タイトル:倉庫の大掃除マスター:副物語

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/31 14:44

●オープニング本文


「はぁ、今日の掃除は此処か‥‥」

ここは、カンパネラ学園の地下にあるなんの変哲もない倉庫。
だが、倉庫といえどその広さはとてつもなく広く、掃除するだけでも一苦労だ。
そんな倉庫も整備のためにロボットが棚の物資を整理しているので、床にさまざまな物が散らばっているわけもなく、しっかり整理整頓されている。
そこに足を踏み入れたのは、学園の用務員の一人である。この広大な倉庫を掃除しろと言われれば、元々のやる気の無さも手伝ってため息も出るものだ。

「全く、なんで俺がこんな‥‥ん?」

ぶつぶつ独り言のように文句は言うものの、しっかりと掃除を始める用務員。
まだ始めたばかりだが、ふとしたことに気が付く。それは、ロボットの動きがいつもとは違うことだ。
明らかな異音をたてながら、通常ならその場にいる人間は避けて通るはずなのに、こちらに向かってくるではないか。
さすがの用務員もこの異変に気づき、後ろへと逃げるが、そちらからも同じように異音をたてるロボットが迫ってくる。

「な、なんだと!?ロボット達が暴走してるのか!?」

棚や荷物にぶつかりながらも、なおも前進してくるロボットから一目散で逃げる用務員。
あまりスピードは速くないので、能力者ではない者でもかろうじて逃げることはできたようだ。
命からがら戻ってきた用務員は倉庫のドアに厳重にロックをかけ、すぐに能力者を呼ぶよう手配をかけた。

●参加者一覧

レーゲン・シュナイダー(ga4458
25歳・♀・ST
美空(gb1906
13歳・♀・HD
ナンナ・オンスロート(gb5838
21歳・♀・HD
如月 芹佳(gc0928
17歳・♀・FC
ガル・ゼーガイア(gc1478
18歳・♂・HD
諷(gc3235
25歳・♂・FT
夏子(gc3500
23歳・♂・FC
高梨 未来(gc3837
19歳・♀・GD

●リプレイ本文


「制御室?そんなもんは無いが‥‥監視カメラのモニターがある部屋はあるぞ」
 
 制御室を切望していた傭兵が多かったが、残念ながらそのような部屋は無く。
 倉庫自体はそこまで重要なエリアでもないので、監視カメラの台数も多くない。

「負傷してるとしても、私にも出来ることがあるから、監視室で管制を担当するね」
 如月 芹佳(gc0928)は重傷を負ってるものの、皆のために管制を買って出た。
 情報収集を行いたいメンバーはこぞって監視室へと移動し、監視カメラや内部の構造を確認する。

「まずは情報収集なのであります。闇雲に突っ込んでも勝利はおぼつかないのであります」
 そういいつつ、ロボットの数を確認するのは美空(gb1906)配置されているのは全部で8台のロボットだと判明した。

「ロボットの設計図とか、ありませんかっ?」
 レーゲン・シュナイダー(ga4458)はロボットの弱点を調べたいとともに、メカ好きとしてそういった設計図があればとウキウキしつつ聞いてみたものの、このロボット自体が製作者が不明のため設計図やスペックは分からなかった。
「っても、見りゃわかるけど、正面にメトロニウム製のガードがついてるようなヤツだな」
 用務員が頭をかきながらも答えてくれた。つまるところ、前面以外は装甲が弱いようだ。

「如月さん、無線機のテストともに壁近くにロボットはいませんか?」
 無線機から聞こえたのはナンナ・オンスロート(gb5838)の声で、倉庫の前からの通信のようだ。
「ナンナさん? 近くには1匹いるけど…移動してるね」
 そうですか、と返答を返した後、装備したグローブ型超機械を起動させるナンナ。
「映像に変化がありましたか?」
「えっと、一部荷物が燃えかけてるね‥‥」
 どうやら距離を見誤ったらしく、棚の荷物の一部に当たってしまったようだ。
「‥‥だめですね、これでは効率が悪いです」
 壁越しに超機械で攻撃できるかと試したが、稼動はできるもののやはり何処に撃てばいいかは目線が通ってなければ非常に難しい、壁ではなくガラス越しならば成功していただろう。

