●リプレイ本文
宇宙――ソレは人類にとって未知の領域。
そして、敵であるバグアの居場所でもある。バグアとの戦争は宇宙へと舞台を移しつつあった。
故に、士気を保つため、いや、快適な生活を求めて。多分、一部はただ宴会をしたい為だけに。
その意図を汲み取ったメーカが傭兵と共に宇宙食の開発に乗り出した。
● 宇宙食メーカーの開発室兼調理場
「とーーーう! 俺様は! ジリオン! ラヴ! クラフトゥ! ……未来の勇者だ!」
ファンタジーの勇者の様な格好とポーズをとって現れるはジリオン・L・C(
gc1321)。
結構ノリノリである、少年の心を忘れないその青年は因みに御年24歳である。
「クククっ! 美女達が浴びる程調理したメスィを賞味する依頼だと聞いてやって‥‥」
だがジリオンの目に並ぶメンバーは――。
「けっひゃっひゃっ、我が輩はドクター・ウェストだ〜」
そう、この場に、開発室と、言う部屋に如何にもふさわしそうなドクター然としたドクター・ウェスト(
ga0241)だ。
「‥‥よろしく」
銀髪ロングという華麗な姿は一瞬、女性を思い起こすが、れっきとした男性で、ベテランで色々な依頼を経験している終夜・無月(
ga3084)。
その経験が開発に生かされるか――。
「元気がええな! その衣装どこで手に入れたん?」
ジリオンの姿にツッコミを入れるのは時雨・奏(
ga4779)だ、「戦場帰り」と言うのは、ターゲットを考えているメーカにプラスになりそうかもしれない。
「いろんな人がいるね。よろしくだよ」
綺麗と言うより、可愛いといったほうが良いかもしれないが、男の娘もとい、ショタっ子である夢守 ルキア(
gb9436)。
白いクリームが似合いそう――おっと、これは違った。
「よろしくだ」
クールに決めるはルーガ・バルハザード(
gc8043)だ、衣装から男装の麗人ともとれるが、うら若き女性だ。2X歳だが。
「‥‥あ、よろしくおねがいします」
ジリオンの登場にびっくりしたケビン=ルーデル(gz0471)だ、余談だが名前が某空の魔王と同じなのは偶然だそうだ。
「なん、だと‥‥」
目の前にいたのは一人を除いて男である。見ようによってはあと二名ほど除外できるが――。
ジリオンの早速の計画が崩壊した瞬間でもあった。
●レッツ調理!
白衣の似合うウェストが用意したのは――。
「これなのだ〜」
ででん! と、アニメなら効果音と音楽が流れそうな機械が登場する。
「これは?」
まるで、博士モノの助手のようにツッコミを入れるケビン。
「うむ、これはだね〜 吾輩の作った実験装置なのだよ〜」
「アノ時のコレはソノまま使えるはずだ〜」
と言うと、レポートを取り出し、調合する。
その様子はなんとも言い難い不思議な光景であった。
出来上がったのは乾パンのような物体達が出来上がる。
「宇宙乾パン‥‥」
それを見たケビンは呟く。たしかに災害用の乾パンにそっくりである。宇宙で遭難しても有用かもしれない。
しかし、宇宙乾パンとはなんとも安直なネーミングである。
「パンのようなボリューム感もソノまま、味もソノまま、カルシウム量は倍、どうだね〜!」
「因みにだね〜 宇宙ではカルシュウムが不足しがちだから倍にしてみたのだよ〜!」
恐る恐る、それを口にするケビン。
「そう、言えば――今まで宇宙食として選ばれた商品ですが‥‥」
「安定供給が可能で、栄養価が高い物が選ばれています。あと無重力空間でも食材飛び散らない事が条件みたいです」
そう、宇宙という空間上、安定供給できるというのは重要な問題でもあった。
「味がしない?」
そう、塩味でもあるのかな? と期待していたが無味無臭だった。
