タイトル:ラチェットキーマスター:文月猫

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/10/14 23:57

●オープニング本文


それは不思議な建物だった。

 一見するとその外観は無機質なグレー一色なのだが、よくみると窓の類が一切ない。無論入り口らしきものはあるのだが、それ以外は外部に向かって開かれた物は何一つないという実に奇妙な建物。そして今、この建物に侵入しようとする幾人かの傭兵達。
 その建物は平屋建てで、入り口が1ケ所あるのみ。その入り口も、人2名がやっと通れる位の狭さで、一体何の目的で作られた建物かすらよくわからない有様なのである。
 今回。この建物にバグアの能力者が立て篭もっているらしいとの通報で駆けつけた傭兵達。その怪しげな建物の外観とあいまって、いかにもバグア側が何らかの拠点としていてもおかしくはない雰囲気の漂うソレ。
 
 わずかばかりの柵を越え、庭と呼べるものはほとんどない状態で、いきなり入り口のドアに到着する。方位的にはこちらが南側のようである。建物は南北方向に細長く反対側の状況はそこからでは確認できない。何人かの傭兵が慎重に建物の反対側へ回り込んでみるのだが、ドアらしきものは見当たらなかった。

 慎重かつ静かにドアの向こう側の様子を窺う傭兵。そしてドア付近に人の気配がないのを感じるとゆっくりとドアを開ける。内部は奥行き40mほどのこれまた無機質な何もない廊下と、その両側にシンメトリックな形で配置されていると思われるいくつかの小部屋とらしきものがその規則的にならんだドアで確認できるだけ、という確実に怪しい状況なのである。内部は多少薄暗いが、視界が利かないほどではなかった。まるで命ある者は何者も存在しないかのような静寂と森閑さが広がる、ともすれば天井の圧迫感すら感じる。
 一人、また一人、とゆっくりドアから内部に入る傭兵達。何らかのワナがあるやも知れぬことは当然その場の全員が警戒しながらもゆっくりと内部に侵入する。

 そして。‥‥最後の1名がそのドアを潜り抜け内部に入ったその瞬間。

 ガシャ

 という大きな音と共に、今入ってきた入り口が突如その口を閉ざす。と同時に薄暗かった内部が急に明るくなる。見れば天井に隠されていた明かりらしきものが灯されたようである。
 一人の傭兵があわててドアを開けようと試みる。が、それはまるで巨人が外側からカンヌキをかけてソレを押さえているかのようで、咄嗟に覚醒した傭兵達の力を持ってしてもびくともしないものであった。
 その直後。天井付近から、まるで天から降ってくるかのような声が彼らの頭上に木霊した。
「無駄だよ。そのトビラは絶対に開かない。仮に武器で攻撃すれば、この建物ごと吹っ飛ぶがね。‥‥なんなら試してみてもいいが。」
 どこか勝ち誇ったようでかつ挑発的な、尊大ぶった声の主は、傭兵達の姿を彼らからは見えないどこかで見つめているようであった。
「貴様‥‥」
 一人の傭兵が天井を見上げてつぶやく。その口調はしてやられた、という感がありありと漂っていた。そう、傭兵達はワナにはめられたのである。あれほど警戒していながら、である。その悔しさが余計に腹立たしく思え、思わず壁をたたく者も。

「ふふふ。そう興奮しない方がいいと思うがね。‥‥、ところで、実はちょっとしたゲームを用意していてね。まあ早い話、キミたちがそこから脱出できるための遊び、とでも考えた方がいいかな」
 その声の主はあくまで冷徹かつ嘲るような口調を保ちつつ、ゆっくりと喋った。

「ゲームだと?」
 思わずいぶかしむ傭兵達。その言葉が俄かに信じられなかったのだ。だがこの状況ではいかんともしがたい。その謎の声が言っていることがあながちブラフとも思えなかったからだ。もし武器でドアを破壊しようとすれば、本当に建物ごと爆発するかもしれない。そんな根拠こそないが信じざるを得ない説得力のある声に聞こえたのだ。

