タイトル:BlackBoxDown!マスター:後醍醐

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/10/21 21:12

●オープニング本文


 某司令部のレーダーの様子を表示するモニターの地図上には幾つもの光点が輝いて、それはまるでホタルのように点滅していた。
 その光点の一つが基地近くで突如と消失した――
「輸送機がレーダーより喪失!」
 オペレーターが慌てた声で報告した時、部屋の空気が緊張したものに変わる。
 オペレータの報告を受けた指令が司令部前面の大モニターの画面を切り替える。
「よりによってこいつか‥‥」
 大モニターには喪失場所と墜落した輸送機のデータが表示されており、それを見た基地司令は苦虫を噛み潰したような表情をした。
「消失前後に通信はなかったか?」
 異常があっての墜落ならば通信があってもおかしくない筈だ。
「いえ、近隣の管制所にも通信は入ってないそうです」
 予想外の答えがオペレータか返ってきた。
「厄介だな‥‥」
 緊急事態の宣言もなく墜落となると――奇襲を受けたか、重大事故の可能性がある。
 何故ならば、付近には電波妨害された形跡を表示するデータが無かったのだったから。
「任務故にか‥‥?」
 画面の輸送機の詳細データには任務について『TOP SECRET』と表示されていた。
 ――そう、任務故に無線封鎖をしなくてはならなかったのか。
 「どうしたものか‥‥」
 情報が全くない。乗員の生死すらわからず、唯、判明しているのは消失地点ということだけだ。
 基地司令はどのように行動すべきか司令席で悩んで頭を抱えていると突然、電話が鳴った。
「はい、‥‥ええ‥‥分かりました」
 ――あっちも混乱してるのだろう――相手は動揺し、焦っている様子が電話越しから伝わっている。
 電話の内容は、可及的速やか且つ輸送していた物資の回収を求める内容で、状況的に正規軍は動かしづらく、代わりに傭兵に依頼するようにとの事だった。
 「上級司令部から連絡があった。UPCへ連絡だ。この事案は彼等に依頼することが決まった」
 指令は何事も無く無事に済むように心で祈った。

●墜落した輸送機
連絡将校であるエリック・マッケネンは落ちた輸送機の中で気を取り戻した。
「‥何が‥起こったんだ‥‥」
自身の状況を確認すると、墜落の際、負傷したのか頭部から僅かであるが出血があり銀髪に付着し、気分もすぐれない状況だった。
逞しかった右腕は折れ、足の方も打撲のせいか捻挫をしていた。
「救援を待つしか無そうだが‥‥ん?」
奇跡的に壊れてなかったチタン製のメガネかけるとあたりを見渡してみれば、隣席の同行していた女性の連絡将校は絶命し、遺体は直視できないほどであまりの凄惨さに絶句してしまった。
僅かな距離が生死を分けていた状態だった。
「‥‥ああ、なんて言うことだ‥‥彼女は此処で倒れるべき人間ではなかったのに‥‥」
足元にあった毛布を彼女にかけてやり、目を瞑らせると、体を引きずらせながら操縦席の方へ向かい他の生存者の確認を行うも、絶望的な状況だった。
「クソッ!」
操縦席に居たパイロットもすでに絶命しており、原型を留めておらず操縦席の通信機器も壊れていた。
「何とかして‥生還せねば‥‥」
エリックは自席の下に厳重に保管されていた唯一の輸送物である『黒い箱』を見ながら今後のことを考える。
外に出ようとしてドアを開けようとしたが、墜落の衝撃で歪んだのか片腕だけでは開けれる状況ではなかった。
――もっとも、ドアの窓部分から狼らしき動物が確認されたと云う事もあるのだが‥‥


●ブリーフィングルーム
 パイプ椅子の並んだ簡素な部屋に傭兵たちが集まっていた。
 その傭兵たちの前には背丈150cmほどでウェーブの掛かった金髪に碧眼、あどけなさが残る少女――否、オペレータであるリズ・マッケネンが居た。
「今回の依頼の内容です。」
 リズは湧き上がる感情を殺しながら毅然と依頼内容の書かれた紙を傭兵達へ渡した。
「今回の依頼はパイロットと連絡将校の救出と物資を無事に最寄りの基地までの護送となります。
連絡将校にはこの指令書を渡せば指示に従うはずです」
リズは墜落した場所や細々とした説明をしていく内に、落ちた輸送機に連絡将校として搭乗していた父親の事が心配になってきた――考えずに思っていたのに改めて状況を説明しながら『理解』してしまったせいで考えてしまった。
「くっ‥‥」
人前であるのにリズは自然に涙が出てしまった。
「す、すみません‥‥」
突然の事態に、居合わせた傭兵達も驚きを隠せなかった。
だが、傭兵達は資料に書かれていた――搭乗者の名簿を見ると同じ家名が書かれている事に気がついた。
そして、リズはぐずりながら袖で涙を拭うと、傭兵達に頭を下げた。
「父を‥どうか‥父を助けて下さいっ!」
その悲痛な声――というよりも叫び声がブリーフィングルームに木霊した。