「味がしない〜?まあ、ソウユウふうに作ったからね〜」
ウェストは白衣のポケットから某ナニのように試薬瓶を取り出して掲げる。
「ソンナ時はコレだ〜、『イボテン酸調味料』〜は危ないから、『アジノ‥‥」
「ウェストさんっ」
色々と危険なのを感知して即座にツッコミを入れるケビン。
因みに取り出したのはグルタミン酸(昆布に多く含まれる)、イノシン酸(鰹節)、コハク酸(貝類)の調味料だった。
再起動したウェストはそれらを怪しい機械に放り込み再度、合成させる。
出てきたのは乾パンに粉を乗せたようなものだった。
「‥‥癖になる」
旨味成分の粉を乗せた米菓のようなハマる味になっていた。黙々と食べるケビン。
「汁物は無理、とか言う前にまずは試せ。スープに関して粘性を高めるか、ゼラチンか、かん天でも混ぜて固めてしまお」
一方、時雨も開発メンバーと共に開発を行なっていた。
作るのはラーメン、汁の固形化によって派生でも何かができそうだ。
ラーメンの豚骨や醤油、塩の各スープをゼラチン化させて具と混ぜ合わせてみる。
餡掛けの餡のようになったスープと具材、意外とうまくいった。
「これならスパゲティーとかの麺もできそうやな」
カルボナーラやミート、和風など作っては宇宙食として改造していく。
「飯は既にレンジパックとかあるし簡単に宇宙食にできるやろ、上に載せる具だけ変えれば、低コストで種類を容易できるで」
と、いう事で載せる具材の選定にレトルト食品のパウチや真空パックになっている物から行った。
そう――宇宙でも食べやすい、飛び散りにくいの物を。
「カツ丼に親子丼に派生でソースカツ丼か‥‥海鮮丼は‥‥鮮度の問題であかんか」
さすがに――生物系の具材は駄目だった。代わりに鯖煮等の煮物をセットすることにした。
因みにカツ丼や親子丼の卵部分はラーメンの固形化というか粘性を高めた方法の派生だ。
「で、ここからがわし的には本題やねんけど‥‥」
「この数多く用意した麺や丼、購入してから外装を剥がすまで、何味の麺とか何丼とか分らなくしてまえ」
ざわめく研究員達。
「要はトレーディングカードと同じ、地球から遠く離れた場所でのストレス緩和のための娯楽や」
ざわめきが収まっていく。
「子供と同じように、将兵同士で互いの好物をトレードする事で、閉鎖空間でのコミュニケーションを促進させるんや」
いつ現われたのか、メーカの営業マンいた。というか、作っている奴を食っていた。
「ソレは――面白そうですね。宇宙食にはボーナス食というのがありまして‥‥」
軍隊で言う増加食。食事だけど気分転換的な要素が含まれているものだ。例えば宇宙食の羊羹など。
「宇宙、か‥‥そうだな、長旅にはそれなりの食べ物が必要だろうな」
その頃、ルーガはキッチを前に考えていた。
「宇宙に長く出ていれば‥‥きっと、食べなれていたはずのものを求めるのだろう」
「日常的に食されているもの」を宇宙食にしよう、と考え、早速、実際にキッチンで作ってみんとするが‥‥。
「ぬ」
緊張気味の三十路手前、エプロンが着こなせていない。
それもそのはず‥‥彼女はあまり料理が得意ではない、むしろ、今まで避けてきた為だった。
「何を‥‥」
ルーガの頭にひらめいたのはお好み焼きだった。
具材を調理本片手に調理するルーガ。調味料をしっかり計って入れていく。
ここまでは――順調だった。そう――ここまでは。
「とおっ!」
まるで強化人間を斬るように包丁が薙ぐ、キャベツが千切りじゃなくて「千切れ飛ぶ」。
そんな状況でも、まな板が無事なのが実に不思議だ。
キャベツを素早く回収する。あれ?戦闘依頼じゃないよね?
