タイトル:【庶事】萌えて乱入マスター:文月猫

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2009/05/29 21:54

●オープニング本文


●取材の束
バグアが跳梁しはじめて20年。とかく、表面に出るのは、派手な大規模作戦や、大掛かりなキメラやワームとの『軍事的な』ことばかり。だが、世の中には、それ以上にぶっとんだキメラだってたくさんいる。ある日突然、隣の住民がバグア派だったなんて事も、今や珍しくはなくなってしまったのだ。
 そんな人目につきにくい事件でも、救援を要する事は多発する。そんな日々の『隣村の大事件』を担当するULTオペレーター本部に、1人の若者が足を踏み入れていた。受付で彼はこう事情を話す。
「まいどっ! 突撃取材班ですっ! 何か面白そうなネタありませんか!?」
「は!?」
 よくみりゃカンパネラの制服だ。おまけに腕章に『報道部』と書いてある。なんでガッコを飛び出してこんなところにいるんだと、受付の人は思ったが、口には出さずに、オペレーター達の事務室へと案内してくれる。そこにうずたかく積み上げられた報告書から、ネタになりそうなものを捜せと言う事らしい。
「アリガトウございます。じゃ、これ借りて行きますねっ」
 閲覧可と印字されたその束には、こう書かれていた【庶務雑事】と。
 これは、そんな日々起こっている事件をまとめた報告書の束である。


で、そんな中に‥‥

「だ〜〜。なんだこりゃ?!」

 報告書の束のひとつを眺めていた、カンパネラの生徒は、思わずのけぞった。別に体に何かが起きたわけではない。ないのだが、その内容が内容だっただけに、立ち直るのに多少なりとも時間を必要とした。‥‥その報告書の表紙にはこう書かれてあった。

『コスプレ大会の会場にキメラがいるので倒してください‥‥萌え〜〜〜(はぁと)』

 これだけで十分ぶっ飛びものであるのだが、写っている依頼主の写真が、これまた、全身萌えコスプレの、俗に言う「オ○ク」さんなのである。しかも、よくよく見れば、その格好は「メ○ド」さんそのもの。あまつさえ男である。うっすらと化粧すらしてるらしい。

「ぐあああああああ」

 この手の趣味の人間に、アレルギー反応のあるこの生徒にはいささかショックが強すぎたようだ。思わず、書類をほおりだす。で、さらにトドメの一言が、最後にこう記してあった。

「今回、キメラを退治してくれたら、お礼に、コスプレ大会の特別審査員になってもらいますので、コスプレの準備忘れないでね」

 とあるではないか。

「コスプレって、仮装と同じだよな」

 と必死に気をとりなおしつつ、さらに眺めると、そこには、オ○クさんたちによる萌え萌えなコスプレ写真が何枚か同封されていたりして‥‥。その後その生徒がどうなったかは、説明不要だろう。

●参加者一覧

沢良宜 命(ga0673
21歳・♀・SN
ミオ・リトマイネン(ga4310
14歳・♀・SN
佐竹 つばき(ga7830
20歳・♀・ER
夜十字・信人(ga8235
25歳・♂・GD
フェリア(ga9011
10歳・♀・AA
天道 桃華(gb0097
14歳・♀・FT
紅月・焔(gb1386
27歳・♂・ER
桃ノ宮 遊(gb5984
25歳・♀・GP

●リプレイ本文


 それはまさに異様な光景だった。どこにでもあるような体育館風の建物。その入り口は、ただのガラス張りの入り口‥‥。だが、日常見られるありふれた風景はここまで。見渡せば、まさに日常と非日常が入り混じった、カオスの世界そのものであった。まずガラス扉越しに見えるのは、せわしなく館内を飛び回る、多数の蝿のような生物‥‥。何か、ひとたび獲物を見つければいまにでも襲い掛からんといわんばかりに激しく飛び回る。だが、非現実世界は、建物の中だけではなかった。その建物の外には、内部をさらに圧倒するかのような、非現実なカオス空間が広がっていたのである。‥‥建物を取り巻くように群がる多数の一般人。いや、一般人という形容が、果たして的確なのかどうかすら疑わしい。そこにいる彼らこそ今回の主役である。彼らのことを普通の一般市民はこう呼び、冷たい視線と冷笑を浴びせるかもしれない。『ヲタク』と。しかもこのヲタク達、ただ集まっているだけではなかった。その姿は、普通の人達から見れば、とても言葉では表現できないような格好をしていたのだ。そう、いわゆる『コスプレ』である。さらに言うなら、よくある仮装パーティーに出てくるようなレベルではない。男女年齢問わず皆が皆、そう俗に言う『萌え』の格好をしたコスプレなのである。萌え、それは彼らその手の愛好者にとっては、神聖にして犯さざるべきまさに、『聖なる』神の言葉のようなものである。萌える、そのことこそが、彼らを彼らたらしめる唯一の存在意義でもあるかのようで。ざっと見渡しても、ネコ耳娘、メイド服、ナース、魔法少女、妖精、ETC‥‥、ありとあらゆる萌えファッションに身をつつんだ愛好者達。さらにはその性別すら入り乱れ、容姿のみならず、顔形まで、全身萌え、の世界に身をゆだねた者たち。これこそ、カオス、非日常、非現実と呼ばずして、他になんと形容すべきであろう。しかも、今回の依頼こそが彼らからもたらされたものなのだから。