「そう。簡単なゲームさ。まあ、キミたち程度の傭兵なら大したこともないと思うがね」
 その声は更に冷徹さを深めるように抑揚のない声で語ると、かすかに嘲笑した様に思えたのであった
「そうそう。言い忘れたが、部屋の中で銃器を使う時は十分注意したほうがいいよ。え、何故かって? ‥‥ほら、そろそろキミたちの嗅覚にも伝わってきたんじゃないかい? フフフ」
 そんな声と同時に、なにやら臭気の立ち込める匂いがあたりに漂ってきた。鼻を刺激するその匂いはなにか覚えがある独特の匂い。
「‥‥ガソリン!」
 一人の傭兵がつぶやく。そう、揮発したガソリンの匂いがうっすらと立ち込めてきたのだ。室内の空気がわずかづつではあるがピュアではなくなっていくのが明確に感じられる。

 かくして「死」のゲームは開始されたのである。

●参加者一覧

Letia Bar(ga6313
25歳・♀・JG
シヴァー・JS(gb1398
29歳・♂・FT
エイミ・シーン(gb9420
18歳・♀・SF
御剣 薙(gc2904
17歳・♀・HD
空言 凛(gc4106
20歳・♀・AA
ネイ・ジュピター(gc4209
17歳・♀・GP
那月 ケイ(gc4469
24歳・♂・GD
麻姫・B・九道(gc4661
21歳・♀・FT

●リプレイ本文


(ゲームね‥‥。ということはこの通報自体が罠、だったってことか)
 御剣 薙(gc2904)は呟く。残念ながら今回まんまと罠にはめられた格好になった傭兵達であった。それは仕掛けたほうにしてみればほんの「ゲーム」感覚だったのかもしれない。
 無機質な空間に規則正しく並んだ複数のドア。その中で待ち受けるのは果たして何者か?
「ハッハッハ! おもしれぇ! いいぜ! このゲームやってやろうじゃねーか!」
 嵌められた、との思いはあるのかも知れないが、ピンチを逆に楽しむかのような空言 凛(gc4106)。タイマン望むところ、といった心境なのだろう。そのボクシングで鍛えた両拳をグっと合わせるようなしぐさを見せる。
「要するに鍵を集めて敵を倒せば‥‥勝ちですよね?」
 エイミ・シーン(gb9420)は呟く。このトラップを抜け出すには当たり前だがそれしかないのである。
「くそ! なんだって火器厳禁なんだ! 俺に喧嘩売ってんだな! ちくしょう‥‥禁煙かよ」
 ヘビースモーカーの九道 麻姫(gc4661)。どうやら火器が使えないことより、「禁煙」を強要されることの方が悔しい、らしいのでその愛煙家ぶりがわかろうというものである。なにせ充満しつつあるのはガソリンなのだから。
「イライラしても煙草は厳禁だぞ」
 そんな姿を目にし改めて釘をさすのは友人でもある那月 ケイ(gc4469)。どうやらそっちの方を本気で心配している様子なのだ。
「無理は禁物だよ」
 さらにLetia Bar(ga6313)に対しての気遣いも見せる。だが内心は大丈夫だと信じている那月である。

 こうして。その金属質をむき出しにしたドアが獲物を待つかのように傭兵達を静かに出迎える

 死のゲーム開始だ! 制限時間は10分間。はたして結果はクリアかゲームオーバーか‥‥。


「まさか得物が使えないとは。‥‥今回は弓があったことに感謝〜〜」
 知り合いから譲り受けたその弓に最大限に感謝するのはLetia。多少の不安はあるもののそれをかくしつつ仲間を気遣うそぶりを見せる。
 各自覚悟を決め、分散して決めた部屋に入る。鍵を5つ見つけ出した時点で一刻も早くこのトラップから脱出したい思いは皆同じであろう。
(細かいことは後で考えるとして‥‥今は宝探しと参りましょうか)
 部屋の扉の前に立ち、開ける直前に思うのはシヴァー・JS(gb1398)。すでに覚醒し、その全身から強烈な光を発しているのがわかる。

 まず15番の部屋に飛び込むネイ・ジュピター(gc4209)。
 すると、部屋の中には傭兵達を待ちかねたように1匹の見た目バジリスク風のキメラが。タイマン勝負はむしろ望むところであろう彼女。自己流ながらすぐれた2刀流の使い手である。型がないからこそ柔軟な動きができるのであろう。
 その戦いぶりはスピードに任せ相手を攪乱するような動き。キメラの羽ばたきにあおられつつもその嘴と爪の攻撃を巧みにかわしつつの戦い方である。多少せまい室内でおのずから接近戦に持ち込まれるのだが。