「はあっ!」
あたかもキメラをつぶすようにこてが唸る、豚バラとキャベツの混ざったお好み焼きのたねがフライパンの上で「はじけ飛ぶ」。まるで戦闘のような調理も終盤。
そして――。
「‥‥くっ!」
緊張の一瞬、片面やけたお好み焼きをひっくり返す瞬間‥‥だが!
「たああああああッ!」
キッチンの響く雄たけび。ひらめくこて。そして‥‥お好み焼きが、激しく宙を舞った。
「‥‥」
ぺしゃり。と、ルーガのその金髪の頭に乗りかかる!
「ああああああああ!」」
あまりの暑さに絶叫するルーガ。その声に周りの傭兵達も驚く!
三角座りでいじけるルーガはあきらめて調理スタッフにお好み焼きを託した。
彼らの作品は、とても、とても、美味かった。
「‥‥こういう庶民的な味が、最後には恋しくなるのではないかな、うん」
戦闘的調理をしている一方では――。
「皆の為‥‥」
宇宙で戦っている仲間のため、仲間の胃袋のために終夜はエプロンをし、腕まくりをしてキッチンへ立ち、腕をふるう。
コンセプトは豪華絢爛なクリームシチューだ
具材は――牛肉、豚肉、鶏肉、白身魚、ホタテ、サーモン、ジャガイモ、玉ねぎ、人参、トウモロコシ、ブロッコリー。
いずれも一級品ばかりを集めたて作ることとなった。
まずは、具材を宇宙空間でも食べやすいサイズに切ることとする。
具材を寸胴に入れ、コンソメスープと水を入れて中火で煮込むことにする。
煮込んでいる間に終夜はホワイトソースを作る。
時雨の班によるアイデアで作ったホワイトソースを入れて宇宙用に少し粘度を高めにして仕上げた。
一方で、夢守が作ろうとしていたのは、誰もが食べられる――それは体質や教え、思想と言ったタブーを排除した形の宇宙食だった。
「ベジタブルカレーってどうかな?」
ウェストの所で助手のような事をしていたケビンが丁度、夢守の所を通りかかった所に呼びかける夢守。
「あ、ルキアさん。前はどうもです。カレーですか。いいですねっ」
どうやら、ケビンはスパイス系も好きなようだった。
「料理得意だっけ?凄いなぁ、私、全然料理出来ない」
前の依頼を思い出した夢守は話しかける。
「んー、家事をほとんどしていましたからね。すごくないですよ」
そんな事無いですよと手を振りながら、恥ずかしそうに否定するケビン。
「この前、ケーキ作ったら膨らまないで硬くなったんだよー」
そんなケビンに最近あったことを話す夢守。
夢守の話を楽しそうに聞くケビン。
二人は楽しそうに喋りながら、料理を作る姿は仲の良い、兄弟のようにも見えた。
二人で作ったのは以下のものだった。
『ベジタブルカレー』
『米粉のパン』
『寒天と豆乳で固めたカボチャプリン』
食べる人のことを配慮した形になっていた。
「えぇい、ままよ!」
料理をするという依頼――覚悟を決めて望むはジリオン。
「勇者にとっては料理すらも余興に過ぎぬ! ‥‥浴びせる程喰わせて見ろ!」
と言いながら、皆のをつまんでいく。
まずは、ウェストの乾パンだ。
「おお! この乾パンの上に乗った謎の粉が癖になる!」
ガツガツといい食いっぷりを見せるジリオン。それを見守るウェスト。
続いては終夜の作ったクリームシチューだ。
「うむ! シチューと具材のハーモニーが素晴らしい!」
某料理漫画のように口から光線を出すかのように咆哮するジリオン。至って感動したようだ。
それを見て満足気な終夜。
「ほほぅ! カレーにデザートか! いざ!」
夢守の作ったベジタブルカレーを米粉のパンに付けて食べ、デザートにプリンを平らげる。
「米粉の味とベジタブルカレーの共演! そしてデサートの甘味! ベストな組み合わせッ!」
デザートをお代わりしながらもコメントは止まらない。
