●リプレイ本文
●出撃〜
慌ただしく、警告音が鳴り響くKV空母。
スクランブル発進していく、ケビン=ルーデル(gz0471)とキョーコ達。
そして、もう一隻のKV空母からもベテラン傭兵達が手際よく発進していく。
「補給艦隊を狙うとは、嫌らしいが確かに効率的だな。この物資を待ちわびている友軍の為にもここで補給艦を沈めさせる訳にはいかないのでな。招かれざる者には早々に退去願おう」
デリーでの死闘をくぐり抜け、『忠勝』で離陸するのは榊 兵衛(
ga0388)。
「生きて、帰させる!」
ケビンがKV戦を行うと知り、急遽、新機体のラスヴィエートを借りつけ『病飛騅』と命名し、改造し参戦した荊信(
gc3542)。
「敵をぶん殴って、短期決戦で決めるぜ!」
意気込み、揚々と『太陽王』で離陸していくのはサウル・リズメリア(
gc1031)、何時にも増して気合を入れている。
「ん、依頼では初出撃になるけど‥‥頼んだよ、僕のピュアホワイト。カラーはちょっと時期はずれだけどね」
続いて離陸するのは要の管制機であるピュアホワイト。操るのは西村・千佳(
ga4714)。
「そう言えば叔母様もこの方面の戦域に従事した経験が有ると聞きましたし、ある意味意趣返しですね」
叔母が従軍した戦域に『ストラディヴァリ』で参戦しているユーリー・ミリオン(
gc6691)が続いて離陸する。
「‥‥少し‥‥心配ですね‥‥初陣というのは‥‥」
初陣にしては相手が悪いと、嘗て撃墜されたBFに『ミサイルキャリア』でリベンジするBEATRICE(
gc6758)。
二隻の空母から次々と空に吸い込まれるように離陸していった。
「‥‥誰だって初陣はある。無様でも何でも良い、ともかく生き残る事を考えろ」
離陸するケビン機を見つけた榊はケビンに通信を入れる。
「生き残れば次がある、反省も出来る。俺達ベテラン陣もそういう屈辱を糧に生き残ってきたんだからな」
「はいっ。‥‥生き残れば‥‥次がある」
そう――生き残れば次がある、それを榊はケビンに知って欲しかったから、声を掛けたのだった。
ケビンは死線をくぐり抜けてきたベテランの榊の言葉を胸に刻み込んだ。
「生身もKVも戦いは戦い。なら、どっちも本質は同じさ」
「はいっ!‥‥戦い‥‥本質」
戦いとは――例え、生身であろうとKVであろうとその根幹は同じであると荊信はケビンに伝えた。
「俺はサウル。ケビン、これが終わったら、美人の女が沢山いるところに連れて行ってやるぜ!」
「‥‥!?‥‥はいっ!」
陽気に語りかけるサウルにケビンは戦闘で張り詰めた神経を解きほぐしてくれているんだと思って笑顔で答えるケビン。
●戦闘開始。
「管制はこっちで引き受けるから皆は攻撃に集中してにゃ! 敵の動きはしっかり把握しておくのにゃ」
艦隊前方、味方機後方に位置し『全体俯瞰』できる場所を確保しロータス・クイーンを常時起動させ、管制業務を始める西村。
正しく、正統派な後方管制を敷くことが出来た。
それ以外の傭兵達は――。
正面班、側面班、そして管制機を含む後方班という編成だ。
まずは初撃、各班が先制を掛ける!
正面班は、榊を中心として右にサウル、左に荊信といったデルタ隊形でケッテを組みBF艦隊が展開を行う前に撃滅を狙っていた。
「喰らえ!」
側面班により牽制攻撃を受けているBF艦隊に対してK−02ミサイルが、総数250発も、BF三隻とMW二機に対して殺到する。
「よし、燃えて来たぜ!」
8式螺旋弾頭ミサイルでBFの装甲を穿通させんとK−02ミサイルの嵐に乗じて着弾する。
「数を考えりゃこっちが不利だ。やられる前にやって徹底的に引っ掻き回すぞ!」
二機の攻撃にあわせて84mm8連装ロケット弾ランチャーで攻撃する荊信。
西村の的確な管制と情報連携により、次々と着弾していくミサイルとロケット弾。
初撃の戦果は初期展開していたMWの三機中、二機は中破し、BFも螺旋弾頭ミサイルで一隻が装甲にダメージを受けて中破し残り二機も中破に近い小破という結果になった。
一方、後方班は、西村、BEATRICE、ユーリーで主にマンタワーム(以下MW)を主目標としていた。
「こっちにゃ! そうにゃ!」
未だ、MWが突破することは無いので管制業務に専念できている西村。
その管制業務のお陰で敵の補足がうまくいき、戦況が優勢に進んでいた。
「空母的なBFよりも‥‥攻撃機的なMWの方が‥‥空母を守る上では脅威となりそうですが‥‥」
「目標確認‥‥システム起動‥‥K−02‥‥全弾発射‥‥」
複合式ミサイル誘導システムIIと誘導弾用新型照準投射装置を使いBEATRICEは三スロット分のK−02小型ホーミングミサイル――
すなわち1500発もの小型ミサイルが散開し、ミサイルは白煙を引きながら管制補助を受けて増えたMWとBFへと殺到する!