「そろそろ中に入ろうぜ!」
手をバチンと合わせると諷(gc3235)が早く入りたくてうずうずしている。
「はてさて、初の依頼参加‥‥。学園、地下倉庫の平和を守れ! でゲスな♪」
「初めての依頼です。皆さんの邪魔にならないように、精一杯がんばります!」
 扉の前にAUKVを押して登場した夏子(gc3500)と同じくカンパネラの制服を着てきた高梨 未来(gc3837)が挨拶をし、ガル・ゼーガイア(gc1478)もリンドヴルムにまたがり意気は十分だ。

「皆、気をつけてね‥‥」
 如月の無線機からの通信とともに、倉庫「アルファ」の扉を開ける一行、中の様子は若干くらいが照明は十分にある。

「A班美空! 後輩ども。よく見ているのであります! これが先輩としてのドラグーンの生き様なのであります」
「美空さん、援護致します。A班ナンナ、入ります。」
「‥‥AUKVに乗っていくんでゲスか‥‥しょうがない‥‥A班夏子、いきます」
 各自AUKVに乗って中に入っていくA班についていくため、夏子も覚醒をして中に入る。

「B班、レーゲン、先頭で進みます。‥‥言うこと聞かない悪いコたちには、おしおきが必要さね‥‥」
「B班ガル! いくぜぇ!」
「B班高梨! 頑張りますっ」
「B班、諷。派手にゃやらんが、遊ばせてもらう!」
 B班は徒歩が多いため、ゆっくりと倉庫に入っていく。


 如月のモニターに初めに映ったのは、先に入ったA班の近くにいる暴走ロボだった。
「A班、近くにロボがいるよ‥‥気をつけて」
 A班の方からも確認がとれ、囮のために美空が先行し、他の2人は横へと移動する。
「ゴシゴシボットに戦争とやらを教育してやるのであります」
 相手が運搬用か掃除用かは些細なことだが、やる気は十分。背中に炎のオーラを噴き出しながらAUKVを身に纏う。
 高エネルギーなのを察知したのか、1体がこちらへと走ってくる。
美空はくるりと踵を返すと、ローラーから火花を出しながら棚の切れ目へと走る。
 あまり速くないロボットを置いて、美空が広いところへと到達すると、ロボットへ向き直り膝立ちの体制をとる。
「コミュニスト共には死をなのであります」
 何か、コンプレックスでもあるのか、そう言いながらも大口径ガトリングを構え、射撃準備を始める。
 ロボットが棚から飛び出した時、両の手を掴まれる。ナンナと夏子が待ち構えていたのだ。
「美空さん、今です」
「足を引っ張らずに手を引っ張る!」
「ZAPZAPZAPなのであります!」
 ロボットの胸部には装甲があったが、そんなことをお構いなしに銃弾が雨のように貫いていく。
 150発を打ち切り、砲身の冷却とリロードが必要になった時には、すでに鉄くずと化した何かしか残っていなかった。

「まずは一体‥‥かな‥‥ん?」
 如月が安堵した際、監視カメラに美空がこちらを向き、さまざまなポーズをとっていることに気がついた。
「えっと、あのジェスチャーは‥‥、多分『今の雄姿、しっかりとれたでありますか?』かな‥‥?」
 大丈夫、とれてますよと、無線機で伝えた如月は、はたと考えてしまった。
「‥‥無線機があるなら、ジェスチャーをすることなかったんじゃ‥‥?」
 首をかしげる如月だったが、次にB班からの無線が入ったことにより気を改める。

「こちらレーゲン、2体目の悪い子を発見‥‥戦闘を開始するよ」
「こちらガル! お願いだから、あんまり派手に壊さないでくれ? 良いパーツが取れなくなるからよ!」
 ロボットのパーツが欲しいガルは、先頭を行くレーゲンに懇願する。
「まったく‥‥ガル、諷、未来、あんた達はサイドに、まずは私が引きつける」
「了解!」

