●リプレイ本文
■みんなで考えよう
「依頼に出すぐらいなんですもの、きっと格好いいポージングがとても大事な人なんですね!」
あらかじめ、皆のためにとスポーツドリンクとお菓子を大量に購入してきた南 日向(
gc0526)は楽しいことが大好き、変身ポーズ仲間ができるかもしれないと心が躍る。
常に何か食べないと気が済まない守谷 士(
gc4281)も、必要な食糧を買い込み購買部から帰ってくる。
天空橋 雅(
gc0864)が今回の実験(?)に支障がないようにと、KV戦闘などで使われる訓練場を借り、会話の議論ができるようにとホワイトボードも持ってきた。
ヘビースモーカーのアーサー・ランス(
gc1132)も、今回の学園という舞台では、禁煙せざるを得ないかと思っているようだ。当の依頼主はというと‥‥
「両手を上げ‥‥るだけで飛べるわけないだろう!」
「まぁ飛べるわけないか!次!」
「おぉ〜、見事な土下座だぜ!」
「カッコイイぜ大道寺!」
「お、お前ら真面目にやる気あんのかー!」
ガル・ゼーガイア(
gc1478)と平野 等(
gb4090)にからかわれていた。さりげなく大道寺に殴られ宙を舞うガルの吹っ飛び方が絵に描いたような綺麗さだったのは置いておこう。
■ヒーロー会議
「はじめまして。今回キミの依頼を受けたアーサー・ランスです。どうぞよろしく」
「私は天空橋だ、よろしく。古来、戦国の武将も意匠を凝らした兜をかぶったものだ。本人の士気が高まれば、戦果もあがるだろう?」
「そうです!自分の意思を、行動をしっかり主張するのが変身ポーズには大切だとおもうのですっ!」
「変身を待つバグアなんていなさそうだけどな」
皆、各自思い思いにヒーロー像やカッコイイと主張できうるものを考えてきたようだが、その中でアーサーは疑問に思っていたことをぶつけた。
「ところで、大道寺君はどのようなものがご希望だったのですか?」
「カッコイイ、と思わせる何かだな!」
彼は、特に恥ずかしさや実践ということよりも、単純にカッコイイ事を求める求道者だったようだ。
「じゃあ俺はちょっと準備してくるわ、インパクトっつったら電飾だよね」
平野は独自の案があったようで、整備にも時間がかかるので早速作業へと取り掛かった。
「かっこいいポーズにはヒーロー名が付き物だぜ!」
ガルは意気揚々と語る。
「情熱の竜騎兵ファイヤードラグーンと疾走する熱波ウィンドラグーン…どっちが好きなのを選べ!」
拳を握りならが、ニッと笑いつつ自分の自身作を大道寺にぶつけるガルだが
「まぁまぁ、まずは全ての案を出し合ってからでも遅くはないのでは?」
と、天空橋が少しだけなだめる。
「僕も名乗りと演出を考えてきたよ、熱血な炎にこだわってみました」
「実戦向きではないけど。照明の代わりに、照明銃なんてどうですか?」
守谷も赤が似合うヒーローはカッコイイとの理念の元、案を出していく。
アーサーは、他の人が考えるものよりも、より実践的に行えるような変身案を持ってくる。
「私の案は、名前にかけて『道』や『竜』をテーマにしてみたよ」
天空橋も、自分の案を書き、一通りでそろったことを確認する。
と、そこで、スポーツドリンクやお菓子を配っていた南が、ホワイトボードの前に立つ。
「参考になるかは判りませんが‥‥」
拳を腰に溜めると、ぐっと握りこむ。
「みてください!これが私の変・・・身!!!」
拳を正面に突き出すと同時、まばゆい光が体を包み込み、光が収まるころには黒と黄色の鎧が南の体を包み込んでいた。
「このポーズは、私に勇気を与えてくれます!」
南はぐっと拳を握ってポーズを決めると、少し照れた顔になってこう言った。
「‥‥けして怖いから、自分に強くなれと言い聞かせてやってるわけじゃないんですからね!」
「俺はカッコイイと思うぜ!」
「ああ、良いと思うよ」
ガルも大道寺も素直にそう思うようで、南は少しだけ勇気付けられた気がした、が。
「‥‥ほ、本当ですよ!!」
少し、照れ臭かった。
「よし!俺も実演するぜ!」
ガルも実演ということで、自分のAUKVへと走る。飛び乗ると同時に装着し機械剣「ライトピラー」を握る。
「蠢く炎!」白銀の炎が機械剣から飛び出る。「ライトニングファイア、参上!!」
右肘を曲げ、左手をつきだすようにして名乗りを上げるガル。
「どうよっ!」
「テンポが悪いな、もう少し単語を削るか?」
「カッコイイとは思うが、普通かもしれないなぁ」
さらっと指摘してしまう天空橋と、もうちょっと捻りが欲しいと思っていた大道寺だったが。
「ひねり過ぎは自滅を招くぞ。‥‥ちょうど、君くらいの年頃でかかる病気があると聞いた。気をつけることだ」
「お‥‥俺の今まで考えてた案は‥‥かっこよくなかったのか‥‥!」
少しばかり忠告をされてしまった大道寺と、がっくりとAUKVを着たままうなだれてしまうガル。
ちなみに、この場に深紅や漆黒などの単語に過敏に反応してしまう病気にかかっている人間が何人いたのかはあえて記述はしない。
「私の案はこうだ」
天空橋が、ホワイトボードに描かれている内容を指す。
「1案は、走りながら『正義の道を切り開く! 大道寺権三郎、参上!!』と名乗りつつ変身するもの」
