タイトル:ハニワなキメラマスター:文月猫

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/01/18 00:49

●オープニング本文


「念のため聞くけど、これって間違いなくアレだよな?」
 と自分に納得させるかのように仲間に確認する。その声に釣られ、その依頼書の周りには人だかりが。
「う〜〜ん。確かに見れば見るほどアレだ。」
 と誰もが納得する。一体何がアレなのだというのか?

 とある建設現場。壁のようにそそり立つ岩壁を崩すために、ダイナマイトでの爆破作業が行われようとしていた。岩壁にいくつか空けた小さな横穴にダイナマイトを仕掛け、点火して爆破する。作業員がダイナマイトを仕掛け、準備がすべて整うと、いよいよ爆破開始である。そのためのカウントダウンも終わり、
「点火!」
 という掛け声をまさにかけようとしたその瞬間。その場にいた誰もが信じられない光景を目撃する。
 ダイナマイトを仕掛けてあった岩壁が突如、ガラガラと音を立てて崩れ落ちる。もちろんダイナマイトに点火していないにもかかわらずだ。まるで何者かが意図的にそうしたかのように突如前触れもなく。
「!!」
 一瞬何がその場で起きているのか誰一人理解できなかった。思わずその場にいた全員が凍りつく。
 だが本当の地獄はここからが本番だった。いきなり半分ほど崩れた岩壁の間から何かが勢いよく飛び出してくる。それもひとつやふたつではない。まるでその瞬間を待っていたかのように、堰を切ったように飛び出してくるそれは。

「で、これがそのときの写真と言うわけか」
 と改めて依頼書に添えられていた写真に注目する傭兵達。
 たぶんそれは、逃げ惑う一瞬で撮影されたものであろう。かなり画像はぶれ、ピンボケ気味にはなってはいるが、その全体像は間違いなく、そいつを的確に捉えていた。
「う〜〜ん。どう見てもコレは、‥‥ハニワだよな。昔学校の教科書で見たぞ。うん」
 ときっぱり断定口調で言い切る傭兵も。
「だなあ。このフォルムはどう見ても、歴史の本にでてくるあれだよな。」
 しげしげとその輪郭を眺めながら、つぶやく傭兵も。
 ここにある1枚の写真がすべてであった。それはかろうじて阿鼻叫喚の地獄から生還した、現場関係者が残した唯一の証拠となるもの。まさにこの1枚は地獄の光景の一部を写したものに違いなかった。
 依頼書に書かれている表書きはこうだ。

「ハニワ型キメラ多数出現。至急退治求む。すでに犠牲者多数」

 別に現場付近で遺跡が発掘されたとかそういうつながりとは一切無縁。なぜこんな場所に現れたか誰一人説明できる者はいない。なぜか傭兵の中に何人かはいる考古学マニアが異常な関心を持っていたことは内緒である。

●参加者一覧

リゼット・ランドルフ(ga5171
19歳・♀・FT
アルト・ハーニー(ga8228
20歳・♂・DF
紅鬼 レイム(gb8839
18歳・♂・FT
黒瀬 レオ(gb9668
20歳・♂・AA
八尾師 命(gb9785
18歳・♀・ER
来栖・繭華(gc0021
11歳・♀・SF
湊 雪乃(gc0029
15歳・♀・FC
風間 千草(gc0114
19歳・♀・JG

●リプレイ本文

●〜ハニーな人々〜
「ハニワと土偶ってどこが違うんでしょう?」
 まずは疑問を持ったリゼット・ランドルフ(ga5171)。確かに見た目似ていなくもないのだが、ハニワと土偶は学術的には作られた時代が違う、とは言っても専門家でない者にとってはあまり関係のないことか。
 現場の写真に写っているのはピンボケしたキメラの写真。だがそれをよく見れば少なくとも数体がそこに映っている。実際はもっといそうである。正確な数が不明なのだが。

「埴輪軍団総帥の俺の断りなしに、こんなに大量に埴輪を作るとはゆるせん」
 とばかり道中騒ぐ?アルト・ハーニー(ga8228)。『埴輪軍団』などと名前がさぞ大層に思えなくないが、要は埴輪愛好家の集団らしい。ゆえに埴輪も『ハニー』と呼ぶほどである。とはいってもメンバーは彼一人。だがキメラ=ハニーとは思いたくもないが。それにこいつはキメラであって、学術的に価値のある埴輪ではないのだ。名前の如く過去幾たびかの埴輪・土偶関連依頼に参加している。
 ところで、今回本格的戦闘は初めてという傭兵も含め比較的経験の浅い傭兵が多い。依頼3回目にして今回が初戦闘の紅鬼(gb8839)。本名は紅鬼レイム。若く見えるがもう20歳である。
「初めての戦闘がまさか‥‥埴輪だとは」
 自分自身呆れたのか驚いているのか。そしてもう1名。依頼2回目が初戦闘の来栖・繭華(gc0021)。ストライクフェアリーの彼女、身体が弱い事をはっきり自認しているが、初戦闘に向けてやる気まんまんである。
「埴輪が動くなんて‥‥。夢とロマンが詰まってるよね」
 とは黒瀬 レオ(gb9668)。その表情はウキウキのノリノリである。動いているのは埴輪のようなキメラなのだが、それはたいした問題ではないらしい。

