タイトル:シラヌイ救援マスター:文月猫

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/02/20 04:29

●オープニング本文


 某月某日の地中海沿岸。UPC軍のシラヌイが6機、低空を飛行中である。
 コードネームは「ブルーカクタス」。シラヌイ精鋭部隊の一部である。現在北に向け飛行中。天候は晴れ。眼下の地中海の蒼さが美しい。
 この6機。UPCの最新シラヌイ部隊であるのだが、パイロットは全員それなりに実戦経験を積んだ中堅のパイロット達。哨戒飛行を終え基地へ帰投中である。
 となにやらレーダーに数個の怪しげな機影が。それは彼らの進行方向の右翼側から直進してくる様子。
「おやおや。さっそくお出ましか」
 とパイロットのひとりがつぶやく。

 ここ何日か、この空域ではたびたび敵HWの出現が報告されており、その為、軍として以前より哨戒飛行の頻度を増やすなど警戒をしていた空域である。よって、当然HWの出現も事前に想定されていた範囲ではあるのだが。
「こちら、『ブルーカクタス』。敵HWらしき機影確認。数は5機。西へ向け進行中。あと5分で接触します」
 と防空司令部へ無線で交信する編隊長。当然交戦は想定内なので、それなりの武装をしているシラヌイ。早速迎撃に向かおうとするのだが。そのとき

「!!!」
 突如、レーダーにそれまでとは別の機影が出現。しかも最初の編隊を追尾するかのように直進している。レーダーの機影はそれがより大きな敵であることを示すものであった。
「こちら、カクタスリーダー。敵新たな編隊確認。数は5〜6機以上。至急援軍求む!!」
 事態の何たるかを直ちに理解した編隊長が無線で叫ぶ。だが返ってきた返答は驚くべきものだった。
「こちら防空司令部。付近に味方機なし。これよりスクランブルを行う。合流まで約10分」
 10分‥‥。その応答に半ば愕然とする編隊長。10分もかかってはいくらシラヌイとは言えど最悪全滅は免れない。相手の数が多すぎるのだ。いかにシラヌイといえど多勢に無勢。
「それでは間に合わない!! 敵の数が多すぎる!」
 決して大げさではないその表現に色を失う司令部。とそのとき、

「付近に傭兵達のKVが飛行中。彼らなら3分で合流できます!」
 とレーダーマンが告げる。たぶん何らかの任務を受けて目的地に向かう途中の傭兵達であろう。だが事態は一刻の猶予もならない。
「止むを得ん。彼らに依頼しよう。至急無線を回してくれ」
 と司令部指揮官が決断する。その結果、本来傭兵達が行うはずであった依頼に支障がでることも考えられたが、眼前の事態が指揮官の決断を鈍らせることはなかった。
 
 その頃。防空司令部では把握していなかったが、レーダーサイトの範囲外を飛行するもう1機のシラヌイが。
 それは6機のシラヌイとは反対に地中海方面に向け、高空を飛行中であった。そのシラヌイ。シルエットに人型頭部部分のアンテナが2本あることからS型である。ちょうど機首をめぐらし大西洋方面へ向かおうとしているようであった。
「こちら『アール・ディ』。現在高度5000mにて飛行中。現在位置‥‥」

 その声は、だれであろうラフィン・ドレイクのもの。
 このとき彼はある任務のため、シラヌイにて西進中だったのだ。
 定時連絡のため、防空司令部へたまたま無線交信を行ったのだが、そのタイミングを計ったかのように司令部から至急電が入る。
「ラフィン君。すまないが緊急事態だ。」
 それがまるで天の助け、の如く無線に飛びつく指揮官の声であったことは想像に難くない。

 ‥‥かくしてその状況はラフィンの耳にも。なればここは一刻の猶予もない。
「直ちに現場に急行します。一時的にシラヌイ隊と合流して共同戦線を張ります」
 と返答する。
「頼む。早くしないと無駄死にがでる」
 無線越しの指揮官の声は上ずっていた。