「これは! お好み焼き! なぜだか猛虎魂を感じるぞ!」
お好み焼きから発せられている謎の波動を捉えた? ジリオン。
「……フ。俺様に任せろー!」
他人が作っているがやっぱり、羨ましかったらジリオン。
作業スペースに行き、白米を炊いて全力で握りだす。
「俺様くらいになればな! 塩ごと炊いてしまえるのだ‥‥!」
そして、他のメンバーの具材を入れようとするが‥‥。
「ダメですよ」
終夜の方が上手のため、ガードされてしまった。そもそも液体なので難しいような気もするが‥‥。
乾パン、カレー、パン、プリン、お好み焼き、カツ丼‥‥どう考えてもいくつかは具にしても難しそうなのがあるが‥‥。
「出来たぞ……!賞味せいや!?」
それらの具材を握り、そして、出すジリオン。残念ながら手と付ける人はいなかった。
同じ頃、夢守が先導する形でつまみ食い――もとい、アドバイスにむかった。
「皆、料理出すー! 私だって宇宙行ったよ!」
宇宙へいった人間の意見としてコメントをするようだった。
「デューク君のは機能性はいいね。ちょっと見た目が淡白だけど」
でも、遭難した時とかはよさそうだねと夢守。
「ルーガ君はお好み焼きだね。宇宙で地上を思い出す人もいるかもね」
長旅になれば、故郷のとか食べなれたものは欲しくなるよね。
「終夜君はシチューだね。豪華でおいしそうだね」
こう言う凝ったのもいいね。と。
「おにぎり、シンプルでいいね」
凝ったのものもいいけど、こういうシンプルなのもいいよねと。
最後に自分のを紹介する夢守。
「私の友人は、ベジタリアンだ。宗教や思想は様々、此れは宇宙でもオナジ」
「限られた場所だから、提供側が配慮する。5大アレルゲンも使用せず、他のアレルゲンも、出来る限り抑えた」
「食に不信感、危機感は似合わない。安心で、安全な宇宙食を。此れが私の、意見」
自身の料理を説明する夢守。彼もまた思いを込めて作っているのだ。
「求められれば、応える。それが、プロ。それが、私」
どんな依頼でも、全力でを当たることを知ってもらいたくて、ケビンに語る夢守。
● 会議にて。
提出された宇宙食候補をみて議論する重役たち。
まずは――。
目の前に有るのは乾パンだ。
「うーん、装置が必要だから量産性には向いていないな」
「だが、コンセプトとしては有りじゃないかな?」
遭難時用の食料として乾パンというコンセプトはいいのかもしれない。
そう言った場面で出てくるかもしれない。
続いては麺類のセットだ。
「これは、量産性やセットと言う事で扱いやすそうだな」
「では、採用ですね」
「麺類のセット」として採用された。
あとは、軍との調整が残るのみ。
続いてはお好み焼きだ。
「お好み焼きですか。いいな。」
「ボーナス食で支給だな」
お好み焼きを食べている場面に出会うかもしれない。
続いてはクリームシチューだ。
「具材が高級品故、量産性に難があるな。 ただ、栄養価は高いですね」
「高級士官用の食品としてはウケそうだな」
高級士官用の食品として売り込むつもりのようだ。
続いてはおにぎりだ。
「うーん。いいのだが‥‥」
「他社との差別化が難しいですね」
他社も似たようなものがある故、どこかで見られる機会がるかもしれない。
続いては、カレーとパンとプリンだ。
「豆も入っているようで栄養価と量産性もありますね。パンもセットにすればいいかもしれません」
「カレーのレトルトもあるしな。パンも缶詰だな」
こうして、「カレーとパンのセット」として採用された。
あとは、軍との調整が残るのみ。
こうして、「麺類セット」と「カレーとパンのセット」を採用して終わりを告げた。