「みなさ〜〜ん。もうすぐ傭兵さんたちがやってきます。もう少し待ってくださいね」

 と群集の間で叫ぶのは、これまた全身メイド服に身を包んだ今回の依頼主。立派な♂であるにもかかわらず、顔には化粧までしたその見た目は、どう見ても○○(自主規制)にしか見えないのだが。そんな彼らにとって、これからやってくる傭兵たちは、さしずめ、「白馬に乗った王子様」か、はたまた「姫を救う正義の味方」かと、そわそわしつつ、傭兵たちがやってくる方向を見守る他の参加者達。かくして、あまりにも異様な光景の中、それは始まったのである。


 と、突如、その異様な集団の一部がざわめきだし、まるで何かに見とれるように、ある方向を指差し、あまつさえ、蜘蛛の子を散らすように、さ〜〜と、行く手を空けるような光景が展開された。‥‥まさか、新手のキメラ? とそこに居た誰もがそう思ったに違いない。依頼主もそう思ったのだろう、思わずその方向を振り返り、表情がこわばりだしたそのとき、そう、まさにその方向から、キメラより恐ろしい?ものが出現したのだ。それは、あたりに得体の知れぬオーラを撒き散らしながら、こちらにぐんぐん近づいてくる。瞬間、誰もがそれが何者であるか、わからなかったのかも知れない。そう、傭兵たちがやってきたのだ。だがなぜ誰もわからなかったのか? その場に居た、ヲタク達ですら、その異様さに、我が目を疑ったからだ。


 それは、およそ、誰もが想像する傭兵たちの姿ではなかった。まず、最初に現れたのは、全身巫女ルックに身を包んだ、沢良宜 命(ga0673)、♀。嬉々として見せびらかすようにこちらにやってくる。その後ろがミオ・リトマイネン(ga4310)、♀。なんと全身バニールックで、お約束のウサ耳付である。こちらも堂々としていて、実によく似合っている。思わず、そばを通った「ヲタク」さんの口から漏れるため息。なんといったかは、大人の事情で自主規制。だが、ここまでは序の口、その次、全身魔法少女風の青いライン入りの白いワンピに身を包み、大きなアタッシュケース持参でやってきたのは鳳 つばき(ga7830)、♀。総漆塗りに鳳凰と椿の蒔絵が入った、豪華絢爛なその中身は‥‥突如、アタッシュケースの口が開いた。そう、そこからは大量の「褌」‥‥。思わずそのあまりの☆△※ぶりにへたり込むそばにいたヲタクさん。と、今度は一転して、全身僧衣のフェリア(ga9011)。だが、これでも十分水準以上なのだが、それまでがそれまでなので、地味に見えてしまうのは気のせいか。さらに、鳳と同じように、魔法少女姿で、「W魔法少女」で責めようというのが天道 桃華(gb0097)。今にも見えそう?なミニスカートとスパッツは目のやり場に困り、思わず、ハンカチで顔を覆う「ヲタク」さんもいたり。そのあまりのナニぶりに、でる言葉すらない状況。さらに、あと2人。だが、次の傭兵の格好にその場の誰もが一瞬こおりつき、自分が自分であることを忘れる者もでるような状況。紅月・焔(gb1386)♂は、なんと、ロングコートにガスマスク。まるで、何か大きな勘違いをしているKYな参加者にしか見えないいでたち。で、しんがりが、ただ一人、地味に執事スタイルの桃ノ宮 遊(gb5984)。萌え、に最後まで対抗し、貝殻水着もバニーも拒否したあげく取ったのがこのスタイル。だが、この格好が後に悲劇?を呼ぶことになるとは。そう、依頼主の要望に空気を読みすぎた為に、見るも(以下自主規制)な、スタイルに身を包んでのご登場となったのである。だが、よくよく見ると一人足らない。依頼主への情報では、確か8人のハズだが。

