タイトル:彼女のDay by Dayマスター:藤城 とーま

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 12 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/01/07 00:19

●オープニング本文


●どうしてわからないの?

 本部モニターの前で、1人の女性と男性能力者が向き合っている。
 が、和んだ空気ではなく‥‥男性能力者は下心が見える笑みを浮かべながら、目の前の銀髪の女性を見つめていた。
「何度も言ってるでしょ。一人で大丈夫だからあなたは他を受けて」
「おいおい。アンタが一人でやるって言っても、さ――女性一人じゃキメラ10匹の討伐なんて危ないぜ? 一緒にやりゃ安全に終わるよ」
 能力者はにやにやとしながら銀髪の女性‥‥ユーディーの上から下までを眺める。
「依頼は数人単位で受けるもんだ。俺にだって受ける権利があるんだよね」
「私は強いから平気‥‥少なくとも、あなたよりは」
「なっ‥‥てめぇ‥‥!」
 平然と相手をバカにするようなことを言ってしまった彼女に、男性能力者は思わず彼女の肩を掴んだ。
「はいはい。暴力はダメでっす」
 その男性能力者を諫めるため、ササッと間に割って入る第三者。
「すみません、この人コミュニケーションが駄目な人なので今回は許してあげてください。周りの人も見てますし」
 と、笑顔で後ろを指さすと‥‥そこにはULTオペレーターやら他の傭兵の姿。
 ユーディーらと視線が合えば、ギャラリー達はササッとすぐに視線を逸らしたが見ていたのはバレバレ。
 掴みかかった能力者は、ばつの悪そうな表情を浮かべながら『ちゃんと言っとけよ』と吐き捨てて足早に去っていった。

「‥‥気をつけてね、ユーディーさん。ああいったら普通怒るよ」
「わかったわ」
 本当に解っているのか、ユーディーは表情も変えず頷くだけ。
 どんな依頼を希望していたのだろうか? 介入してきた第三者――その人物もまた能力者だったが、ユーディーの持っていた依頼書を見せてと頼んだ。
「羽根のついた蛇キメラ、10匹の討伐‥‥? 楽しそう。じゃ、依頼受けちゃおうっと」
「だから‥‥」
 拒否の意を見せようとするユーディーの言葉を遮り、ビッと指を一本立てて『貸し一つ分、この依頼でチャラって事で』と微笑んだ。
 何も言えなくなった彼女を見て、渋々肯定の結果を見てとった能力者。
 ユーディーを引き連れて、カウンターへと身を乗り出す。
「すみません。依頼受けたいんですけどー」
 と、満面の笑みを見せていた。

●参加者一覧

藤田あやこ(ga0204
21歳・♀・ST
ラルス・フェルセン(ga5133
30歳・♂・PN
鉄 迅(ga6843
23歳・♂・EL
月代・千沙夜(ga8259
27歳・♀・AA
アレックス(gb3735
20歳・♂・HD
アンジェラ・D.S.(gb3967
39歳・♀・JG
上条・瑠姫(gb4798
20歳・♀・DG
イーリス・立花(gb6709
23歳・♀・GD
鳳凰 天子(gb8131
16歳・♀・PN
榊 那岐(gb9138
17歳・♂・FC
和 弥一(gb9315
30歳・♂・FC
ザインフラウ(gb9550
17歳・♀・HG

