●リプレイ本文
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ドシ、ドス、ズガ‥‥。大地を踏締めるようにして悠然と我が物顔で田園地帯を進む4つの巨大な影。
ゴーレムは何者も妨げるものが存在しないかのように歩を進める。ヤツラにとっては、1台のUPCの偵察車両など蟻にしか過ぎないのだ。縦1列ほぼ等間隔で平然と進むゴーレムの行く手にあるものは?
そんなゴーレムを阻止すべく一路赴く傭兵達と8機のKV。
「傭兵とは斯くも便利なもののよう‥‥」
と愛機ウーフーのコクピットの中で思う月森 花(
ga0053)。その心はすでに無人地帯になった演習場に向けられているのか?
「‥‥けど、新人に無様な姿は見せられないから‥‥ね!」
と自分で自分を鼓舞する。
「この覚醒変化のおかげでまともな依頼をこなすのは久しぶりですね‥‥頑張りませんと」
とつぶやく 王 憐華(
ga4039)。最初の依頼から始まってすでにどのくらい彼女の胸は成長したのであろうか? 覚醒のつど少しずつ大きくなる胸。そしてまた今回も?
「訓練演習場に襲撃とは、撮影ののエキストラ志望ですか‥‥?」
と演習場に向かっているゴーレムに思う金城 エンタ(
ga4154)。陽光に赤い悪魔が映える。
「有人機だろうと、関係ない‥‥。敵はすべて倒すのみ」
普段物静かな瑞浪 時雨(
ga5130)。覚醒してもほとんど変わらないらしい。
今回、雷電で馳せ参じたのはアズメリア・カンス(
ga8233)。
「退却が済んでいても、演習場を破壊されると後々面倒だからそちらも防ぎたいわね」
すでに無人になった演習場はもう目と鼻の先である。遠目にもその周りと風景の異なる一帯が視界に捉えられるほどに。
「訓練機が、01H。少し、羨ましい、です。無事に、お仕事、終わったら、少し、見学、とか、したい‥‥」
と自分と同じ機体が訓練機であるということに興味津々の ルノア・アラバスター(
gb5133)。メタルレッドに塗装されたその機体が見るものの目を引き付ける。
「どうも統率の取れた相手みたいですね、慎重にね。」
と仲間に呼びかける 望月 美汐(
gb6693)。愛機は「メルクリウス」と名づけられたウーフーである。そして最後。
「いきなり派手な依頼を受けたもんだが、まぁ、装備とかもそれなりに調ってるし、訓練通りにやってりゃ」
とローゼ・E・如月(
gb9973)。KV戦は今回が初めて。しかもその緒戦の相手がゴーレムである。いささか重荷とも思えなくもないが、本人はそんなそぶりは微塵も見せない。その機体は「ヘルヘブン250」である。ゴーレム相手にどこまでやれるのであろうか? 一抹の不安。
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UPC軍が直前まで使っていたそこは、見るからに演習場といった雰囲気。低い岩山には演習で開いたと見られる無数の弾痕と地面にもいくつもの大小の穴が。KVで戦う際もあまりにも大きな穴には注意しなければならないような地形。ただしさえぎるものはほとんどない。足元の砂地はKVの巨体をささえるには十分な硬さをもっているようである。
先に現場に到着したKV。演習場端の簡素な滑走路に降り立つと直ちに変形し、ゴーレムに備える。
今回立案した作戦。それは4機ずつ2列に前後で分かれ、敵と遭遇したら、前衛の一部がが左右へ展開し、後衛が敵を引き込むように囮となって後退し、敵が引き込まれたところを挟撃する、というのが大まかな流れ。むろん敵の動きにあわせてお互いが孤立することのないように緊密に連携する。整然と敵をまつ8機のKV。
やがて‥‥。
「‥‥来るよ!」
月森のウーフーのレーダーに機影を映すゴーレム。KVをはるかに凌駕するプロトン砲の射程まで間もなくだ。緊張する傭兵。砲撃戦では絶対的に不利なKV。なんとか接近戦にまで持ち込みたい。味方火砲の射程に入るまでのわずかな時間だが、だだ耐えなければならない時間でもある。
「一番槍ならぬ、一番射撃は私がもらいます‥‥」
ゴーレムがD−02の射程に入るのを待つ王。
敵4機の連携を崩すべく突撃し、集中攻撃をかける心積りの金城。その経験は豊富で培った技術は高い。