●参加者一覧

篝火・晶(gb4973
22歳・♀・EP
不破 霞(gb8820
20歳・♀・PN
湊 獅子鷹(gc0233
17歳・♂・AA
不破 炬烏介(gc4206
18歳・♂・AA
滝沢タキトゥス(gc4659
23歳・♂・GD
明神坂 アリス(gc6119
15歳・♀・ST
レスティー(gc7987
21歳・♀・CA
エルレーン(gc8086
17歳・♀・EL

●リプレイ本文


 漆黒の闇の中、傭兵たちを載せたヘリが往く。
 眼下に広がるのは光一つない闇。
 ヘリの中では傭兵たちが思い思い過ごしていた。
「‥‥必ず助ける‥‥」
 その言葉は、闇に吸い込まれるように消えていく。
 不破 霞(gb8820)は両親を失った境遇から、リズに自身を重ねた為か表情や態度には表さないが、固い意志を持って臨んでいた。
 湊 獅子鷹(gc0233)はヘリの下に広がる闇をにらみ考えていた。
 (誰かを助ける事で俺も強くなれる‥‥)
 そう――自身が他者を救うことで眠れる事の為にも。
「健気なもんだ‥‥だが、親父さん生きていればいいんだが」
 滝沢タキトゥス(gc4659)は自身の知識から、密生した森林に航空機が墜落――絶望的な状況も考える中でそんな悲劇が起こって欲しくないと祈る気持ちで声に出す。
「きっと大丈夫だよっ!」
 明るい声で皆の不安を払拭するように明神坂 アリス(gc6119)が声をかける。
(これ以上リズが泣く顔は見たくないな、必ず無事に連れ戻さないとね)
「‥‥そうですよね。何としてでも守らないと」
 滝沢と明神坂のやり取りを見ていたレスティー(gc7987)は自身に言い聞かせるようにつぶやく――自身に誓うように。
 少し、離れた所に不破 炬烏介(gc4206)がぼんやりと座っていた。
「‥‥親、か‥‥。俺、にも‥‥親、が‥‥居た、ハズだ‥‥が‥‥」
『何か』を思い出そうとしているが‥‥
「‥‥肉親。とは、大事。な‥‥モノ、か?何故‥‥大事、だ‥‥?」
『それ』が何なのか、『なに』なのか解らない――


 どれぐらい時間が経ったのだろうか――それまで進んでいたヘリがホバリングをし停止した。
 ――墜落地点の付近に到着したようだ。
 まず、元旧陸自隊員で斥候の経験のある篝火・晶(gb4973)がラペリング降下を行った。
 降下後、『探索の目』と『GooDLuck』を使って降下地点周囲を索敵し敵がいないことを確認した後、他の傭兵達に降下を促すハンドサインを出すと、次々と降りてきた。
「俺が先導する、側面あたりの警戒は任せた」
 全員降下後、滝沢を先頭に墜落機を探索しながら向かっていく。
 墜落時にできたと思われる木々の倒れた後を伝っていくと、墜落した輸送機が見えた。
「これはひどいな‥‥生きてるのが絶望的だ」
「生きてるのかねえありゃあ」
 墜落した輸送機を見て滝沢と獅子鷹はつぶやいた。
 ――誰しもにその感想を抱かせるぐらい輸送機の損傷具合が酷かった。
「あなたのお父さんもそこに‥‥大丈夫、必ず助けるから!」
エルレーン(gc8086)はそんな雰囲気を一掃するように大きな声をだした。
 滝沢と篝火は輸送機周囲に敵がいないことを確認し、輸送機外で警戒するグループと機内で救護するグループに分けて行動し始めた。
 衝撃でへしゃげたハッチを篝火はこじ開け、続いて明神坂、レスティーと機内に入っていく。
 三人の眼に映ったのは苦悶の表情で横たわっている男と毛布の掛けられた席だった。
 「もう大丈夫です。後は私達がお守りします」
 レスティーは苦悶の表情をしている男に安心してもらえるように声を掛けた。
 篝火は明神坂とレスティーに男の対処を任せると掛けられた毛布の席を検分した。
 聡明そうな女性だったが、すでに事切れており、遺体を搬送するにも無理な状態だったので認識票を回収した。
 (助ける事が出来ませんでした‥‥。本当に、申し訳ありません‥‥)
 篝火の様子を見ていたレスティーは処置をしながら短く黙想した。
 続いて操縦室へ向かうと貨物室以上の凄惨な状況が繰り広げられていた。
 二人のパイロットの認識票とフライトレコーダーを回収すると貨物室へ戻った。