●リプレイ本文

●見てました

「ユーディーさん、お久しぶりです」
「‥‥ええ」
 相変わらず可愛げのない彼女の前で微笑む榊 那岐(gb9138)の他、周囲には見知った者もいる。
 本部での一幕で、すっかり依頼内容も注目も集めてしまったらしい。
「数が多い上、空まで飛ぶ小型キメラ討伐を一人で受けるのは、無謀ではないかと思うのですが」
「そこで1人より2人、2人より3人ってね」
 と、鉄 迅(ga6843)が爽やかな笑みを見せた。そんなこんなで人数は増え、オペレーターまで『お仲間と頑張ってくださいね!』と笑顔で言っていたくらい。
 先程からの出来事を見ても、(ユーディーにとっては歓迎できない状況だとしても)助け舟まで出して場を収めたばかりか、なおかつ一緒に討伐までしてくれるなどド親切すぎるくらいである。
 集まった仲間と礼儀正しく挨拶をした後、ラルス・フェルセン(ga5133)が迅と共にオペレーターへ現地の地理、キメラに関する情報を詳しく訊ねる。
 判った事は、場所はヨーロッパ某所にある石切り場跡。足場もけっして良いとは言えないし、高低差もある。キメラの姿はやってきた観光客に目撃されていた。
「ケツァルコアトル、の小型版か。そこまで強力な個体じゃねぇみたいだが‥‥油断は禁物、だな」
 アレックス(gb3735)が依頼書を見つめつつ、呟く。
「観光客にも被害は今のところないようだ。そこは至って重畳ではないか?」
 鳳凰 天子(gb8131)がそう応え、アンジェラ・ディック(gb3967)も頷いて周辺の地図を見つめている。
「そうね。岩での遮蔽もあるようだから、キメラが飛ばなかったら利用できたでしょうけれど」
「場合によってはー、開けた場所への、誘導が必要、でしょうか〜?」
 ラルスの言葉を引き継ぐように、ザインフラウ(gb9550)が進み出てきた。
「そこだ。相手のキメラは飛行可能な上、こちらの射程外まで飛ばれたら厄介だ。そこでこういう作戦を考えてみた」
 皆の前で作戦の説明をする。円陣を組んで、前衛はその外周へ配置。まずは後衛の射撃にて撃ち落とす。攻撃に転じようとした場合や地に落ちたものを前衛が討ち取るというもの。

 話を聞いているのに反応を返さないユーディーへ、ラルスが話しかける。
「ユーディー君はー、効率的な間合い、戦術を考えられてー、戦われていると、先日感じました〜。ですのでー、無謀な行動はされないと、信じております〜」
 ですが、と一呼吸置いて、優しくも反論しづらい言葉を口にする。
「危険な状況に、なりましたらー、『もれなく』庇いに入りますので〜。私も痛いのは、嫌ですしー、そうならないようにして下さるとー嬉しいです〜」
「‥‥わかったわ。私は後衛で補助をさせてもらう」
 はい、とラルスは応えて他のメンバーと話を始める。那岐は黙々と支度するユーディーの姿を見つめていた。
(「以前話した時ずっと一人だったと聞きましたが、チームに何か悪い印象でもあるのでしょうか?」) 