新兵の格闘戦の見本となれるような格闘戦を演じることを心がける。
スラスターライフルで弾幕を張り、接近戦に持ち込みたいアズメリア。ソードウィングがきらめく光を放ち、KVのその巨大な半月刀が不気味である。
すでに敵射程にKVがすべて捉えられる距離に。いつ攻撃を受けてもおかしくはない。傭兵誰もがこれからしばらくの間がつらい時間であることを覚悟していたはずなのだが‥‥。
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ゴーレムは相変わらず縦1列のまま悠然と行進してくる。とっくにその射程にKVを捉えているはずなのだが、一向に撃ってくる気配がない。むしろ目の前に何もないかのようになんら変わることなく進んでくる。
たいていはその射程に物を言わせ、先制攻撃でKVの耐久を少なからず削りとってきたゴーレムが、である。
まるでそうすることを自制しているかのように、一切砲撃する構えすらみせぬまま、速度も変えず正面から突っ込んでくるのだ。意外と言えば意外である。有利な武器をあえて使わない?
さらに距離接近。すでに肉眼でも視認が可能な距離。その威圧するようなフォルムが徐々に大きさを増してくる。一体何を企んでいるのか。
「お願い‥‥当たって!!」
と王。ついにD−02が先頭を行くゴーレムをその射程に捉えた。轟然と火を噴くD−02。それは先頭のゴーレムに強烈に炸裂する。‥‥が、敵のダメージは見た目あまり感じられない。
作戦通りここでフォーメーションを展開する傭兵。前衛の如月と金城が左右に展開し、月森とアズメリアが前列中方に陣取る。後衛は望月とルノアが囮の動きで意図的に後退し、敵を懐へ引きずり込む意図。王と瑞浪が後列の中央に展開する布陣である。
さらに接近。すでにその巨体が細部にわたるまで識別できる。それは敵も同じ。
「まずは、小手調べ‥‥」
レーザー砲による牽制で相手の動きを探る瑞浪。だが次の瞬間、ゴーレムが予想外の?動きを展開する。
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突如。大きく陣形を変えるゴーレム。傭兵達の目の前で逆三角形の陣形をとる。3機が前列横1線。1機がその後方中央に1機。しかも間隔をあけない密集体型。フォーメーションの乱れのない完璧に統制のとれた動き。これこそが今回の敵の真のすごさなのでもあった。それはゴーレムのパイロットの練度の高さの証明でもある。
「喰らいつけ‥‥叛乱天使《リベリオンドールズ》!」
重機関砲やアテナイを起動させ敵の分断を試みる月森。だが敵は慣性制御を巧みに利用し、KVの攻撃のダメージを軽減しつつ、傭兵達の試みにも動じない。
味方の背後からD−02と小型帯電粒子加速砲で応戦する王。だが、敵の陣形は乱れない。接近戦に持ち込まれれば不利な【純天銀穹姫】。前列中央のゴーレムから放たれるフェザー砲が後列の囮班に炸裂する。
かたやゴーレム。有利と思われた砲撃戦ではなく、あえて接近戦に持ち込もうかと言う構え。挟撃のために左右に展開した如月と金城に肉薄する。
「狙い撃ちにされない様、不規則な跳躍を交えながら間合いを」
敵の銃口を見極めつつ、左右への跳躍を交えながら接近する金城。
「銃器は‥‥詰めれば、怖くないのですよっ‥‥と!」
目の前に迫る巨大なゴーレムの弱点を探る。そこへ0距離へ肉薄したゴーレムがソードを打ち下ろす。強烈な一撃だが、ディアブロは耐える。
「破壊すると優位に立てる部位、破壊しやすい部位を狙いましょう。ねらい目はここ」
とまるで教官ばりの口調で解説しながら攻撃する金城。
「相手が何物であっても、段階を追って弱らせていけば‥‥」
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前衛を護衛しつつ望月とあわせてゆっくり後退していくルノア。あえて後退することで、まるで魚網のようにゴーレムを引きずりこもうとする。押されているように見せかけるのだ。敵を射程に捉えるや重機関砲を中心にSSライフルを本命に攻撃する。
「弾幕で、その、装甲を、削り、取って、上げます!!」
高火力兵器の回避を優先、致命的な箇所の被弾は避ける様心掛けつつ、協調を保ちつつの攻撃である。
