タイトル:行く手を阻むものマスター:文月猫

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/05/25 00:17

●オープニング本文


 スナイパーのシャロン・石崎(gz0286)。とある町での事。
 その町で災害復旧の為の復興要員として借り出されていたシャロン。本来ならそういったボランティア的な活動ではなく、KV戦とかキメラ戦とかいった、もっと派手で見栄えのする依頼に参加したかったのだが、災害復興とあって、今回ULTから特別編成されたチームに指名されてしまったので、やむなく参加することに。だがそれなりの報酬はもらえるので、まあタダ働きではないからいいか、と納得したりするシャロン。
 異常気象による水害で大きな被害をだした町での救助活動や災害復旧もひとしきりケリがつき、その後のメドもついたのでそろそろ帰ろうかというとき、一緒に現地に派遣されたULTの職員からある事を依頼される。

 それはこの町から北に5kmほど離れた隣町で、未確認生物の目撃情報が寄せられたので、現地で情報収集をしてきてほしい、ということであった。
 もっともこの町では以前からそういった報告はなされており、その多くが何か別のものの見間違いだとか、ひどい場合は悪質なイタズラだったりしたことから、今回もそうであろう、という予想なのだが、一応UPC軍からの依頼でもあるので引き受けてもらえないかという。
 そういったどこか怪しげな任務になると、逆にやる気が湧いてくるのがシャロン。災害復興といったどちらかといえば地味な仕事よりそういった任務に惹かれるのが、彼女の性格である。

「わかった。早速行ってくるとするか。なんやら面白いことになりそうやし」
 と早くもやる気まんまんのシャロン。常日頃携帯している超機械のアタッチメントを使いその手首に括りつける。それほど遠くない距離ではあるが、軍のジーザリオを借りることに。
「何か、わかったらすぐに知らせてほしい」
 車へと急ぐ彼女の後ろ姿に声をかけるULTの職員。
「あいな〜〜」
 とその声の方を振り向きもせずに片手を上げ、そのままジーザリオに乗り込み、エンジンをかける。
「気をつけてくれ」
 と更に彼女に声をかけるが、すでにジーザリオのエンジン音でその声はかき消された。 
 小気味いい音と共にあっというまに小さくなるジーザリオ。北に向かうその形がが小さくなりやがて完全に見えなくなる。

 その姿を見届け、やれやれといった表情を浮かべるULT職員。さて、と向き直りゆっくりと歩きだそうとしたその時、彼の耳に届く大きな叫び声。
「緊急!! この先3Km北の地点にキメラが出現! 数不明。付近の民間人の被害状況確認中」
 それはUPCの通信部隊の兵士が上官らしき人物に向かって叫ぶ声。急にあたりがあわただしさに包まれる。
「現場の状況は? 近くに軍部隊は?」
 しきりに追加の状況確認を求める声。どこかに連絡をとる軍関係者。あわただしく軍用車両に乗り込むものなど。
 俄かにあたりは前線のような雰囲気に包まれる。

「なんだって!!!」
 その情報に思わず声を上げるULT職員。ここから北に3km、すなわちそれはさっきシャロンがジーザリオを走らせたまさにその方向。そしてそこにキメラ‥‥。それはこの先起こりうることを容易に想像できるものだった。
「大変だ!! そっちの方向に今さっき傭兵が1名ジーザリオで移動していった!」
 あわてて通信部隊の上官の元に駆け寄る職員。そしてシャロンがその方向に向かった事を告げる。
「なんということだ‥‥。至急援軍を! 傭兵1名が無駄死にするかもしれん!」
 たった1名といえど、傭兵は貴重な戦力である。むざむざ見捨てるわけにはいかない、と考えたのだ。
なぜならもしキメラが多数いた場合、いかに傭兵といえど1名では多勢に無勢。最悪の結果が脳裏をよぎったからだ。
「誰か! この町にいる他の傭兵を至急現地に向かわせてくれ!」
 かくして急を聞いた傭兵達が立ち上がったのである。同時に直ちに2台のジーザリオが用意され、彼らの足として提供されたのである。