 バシ、バシ

 刃交わること何撃か。どうやらその剣技がキメラのそれを上回ったようである。無事にキメラを屠るネイ。
 がしかし。そのキメラの残骸からは残念ながら「鍵」はドロップすることはなかった。どうやらこの部屋は残念ながら『ハズレ』だったようである。
 
 だが同じ頃。一発ビンゴ、で『鍵』を引き当てたなんとも幸運な傭兵もいたのである。


「じゃー。私は16番の部屋にするぜ」
 威勢よく部屋に飛び込む空言。そこに待ち構えていたキメラは彼女にしてみればなんとも面白そうであり。
 さっそく得意とするボクシングベースのスタイルで戦闘態勢に入る彼女。とはいっても拳のみならず蹴りや関節技も巧み、という万能型のファイターのようである。

「オラオラァ!」

 ガソリン臭が徐々に濃くなりつつある室内で、鳴り響く肉弾戦の響き。その両拳が蹴りがキメラを襲う。実際のリングとは勝手が違うかも知れないが接近戦は彼女の得意とするところである。

 瞬時に相手の背中へ回り込みその背中へ飛び乗り羽ばたいていた翼の付け根を攻撃する空言。その攻撃に思わずバランスを崩し、よろけるキメラ。その体勢を見て尻尾を掴んで投げ飛ばし、その仰向けになった腹部に思いきり蹴りを見舞う。どうやらこれでKOのようだ。

 すると。そんなキメラの口の中からポロリとこぼれるものが‥‥。それは黒色の『鍵』のようなもの。そう、まさに一発ビンゴ、である。
「よっしゃ! これ当たりだぜ」
 喜びの表情を見せつつ大事そうに鍵を取り上げると、応急処置を施し回復。そして次の部屋を目指す空言。

 モンスターは鍵を落とした! 空言はカギを手に入れた!


 こうして。その他の部屋に飛び込んだ傭兵達、‥‥20番の部屋のLetia。19番のシヴァー、18番のエイミ、17番の御剣、15番のネイ。14番の那月、13番に飛び込んだ九道‥‥は、それぞれキメラを倒すことには成功したものの『カギ』、を手に入れることはできなかった。
 最初の1巡目で入手できた鍵は1個。時間にはまだ余裕はあるものの、急ぎたいところだ。
 多少手傷を負った者もいるようだが、簡単な応急処置を施し、各々2巡目へと向かう。‥‥残り12部屋、である。

 さて2巡目。10番の部屋に入るLetia。

「何が出てきても確実に‥‥射抜く‥‥!?」

 気合十分である。最初の部屋ですでにキメラとの戦闘方法は心得たようで矢をあてがったまま突入し、スキルを開放する。
 まず待ち構えていたキメラの片脚を狙う。正面だけには立たないように注意しつつ。その警戒すべき風圧に備えるためだ。キメラの武器が当たらない、届かない位置から矢での攻撃。そしてトドメは首への狙い澄ました一閃。それは血しぶきをあげキメラの首を吹き飛ばした。

 すると。その吹き飛ばされた首と一緒に何か小さな赤いものが勢いよく飛び出してきて、彼女の足元に転がる。‥‥それはよく見れば赤い『鍵』。そう。2つ目のカギ、をめでたくゲットしたのである。室外へでると、その結果を仲間たちにさっそく連絡する。誰かが歓声を上げたような声が聞こえる。
 これで2つゲット。残るは3つ。

 9番の部屋で今まさに格闘中のシヴァー。初めに、オリジナルの巨大な『鞘』を扉にブンなげ扉をぶち破って、といささか荒っぽく部屋に侵入。

「速ッ攻ッ!!」

 一気にキメラの懐に飛び込むや否やスキルを使ってまずその脚を切り落としにかかる彼。作戦はうまくいったようで見事に切り落とされるキメラの片脚。脚を失ったキメラ。当然動きもままならず‥‥と思いきや、残った片足でジャンプしつつ羽ばたきながら嘴で突進してくる。その動きに惑いつつもしっかり対応するシヴァー。真っ向から叩き斬りに行く。