「そういえば、夜十字・信人(ga8235)がいませんね」

 とは、彼の盟友にして宿敵の紅月。マスク姿なので、顔がわからない。

「信君、少し遅れるゆうてはったわよ」

 とは、幼馴染の沢良宜、その信君、とう言い方がなぜか乙女チック。

「あの〜〜。傭兵の方々でしょうか?」

 そのあまりの登場振りに、やや腰が引け気味の依頼主。たしかに萌え、を希望したのは自分だが、傭兵たちのあまりにも空気を読みすぎたコスプレに掛ける言葉がでてこないのだ。

「は〜〜い。そうですわ。何か文句でも?」

 といわんばかりのポーズで、挑発するフェリア。

「いえ。‥‥、では、早速お願いします」

 妙に口調が、一般人ぽくなってしまった依頼主。カルチャーショックでもうけたのだろうか? かくして、彼ら7人は依頼の解決へと動きだしたのである。


 そそくさと、入り口付近に向かうコスプレ傭兵達。遠巻きに見守るヲタク達。そのあまりといえば、あまりに過ぎる光景が展開されていたそのとき、入り口近くに、いつの間にか1基の巨大な西洋風棺桶がおかれているのが目に入った。そばには巨大な十字架も突き刺さっており、うさんくささ満点であるが、いつ誰がこんなものを‥‥。と、傭兵たちがその場をとおりすぎるとき、その蓋が不気味に音を立て、開いた。

「どれ‥‥」

 と中から現れたのは、僧衣の怪しげな男一人。そう、この男こそナニを思ったのか、前日から、ここに泊り込んで、この瞬間を待っていたという夜十字その人であった。彼は、依頼を受けたにもかかわらず、そ知らぬふりをして、一参加者になりすましこの場に寝泊りしていたらしいのだ。まさに究極の逆KYである。

「キメラか‥‥。では、いこうか」

 ともったいぶり、武器を片手に、他の傭兵とともに中へ。なぜか背後には、黒い翼に覆われた、メイド姿の少女の幻影が。

「なんや、そこにいたんか」

 という命のセリフもなぜかそらぞらしく。かくして、傭兵ご一行8人様による、キメラ退治が開始された。


 中にはいるなり、獲物を見つけたとばかりに襲い掛かる蝿キメラ。だが、所詮相手は蝿である。能力者は覚醒しないと能力が発揮されないのだが、今回はそんなことをしなくても退治できそうな相手ではある。蝿たたきでも落とせそうなザコだからだ。だが、そこは傭兵。依頼はきっちりとこなすのがお仕事。これなら、依頼主さんでもできたろうに、とは顔には決してださない。とりあえず覚醒し、あとは単純作業のようなものである。

「いきますわよ〜〜」

 と沢良宜。巫女服になぜか箒で、キメラをはたきにかかる。だが、時たまキメラのベトベト・ヌルヌル触覚の餌食になり、そのたびに、全身巫女服が、ベチョベチョになり、上から下まであんなことやこんなことに(以下、自主規制)。それを横目でみてみぬふりをしつつ、ひそかににやける夜十字。
 
「命、着替えは用意してあるからね」

 とナース服を差し出すかと思えば、煩悩で連携しつつある紅月と顔を見合わせにやにや。あまり、自身では手を出さず、なにやらひそかに楽しそうである。かたや、ロングコートにガスマスクの風体で、蝿たたきに専念しているかのようなふりをする紅月。だが、彼も♂である。楽しみたいものは楽しみたい‥‥、決して顔には出さないが、その行動はあきらかであった。

「行け! ‥‥。そこだ、キメラ」

 ヌルヌルと格闘している、ミオに援護するそぶりをしつつ、誰にも聞こえないような声でつぶやき、思わず視線が釘付けになる。ミオは気がついているのかいないのか、何食わぬ顔で蝿タタキに熱中している。

「キメラ、待て〜〜い」

 と大きな声が後方で。そこには、天道と鳳、2人のW魔法少女?が、逃げようとするキメラに華麗なる?タッグで挑む。

「私には、必殺フンドシーチョバスターが」

 とかなんとかわめきながら、自称、『フラットつばき』として颯爽と登場である。かたや、天道。自称、『マジカル♪撃滅素敵ハンマー』をふりかざしつつ、

「マジカル♪シスターの名において、桃華参上☆」

「W魔法少女が、天に代わって成敗よ」

 とわめきながら、夢のコラボ実現である。が。そこは急造即席ペア。連携にはまだまだ時間が必要の様子。だが、そこは似たもの同士の見えぬ心のつながりか、徐々に連携もアップし、最後には、某魔法少女ばりの決めポーズを繰り出すまでに。

「え〜い。めんどくさい。まとめてこれでもくらって〜〜」

 といきなり、キメラ寄りに寝返った?紅月の足をつかんで、遠心力で投げ飛ばす必殺技まで繰り出す。曰く、『肉の砲弾』、飛ばされた紅月は紅月で、飛ばされつつも、しっかりと見るべきものはみていたらしい。