●参加者一覧

里見・さやか(ga0153
19歳・♀・ST
熊谷真帆(ga3826
16歳・♀・FT
守原クリア(ga4864
20歳・♀・JG
守原有希(ga8582
20歳・♂・AA
Anbar(ga9009
17歳・♂・EP
鹿嶋 悠(gb1333
24歳・♂・AA
ソーニャ(gb5824
13歳・♀・HD
望月 美汐(gb6693
23歳・♀・HD

●リプレイ本文

●敵機来襲
 澄み渡った空。さえぎるもののないその晴天に、まるで悪魔が引っかいた爪あとのような幾筋もの軌跡。
 眼前に立ちふさがるすべてのものを跡形もなく粉砕するが如く、突き進むHWの軌跡。その数は20機。右翼と左翼にある程度間隔を置き、まるで何かに魅入られたかのようにまっすぐ飛来する。

「まったくこんなときに。せっかくのバレンタインも台無しですね」
 お楽しみを邪魔された子供のようにむくれるクリア・サーレク(ga4864)。だが事態が急を要するとあってはやむをえない。
 UPC軍、そしてラフィン・ドレイク(gz0257)との合流ポイントに急ぎ向かう8機のKV。すでにその機上レーダーは迫り来るHWの影を捕捉していた。

「ぱっぱかぱ〜〜。真帆ちゃん参上。風雲真帆城参上だよ〜〜」
 ノリノリイケイケなオーラを発散しつつ愛機雷電、いや『風雲真帆城』で馳せ参じる熊谷真帆(ga3826)。陽光に照らし出された銀翼がきらめく。ブリューナクとヘビガトのみのシンプルな武装。
「こりゃ、本来の依頼よりこっちが緊急だよな」
 熊谷機と並ぶように飛行するシラヌイを駆るのはAnbar(ga9009)。すでにそのK‐02の安全装置をはずし、いつでも発射できるように態勢をとる。
「人気者はつらいですね。まあ、しっかり仕事はさせてもらいますが」
 同じく雷電の機上で苦笑いの鹿嶋 悠(gb1333)。吊り下げられたミサイルの数々が獲物を求めそのときを待つ。

 するとそこへ、UPCシラヌイ部隊からはいる無線。発信したのはラフィン。
「傭兵の諸君。よくきてくれた。早速だが、敵は両翼に分かれている。特に左翼の大型を含む部隊は我々の手に余る。できればそちらをお願いしたい」
 それはこの緊迫した場面でもどこか余裕を感じさせるもの。
「ラジャー。必ず間に合わせますから、待っててください」
 その声にソーニャ(gb5824)が反応する。ブースターを轟かせ、ビュン、と加速するシラヌイS型。
 それに呼応するかのように、KV全機が一斉に翼を揺らしながらHWに向けて進路をとる。目標まであとわずか。そして合流するであろうUPC部隊の物と思われる幾筋かのKVの軌跡がかすかに視認できる頃、HWの大群が彼らの視界にも捉えられたのである。

●開戦
 なおも突き進んでくる、押し寄せる津波のようなHWの大群。すでにそのプロトン砲の射程にKVが捕捉されようかという時、傭兵達の右翼にはっきりと視認できるまでになったUPC軍のシラヌイ部隊とラル機。
 彼らもすでに臨戦態勢。機体を左右に振り、フォーメーションをとる。
「頼みます」
 多少ノイズはあるもののクリアーに届くラルの声。そして大きく右翼に展開するUPC部隊。
「了解。全員無傷で帰還します」
 守原有希(ga8582)がそれに応えるかのように愛機シラヌイの翼を揺らめかす。表情が変わる。

 敵の両翼の距離約1000m。左翼の敵は小型が10機。大型が2機。上下2段構えで、小型が横一列に並び、大型の前に壁のように展開。
「1、2、3‥‥11、12。全部で12機を視認」
 ナンバリングする里見・さやか(ga0153)。K‐02の標的を作りやすくするために、割り振ったナンバリングである。ウーフーからのそれは傭兵達全機に伝えられた。
「敵、プロトン砲、来ます!」
 望月 美汐(gb6693)が叫ぶ。HWから多数の閃光がKVに。射程で勝るHWが先制攻撃を仕掛ける。だがこれは最初から想定したこと。それを合図に予定通りのフォーメーションを展開する傭兵達。
 