●〜現場は混乱中〜
 現地はハニワキメラ出現直後ほどではないが、今だ混乱から回復しきれていない様子がありありと見て取れる
傭兵達がそこへ到着したときは、すでに非常線が張られ、一般人のみならず関係者も立ち入り禁止。相手がキメラでは手を出せない地元警察さえも遠巻きに人員整理に当たるだけの状態。
「まだ負傷者が取り残されているみたいなんですよ。もう心配で心配で」
 現れた傭兵にすがるように懇願する地元の村の村長。彼にしてみれば過去に遭遇したことのないような災難だったに違いない。負傷者がいるとすればまずそちらの救出を優先せねばなるまい。

「しかし本当に埴輪の形をしてるんですね〜〜。不思議ですね〜〜」
 とは八尾師 命(gb9785)。とりあえず現場のおおまかな状況をつかむついでに、遠目にその不思議なデザインのキメラを眺める。遠目に見て数体。実際はもっといるであろう。
 無理もない。よそであまり見かけることのないこのキメラ。何を根拠に『埴輪』スタイルになったのかは、想像すらできない。ましてやここに昔の遺跡があるわけでもなく。

「とりあえず、関係者を避難させておかないとのう」
 湊 雪乃(gc0029)は思う。一応十分な緩衝地帯はあるのだが、念のためさらに遠くへ避難させる。手伝うのは友人である紅鬼。さらに万が一の事を考え、よりキメラに近い地域にまだいるかもしれない無事な関係者に向かって叫ぶ。
「死にたくなければとにかく走れ」
 負傷者以外はこの声に確実に反応するであろう。その声に風間 千草(gc0114)も行動する。覚醒し、キメラが十分に視認できる距離まで接近し、逃げ遅れがいないか確認することに。

「た、助けてくれ。た・す‥‥」
 するとどこかでうめくような声が。あたりを見渡す風間。するとキメラの死角、資材の影に隠れたところに2人の人影が。どちらもケガをしているのかその場にうずくまり動けない様子。その為キメラに見つからなかったのはある意味幸運だとも。
「ケガ人が」
 風間が声を上げる。それに即座に動く紅鬼。続く湊。覚醒しキメラの襲撃に備えると直ちに2人のもとに急行する。勇気あるレスキュー隊員が何名か直ちに行動した。

 運びこまれたケガ人は重傷を負ってはいたが意識はしっかりしていた。直ちに応急処置で【練成治療】を行う八尾師。結果幸い一命は取り留めたようだ。その間覚醒し、状況を見守る黒瀬。無事に負傷者の救助活動が終わり完全に傭兵以外の人間が危険地域からいなくなった事を確認し、戦闘行動に移る傭兵達。すでに全員覚醒し、手に手に自慢の得物を携え、かなりいるであろうと思われるキメラの徘徊する現場へと赴く。
 この時点ではまだ来るべき事態を予測できるわけもなく。

●〜キメラ徘徊す〜
 ダイナマイトで発破予定だった岩壁。そのほぼ垂直に切り立った壁が傭兵達の視界をさえぎる。その距離40mほどか。場所的には岩壁を正面にした位置。あと20mも近付けばキメラの飛び道具たるブレードの射程に入る。
 ここまでくるとハニワキメラの全貌が明らかになる。確かに言われるとおり体高は1.5mほど。2本の足が生え、その手はまだはっきりとは確認できないが、陽光にきらめいていることからやはり刃物のようになっているのだろう。ブレードを飛ばしてくるという口は確かに威嚇的にすら見えた。
 見かけは『武人埴輪』、だがれっきとしたキメラ。そんな状況でありながらも
「ペットでほしいかな」
 などと平然と口にする黒瀬。この時点で彼には『キメラ』ではなく『ハニワ』なのである。口から飛ばしてくるブレードは10秒間隔とはいえ要注意。囲まれれば最悪連射状態にもなりかねない。1体ずつの間隔をある程度開けたいところであるが。