さらに次の場所を指し。
「2案は、構えをとりつつ、敵を見据えながら『鋼鉄の竜よ、俺に力を!』と変身するものだ、どうだろう?」
「走りながらの変身は良いと思いますよ」
「私もそれに近しいものがありますね」
守谷もアーサーも走りながら、もしくは走り終えてからの変身案を押していた。
「敵の目前で止まり、ドラグ・オン!の掛け声とともに、AUKVが手とか脚の先端から少しずつ変身していくって案なんだけど」
「動作中にも敵は来るからな、特にバグアのヨリシロは、な」
「きみの案も、結局目の前で立ってるのと同じだと思うけどな」
「なかなか難しいですねぇ」
「シンプルなポーズのほうが逆に格好いいとおもいます!AUKVが大きいものですから、しっかりはっきり判りやすくしないとロボ分にまけてしまいそうです」
アーサーはポケットにいれた煙草をさすりながら、やはり自身で経験がないものを考えるという難しさを実感していた。
南の主張するところも周りには伝わっているようで、この案のここが良いこうしたらどうだ。という議論が飛び交う。
そんな中、ずっと腕を組みながら聞いていた大道寺に、天空橋が質問を投げかけた。
「君の覚醒変化はどんな風になるんだ?私のように体が発光するのなら、演出にしやすいのだが」「‥‥そうだ、その手があったか」
すくっと立ちあがった大道寺は、その場の全員に決意を述べた。
「みんな、協力して一緒に登場シーンをやってみないか?」
各自の良い案が出され、どの案も捨てがたい状況となった今、全員の物を集めたらもっといいものになるんじゃないだろうかという至極単純な案ではあったが。
「いいですね、僕は舞台の経験ならありますが、特撮は経験がないんです‥‥良かったら、みなさん一緒にやってみましょうか」 アーサーが乗り気で
「じゃ、僕はそれをカメラで取ってみるよ」 守谷が乗り
「もちろん俺は真ん中に!」 ガルは二つ返事で参加
「いや、大道寺が真ん中だろう、私は‥‥」 傍観者になる予定だった天空橋も
「せっかくだから一緒にやりましょう!」 南に袖を引っ張られながら頼まれてしまった。
「よーし!マジ改造完璧!」
最初からずっと改造をほどこしていた、平野制作のAUKVも到着した。
ハンドルは長く、なぜかシートのほうまで長く伸び、シートは妙に長い背もたれが作成され、前方部分には地面に着くんじゃないかというほどのエアロパーツが取り付けられている。
後ろにはパイプオルガンのように何本ものマフラーが生え、ハンドルとシートの間に赤色回転灯が設けられ、本体にはドラグーンを模しているのか龍の浮世絵が付いている。
「じゃあ、これを使って大道寺、いってみよーか!」
■実際に、やってみた。
天空橋と平野が距離を置いて舞台に立つ。
「鋼鉄の竜よ、私に力を!」 天空橋の体から深紅の輝きが満ち溢れる
「情熱の竜騎兵ファイヤードラグーン!」 平野の覚醒と共に黒目が赤くなり白目は黒くなる
そこへ照明弾がうちこまれ、二人の背後からの照射により影のみが映る。
さらにその後ろ、閃光の中左右よりAUKVにのったガル、通常のバイクにのったアーサーが走りこみ、中央よりにバイクをスライドさせ登場
「疾走する熱波!ウィンドドラグーン!」 ガルの深紅の長髪が瞬く間にAUKVへ収納される
「敵を蹴散らすドラゴンの翼!」 アーサーの無表情の中に、深紅の目が浮かぶ
そこへ、けたたましい爆音とともに照明弾が消えかけた真ん中へ、後ろに南を乗せた大道寺が走りこんでくる。
同じく機体をスライドさせ、側面の龍をアップで見せるかのように止まる。
「真っ赤に燃える竜の魂!」 南が名乗りつつ降りる
「燃やしつくすぜ正義の為に!」 大道寺がサムズアップをしながら名乗る
「炎龍機・Dファイヤー!そして!」
「これが!私たち!」「俺たちの!」
「変!」「身!」
南は今回限りで赤と黒の鎧に、大道寺は最大限にデコレーションされたAUKVを身に纏う。
それと同時に背後では赤い赤い爆破が起こり、全員で決めのポーズをとる。
――しばしの沈黙の後
「‥‥きまった!」
「カッケーよな!これ絶対流行るよな!」
「やっぱり俺の考えた案はカッコ悪くないよな!」
大道寺、平野、ガルがお互い肩を叩きながらたたえ合う。
「‥‥長すぎやしないか?」
「でも、楽しかったですよね!」
天空橋がツッコミを入れるも、南の勢いにやはり押されてしまう。
「カッコよかったですよ?どこかのテレビにでてきそうです」
カメラを持っていた守谷も、その映像を各自に見せていく。
「‥‥ただ‥‥」
と、肩に赤色回転灯、シート部分が折りたたまれ内部に内蔵されていたマントが翻り、でかでかと「天下無双」の刺繍が自己主張し、長いハンドル部分は肘のほうへ伸びた状態になっている大道寺はこうつぶやいた
「やっぱ、AUKVは普通がいいかもしれない」
「んなことより、これから飯食いにいかねぇか?お前とは気が合いそうだからよ!」
うなだれる大道寺をよそに、ガルが背中をばしばしと叩く。
「ほらほら!腹が減ったら戦は出来ねぇぜ!」
「あ、俺もつれてけよなー!」
気の合いそうな男3人、夕焼けの中を歩いていった。