 熊谷機、ソーニャ機、里見機が高度を下げる動き。さらにその前方に突出するかのように鹿嶋機が進路をとる。上下2段のHWの下段側の更に下にもぐるような動き。
「敵は多いですが、アナーヒター、負けるわけにはいきません!」
 里見のウーフーがジャミング中和装置を作動させる。さっきまでKVがいたあたりにプロトン砲の掃射がむなしく通過する。
 ほぼ同時にこちらは大きく高度を上げ、HWを見下ろすような位置まで上昇するクリア、守原、Anbar、望月機。小型の後方に隠れるように位置する大型HWの姿が視野に捕らえられる位置まで上昇。
「行くよ! エルシアン?! キミの力を」
 ソーニャが愛機に気合を入れる。今回初実戦の愛機である為か、かすかな不安がよぎる。
 HWがその野獣の如き獰猛さを持って、襲い掛かってくる。
  
●陽動そして奇襲
 高度を下げた4機のKV。彼らがHWの前方から相手の動きを攪乱する、いわば『陽動』役。そして高度を上げた4機がその陽動によってできた敵の隙をつき、ダイブによる奇襲を敢行する『奇襲』役。常に2機以上で連携し、単騎での戦闘は避ける事とする。‥‥それが今回の作戦の概要である。
 
 HWから放たれる幾筋ものフェザー砲がただ1機突出した形になる鹿嶋機に襲い掛かる。長射程の武器を持たない鹿嶋、もとよりある程度の避弾は覚悟でHWの密集陣形の切り崩しを図る覚悟。だがさすがにHWは密集陣形。重装備を誇る雷電といえど、ある程度の避弾は免れない。だがその高機動を生かし、敵の攻撃をわずかにあてさせる程度に留め、致命弾だけは食らわない。
(「多少の被弾は覚悟していますけどね」)
と時折被弾でゆれるコクピットの中で思う鹿嶋。

「やれるのか?」
 遠距離からD−02を浴びせ、鹿嶋機をフォローするソーニャ。すさまじい速さで再充填と発射を繰り返し、小型HWに切れ目の無い砲撃を浴びせる。その渾身の一撃に1機の小型HWから白煙が上がる。
「アハトアハト、撃て〜〜〜」
 それをタイミングと見たか、ターゲットを大型HWに合わせた里見の8.8cmレーザーが火を噴く。だが、それに事前に気がついた小型HWが咄嗟に立ちはだかる。
「!!」
 おおきく揺らぐ小型HW。だが大型HWにはダメージは通らなかった。反撃にレーザーバルカンを放つ小型HW。それをぎりぎりのところで掠めさせる里見機。

「今!」
上空でその光景を見たクリア。HWの陣形が乱れ、そこに生まれたわずかな隙。それを見逃す傭兵ではなかった。K‐02の安全装置を解除するクリア。
「こ、れ、で、も‥‥くらえ!!!」
 先ほど里見が施したナンバリングにより敵の数を把握したAnbar、自らの視線にはいる全HWを標的にK‐02を放つ。
「私は‥‥こっちを!」
 Anbarが狙ったHWとは別角度からその視界内の全HWをターゲットにするクリア。
「逃がしませんよ!」
 その動きにあわせる守原。超伝導アクチュエーターを作動させると同時に、ロケット弾とスラライで敵周囲に弾幕を張る。HWをK‐02の射程内に釘付けにする作戦。その放たれたロケット弾が小型HWの胴体にいくつかの穴を穿つ。

 シラヌイから放たれた500発のK‐02。やや遅れて別角度から放たれたクリアの500発のK‐02。それは12機の敵HWに殺到する。おびただしいミサイルの軌跡が空を翔け、敵機に殺到する。
 陽動隊にある程度ひきつけられたHW。あわてて何機かの小型HWがそれに反応する。が、いかんせん反応が遅く、フェザー砲で弾幕を張ろうとするが間に合わない。
 激しい爆発音、立ち上る白煙と閃光。あたりが一瞬その視界を奪われる。