 見れば自分の登場位置にどこから持ち込んだか自作の埴輪を並べ始めるアルト。依頼の合間に山篭りで作成したというシロモノで、なかなかいい出来に見える。見るからに巨大な100トンハンマーを担いでの登場である。
「ふ、世界に正しき埴輪の魅力を伝える為‥‥アルト・ハーニー、参る!」
 なにやら口上らしきものを述べキメラに向かってアピールである。その背後にハニワオーラがぼんやり見えていたらしいのだが。

●〜傭兵VSハニワ(その1)〜
 8人の傭兵が2名づつ4つの班に分かれる。それぞれ前衛・後衛に別れキメラに対峙しようとする。さらに接近。
 ‥‥やはり数は10体はくだらないか。岩壁を背に右往左往というか得物を待つかのようにいったりきたりである。4手に分かれた傭兵はゆっくり確実に接近する。ひとつのポイントの距離は20m。これを超えると対ブレードを考えなければならないからだ。この程度のキメラの放つブレードである。威力的にはどうか?とも思えるのだが用心に越したことはない。とくに初戦闘の紅鬼と来栖。

「深紅に染まりし闇の鬼。紅鬼レイム。いざ」
 とばかり名乗りを上げキメラに接近する。と同時に湊に耳打ちする。
「お前を守れとお前のバカレシに頼まれているのでな、危険になったら即援護する」
 友人でもあるので話し方に遠慮が見られない。手にしているのは片刃直刀の壱式。ブレードに注意しつつ湊と手近なキメラに接近する。
 
 ヒュン。とかすかな空気を切り裂くうなり音。20m以内に接近しキメラのブレードが飛んでくる飛翔音である。これをすばやく回避し、そのまま移動。10秒間隔ならなんとか回避できるはずである。なおもキメラに接近。キメラのその1mほどの刃はまともに受ければそれなりのダメージを受けそうなシロモノに見えた。まみえること何合か。隙を見てスキルを使って頭から一頭両断に叩き割る。1体のキメラが真っ二つに割れた。硬いはずのキメラだがスキルの前にはまるでボロの如くである。
 さらに別のキメラに接近する。すぐさま至近距離に。いきなりキメラの先制攻撃だ。だが。
「染めろ紅月‥‥紅光斬月!」
 と叫びキメラの攻撃を【流し斬り】でかわす。同じように何合か後、もう一刀の紅月と合わせ2刀の構えとなるや否や。
「紅光双刃!」
 と咆哮し【2段撃】で一閃。キメラはまたまた真っ二つに。かすかなカスリ傷程度のダメージこそ負ったが。

 一方。刀でヒット&アウェー攻撃を繰り返す湊。必要以上には接近しない戦い方である。だが彼女の思った以上にキメラは硬かったようである。
「こりゃ硬い」
 と思いつつ峰打ち攻撃で紅鬼の援護をする。囲まれない、そのことに留意しつつ、常に動きつつである。練力の関係であまりスキルは多用できないので、射撃で足止めする湊。
「刀でどこまでいけるかな」
 と独り言のようつぶやく。

●〜傭兵vsハニワ(その2)〜
「さて、割られたいやつから前へと出て来い。あ、できれば1体づつだぞ。たくさん一度は困る」
 などと最後が意味不明なセリフを吐きながらキメラに対峙する総帥アルト。来栖の前に盾のようになり立ちはだかる。まあ5m以内に接近しなければ襲ってこないキメラに叫んでもあまり意味はないし、キメラに通じるはずもなく。とその声に遅れて、
「い、いきます」
 と背後で来栖の声。できるだけアルトの陰になり、超機械で背後から攻撃しようと言うのだ。アルトから離れれば危ないのは本人が一番わかっている。

 100トンハンマーで全力で硬いと思われる相手を叩き割ることに専念するアルト。背後から超機械でフォローする来栖。ズシン、という衝撃的な音がこだまする見た目力ずくにも見える攻撃方法だが、適宜スキルを使っているので見た目よりは効果が高い。同時に複数は相手にできないので、囲まれないように注意しつつ、である。
 結果、思ったよりは多少スムーズにキメラを叩き割ることに成功。ブレードをかわしながらなので多少余分な体力を使ったかもしれないが、である。
「危なかったですの」
 背後で来栖。こうして何体かのキメラは彼のハンマーの餌食と化したのである。がいずれにしてもかなりの体力と腕力の必要そうな戦い方には見えるのだが。

 そのさなか来栖がなにやら人影が岩壁に沿ってうずくまっているのを発見する。どうやらまだ負傷して動けない民間人が!