●参加者一覧

新居・やすかず(ga1891
19歳・♂・JG
植松・カルマ(ga8288
19歳・♂・AA
御守 剣清(gb6210
27歳・♂・PN
ジョゼット・レヴィナス(gb9207
23歳・♀・EL
ブラドダーム博士(gc0563
58歳・♂・ST
紫翠 瀬良(gc1079
16歳・♂・DF
桂木 一馬(gc1844
22歳・♂・SN
獅堂 梓(gc2346
18歳・♀・PN

●リプレイ本文

●緊急事態発生
 あちこちから聞こえる災害復興の槌音。本来ならばUPC軍や地元警察、消防などが行うべき事なのだが、いかんせん人手不足のご時世とあって、多数の傭兵達も借り出されることに。もっとも正式にULTを通じての依頼でそれなりの報酬がもらえるので、決して「ボランティア」などではない。むしろ危険な戦闘依頼ではないので、こういった依頼を歓迎する傭兵がいるのもまた事実。
「まさかねえ。こんな形になるとは」
 ジョゼット・レヴィナス(gb9207)の心境は複雑。大規模も含め、主に非戦闘系の後方支援任務などをもっぱらとしていた彼女。たまたま武器を装備(それも自衛用)していたことがきっかけで、「キメラ退治」に引っ張りだされることになろうとはよもや想像もせず。いまだ覚悟が出来かねているのかその顔は不安に満ち溢れていた。だが今回は心強い「仲間」がたくさんいる。
「なんと彼女、運の悪いことにまきこまれたな」
 その不運さを嘆く桂木 一馬(gc1844)。とりあえずは一刻も早く現地へと向かい、状況を確認したいところではある。
「キャワイイおね〜〜ちゃんの危機。んじゃここは俺の出番ってことで、ぜっていにたすけるっす‥‥そしてマジぱねぇ俺を見てきっと‥‥」
 見た目はチンピラ風体、言葉使いもそれなりなのだが、ハートは十分に熱い植松・カルマ(ga8288)。おね〜〜ちゃんの危機、と聞いてはほおっては置けないのだ。
「復興支援が、とんだことになりましたね。無事だといいんですが」
 獅堂 梓(gc2346)。巫女姿がなかなかに似合う

 災害復興という本来の目的から180度任務はすりかわり、「キメラ退治&シャロン捜索」に相成ったが、運悪く?巻き込まれた格好の傭兵8名。だがその決意は硬く、そして熱い。ひとりの傭兵の為に素早く動いた軍の協力により、急遽仕立てられた2台のジーザリオに分乗し、キメラ出現ポイントへと向かう。そのハンドルを握るのは御守 剣清(gb6210)とブラドダーム博士(gc0563)。
「大丈夫、とは聞いてますがね。なにせ一人ですから、やっぱりねえ」
 ジーザリオのエンジン音に紛れ聞こえる御守の呟き。さすがに暢気に構えているわけにも行かないことは十分にわきまえている。
 かくして。エンジン音を響かせ現地へと向かう2台のジーザリオ。それに向かって敬礼する軍関係者。
 こうしていわば緊急招集された仲間達によるキメラ討伐は、そのジーザリオの排気ガスの匂いと共に始まったのである。

●作戦会議
 事前に与えられた情報は限定的なものではあったが、それでもそれは貴重な情報として彼らの脳裏にインプットされた。場所は町から北に3km程はなれた地点の林道。どうやら複数のキメラが道をふさいでいるらしい。道の両脇の林が多少悩ましいが、カマキリ型のキメラ、ということで道中いろいろそのイメージにあわせた対策やら作戦を練る傭兵達。限られた時間と空間の中で立案されたそれは‥‥。

A班
前衛:新居・やすかず(ga1891
   紫翠 瀬良(gc1079
後衛:ブラドダーム博士
   桂木 一馬
B班
前衛:植松・カルマ
   御守 剣清
後衛:ジョゼット・レヴィナス
   獅堂 梓