 シュパ

 まさにその効果音がふさわしいかの如く、見事に切断させるキメラ。持ち運ぶにはやや大きすぎるが、とりあえずキメラ撃破成功、である。がしかし、その死体からは何一つカギらしきものがドロップすることはなかった。残念ながら『ハズレ』のようである。

 8番の部屋ではエイミが交戦。最初の部屋では残念ながら、だったのだが、部屋から出るときしっかり拡張強化で仲間のサポートは忘れなかった彼女、である。今回はどうか?
 覚醒したその姿はある種の狂気すら感じられるもの。剣と超機械を携えキメラに対峙するその姿は鬼気迫るものさえ感じられる。狭い室内で位置取りに注意しつつ相手の目線でその流れを読む彼女。

「ふふふ。もっと楽しませてくれないの?」
 
 剣で敵を屠りながら余裕の表情。さらには舌なめずりでもしていそうにこれでもかとキメラを切り刻んでゆく。その笑みにはどことなく不気味さすら垣間見られる。
 
 グシャ‥‥

 いやな音を立てキメラが寸断されていく。なるほど、「ゲーム」と相手がいうだけのことはある。
 多少やっかいではあるものの、単純な攻撃しかできないキメラでは所詮傭兵達が本気で手こずる相手ではなかったようである。
 そして。すっかり肉塊と化したキメラだが‥‥。残念ながら今回も『ハズレ』だったようである。
 キメラは撃破されど、クエストはクリアならず、といったところか。

 その機械爪の攻撃をキメラに浴びせるのは7番の部屋の御剣その人。最初の部屋が残念、だった派である。この部屋ではどうか?
 その身にまとったAU−KV毎、そのキメラの蹴りを華麗なステップでかわす。厄介な羽ばたきはエネガンで妨害しつつ接近。キメラの爪攻撃をすんでのところでかいくぐるとエネガンを0距離で叩き込む。どこか爪がかすめたのかAU−KVに伝わるかすかな衝撃。だがさらに来る嘴攻撃をかわすとそののど元に強烈な一撃を浴びせる。派手な動きこそないが的確でムダのない動き。
「時間をかけてられない。」
 その言葉のとおりできるだけ短時間でキメラを撃破することに成功。だが今回もその死体からは鍵が出てくることはなかった。
 同じ頃‥‥。


「ちくしょう。人様の命をもてあそびやがって」
 
 煙草をにぎりつぶしながら悪態をつく九道。友人のケイとLetiaに愚痴の一つもいいつつ、仕事に赴くのである。まあ気持ちはわからないでもない。なにせ今回は「火器」‥‥いや彼女の場合においては「火気」が「厳禁」、なのだから。その為、余計にかからなくてもいいストレスで今や爆発寸前なのである。はやくスッキリ、としたいところだろう。
 だが今回は運、も重要なファクターである。最初の部屋では運、に恵まれなかった彼女。今回はどうか?とばかりに3番の部屋へ。当然『火気』すなわち『モク』、が禁止されているのでかなりイライラが高じつつある彼女。そのイライラを当然のごとく100%キメラに向ける。その戦闘スタイルはまさに手数とパワーで相手を圧倒するようなスタイルである。その怒りの矛先は姿なき声の主、に注がれていたのかも知れないのだが。

 バシ、ドシャ、グシャ

 刀で切りつけるような音と何かがつぶされるような音が部屋の中から聞こえてくる。‥‥そして静寂。どうやら無事に退治できたようである。が‥‥残念ながら彼女もハズレ、であった。
  
 ‥‥かくして2巡目で最後に鍵を手に入れたのは、那月。彼が入った4番の部屋のキメラ。その死骸からポロリ、と零れ落ちてきたのは「黄色」の鍵。これで黒、赤、黄の3色がそろった。残るは青と緑だ。さっそく自分が入手した黄色の鍵の情報を皆に知らせる那月。そしてまだ侵入していない部屋はごくわずか。確率から言えばかなりの確率で鍵をゲットできるに違いない。
「苦労してハズレだと萎えるさぁ」
 Letiaがこれまでの傭兵達の心境を代弁するかのように物語る。あたりを引いたものはともかく、まだあたりを引いていない傭兵の心境はいかばかりか?