●Quarry

 灰色の大小様々の岩が地へ転がり、柱のように垂直にそびえたつ切り出された石。奥まった場所からさらに先へ繋がるものもあり、天然の要塞のようにも見える。
「もっとやりやすい場所かと思ったが、敵が潜んでいることも考えられますね」
 和 弥一(gb9315)が足元と岩影に気を配りつつ言う。ざしざしと岩を踏みしめながら進む能力者達の耳に、空より重い羽音が届いた。
 音を聞いて藤田あやこ(ga0204)が見上げた空には、三匹ほどの鳥――いや、良く見れば胴体が長い。蛇のように。それらがこちらを見つめている。
 緑色の身体に純白の羽。偽りにも神の名を冠する通り、どこか美しささえ持っていた。
「来たわ」
 ユーディーが鋭く言って、銃をとりながら羽蛇を睨みつける。
「けど、まだ降りてきませんね?」
 迅がそう言いながらも仲間を守ろうとするかのように前へ出てきた。
「彼らも、様子見の〜、つもりかもー、しれませんねぇ〜」
 今なら先手がとれる。そう思ったのと同時くらい。
『シャァアァッ!』
 上空のキメラが一匹威嚇の息を洩らすと、続いて他のキメラも同じように威嚇する。すると石切り柱や部屋の間から、するすると身を現し群れる羽蛇たち。
「‥‥先手どころか〜、待ち伏せを〜、されたみたいですねぇー」
 ラルスが苦笑し、天子が武器に手を当てる。
「羽のある蛇か。バグアはよほど人間の神話が大好きなようだな」
「とはいえ油断して咬まれて妙な毒を食らったら笑い話だし。ちゃんとやりましょうか」
 月代・千沙夜(ga8259)も髪を後ろに払いつつ答えた。
 キメラを誘導しなくてはと判断したユーディー。ちらと目測で周囲の距離を見る。戦いを展開するには切出石の柱が邪魔で広さが十分ではない。幸い、15メートルほど先に行けば十分に開けた空間がある。
 彼女は、それをメンバーに伝える。
「着くまで走って。その間、私も下がりながら敵を牽制するわ」
 銃を持って指示を出したユーディーへ、私も手伝おう、とザインフラウがユーディーへ協力を申し出る。
「一人で戦うよりは効率的にキメラの足止めができるはずだ」
「‥‥わかった。では、早速」
 ユーディーもこくりと頷き、ザインフラウが『狩りの始まりだ』と告げた。
 話が済んだところで、タイミングを見ていたアンジェラが『走れ!』と声を張り上げる。その場から全速力で駆ける仲間と、後ろへ下がりつつ、敵が突出行動しないよう立ちふさがって銃弾を浴びせ続けるザインフラウとユーディー。
 リロード近くなるともう一歩後ろに下がるのを合図に、装填する間の牽制は一人で行う。
「シャーッ!」
 銃弾をかいくぐって牙を剥く一匹の羽蛇。肩へ食らいつこうとするのをユーディーが躱すついでに、腰からアーミーナイフを引き抜いて腹に突き刺す。
 身をよじらせた羽蛇へ銃弾を浴びせるザインフラウ。ユーディーが小さく礼を言ったところで、イーリス・立花(gb6709)が手を振る。
「配置につきました! 今度は此方から援護します、走ってください!」
「此方も完了よ。コールサイン『Dame Angel』、プチコアトル十匹を迎撃し速やかに討伐するわね」
 アンジェラも銃を構えて狙いを定める。
「私は藤田。世界平和の為に作られた改造人間だ。砲身!」
 あやこも着ていた白衣を脱ぎ捨て、赤ブルマ姿でガトリングを構えた。思わずぎょっとする天子や迅の視線に気づき、
「べ、別に私薄着好きじゃないからね。じゅ重量の都合だからねっ?!」
 と言いながら前を向いた。
「別に落としちゃっても構いませんよね?」
「そりゃいい。もとより俺はそのつもりなんだけどな」
 イーリスの問いを肯定しつつ、アレックスは竜の瞳を使いながら弓に矢をつがえると、背を伸ばし引き絞る。