 という布陣。道路を2列にふさぐように徘徊していると思われるキメラに対し、まずA班が手前のキメラをひきつけ、その間隙を縫って奥にいるキメラにB班が突撃を仕掛ける、といういたってシンプルな作戦。機先を制する為に、事前に御守、ジョゼット、の2名が『閃光手榴弾』できっかけをつくり、それを合図に行動開始する、というプランを立案。加えて逃走を阻止すべく、相手の足止めをし、かつ狙撃や牽制で動きを封じることを行動の主体とする、など短い時間の中で立案された作戦は単純にして明快。
「シャロンさんがもしいれば、まず合流を図りたい」
 と桂木。仮に戦闘中なら合図を送りたいと思うのは新居。だが彼女がどうなっているかわからない現状では一抹の不安とそれにともなう多少なりともの焦燥が。
「皆、ワシが後ろにおるから安心して戦うがよいぞ」
 ハンドルをにぎりつつなんとも頼もしい口調なのがブラドダーム博士。とても老人には見えない自信である。こういう言葉は不安を打ち消し勇気を与えてくれるものである。士気が漲る仲間たち。決して乗り心地がいいとは言いがたい車中ではあるが、誰一人それを感じる者がいないほど集中しているのだ。

 町をでてすぐに林道にはいる2台のジーザリオ。両脇の林は、そこに何かが潜んでいて今すぐにでも目の前に飛び出してきそうな雰囲気を持って彼らを出迎える。だが今回の相手はでかいという。すぐに目につく大きさということで、そのことがある種の安心感を持たせる。こういう場合目立たぬ敵ほどある意味怖いものなのだ。
(「私‥‥どうしたら」)
 車中、いまだぬぐえぬ「不安」と戦うジョゼットの姿があった。己の恐怖に打ち勝ち、そして誰かの危機を救う。それが傭兵としての使命でもあるのだ。

●あれは?
「!!!」
 誰ともなくそれに気がつき、窓から身を乗り出す傭兵達。どのくらい走っただろうか? 長い時間かも知れないし、一瞬かも知れない。目の前に、横転して道をふさぐようにしている1台のジーサリオの姿が飛び込んできた。
 間違いなく、シャロンが乗っていったものだ。だが回りに人影はない。ただちに車から飛び降りる傭兵達。同時にこの場所にこれがあることの意味を考え、緊張感が彼らを支配する。
「せ〜〜の」
 ブラドダーム博士の掛け声と共に全員で横転したジーザリオを起こし、その損傷具合をチェックする。見たところ多少傷ついているが特にこれといった損傷や血痕、攻撃された跡などは見当たらない。とすれば少なくともキメラの襲撃を受けて横転したのではないらしい、と言うことが判明し、とりあえず一安心する傭兵達。だがシャロンの姿は周囲には見当たらない。
 本来なら直ちに捜索したいところなのだが、まずはキメラ討伐が先である。無事を祈りつつとりあえず先を急ぐ傭兵達。戦闘終了後に改めて捜索することにする。がとりあえず、
「お〜い。おね〜〜ちゃ〜〜ん。いたら返事よろしくっす」
 念のため呼びかける植松。もし彼女が付近に無事で潜んででもいれば呼びかけに反応するだろう。が反応はない。すくなくともこの付近にいないことを確認し、再び2台の車に戻りさらに進む傭兵達。そして2分も走っただろうか‥‥

 そいつは突如、数十m先の道路上に立ちふさがるように現れた。まさしくそれは情報にあった「カマキリ」タイプのキメラ。見れば数匹が前後2列になって道路をふさぐように徘徊している。その姿はまさに通りかかる獲物を待ち受けるカマキリそのものに見えた。しかも巨大である。3mというのはあながち誤情報ではなかったようである。基本的にカマキリは視力がいい。20mぐらいの距離の獲物は十分に視認できる。ならば不用意に接近は禁物である。
「では、使わせていただきます」
 と声をかけ閃光手榴弾の安全装置をはずす御守。それにあわせてジョゼットも安全装置をはずす。作動まで30秒。その間できるだけキメラに接近する。もちろん閃光防御用にサングラスやらゴーグルやらで防護する傭兵達。ただ一人何故か、『般若の面』をかぶる植松。妙に似合うのは彼のキャラのなせる業か。一見ガラの悪そうなチンピラ属性の性格の彼。他人は近寄りがたい印象はあるのだが、そういう環境で育ったジョゼットはそういた人種を見慣れていたせいか特に気にするそぶりは見せない。
「なんか、いいお兄ちゃんみたいです。子供に好かれそうですね」
 と平然と言ってのけられるのも彼女だけである。