 大型HWに向かったK‐02は、大型HWの放ったファランクスによって大幅にその威力を削がれたものの、小型HWに向かったソレは、確実に小型HWに命中し破壊する。
 さらにいくつかの爆裂音に続いて、空中分解し、落ちる小型HW。その白煙が晴れたときには、すでに4機のHWがKVの視界から消えていたのだ!
 そして今まで敵HWが存在していた虚空を突き抜けるようにダイブしてすり抜ける4機のHW。すれ違いざまに破曉の高分子レーザー砲と焔刃「鳳」で残った小型HWに一撃を浴びせる望月。おおきく揺らぐHW。そこに守原の8式が襲い掛かる。爆炎を上げそのまま落下する小型HW。

●形勢逆転
 傭兵達の奇襲攻撃、とくにK−02の破壊力によって小型HWを一瞬にして4機葬ったことにより、彼我の形勢は一気に逆転したかに思える。だがまだ大型HWはほぼ無傷である。残存の小型HWを盾にするように態勢とる。
 眼前の大型HWに対して鹿嶋機のファランクスが猛然と火を噴く。それは確実に大型の足を止める。

「なめてはいけませんよ」
 そのまま大型HWと掠めるようにすり抜け反転、背後をとるや至近距離からUK−10をお見舞いし、そのまますり抜ける。さらに反転し、再びUK−10を放ち大型の射線から離脱。地味ではあるが効果的な攻撃。そこへ大型のフェザー砲が鹿嶋機を掠め、虚空を切り裂く。
「チョロチョロとまあ。抜かせませんよ」
 かたや8.8cmを小型HWに叩き込む里見。

「てーれって〜。」
 さらに後方から熊谷のブリューナクが小型HWを直撃。火花を撒き散らしながら落ちるHW。
「しかと見よ〜〜。このブリューナク」
 その破壊力に満足げの熊谷。

 一方。大型HWの懐に飛び込まんとするクリア。ミサイルで牽制し、大型が姿勢を変えた隙にUK‐10を叩き込む。がレーザーガトリング砲の弾幕で威力を削がれるUK‐10。
「クリアさん、行きましょう」
 クリアとペアで同一目標を捕捉する守原。ロケット弾とミサイルが大型に迫る。だがファランクスとフェザー砲の弾幕がこれを阻む。

「ならば!!」
 至近距離からスラライを一閃。大型HWのプロトン砲がほぼ同時にシラヌイに迫る。かろうじて直撃を躱す守原。HWと機体を掠めるようにしてすれ違う。
「ヘビガトヘビガト〜〜〜電光石火!」
 大型の背後に迫る熊谷。まるで雨あられのようなヘビガトの銃撃を浴びる大型HW。その巨体がグラリとゆれ、機体から上がるスパーク。ヘビガトの乱射による衝撃が熊谷機にも伝わる。

「まだ小型の数が多い。こっちを先に」
 Anbarが今だ稼動中の小型HWに迫る。壁のように大型HWを守る形の小型HW。その小型HWからレーザーガトリングの雨が降り注ぐ。しかしAECを展開しているAnbar機へのダメージは軽微。HWとシラヌイの翼端が掠めるようにすれ違う。反転し、誘導弾で狙うAnbar。さらに、
「目標、エンゲージ!! さあ、格闘戦のお時間」
 同じ相手にドッグファイトを仕掛ける望月。レーザーバルカンを至近距離から即射し、すれ違いざまに焔刃「鳳」と高分子レーザーのコンボを仕掛ける。その距離ほとんど0。轟音を上げ、炎に包まれ落下する小型HW。

 敵の攻撃をその重装備で耐え抜いた鹿嶋機。形勢が逆転しつつあることにより目の前の状況が有利になる。大型HWの状況が気になるがまだ小型HWの残存機があるので、こちらから先に片付けることに。

「さて、いかせてもらいますよ」
 手持ちの残りすべてのUK−10が狙うは手負いの小型HW。間髪いれずに放たれたそれは、敵の弾幕をすり抜けるように的確に小型に炸裂する。メラメラと炎と白煙を上げ、崩れるように落ちていく小型HW。だが敵もひるまない。別の小型から放たれた鹿嶋機へのフェザー砲。それをあえて雷電で受け止めるや、
「うおおおおお」 
 すさまじい気迫と共にスラライがそのHWに向け轟然と火を噴く。
「援護します」
 それに呼応してソーニャのD−02が後方から迫る。さらに返す刀で、AAM発射。迫ってきた小型の足を止め、マシンガンの雨を降らす。それは一瞬の行動。小型HWはまとめて消滅した。