 左右に分かれ全速力でザインフラウとユーディーは走る。彼女たちに噛みつかんと、空を泳ぐように飛びながら羽蛇は口を開けつつ追いかけてきた!
「かつてライコウ(源頼光)が用いて、その子孫が鵺退治に使ったという兵破の矢‥‥その身で受けろ!」
 アレックスが吼え、矢を放つ。風を切り、狙い通りまっすぐ羽蛇の胴へと突き刺さり、その一匹がどさりと落ちた。
「リロードの手間さえなけりゃ、弓も良い武器だと思うんだがな。っと、ボヤいてても仕方ねぇか」
 後衛の援護射撃も唸りを上げる。
「人間機関砲藤田ー 弾幕展開!」
 あやこがガトリングで弾丸を撒き散らし、群れのばらつきを抑え、飛行能力を奪いつつ中心部へ追い立てる。
(「流れ弾で敵の羽などかすればいい!」)
 羽毛が舞い飛びパッと咲くような血沫。上空に飛んで逃げようとする羽蛇を、ラルスとアレックスは見逃さない。
「逃れられるとでも?」
 ラルスとアレックスは直接的に狙い、イーリスが弾幕の中、それでも前へ出ようとする羽蛇へ強弾撃を見舞う。仲間のリロードに被らぬよう射撃を調整するアンジェラが絶妙のタイミングで攻撃に移る。
 援護が良い形で行われ、仲間に合流した二人。そこで後衛と前衛の立ち位置が変わる。
「ありがとう。これで気兼ねなく戦える‥‥さ、キッチリお仕事終わらせましょうか!」
 駆けてきた二人に軽く声をかけ、覚醒する弥一。
「了解っ!」
 近づいてきた羽蛇へデヴァステイターで牽制を行いつつ、千沙夜が応えた。
「光あれ! ‥‥って、ブルマ姿じゃサマになんないー!」
 新ジャンル、ブルマとガトリング。『どう見ても玄人好みのヲタフィギュアです』と嘆きながら、あやこが練成強化で仲間達に恩恵を与え、後衛の射撃要員は前衛の範囲外にいる敵を狙う。
 動きが鈍り、体力を消耗して地に落ちる羽蛇。好機とみてスキルを使用し駆け寄る天子。
「地に居ようと天に上ろうと、斬って捨てることには変わりない!!」
 肉薄し、攻撃の気配を察知した蛇の牙が腕にかするが、怯むことなく二連撃を叩き込んだ。
 あやこが自分を狙ってくる敵の攻撃を躱しつつ、上空へ戻ろうとする蛇の腹へ鉛玉をくれてやる。
 地に落ちた蛇へ、イアリスで羽蛇の頭を狙って斬り付ける千沙夜。
「素早いですね‥‥しかし」
「この程度、捉えられない事はありません。‥‥地へ落ちなさい」
 弥一は飛び立とうとする一匹をエアスマッシュで狙い、ラルスが追い撃ちをかける。
 衝撃波で羽が斬られ、地で暴れる様は現れた時の華麗ささえ伺えない。
「あまり手こずらせないでほしいものだな」
 ザインフラウが前衛の死角に入ろうとするキメラを撃ち抜きながら淡々と呟く。
 ユーディーも前衛の援護のため小銃を撃ち続けているのだが、不幸にもがちりと厭な音を立てて、薬莢が噛みこまれた。
「‥‥!」
 がちがちと幾度かトリガーを引いたが、廃莢不良に陥った銃はそれを排出しない。ラルスが振り返った時には既に遅く、彼女が狙っていた羽蛇は仕返しとばかりに大きく口を開けて襲いかかる!
「棒立ちになるな!」
 アンジェラが駆けよるとユーディーを引き倒して庇う。腕の痛みを堪えて蛇を引き剥がし、千沙夜と共に銃弾をたっぷりと身舞った。
「予備くらいあるでしょ?」
「‥‥弓が」
「なら、それで」
 ユーディーが噛まれた部分を見つめているのに気付きつつもリロードを行いながら応えるアンジェラ。
「‥‥やらせるかよ!」
 最中にも頭上を越え急降下し攻撃してきた蛇を、イーリスが盾で受け止め、アレックスが天槍に持ち替え羽を薙ぎ切り、胴を突き刺して振り落とす。
 とどめに那岐が迅雷で近づき円閃で胴を断ち切った。
「AI、出力全開! ‥‥ブッ飛ばすぞ!」
 迅が渾身の力を込め――雄たけびを上げつつイアリスを叩きつけるように振り抜く。
 蛇の胴体を縦に真っ二つに斬り裂き、最後の一匹も朽ち果てた。