 コロコロ‥‥‥。

 2名の手から投げられたそれはキメラの前方20mぐらいのところにころがされる。何物かと興味を示すそぶりで反応するキメラ。そして待つことほんの数秒程度。

 ドカ〜〜〜〜ンンンン!!!

 轟音と共にそれが爆発する。閃光があたりを一瞬目もくらまんばかりの明るさに照らす。そのあまりのまぶしさにさすがのキメラも動揺したのかまるで混乱したかのように右往左往し始める。そしてそれが合図。8名の傭兵が手筈どおりに一斉に行動を開始した。あたりにとどろく銃声音と共に。

●殲滅開始
 新居、紫翠、ブラドダーム、桂木、の4名が先陣を切る。手前にいる3匹のキメラに狙いを絞る。新居、紫翠の両名を前に、後方からはブラドダームと桂木の援護射撃が届く。
 その狙いはまずキメラの注意を彼ら4名に引き付けることにある。まずキメラの数を減らし、逃走を阻止。さらに紫翠を援護し、標的のキメラの頭、翅、関節を狙う新居。とりあえずその視界に入った手ごろなキメラにその射程一杯から連射を浴びせる。狙いは頭。その二連射の破壊力は目の前のキメラの頭部をあっけなく吹き飛ばした。それは敵がカマをもたげて襲い掛かってくるその姿のまま、頭部ごと吹き飛ばしたのだ。たぶん、キメラにすれば一瞬の間だったのかも知れない。

「キメラ殲滅開始」
 感情を失っており、抑揚がなくかつ無表情のまま呟く紫翠。その口調は機械的にすら思えるほど。
「ただ壊すだけ‥‥」
 そう呟く彼の感情を失った瞳の先には何が見えているのだろうか。キメラに向けられたその刃は何を語るのだろうか?

 戦闘開始と同時に後方から支援するブラドダームと桂木。スキル支援はブラドダームが担い、桂木はエナジーガンを使っての支援攻撃を行う。
「さあ、害虫駆除の時間だ。すべて刈り取ってやるよ」
 戦闘開始にあわせて安全装置をはずした『閃光手榴弾』。タイミングを計りそれを宙にほおリ投げる桂木。それは空中で炸裂し、再びあたりを覆うまばゆいばかりの閃光。その閃光で周囲の視界が妨げられる中、B班が後方のキメラの集団に襲い掛かる。真夏の海辺でサングラスをかけて日光浴するほどには確保された視界で、前列のキメラ集団にできた隙間を抜け、後方のキメラに対し、獅堂の弾頭矢が放たれる。‥‥ポッカリと開いた間隙を通過したそれは標的になったキメラの頭部に命中し盛大に炸裂する。その火薬が放つ焦げ臭い匂いと硝煙があたりに立ち込める。頭が半分吹き飛ばされるキメラ。だがめちゃくちゃにカマを振り回す様は、断末魔の苦しみにも見える。がすでにそれは恐れるに足らず、である。
「逃がしません!!」
 さらにもう一本。その矢の放たれた軌跡を追いかけるように植松と御守が後方のキメラ集団に殺到する。
「御守さん。お願いします」
 後列のキメラに肉薄する御守に支援する獅堂の声が飛ぶ。
「まずはお先に」
 とばかり一気にキメラに迫るやいなや知覚攻撃の有効性を確認すべく機械剣で貫く御守。

 グシャ‥‥‥‥

 といやな音をたててキメラの腹部がひしゃげる。大きく肉片が飛び散る。どうやら知覚攻撃が有効である事を確認した御守。そこで素早く武器を持ち替える傭兵が何名か。
(「よかった。刀2本は不便で」)
 その結果に密かに安堵するのは御守。2本の刀を扱うのは得意ではないのだ。