さすがのミサイルにBFはMWを更に射出し壁にするも、その殆どが着弾し、大ダメージを与えた。
「若い子が‥‥痛い目を見るのを‥‥喜んで見ている趣味はありませんから‥‥」
攻撃しつつも、BEATRICEはケビンを気にかけていた。
「味方艦隊に被害が及ばない内に速やかに撃退したいですね」
更に、残ったMWをユーリーが放ったK−02小型ホーミングミサイルによって迎撃を行った。
側面班は、ケビン・キョーコ、フィリップ・神谷の2ロッテ編成のフィンガーフォーの編成で左右から牽制攻撃を行うこととなっていた。
タイミング的には正面班の突貫をサポートする形になっている。
「フィリップ! WM落としたら、アタシからのボーナスよ!」
「ヒャッハー! 金だ! ヤッてるぜ!」
手抜かりなく攻撃させるためにフィリップを煽るキョーコ。
「ケビンくん、こっちでしっかり援護するから無茶だけはしないようににゃ?」
「わかりましたっ」
攻勢に当たり、管制している西村からケビンに通信が入る。
側面から援護射撃的に攻撃を加えていくケビン達で有ったが――。
「にゃっ!?」
「ひっ!」
プロトン砲の一瞬の閃光がケビンの機体を掠める。
ヒヤッとしたのはモニターしていた西村だけではなかった。
「ビビッてんじゃねぇ! こういう時に重要なのは力の強ぇ弱いじゃねぇ!」
怯んだケビンに活を入れる荊信。
「モノを言うのは覚悟の強さだ。腹ァ括れ! 手前ェで決めて傭兵になったんだろうがッ!」
ここで死なすのは惜しい――。
「悪ぃ、ここは任せた」
目下、戦況はこちらに優勢――そして正面班は未だ戦力として十分。
荊信はケビン援護へとブーストで駆け、キョーコや神谷がその間のケビンのフォローに入る。
「敵の居ない方に逃げるのではなく‥‥味方のいる方に逃げるのです‥‥」
荊信が向かう間、BEATRICEはケビンを冷静にさせ、落ち着かせていた。
「遠くに行かれると‥‥撃てなくなります‥‥」
「ここにゃ!」
戦線に復帰したケビンにアドバイスを送るBEATRICEと西村。
正面班が突貫し、後方班による支援攻撃によりBFの二隻が大破し、残りの一隻の撃墜も時間の問題となってきた。
一方、初撃後――。
他の傭兵達は手早く落とすためにも、攻勢を強めている。
初戦における多数のミサイルによる衝撃戦術が成功し、戦闘のイニシアティブを傭兵側が手にすることが出来た。
「増援を阻止するッ!」
「そこにゃっ!」
榊の機体から放たれるK−02の残弾とUK−11AAMが西村の管制補助のお陰もあり、外すことなくBFの発進孔に対して着弾していく。
「俺は持久戦向いてねーし。太陽王、一気に決めるぜ!」
ガトリング砲「嵐」 で突貫しながら攻撃しつつ、近接すると白龍でBFの装甲を、発進孔を攻撃する。
正面班の榊・サウルは射出によるMWの増援阻止のためにも、近接しBFのMW発進孔を狙い、これを攻撃しを行った。
結果、二隻のBFの発進孔がことごとく破壊され、崩れ落ちた事によりMWの発進が行えなくなった。
一方、後方班。
中破していた二隻のBFは正面班が抑え、残りの大破している一隻を西村達、後方班が抑えていた。
「ん、援護の方もしっかりさせてもらうにゃ。まずは数を減らせるといいんだけどにゃ」
MW発進孔から発進しようとしているMWに対して、レーザーライフルで攻撃する西村。
「増援‥‥させません‥‥」
BEATRICEも西村と共同してMW発進孔から発進しようとするMWに対して真スラスターライフルで攻撃を与えた。
「敵に発進されるとやっかいですね」
ユーリーは西村・BEATRICEの攻撃に隙ができないように、合間にUK−11AAMでフォローを行った。
後方班も、戦域にMWがいない事を確認すると正面班の射出口の攻撃を行った。
BFの所々から爆発し、爆炎が上がり、高度も低下気味になりつつ有った。
「これで‥‥トドメです‥‥」
「これで終わりですね」
「やったにゃ!」
BEATRICE・ユーリー・西村が二十四式螺旋弾頭ミサイルをPCB−01ガトリング砲をM−12帯電粒子加速砲をBFの機関部に叩きこみんだ!