 レーゲンは小銃「S−01」を構えると照準を足の関節へと合わせ、貫通弾を撃ち込む。ドンドンと2発発射、難しいはずの装甲の隙間を縫うような射撃を難なくこなし、
ただでさえ遅いロボットがさらに動きを鈍らせる。
 追撃を行ったのはまずは高梨、覚醒で伸びた赤い髪をなびかせながら、シールドスラムを行い足の装甲を叩き、さらに弱い部分を露出させる。
「まずは足を止めないと‥‥」
壊してしまうのは申し訳ないと思いつつ、仕事には手を抜かない。
 イザナミにスマッシュを乗せ、関節部を力いっぱい叩く。
 弱点への痛打を2回うけ、片足が瓦解したロボットに、さらに追加される攻撃。
「ロボの弱点は露出した関節って決まってんだよな!」
 背中へ回っていたガルからは、装甲がほとんどないため、振りかぶった大剣を逆の足へと叩きこむ。
 両足を破壊されたロボットは、まだ動くものの、すでに戦闘ができる状態ではなかった。
「みんな、後ろだ!」
 常に警戒を怠らなかった諷がいち早く警戒を促す、監視カメラから見えない位置からの登場ゆえに如月からは連絡が飛ばせなかった。
 レーゲンから見て正面だが、3人がいる方向よりロボットが追加で2体来る。

 近くにいたガルは、ロボットに掴まれ抑えこまれそうになるが、バスタードソードを押しつけ、竜の鱗を使用して体を堅くする。
「ぐっ! ファイターなら負けねぇのによ!」
 若干押し負けそうになるものの、ガルはなんとか堪え切る。
「それくらいアンタ達でなんとかしな! 気合入れなっ!」
まだ遠いレーゲンが激励を飛ばす。諷がすぐにパイレーツフックに持ち替え、腕にひっかけると豪力発現と共に力ずくで腕をはずそうとする。
「くっ、この馬鹿力が‥‥って負けるかあああっ!」
 運搬用でパワーを強化してあるとはいえ、ファイターの全力にはかなわなかった。
 押さえつけているはずが、逆に取り押さえられる形となり、動けなくなったロボットの後ろに追加のもう1体を仲間の方へと行かせない為に高梨が立ちふさがる。
 レイシールドを押し当て、これ以上は前に行かせないと踏ん張る。
 ロボットのアームにより殴られるが、それでも仲間を守るために引くことはできない。
 攻撃はできなかったものの時間を稼ぐことには成功し、それだけで十分だった。
 レーゲンはガル達が抑えているロボットを踏み台にして跳躍、空中でくるりと回転するとエネルギーガンを装甲の無い背後から頭部を狙い射撃。
 一瞬にして頭部パーツは溶解を始めた。
「見えなきゃ、襲って来ないンだろう?」
 綺麗な着地の後、ウェーブのかかった髪をさらりとかきあげる。
 止める必要がなくなった高梨が、腕を片手で押えている諷が、援護があれば十二分に剣を振るえるガルが。
 1体のロボットをしとめるにはそう長い時間はかからなかった。

「B班、こちらから見える範囲にはもういなさそうだけど‥‥遠くにあと1匹見えてるよ」
「B班了解、あんた達、次のポイントまで駆け足で行くよ!」
 姉御な性格になったレーゲンがさっさと移動を開始する。
 高梨、諷も後を追い、最後尾からガルがバイクをウィリーさせながら爆走してくる。
「やっぱバイクは気持ちいいぜ!狭いのが残念だけどな‥‥」