「あそこのケガをした人を助けないといけないのです」
 と来栖。とっさにそばにいたキメラに対し囮になりケガ人から注意を背ける。その間にけが人の救助を要請する来栖。これまた勇気あるレスキュー隊員が決死の行動で負傷者を運び出す。間違えば自らも巻き添えになる危険を顧みず死地に飛び込み人命救助を優先した人々である。戦闘後、このけが人に【拡張練成治療】を施したのは来栖である。
「危なかったですの」
 囮になっている間、危険な目にあっていたであろう彼女。間一髪だったのだ。
「ふはははは。その程度ではまだまだだな。その程度では俺は倒せん」
 とばかりに挑発?するアルトの立ち姿がどこか神々しく?も見える。

●〜傭兵vsハニワ(その3)〜
 お互いに死角をフォローしながらキメラに相対するリゼットと八尾師。事前に現場の地理を把握していたリゼット。その地形は熟知していたであろう。
 接近し当初剣で応戦していたリゼット。やはり予想以上の硬さに機械剣に持ち替え知覚攻撃に切り替える。これが奏功したのかキメラにダメージが通るように。もちろん2本の腕状の刀と、飛翔ブレードには要注意である。
 10秒間隔のそれは避けるか、不可能ならば剣で叩き落すなりしてほとんど0距離まで接近してきたのだ。最後にキメラのダメージ甚大とみるやスキルでトドメをさす。
「そろそろ還ってもらいます。土に」
 と破壊を試みる。両腕と頭を切断し、キメラをハニワ?の残骸のような骸にするリゼット。

「なんだかもったいない気がするんですが」
 と思いつつ、キメラなので退治せざるを得ない八尾師。彼女、戦闘開始直後に全員に【練成強化】を施していたのだが、戦闘中も味方に【練成強化】を試みつつ、自身の戦いではリゼットと離れない戦いを心がける。同じ相手を優先的に同時に狙うのだ。獲物はスパークマシン。知覚兵器なのでダメージの通りはそれなりに高い。とにかく囲まれない事を常に念頭に置いた戦い方である。
 2人から同時攻撃を受けたキメラが胴体を横なぎに切断されその場に転がった。

●〜傭兵vsハニワ(その4)〜
 後衛の風間のフォローの元、シエルクラインを乱射してうれしそうな黒瀬。練力を使うのが難点だが、それでも一度に20発の弾丸が一斉に飛び出す様は壮観である。さらにそれに合わせ風間が連携射撃する様は見ていても壮観にすら見える。本人大いに満足そうである。古代の遺跡を破壊している、とう背徳にも似たドキドキなスリル感がたまらないらしいのだ。こんなうれしそうに戦闘する傭兵もあまりいないかも知れない。
 ブレードを回避し、さらに接近すれば【炎舞】の出番である。スキを見ては大上段から真っ向叩き割る攻撃も見せる。
「ハニワ割り〜〜」
 どうやら真っ向からカチ割るのが好きな傭兵が多そうである。
「全部壊すのもったいない!」
 何回でも言うが、相手はキメラなのだが。
「アルトさん、がんばってるな」
 といわんばかりに他の班の動きにも注視し、自分だけの突出は避ける。

「何かしら、アレ? 冗談?」
 とは風間の初対面のハニワキメラの印象である。だが予想以上の手ごわさを実感することに。黒瀬を支援しつつ
「ほらほら。しっかりしな」
 と前衛の黒瀬に檄を飛ばす余裕? だが弱った相手を見れば容赦はしない。【強弾撃】に状況により【貫通弾】を載せ一気にケリをつけにかかる。相手が多少固くてもこの一撃は強烈である。
「これでも食らえ!」
 風間の渾身の一撃がキメラを吹き飛ばす。さらに1体。あとにはゴミの山としか見えない残骸が残るばかりである。

●〜フィナーレ〜
「終わりか‥‥」
 あたりが静寂に包まれる。静かに刀を納める紅鬼。
「いや〜。固かったな」
 と湊。実感がこもっている。
 初戦闘の緊張のせいか?喉が渇いた来栖。水筒の水に手をかけ一言。
「不思議なキメラさん。なんでハニワの形をしていたのかしら?」
 とけげんそうに、キメラだったものの残骸を見渡す。それはもはや見た目は完全に奇形のハニワにしか見えない。もっとも考古学的価値などないが。
「でも。このゴミの山どうしましょう」
 と風間。確かに見れば粗大ごみにしか見えない。しかもリサイクル不可能である。

「やはりまだ完成の域には程遠いな。さてコレクションとしてひとつ‥‥」
 皆から離れ、こっそりそのハニワもどき?の残骸たるカケラを持ち帰ろうとする軍団総帥。それは確実に彼の埴輪愛好家としての信念に似たものすら感じさせられた。

結果:成功
傭兵達の被害:何人かカスリ傷程度
戦利品:『ハニワ』のかけら?1個

でこの依頼は達成された。