 その頃、キメラ逃走の気配を察した傭兵が。
「敵、逃走します」
 その動きに真っ先に反応したのはジョゼット。形勢不利とみたか、1匹のキメラが林のなかに逃げ込もうと、カマを振り上げつつ頭をめぐらす。
「バックレんなよ〜〜〜」
 植松が動く。ほぼ同時に御守も動く。あわれキメラ、その頭をめぐらし最初の一歩を踏み出す前に2名の傭兵の標的と化し、その翅がたちどころに削り取られる。
 さらに追い討ちをかけるのが目の前のキメラを片付けた新居。逃走キメラに向け放つ援護射撃。もはやこうなってはひとたまりもないキメラである。胴体が2つに泣き別れになりカマを振り上げたそのままの姿でしばし動きを止めた後、まるで映画のスローモーションシーンのようにゆっくりとその場にひっくり返る。
「まだ逃げるやつは‥‥」
 桂木がすばやく周囲を見渡す。ほかに逃走を図るキメラがいないか、もしいればまずそちらから、といわんばかり仁王立ちに構える。そんな彼に思いっきり伸び上がってせまろうとするキメラ一匹。が、
「‥‥‥」
 あくまで無表情の紫翠。仁王立ちしたキメラに容赦ない攻撃を浴びせ、その翅をツノと同時に吹き飛ばすとためらうことなくその頭を跳ね飛ばす。事が済んでも顔色ひとつ変えることはない。
「イケメンパワー全開っす」
 相変わらずハイテンションでキメラをしばく植松。その有様は「喧嘩上等」「喧嘩夜露死苦」である。

 こうして。どのくらいの時間が経過したのだろうか? 風が吹き始め、周囲の樹木がザワザワとざわめきだした頃、すべて血祭りに上げられた哀れキメラのもはやゴミとしかいいようのない無機質な塊があたりに散らばるだけとなった。
「もう終わりかな?」
 念のため周囲の安全を確認する紫翠。最後までその表情に変化はない。

●捜索人登場
 ところで。ある意味キメラ以上に重要なはずのシャロンは一体どこへ? 傭兵達がキメラと戦っている間一切姿を見せなかった彼女なのだが。
 だがその答えはすぐに明らかになった。とりあえずほっと一息つき、シャロンのジーザリオが発見された場所まで帰り、本格的に捜索を開始しようかとしていた新居たち傭兵のところへ、すぐそばの樹木の陰からひょっこり姿を見せる当の本人。その場の光景を見るなり、
「ありゃ。こりゃあすげえな。ずいぶんハデにやったみたいだ」
 見ればシャロンのその手には超機械が握られていた。
「ご無事だったのですね」
 その姿に思わずほっとし声をかけるジョゼット。だが彼女は一体どこにいたのか?
「いやあ‥‥。心配かけたみたいだな」
 と半分頭をかきながらシャロンが語るには‥‥。

 どうやら彼女。ジーザリオを運転中に、事前に道路上に群がるキメラを発見し、その為大急ぎで知らせようとジーザリオをUターンさせ、町へと引き返したのだが、途中あわてていた為か運転をミスり車が横転。そこで走って街まで応援を呼びにいったところ、すでに討伐隊が向かったと聞いて、またあわてて戻ってきたのだという。
「あたしひとりじゃ、いくらなんでも多数のキメラ相手にはできないしな」
 と珍しく申し訳なさそうに照れ笑いを浮かべる。
「とにかく無事でよかったです」
 すべてがうまくいったこともあってか、その表情は明るいジョゼット。
「さて。町へ帰るとするかいのお。まだまだ助けを待っている住民がたくさんおるからな。イッヒッヒ」
 すでに齢70歳には見える老人であるにもかかわらず、その肉体は鍛え上げられているブラドダーム。
 こうして人探しの手間をかけることもなく無事にシャロンと合流を果たした一行。再び復興支援のために増えたジーザリオを駆って町へと帰還するのであった。
(「みんな無事で今回もなんとか」)
 帰り道にそんな獅堂の姿があった。そして何事もなかったかのように再び復興の槌音が響きわたる。