轟音。
空を揺らす轟音が、爆音が轟き、一隻のBFが爆散し、部品を、バグア兵をまき散らしながら墜落してく。
大ダメージを受けている一隻のBFがついに撃墜した。
少し時をさかのぼり、側面班は――。
「いくぞ!」
「ハイッ!」
「ケツは任せな!」
荊信を先頭にケビン、キョーコと続きBFに対して攻撃を敢行する。
正面班が攻撃を行なっている、その支援だ。
正面班が狙われないように派手に右側面で機動し気を引きつけていく。
「させないっ!」
荊信に向かうプロトン砲の直撃をキョーコは荊信機を押し出し、直撃を受け、撤退した。
「後は頼んだよ!」
こうして、荊信とケビンの二機で右側面の攻撃を継続していく。
「アブねぇ!」
「!?」
咄嗟にケビンを庇い、攻撃を受ける荊信。コクピット内に鳴り響く警告音。
コンソールの表示は全箇所レッドだ。
「チィッ‥‥こんな所で終われるかよッ! 意地があンだよ、男にゃぁッ! テメェも動きやがれッ、病飛騅ッ!」
荊信は警告音が鳴り響くコックピットでコンソールを殴りつけながら咆える!
次の瞬間――。
斜め45度が発動し、警告音が止み、コンソールの表示もオールグリーンへと変わっていく。
「っしゃぁ! 行くぞ! 病飛騅ッ!」
海面ギリギリを急上昇し、戦線へ復帰する荊信。
側面班も両側面から攻勢の支援を行った。
しばらくして、BF撃墜の轟音が辺りに轟いた。
残るはあと二隻、各班の活躍によりBF艦隊に対する包囲網は完成し、残りの二隻に対して攻勢を強めた。
苛烈な攻勢によりに二隻のBFは撃墜寸前だ。
「共闘っつーのが、仲間同士の戦いって感じがするぜ」
「南無三!」
「くらうにゃ!」
サウルの『太陽王』が白龍でBFを穿ち、榊の『忠勝』がスラスターライフルで銃撃し、西村のピュアホワイトが最後のM−12帯電粒子加速砲を打ち込む。
「これで終焉です」
「くたばれッ!」
続いて、ユーリーの『ストラディヴァリ』からミサイルポッドMA−03が放たれ、アサルトライフルで銃撃を行う荊信の『病飛騅』。
小規模な爆発がBFの甲板から吹き出してくる。
「‥‥目標‥‥機関‥‥」
「これで終わりだ」
BEATRICEの『ミサイルキャリア』からは機関部めがけて「二十四式螺旋弾頭ミサイル」が放たれ、『忠勝』からも「8式螺旋弾頭ミサイル」が同じく放たれた。
刹那。
閃光、そして、衝撃、続いて、爆音が響き渡る。
管制機がいたからであろう、両方の螺旋弾頭が見事に着弾し、二隻のBFの息の根を止めた。
こうして、補給艦隊を狙う敵は見事に掃討された。
然しながら、増援がある可能性も否定できないため、辺りを警戒しながら一機、一機と帰還していった。
●帰投後――
「‥‥お帰りなさい‥‥」
「‥‥ただいま」
KV空母の待機所兼食堂でケビンを出迎えるBEATRICE。
ケビンは少し、照れたように挨拶を返す。
「無事に帰ってきて‥‥お帰りと言われるのは‥‥嬉しいことでしょう‥‥?」
「ハイッ」
BEATRICEの問に笑顔で返すケビン。
やんちゃな弟を迎える姉のようにも見えた。
「生き残れたな」
「ありがとうございますっ!」
続いて現われたのは荊信だ。
荊信に身を呈して庇ってくれたことに感謝の気持ちに頭を下げて表すケビン。
旅立ちから付き合いのある荊信はケビンにとって兄のような存在でもあった。
「これはKV戦の初陣のお祝いにゃ」
「あ、ありがとうございます」
西村がケビンにドリンクを手渡し、受け取るケビン。
その様子は小さい姉と弟のようにも見えた。
「生き残ったな。次があるというのは良いことだ」
「今回を次に生かせたいです」
ケビンに声を掛ける榊、死線をくぐり抜けてきた榊の言葉は重い。
師と弟子のような、そんな雰囲気だ。
「よーし! ケビン! LHに戻ったら綺麗なお姉さんがいる所へ連れって行ってやる!」
「えっと‥‥」
「まだ、ケビン君には早いにゃ!」
「あべしっ」
陽気に声をかけ誘おうとしたサウルだったが、西村の突っ込みが入る。
保護者な西村と隣の陽気なお兄さんといったサウルの組み合わせだった。
「初陣、おめでとうございます」
「ありがとうございます」
そんなやり取りを微笑ましく見ていたユーリーがケビンに声を掛けた。
同世代――相手はベテランであるが同世代の友人の様にも見えた。
ワイワイと賑やかな食堂ではケビンの初陣の帰還を祝って小さいながら祝宴が開かれることとなった。
きっと、この依頼は彼にとって忘れえないものとなるだろう。
Fin