●決着の時
 残るは小型1機となお健在な大型2機。すでに形勢は大きく傾き、傭兵達の勝利は目の前である。
「こちら『アナーヒター』。聞こえますか?」
 ラル機に呼びかける里見。だが応答はない。UPC軍がどうなっているか視認する余裕はさすがになく。ただ時折聞こえる爆発音だけが、今なお戦闘中である事を示しているのであった。
 
 目の前の小型を葬り去った鹿嶋が再び大型に迫る。スラライが火を噴く。それはその射線上に立ちはだかった小型HWの片翼を貫く。そこからスパークが舞い上がる小型HW。
「お、ち、て〜〜」
 絶叫と共に、バルカン砲の雨を大型に浴びせる里見。だが敵は大型。フェザー砲がウーフーに迫る。それは胴体の下を舐めるように通り過ぎる。
「容赦しません」
 ヘビガトの雨とブリューナクの強烈な一撃をお見舞いする熊谷。どこからか煙が上がり、何かが爆発したHW。そのメラメラとした炎はまるで断末魔のあえぎのようにも見えた。あと一押し。

「見よ。これが‥‥フェニックスの、本当のチ、カ、ラ!!」
 瞬間、フェニックスのスタビライザーを作動させるクリア。その愛機は空中で一瞬にして人型に空中変形。
 その手にあるのは『白雪』。すさまじいエネルギーの放出によって生み出されたレーザーの刃が不気味に、まぶしいばかりに揺らめく。
 まるで大上段から袈裟切りのように大型HWに振り下ろされるそれは、多量の練力と引き換えに爆発的な破壊力を持って大型HWに襲い掛かる。
「くらええええええええっっっっ」

『ドッカ〜〜〜ンンンン』

 ものすごい大音響と共に四散する大型HW。さらにそれがいままでいた空間に一瞬遅れて守原のレーザーカノンの軌跡が到達する。
 ほぼ同時にそれより多少小さな爆発音が。望月が最後の小型HWを四散させたのだ。

 これで残るは大型HW1機。だがすでにエンジン部からは出火し、その低下した出力のため大口径砲は使用できなくなっていた。
「猛れ、烈火閃剣!」
 守原が愛機に最後の気合を入れ、超伝導アクチュエータを作動させつつ、スラライで狙うはその心臓部たるエンジン部分。さらにクリア、ソーニャ機もほぼ同時に大型HWにターゲットをロックさせる。

「こ、れ、で、‥‥お、わ、り!!」
 誰の声かこの状況では定かではないが、そんな声とほぼ同時に、3機のKVから1点に集中するすさまじい砲火の轟音。エンジンが損傷した大型HWにそれを避ける余力はもはやなく。
 眼もくらむ閃光、火柱、そして大音響を残して100mはあろうかという大型HWは空中に散華した。

●静寂の中で
 大型2機、小型10機のHWはこうしてすべて撃墜された。味方の損傷はたいしたことはなく、KVの飛行に大きな影響のでるものではなかった。
「多少、あちこちやられたみたいですけど」
 と雷電の状態をチェックする鹿嶋。だが特に危険なサインは表示されなかった。

「シラヌイは?」
 と周囲を見渡すAnbar。傭兵達はケリがついたが、向こうのUPC軍の状況は依然としてわからない。見渡す範囲で、空中戦が行われている気配は感じられなかったのだが。

「諸君。無事だったようだね」
 といきなりKVに聞こえるラルの無線。その声に思わず安堵のため息をつく傭兵達。
「おかげさまで、こちらも無事に片付いた。今回はキミたちのおかげで、最悪の事態は免れたようだ」
 と無線越しの声が喜びにあふれるラルであった。

「さあ、クリアさん。今度デートしましょうね」
 ラルのその声をきくやいなや、KVの全員に聞こえるような声でうれしそうな守原。
「若い方は、お熱いですね」
 とそれに反応する鹿嶋。照れくさそうに顔を真っ赤にするクリア。そこには普段の表情に戻った傭兵達がいた。