同じように望月。ルノアとわざと押されているように見せかけながら後退防御し、味方が攻撃を加えられる様に仕向ける。
「引き付けます、今の内に攻撃を!」
そこへフェザー砲の一撃が。ブースト使用で回避する望月。
「避けれる? いえ、避けてみせます」
だが。そんな傭兵達の意図を知ってか知らずか、その囮の誘いには乗ってこないゴーレム。KVと接触するや前進をやめ、1機が後退していく囮にフェザー砲を浴びせる。囮作戦が効果がないことを知った傭兵。やはり今回のゴーレムはタダ物ではなかったのだ。
そして、次の瞬間ゴーレムが突如行った行動とは!
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突如、敵がその位置を変える。いや正確にはローターが回転するようにゴーレムも動いたと言うべきか。
向かって前列右の敵が前列中央へ。前列中央が前列左へ。前列左が後方へ、そして後方が前列右へ‥‥。まさに回転するかのように位置取りを変えたのである。それも一分の隙もなく、である。そしてまた何事もなかったかのようにKVに対峙する。それが規則的にほぼ等間隔で、戦闘の合間に行われるのだ。常にめまぐるしく眼前の相手が変わる傭兵達。
そればかりではない。後方に下がった1機はその機体位置を巧みにずらし、囮部隊にフェザー砲を浴びせる。
「電子戦機だからって‥‥なめると火傷するよ」
烈火のごとき月森の攻撃。だがゴーレムに致命傷は与えられない。
「SESエンハンサー起動。私の敵を射抜いて‥‥、純天銀穹姫!!」
王が前衛を援護する。がゴーレムはそれを無視し、前衛機の耐久を削る。
「これが私のスペードのエース」
規則的に入れ替わる相手の動きにあわせつつ、DR−2の射撃とエンハンサーを組み合わせていく瑞浪。だがゴーレムはソレを受けとめる。十分なダメージが通らない。
「ここで止めさせてもらうわ」
敵が誘いにこそ乗ってこなかったがそれで勝敗が決したわけではない。前に出るアズメリア。
それにあわせて盾役にもなり、後衛へのダメージを少しでも減らすべく仕掛ける。目の前にはソードを振りかざすゴーレム。後衛の援護の邪魔にならないように位置取りを考えつつの攻撃。だが、規則的に動く相手にマトを絞りにくい。
「目標、確認。攻撃、開始、します」
ルノアの叫び。中央にいるゴーレムに直撃を浴びせる。だが敵の規則的な動き。KVの攻撃を受けつつも常に動いている相手に的確に当てるのはなかなかに困難のようだ。
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前衛から挟撃のために、ヘルヘブンで展開した如月。だがKV戦初体験の彼女に、ゴーレムは重過ぎる相手だったのかも知れない。目の前のゴーレムに貼り付き接近戦を試みた。ヘルヘブンの特殊能力を解放し、敵に突撃する。だがゴーレムのその耐久力の前にほとんどダメージは与えられない。さらに傭兵達の弱点と見たか、目の前のゴーレムからの強烈な一撃、とさらに後方にいるゴーレムが微妙に射線をずらし狙い撃ってくる。
「おっと、隙ありだな!」
と反撃するが、ゴーレムが逆にたくみに誘い込みカウンターを浴びせる。可能な限り高速二輪モードを維持しているのだが、細やかな動きができない分回避が困難になる。
「おぉっ!? 危ないな」
だが苛烈な攻撃がヘルヘブンの耐久を奪う。それも確実に容赦なく。コンソールにレッドのランプが点滅し始める。これ以上は危険、そう判断したのかブーストで撤退を図るが、コレを見切られたのかゴーレムの直撃を受ける。それはコクピットへの痛烈な一撃となる。危険な状態が目前に迫っていた。
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そんな状況に気がついていた傭兵もいただろうがゴーレムの攻撃は苛烈で容赦ない。
突如、すさまじい轟音とともに何かが破壊される音。前衛でがんばっていたヘルヘブン250がついに爆裂したのだ。如月は無事か? と誰もがそう思ったことだろう。それがKVの陣形を乱す。だが同じ頃1機のゴーレムからも爆発音が。誰かの攻撃がクリティカルを生んだのか?