●仲間

「全部、退治できましたね」
 那岐がキメラの死体に近づいて息がない事を確認し、優しい笑みを皆へ向けた。
「悪い敵はやっつけたぞ、わーっはっは。ユーディーさんもご一緒に」
「なぜ?」
 あやこの誘いに、真面目な顔で問いかけるユーディー。
「あっ、だめだこの人。根暗」
 あやこがそう嘆く横で、ザインフラウも不思議そうに二人を眺めている。
「大丈夫ですか〜? 傷など残してはー、いけませんからね〜」
 ラルスが救急セットを持って負傷者の治療をする。
 何か言いたそうな眼でアンジェラの姿を追っていた彼女は、時折ラルスの持っている救急箱を注視し、迷っているそぶりを見せる。
「どうです? 仲間と一緒にってのも、悪くないんじゃないですか?」
 それを見て、迅が嬉しそうに微笑みながら、ユーディーへと問う。
「私‥‥」
 何かを言いかけた彼女は、口を噤む。そして、『そういうの、わからない』と小さく答えた。
「全員‥‥仲間の協力こそが確実に勝つためには必要だと、私は思いますよ?」
 イーリスが不思議そうに口にする。
「じきに解る時が来るんじゃない? それでも、まぁ良く頑張ったよ」
 手当てを受けているアンジェラがクールに微笑んだ。
 そこへ黙っていたアレックスが思い出したように告げた。
「アンタ、本部で揉めてたよな? まぁ、こう言うのもなんだが、あんまり『自分が強い』なんて公言しない方が良いぜ」
 そこへあやこが得意げにユーディーの眼前へ銅菱勲章を突き出す。
「その通り。少なくとも賞金首の一つは取ってから言ってよね? 強さは自称でなく公認される物よ」
 とりあえずなんか履け。とでも言いたそうな表情のまま、ユーディーはあやこを見つめた後、視線をアレックスに戻す。
「‥‥本当に強いヤツってのは、戦わずして勝てるような奴の事を言うんだ。俺もいつかそういう風になりたいと思うけどな」
 アレックスには心に思い描く目標であり、理想があるのだろう。その瞳はユーディーをすり抜け、遥か先を見つめている。
 ユーディーの記憶の底で、小さい頃の自分が思い浮かんだ。
『お前は自分の力で何でもやりなさい』
 人に頼ってはいけないと、その教えがあるからだろうか?
(「わからない」)
 記憶を振り払うように頭を振った後――『困った人たち』と言った。
「本部みたいに、ああ言えば大抵は呆れて放っておいてくれる。私も自分の事だけを考えられるのに、あなたたちは‥‥」
 相も変わらず表情を変えぬ彼女だが、
「おせっかいで‥‥困った人たちね」
 言い方は良くないが、語調はいつもよりも柔らかだった。
「お節介ついでに、皆でご飯でも一緒に行きましょう! ユーディーさんもです。この前はすぐ帰っちゃったじゃないですか?」
 那岐が誘っても、やはり一緒に行こうとはしない。すぐに『もう行くわ』と彼女は一人でさくさく歩きはじめてしまった。
「また次の機会があったら、その時は宜しくお願いします!」
「‥‥考えてみる」
 背を向けたまま、ユーディーはそう応え歩を止めると肩口に振りかえった。
「腕、ごめんなさい‥‥今日、きっとすごく、楽だった。ありがとう」
 と言って返事も聞かずすぐに去っていった。
「うーん、恐らくー、ユーディーさんなりに、褒めた、ようですねえ〜」
 そう伸びやかな声で言いつつ、ラルスは羽軸をつまんで拾い上げ、赤い斑点が付着している羽を指先で回す。
 それでも、彼女からは否定の言葉はなかったのだから嫌ではなかったのだと思う。
「ともかく皆さんお疲れ様でした。‥‥空を仰ぎっぱなしで首が痛いです」
 そう苦笑して首を軽く曲げたイーリスだった。


 一人帰路を行くユーディーは、戦いで火照った体を風に吹かれ、冷やしながら考えた。

 『仲間』それは、どんなものだろう。

 どうすれば、『仲間』と呼ぶのだろう。

 今日の自分は、彼らの『仲間』の一部だったのだろうか。

 それは、少し――

「  」

 無意識のうちにユーディーの口から本音を漏らした呟きが漏れた。
 
 それは風に煽られた木々のざわめきに消えてしまって、本人の耳にすら届かなかったのだが。