「これでもくらえ」

 とばかり、キメラを仲良しの沢良宜の方へふっとばしつつ、隙を見て沢良宜にセク○ラもどき行為をしかけ、ハリセンで吹っ飛ばされる夜十字やら、他の傭兵のコスプレになぜか萌えはじめる沢良宜。

「蝿をバッタバッタとはこれいかに」

 などと、KYなギャグをかましつつ、自分が不利と見るや、何を思ったか、一瞬にして沢良宜を盾にキメラをけしかけるフェリア、ただ一人、常識的にまともと思えるスタイルで(とは言っても執事だが)で、蝿タタキを行う桃ノ宮と。‥‥と、いったい、キメラ退治してるのか、ギャグのかましあいをしているのか、はたから見ればよくわからないドタバタを展開しつつも、しっかりと蝿タタキをしている傭兵たち。それをドア越しに、この世のものとも思えない光景をみる思いで見る一般のヲタク達。と、そんな彼らの姿をチラリと見た瞬間、何を思ったか、脱兎のごとくドアの方に駆け出す桃ノ宮。

「‥‥今、確かにおったで。昔、女装して、うちの銭湯の女湯にはいろうとした変態そっくりのヤツ。あ〜〜〜。思い出してもむかつく!」

 と、ドア越しに眺める連中を指さし、叫びだす。よほどトラウマでもあるのだろうか。女装すれば、皆ある意味同じような風体に見える、致し方ないことか。それにしても、戦闘中にこれほど余裕があるとは、さすが歴戦の傭兵である。で、気がついてみれば、あんなに飛び回っていたキメラは、すべて、骸となってそこらへんに転がっていた。

「さて、お掃除しましょうね」

 と先ほどまで武器にしていた、箒で今度は丁寧に後始末を始め、他の傭兵たちも手分けし、あっというまに、キメラの死体はなくなり、あとにはだだっぴろい空間だけが広がっていた。これで、依頼終了である。

「キメラお掃除完了ですよ。さあ、皆さん、心置きなく萌えてくださいな〜〜」

 とうれしそうにドアを開ける鳳。かくして、いよいよコスプレ大会の開催となったのである。待ちかねたように会場になだれ込む、コスプレのヲタク達に混じって、なんの違和感もないコスプレ傭兵達。妙な一体感があたりを支配しつつあった。


 かくして、コンテストである。今回、栄えある審査員席に座る傭兵たち。見ればそのうさんくさい怪しさはさらにグレードアップしていた。紅月のリクエストにより、貝殻ビキニの猫耳‥‥、などというわけのわからない衣装の沢良宜。萌えこそ何よりらしい。身体のラインが出るセーラー服、ミニスカート、黒のニーソという出で立ちのミオ。可愛い女の子が居ないか、目を凝らし物色するさまは、異様である。どうやら、お持ち帰りしたいらしい。魔法少女+スパークマシンの出で立ちの鳳。むしろ参加したいご様子。興奮さめやらぬ、といった様子の夜十字。ヲタク達の衣装に、ダメだし連発のフェリア。自分以外はコスプレイヤー失格といったご様子。参加者となにやらや熱くコスプレについて語り合う天道、さらに、どこに着ていたのか、純白のウェディングドレスというもはや○○(自主規制)にしか見えない紅月、さらに、なにやらゴソゴソ着替える気まんまんだったのを、必死に止める他の傭兵達。沢良宜の姿に萌えないとブツブツ小声でつぶやきつつ。控えめに執事スタイルで、最後に座っていた桃ノ宮だが、依頼主から

「メイドに執事は付き物です。どうか、私の執事に」

 と言い寄られ、ほとんどアップアップ状態で逃げ惑う。こうしてあまりにもいかがわしさムンムンの中、コンテストは終了した。


「今回の審査の結果、優勝は、私たち参加者の斜めはるか上を行った、傭兵の皆様としたいと思います」

 依頼主のその一言とともに、その場の参加者が、傭兵達にいっせいに群がった。ぜひ、ツーショットと、カメラを向けるもの、サインをせがむもの、中には、連絡先を聞いてきたり、いきなり、迫ってくるものもいたりで、まさにそこはパニック状態。さすがに逃げ惑う傭兵達。この状況は嫌いではないが、ここまでくるとさすがに精神的に危険度最大である。

「お願いします〜〜。ぜひ記念に一枚」

 ‥‥しばらくして、UPCにヲタク達の同人誌が送られてきた。その表紙は、このときの傭兵達と参加者達の記念写真だった。そこにはこう書かれてあった。

「コスプレ会特別名誉会員の傭兵の皆様。あとで、名誉会員証送りますね」

 彼らはその後しばらく、『コスプレヲタク傭兵』と呼ばれることになる。