 一方――明神坂は苦悶の表情で横になっていた男『エリック・マッケネン』を気付けさせ、レスティーが体を支えると二人は所属・氏名を告げたあと明神坂が指令書を手渡した。
「出発前にリズに泣いて頼まれたんだ。父を助けてくれって。期待には応えなくちゃ女がすたる! ‥‥なんてねー」
「そうか‥‥」
(娘にはいつも心配させているな‥‥)
 そうしている内に機内の探索から戻ってきた篝火がメインとなり、レスティーと明神坂が助手をしエリックの処置を開始した。
「娘さんが待っていますよ、気をしっかり持って下さい」
「ああ、済まない‥‥」
 エリックは自席の下にあった箱を見て答えた。
 篝火が問診しながら右腕の骨折の副木固定をし、明神坂が頭部の止血を行い、レスティーが傷の処置を行なっていった。
 (念の為にも早急に検査なり何なり出来る医療施設へ後送するのが望ましい所ですが‥‥)
 問診した篝火は後送が可能か本部に連絡を取るが、任務上エリックと物資の両者が揃う必要があり、秘密裏に目的地に向うようにと言う事で却下されてしまった。
「軍人ってやつあ、めんどくさい連中ばっかりだな、だが盾も悪くない」
 篝火と本部のやり取りを聞いていた獅子鷹が感想を漏らした。
 

 機外では滝沢と獅子鷹、炬烏介、霞、エルレーンが警戒していた。
「‥‥敵‥‥居ない‥‥よ、うだ‥‥いや。‥‥戦闘、準備‥‥だ‥‥オーバー。‥‥ソラノコエ、言う。『‥‥殺スベシ。只、殺スベシ。只、死罰ヲ‥‥』‥‥殺す‥‥!」
 炬烏介はぼやりとした様子から一匹でも多くの敵を殲滅せしめんとした殺気に漲っていた。
 しばらくして、機内組が機外を出ようとした時。
「敵、キメラを察知。単体の模様、エルレーンの方に向かっている。オーバー」
 滝川の索敵に狼キメラが引っかかった。
「こちらも確認した。オーバー」
 霞も微かながら足音を察知した。
「‥‥殺す‥‥! ‥‥敵‥‥殺す!」
敵という言葉に炬烏介は反応するが、警戒に穴を開けれないため悔しそうにしていた。
「! ‥‥来るッ!」
 無線を受け、警戒していたエルレーンに狼キメラが襲いかかる!
 『ファング・バックル』で攻撃力を上げた『魔剣「デビルズT」』が空を薙ぎ、狼キメラのスピードも合わさり、抉るように切り裂かれた。
「‥‥やったッ!」
 見事に一撃でキメラを屠って喜びの声を上げた。
「キメラを倒したよ」
 エルレーンは無線を入れて撃破したことを伝える。
「エルレーン、よくやった。どうやらもう敵はいない様だ。オーバー」
 滝沢は索敵してみるも、敵が見当たらないようだった。
「‥‥敵‥‥居ない‥‥様だ‥‥オーバー」
「こちらも敵は居ないようだ。オーバー」
「こっちもいねぇ様だ」
炬烏介、霞、獅子鷹と無線が入ってくる。
「こちらも、準備が完了したよっ!」
 明神坂から移動のための準備が完了した無線が入った。
 レスティーがエリックに肩を貸し介抱しながら輸送機から降りてき、続いて黒い箱を持った明神坂が、最後に輸送機のフライトレコーダーを持った篝火が降りてきた。