「フォローを!!」
誰がが叫ぶのに呼応して、ゴーレムがついにそのパワーを全開にしたのだ。
プロトン砲の閃光が後衛に浴びせかけられる。金城や月森、アズメリアの奮闘でさすがのゴーレムのダメージも大きくなっている。だが相手も必死。撤退は考えていないようだ。1撃また1撃。前衛機がその射線をふさぐべくフォローにはいる。ゴーレムは傭兵達の弱点を見抜いたようだ。それがヘルヘブンであり望月のウーフーなのだ。
前衛の攻撃を無視し、あえて弱点を徹底的に狙うゴーレム。まさか刺し違える覚悟でもあるのだろうか。
如月機がいなくなったことで、そちら側にいたゴーレムが一気に、後衛側にまで侵入してくる。それはこの状況とは思えぬ苛烈なスピードだった。
「すいません。撤退します」
ついに望月のウーフーが悲鳴を上げた。これ以上は危険だ。そう判断したのだ。やむなく撤退。だがゴーレムも追撃する余力はさすがになかったようだ。これで2機。さらに態勢が崩れる。だが敵もさすがに仕掛けるには練力が厳しくなったようだ。
最後はノーガードでの打ち合いの様相すら見え始める。
「こんなところで落ちるわけにはいきません」
最後の?練力を振り絞り回避する王。あと1〜2撃食らえばアウトであることを承知しているのだ。
「対人型兵器の場合、人対人の格闘技術も、応用可能です」
とばかり、格闘戦の上、相手ゴーレムを引き倒す金城。すでに素手での殴りあいすら始まりそうな状況が見えつつあった。
「エースは切ったけど、ジョーカーまで切った覚えは無い。墜ちて!」
目の前に迫ったゴーレムへ雪村によって一撃必殺を狙う瑞浪。敵味方入り乱れての混戦のさなか、死闘を繰り広げるKVとゴーレム。その結末は‥‥
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静寂は突如やってきた。最後のゴーレムがゆっくりと巨体をひざまずかせ地面に崩折れた。
どのくらいたったのだろうか。あたりは敵のものとも味方のものともつかぬ無数の残骸と、爆裂したゴーレムの無残な姿でおおい尽くされていた。
だが。勝利の余韻に浸れる傭兵は誰ひとりなかった。
「立場が違えば私がそっちだったのかもしれない。」
と瑞浪。その勝利の代償はあまりにも大きかった。無傷なKVは1機たりともなく、愛機が爆裂した如月は、脱出装置によってかろうじて生命は取り留めたものの、かなりの重傷。機体が大破した望月は、修復までかなりの時間がかかるほどのダメージを負った。傭兵達に笑顔はなかった。
こうして‥‥。
「無事に終わってうれしいですけど」
と帰還後ひそかに悩む王。なるほどまたしても、か。
かくして8人の戦乙女たちによる激烈な戦いは終わり‥‥、あれ? なんか妙だ。8人のお・と・め? その言葉になにやら異様な違和感が。1、2、3、4、5、6、7、‥‥あ、あれ?
了