 移動を開始したB班はしばらくは大丈夫だろうと、A班に近い監視カメラをみる如月。
 つかず離れずで距離を保ち、轟音とともに一人でもロボットを撃破にかかる美空。
 棚の反対側にいるロボットを確認するや、超機械にて暗殺を行っているナンナの2人が
すでに2体ものロボットを無力化しているところだった。
 次に現れたロボットは、ナンナに掴みかかろうとするが、盾を間にかまされたことにより思うように掴めないようだ。
「腕がなければ、掴めませんからね」
 小型の機械剣βを用いて、相手の関節を焼き切ろうとするナンナ、あと1回のところまで切り刻む。
 そこへ補佐にまわっている夏子がマシーナリーソードにて切り落とし。
 背後から装甲の弱い部分に小銃「S−01」を打ち込む。
「夏子じゃあ、致命的な攻撃は難しいと思ってたんですがねぇ」
「たとえ個体戦力がどんなに高かろうとも、助け合いこそ能力者の真の強さなのです!」
 後輩に力説をするため美空が帰ってきたのは、夏子とナンナが助け合ってロボットを倒した後であった。

「A班お疲れ様、最後の1匹はB班が向かってるよ‥‥」
 A班が一通りの戦闘を終わらせ、最後の1匹もB班が交戦中。
「‥‥私も戦いたい‥‥。でも、我慢しないとね」
重傷でなければ自分も戦えたと思うと気落ちしてしまう如月、
後で謝っておかないと、とマイクに聞こえない大きさでつぶやいた。


 B班の戦闘も終わり、ひとしきり監視カメラで見えない部分も探索を終わり。
 暴走ロボットの討伐は完了した。
「戦闘は終了しました、これでとりあえず危険はなくなったでしょう」
 ナンナが用務員へと淡々と報告するが、用務員は複雑な顔のようだ。
「あぁ‥‥よくやってくれた‥‥しかし、掃除が大変だなぁこりゃ‥‥」
 中をみれば、半壊、全壊、すでに元が何であったかよくわからないもの、さまざまなゴミが山のようであった。

「アンタも災難だな。荒らした分は付き合ってやるよ。そじゃま、やろ‥‥かっ!」
「はい! はい! 私もロボットの修復とかお手伝い希望ですっ!」
 壊したものはもちろん直しますといわんばかりにレーゲンは白衣のポケットから工具を取り出す。
 諷はあえて覚醒をせず、筋トレのためにロボットを一本背負いの体勢で横に運び出す。
「うわぁ‥‥それはないでゲスよなぁ‥‥」
 一応掃除用具を用意してきた夏子だが、もともとやりたくはなかった、イヤイヤではあるが作業を開始する。
「これでロボガルもかなりグレートアップするぜ‥‥!」
 へっへっへ、と黒い笑みを浮かべながら鉄くずの山へと近づくガルは、そもそもこのパーツ目当てでの参加であった。
「あの! 今日はお疲れ様でしたっ! 足手まといになりませんでしたかね‥‥?」
「大丈夫‥‥私みたいに戦闘に参加できなかったわけじゃないから‥‥本当に今回はゴメンね」
 高梨が不安そうに聞くが、それ以上に気落ちしていた如月がかぶせてつぶやく。
「なにを言ってるのでありますか、管制も重要なポジションであります! 如月も十分働いたのであります!」
 先輩の美空が、自分よりも50CMも大きい如月の肩をポンポンと叩く。
「よし! 今日は先輩の美空が、後輩どもに飯をおごるのであります! 終わったらついてくるのであります!」
「お! やったぜ! 飯だ飯だ!」
 ぎょっとしてしまったのは美空で、まさか他のメンバーもついてくるとは思わなかった。
「ありがとう、じゃあ今日はごちそうになろうかな‥‥」
如月も付いていき、美空の財布は2ケタぎりぎりになってしまったようだ。
「こ、これでは美空は塩スープの毎日なのであります。とほほ‥‥」

 何体かのロボットを修理でき、メカに触れてほくほくだったレーゲンや、
ひそかにいくつかのパーツをねこばばしてきたガルが、ボルトをピーンと指ではじきつつ、各傭兵達は依頼達成の喜びを携えて、帰路につくのであった。

―なお、夏子がもってきたエチケット袋は、使われずに済んだことをここに追記しておこう。