 密生した木々、岩が多いせいか安定しない足元、そして、視界を遮る闇。
 その中を傭兵達はランタンの火と地図・スキルを頼りに目的地へ進んでいく。
 滝沢を先頭にエリックに肩を貸しているレスティー、その隣に明神坂と並び、炬烏介が右、エルレーンが後方、獅子鷹が左を囲う様に、最後尾に篝火、霞は滝沢の『探索の目』が届く隊列の先に展開して警戒をしている。
「アオーン」
 狼の声が闇の密林中を不気味に木霊した。
 護送している傭兵たちに緊張が走り、警戒の度合いを引き上げた。
「ッ! ‥‥」
 先行して索敵していた霞が走ってやって来る敵を感知した。
「12時方向から敵が来る!前に出る。抜けた分は任せた」
 そう無線連絡をすると『瞬天速』で敵の迎撃へ向った。
「‥‥新しい力、どれ程のものか試すとしよう」
 (‥‥囮となって敵を誘引するか)
 五匹からなる狼キメラのグループとすぐに接敵し、包囲されてしまった。
「こうなるの想定内だ」
 楽しそうに口元を歪め、呟く。
 包囲した狼キメラが間髪入れず霞に飛び掛ってくるが、『高速機動』で蝶のように舞って回避しながら『残像斬』を繰り出し次々と屠っていった。
 一方、本隊の両側面にも敵が近づきつつあった。
「三時、九時方向に急接近するUnknownを確認。敵と思われる、もっとも、来ても倒すまでだがな」
「こちらも二時、十時方向に確認。先ほどの報告の敵と思れる」
 滝沢と篝火の索敵結果が重なりあう。
 篝火は直ぐ様、明神坂との逆サイドに移動し、明神坂と共に護衛対象であるエリックを直掩する。
 両サイドにいた炬烏介と獅子鷹が接近しつつある敵を迎撃に向かい、先頭にいた滝沢とエルレーンは両サイドから突破してくる敵を警戒している。
「大丈夫ですよ。皆さんお強いですから」
 肩を貸しているレスティーがエリックの不安を取り除くように話しかけた。



「‥‥一秒でも‥‥存在、する‥‥事が。罪‥‥だ。消えろ‥‥!」
 炬烏介に襲いかかろうとしている五匹の狼キメラを『スマッシュ』と『豪破斬撃』で迎え撃つ。
「‥‥死ね、よ‥‥<虐鬼王拳>‥‥!」
 鈍く、大きな音を立てて『 炎拳「パイロープ」 』を装備した拳が一匹の狼キメラを『粉砕』し肉塊へと姿を変えていった。
 味方が屠られた為、距離をおき包囲する形となった。
 それに対して、小銃で銃撃を行い二匹を倒すと、炬烏介の両サイドに向けて狼キメラが跳びかかった。
「‥‥潰れろ、砕けろ‥‥虐鬼双王拳ッ!」
 『二連撃』で両サイドか襲いかかる狼キメラをモノへと変え、全滅させた。
 一方、獅子鷹は――
「この程度では貴様らの牙は届かん!」
 襲いかかる狼キメラを『【OR】防御用義手『アイギス』 』で殴り弾き飛ばして接近を許さない。
 弾き飛ばされ、体制を立て直す隙に『【OR】電磁加速鞘「レールガン」』に持ち替えて切り込みにかかる。
 敵の一体を磁場を利用した高速抜刀で一刀両断し、隊列を崩すと『流し斬り』を使い攻撃しながら回避を行い、剣舞のように敵を一体、また一体と斬り伏せていき、全滅させるに至った。
 ほぼ、同時に両サイドの狼キメラが全滅し、霞がこっちへ向かって来る事を滝沢と篝火の『探索の目』で確認することができた。