 そして運命の3巡目。すでに残された時間はごくわずかである。早くキメラから鍵を奪わないと時間切れのゲームオーバーが近づいているのだ。


 そして3巡目。2部屋目の攻略が多少早かった御剣と空言そしてネイと那月が部屋の番号を伝達し侵入する。まあ早いもの勝ちと言えないこともないような気がするのだが。

 先ほどの戦闘で負ったダメージを速やかに回復させ3部屋目へと向かうのは御剣。
「もういっちょう」
 まだ誰も手を付けていない部屋を見つけ、そこに飛び込むのは空言。まだ手つかずの11番の部屋に向かうのはネイ。そして1番の部屋に入ることを伝え、そこに入るのは那月。
 これですべての部屋に傭兵達が足を踏み入れることになる。
 残念ながら全ての部屋が埋まっているのを確認し、拡張治癒でサポートに回るのはエイミ。もちろん強化も怠らない。
「あ〜〜。煙草がすいてぇ」
 すべての部屋に傭兵が侵入したのを確認し、ひととおり自分の役目が終わったと判断、無線機で連絡をとりつつ、独り言のように呟くのは九道。そろそろ我慢の限界なのだろう。だがもう少しの辛抱である。4つの部屋の扉を前に、キメラがたとえ残っていても鍵がそろった時点で戦闘中止し、即刻鍵穴に向かうことになっていたことをふと考えるのはLetia。しかし明らかに開始時よりも濃くなっていくガソリン臭がその鼻を衝く。それは時間切れがもう目の前に迫っていることを明らかに伝えるものである。

 2番の部屋で3たびキメラと見える御剣。すでに組しやすいキメラとわかっていても時間との戦い。
「さっさとクリアして黒幕を蹴っ飛ばしてあげるよ」
 それは姿なき黒幕に思いをはせる一言。はたして黒幕はこの建物にいるのだろうか?
「さあて、ラスボスはいるのかな?」
 空言もまた同じ思いのようである。そしてその声の主とご対面できることならぜひそう願いたいのは那月もまた同じである。

 かくして。最後の鍵を手に入れるのは果たして‥‥。


 ‥‥それはまさに時間ギリギリ。すでにかなりの異臭が立ち込めるなか、最後の2つ、青と緑の鍵を手に入れたのは御剣と那月。那月は2連続ゲットに成功する運の良さを見せた。
「早く早く! 鍵‥‥カギぃ」
 待ちきれん、とばかりに鍵を我先にと差し込むのはLetia。
「これで脱出っと!」
 色に合わせ鍵穴に鍵を差し込むのは空言。
「これでゲームセットだな」
 那月が呟く。鍵を手にした傭兵達が次々と鍵穴に鍵を差し込んでいく。まさに先を争うように、である。

 そしてすべての鍵が鍵穴に差し込まれたその時‥‥。

 ギギギ

 と不気味な音を立て、鍵穴の正面にある壁が左右に開きだした。どうやら隠し扉になっていたようである。これでは外部から見てわからないはずだ。そして外のまぶしい光が傭兵達の視界に飛び込んでくるのだ。

 無事脱出成功。ゲームクリア。

 彼らが外へ出るととどこからともなく先ほどの声が。
「ふふふ。なかなか面白いものを拝見させてもらったよ」
 その声はまるでどこかはるかかなたから響いてくるようであった。それはこの場で捕えることはできない、と思わせるような雰囲気が感じられるもの。おそらくどこか手の届かないところから今までの経緯を眺めていたのだろう。‥‥それっきり声は聞こえなくなった。
「うお〜〜。もう限界だ〜〜」
 今まで耐えに耐えていたものが一気に爆発した九道。すさまじい勢いで紫煙を噴き上げる。
「やれやれ。今日も生きてる空気が旨い。2度とはごめんですね」
 シヴァーのその一言はすべての傭兵の気持ちを代弁するかのようであった。
「バグアにも面白い事をする奴がいるんだな」
 呟く空言。だが傭兵達の表情が微妙に複雑に見えたのは気のせいか? 喜びはあまりなかった。