するナスル。
 見方によれば、別れるのを納得させているようにも見えた。
 狐月はUPCへ連絡する。
「協力、ありがとうございました」
 連絡を受けたUPCの軍人が、謝辞を述べる。
「エリミーは‥‥」
 狐月がUPCの軍人に問う。
「彼女――強化人間ですが、当分はこの地で抑留します。後は‥‥私にはちょっとわかりかねます」
その後‥‥
 狐月は風代、御守、ソトース、村雨と共に軍が来るまでに書き上げたリポートを帰還した時に提出した。それは少しでもエリミーの待遇が良くなるようにと思いを込めた嘆願書のようでもあった。
 
 こうして、被験体103022号、否、エリミー・アリューシンはUPCへ引き渡され、子供達もUPCへ強化人間との生活の影響の調査の為に引き渡されることとなった。
 
 思いは――届く可能性はあるかもしれない。
 まだ、始まったばかりだ、これからはどうなるのか――未だわからない。
 To Be Continued‥‥