 霞・炬烏介・獅子鷹が戦闘を終え、隊列を戻そうとしたその時――かなりの数――およそ20数匹近くの狼キメラが迫って来るのが感知できた。
「先刻までのは先遣か。さっさと片付けて、家に帰るぞ!!」
 滝沢に続き、霞・炬烏介・獅子鷹が迎撃に向い、直掩している篝火・レスティー・明神坂が迎撃を突破した敵を対処することとなった。
「そんなに喰らいたきゃ、鉛弾でも食らっておけ!」
「千客万来ね」
「その‥‥存在を‥‥消す‥‥!」
「足を潰すに限るか」
 滝沢がSMGで突出してくる敵の牽制を行った所に霞と獅子鷹が斬りかかり、炬烏介は後続の狼キメラを襲撃した。
 その能力とスキルで次々と狼キメラをモノに変えていくが、如何せん数が多く、一部は直掩している所に到達してしまった。
「消えちゃえ‥消えちゃえッ、お前たちなんか!」
「突破させない!」
 エルレーンと明神坂は近づけさせまいと狼キメラに向かって走り出した。
「篝火さん、お願いします。‥‥護ります。必ず‥‥!」
「ええ、任せられたわ」
 レスティーはエリックを篝火に任せるとエルレーンの後に続いて狼キメラに向かった。
 先行したエルレーンは襲いかかる狼キメラを裂き切り伏せ、レスティーはエルレーンと背中合わせになり、互いの背中を守りながら襲いかかる狼キメラを切り伏せていく。
 その横で明神坂は二人を避け、向かってくる狼キメラを銃撃して倒していった。
 辺りは銃撃、打撃、剣戟の音で戦場音楽を奏でられ、その音楽も次第に鳴りを潜めていった。
「これでさっさと帰れるな」
 狼キメラの全滅を確認した滝沢は皆に無線で連絡を入れると通常の隊形に戻って目的地へ向うのだった。
(貴方がたも、この戦争の被害者なのですね‥‥)
 レスティーは倒された狼キメラを思い出し黙想した。


 狼キメラの総力とも言える襲撃の後、一行はその後、襲撃もなく護送を続け目的地までたどり着いた。
 目的地の基地についたときは朝焼けが眩しく皆を照らしていた。
 エリックは内ポケットに入れていた命令書と篝火から受け取ったフライトレコーダーを基地の立哨に渡す。負傷のことが伝わっていたのかエリックは待機していたストレッチャーで運ばれ、傭兵達は一室へ招かれた。
 エリックは直ぐに軍医の診察を受けたかと思うと、傭兵達がいた部屋に現れた。
「‥‥この度は依頼であっても私は君たちに感謝している。お陰で娘にも悲しい思いをさせなくて済んだ」
 エリックは一人一人握手をし頭を下げて感謝の言葉を告げた。
「大丈夫なんですか?」
 篝火は怪我の様子から気になって質問した。
「あぁ、お陰様でCTで頭部を見たが問題無いようだ。軍医が応急処置が適切だったから無事だったと言っていた」
「よかった‥‥」
 エルレーンは助けれ出せたことにリズを悲しませる事にならなかった事に安堵した。
 リズは――泣いた表情より笑った表情の方がきっと素敵だろうから。
「ほんと、良かったよ」
 明神坂は自分と同じ境遇の人間を作り出さなかった事に満足した。
 この子には父親がいる、それはなんて素敵なことなんだろうかと思う。
「何にせよ、よかった」
 獅子鷹は依頼と自身の目的が果たせたことに安心した。
 これで帰ったら眠れるなと――と思った。
「そういえば‥‥あの箱って何なの?」
 疑問に思っていた事をエリックに問いただしたが、沈黙されてしまう。
 短い間、沈黙が続く。
「‥‥荷物。は‥‥機密物、か‥‥?」
 その沈黙を破るかのように、炬烏介はその様子を受けて聞いてみることにした。
「済まない‥‥」
 エリックは『ソレ』に関しては父親と言うより軍人の顔で答えた。
「娘さんが心配してました。ちゃんと無事を伝えてあげてくださいね」
 霞が依頼の時の事――突然、涙腺が崩壊したように泣きじゃくるリズを思い出し、エリックに依頼時の様子を伝えた。
 脇目もふらず必死に懇願したリズの様子を――
「そんな事が‥‥」
「‥‥子、が。心配‥‥して。いた‥‥ぞ。背負う。ものが‥‥有るのに、何故‥‥死地へ向かう‥‥」
 霞の話を聞いていた炬烏介はエリックに疑問を投げかける。
 子にとって親は大事なものの筈だったから。
「‥‥仕事だから‥と言うのは言い訳にしかならないな‥‥」
 (‥‥少し、考えるか‥‥)
 エリックは少し思いにふける。
「仕事も大事ですけど、娘さんの側にも居てやってください」
 滝沢の脳裏に泣いて懇願するリズの様子が鮮明に思い出された。
 それは――非常に悲しい情景だった。
「‥‥ああ‥‥」
 (‥‥あの娘に何か出来れば‥‥何か、『思い出』になるものを――)


こうして、苦難はあったものの、無事依頼が達成された。

ToBeContinued‥‥