タイトル:【灰被り】鐘を鳴らすなマスター:ドク

シナリオ形態: ショート
難易度: やや難
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/12/27 22:32

●オープニング本文


 庸兵達を招いた意見具申会から数週間‥‥アッシェンプッツェルの開発は順調だった。
 防御力の向上と、機動力の確保の両立‥‥とある庸兵の案からこの発想に至った加賀美・命率いるプロジェクトチームは、胸部を中心とした装甲全体を強化するのでは無く、一部の装甲‥‥特に胸部を中心とした上半身に強化を集約する事で問題をクリア。
 ともすれば武骨になりがちな装甲の強化も、洗練したデザインを追い求める命の手によって、まるで甲冑のような美しさを持たせる事に成功していた。

 次に固定武装である機盾槍「ヴィヴィアン」の威力の向上と、軽量化。
 これも、予想以上に低く済ませる事の出来たコストを、当初想定していた水準にする事で、困難とされていた威力向上と軽量化の両方を成し遂げる。

――そして、本格的に開発が始まってから約数週間という異例の速さで、とうとう実用に耐える試作機を組み上げるまでに至ったのだ。



 しかし、ここに来て彼女達にとって最大の危機が訪れようとしていた。



 英国工廠の会議室――そこに、椅子を激しく蹴倒す喧しい音が響き渡る。

「‥‥ちょ〜〜っと!! 一体これはどういう事よっ!!」

 目の前の男に向かって、命が襟首を掴まんばかりに食って掛かる。
 咄嗟に周囲にいた者達が慌てて止めるが、彼女の怒りは収まらなかった。

「つい先日組み上げたばっかりだってのに、いきなり試作機を使った公開コンペディション!?
 まだロクに調整も動作テストもやってないってのに、頭沸いてんじゃないっ!?」

 命の怒りの理由‥‥それは、目の前の男‥‥英国工廠の幹部からのアッシェンプッツェルの試作機を使用した試験実施の一方的な通達だった。
 現場にいる命達はおろか、クルメタル側にも事前の話は一切無し。
 しかも、既にスポンサーや軍には話をつけてしまっているため、取り消す事も非常に困難という、はっきり言って「暴挙」と言って良い所業であった。

「‥‥言葉を慎みたまえ、加賀美・命」

 だが、英国の重役は彼女の叫びに耳を貸さず、居丈高な態度で彼女をねめつける。

「アッシェンプッツェル開発の予算の大部分を提供しているのは、何処の誰だか言ってみたまえ。
 君達がここにいられる事事態、温情に近いという事を忘れたのかね?」

‥‥更に問題なのは、この常識知らずのこの男が、開発計画の財布の大部分を握っている事だった。

「それはそれっ!! これはこれよっ!!
 ともすればここまで纏まってた話を台無しにするようなふざけた真似‥‥ぜ〜〜ったいに認める訳にはいかないわっ!!」

 それでも、命は屈せずに反論する。
 もし仮に、そのコンペディションの場で何かトラブルが発生した場合、それはスポンサーや軍の人間が抱くアッシェンプッツェルの性能と信頼性に大きな傷を付ける事になる。
 ともすれば、スポンサーが撤退し‥‥開発が大幅に遅れる所か、凍結だってあり得る事なのだ。
 命達現場の人間は、その危険性を幾度と無く発言しつづけたが、その返答は悉く『ノー』。
 この男は、金勘定しか頭に無く、兵器開発のイロハなど全く分かっていないのだ。

「‥‥ともかく、これは『高度な政治判断』だ。
 君達がどんなにさえずろうが、覆る事は絶対に無い」
「‥‥っ‥‥!! じゃあ‥‥じゃあ‥‥もしただのトラブルじゃ済まなくて‥‥テストパイロットに危険が及ぶような事があったらどうすんのよっ!!
 アンタ達の儲け主義が!! マヌケな判断が!! 人を傷つける事になんのよっ!?」

 命のまるで血を吐くかのような絶叫――それは、その場にいた開発チームの面々を代表する言葉だった。
 自分達が作ったものの不手際で、人が傷つく‥‥それは自らの技術を誇りに思う者達には我慢がならない。
 ともすれば人を傷つける兵器であっても、それは同じなのだ。


――しかし‥‥命の全身全霊の言葉は、重役には届かなかった。

「‥‥安心したまえ。彼らは能力者だ――そう簡単に死にはしない。
 それに、『何が起こるか分からない』のが戦場の常だろう?
 どんなトラブルであっても乗り越えて、初めて兵器と呼べるのではないかと思うがね?」

 ふん、と鼻を鳴らすと、彼は命を振り返りもせずに会議室を出て行く。

「‥‥っふ‥‥ざけんなっっっっ!! アンタ‥‥アンタみたいな奴がいるからっ‥‥!!
 現場で命賭けてる人達の犠牲が無駄になんのよっっっっ!!」
「加賀美っ‥‥!! こらえろ!! こらてくれっ‥‥!!」
「畜生‥‥ちくしょ〜〜〜〜〜〜うっ!!」

 英国の、クルメタルのスタッフが必死に抑え付ける間、命は激しく泣き叫び続けた。



――その数日後、コンペディションの会場の隅に設けられた格納庫には、四機のアッシェンプッツェルの試作機と、そのテストパイロット、そして仮想敵役の庸兵達がいた。

「‥‥コンペの直前だっていうのに‥‥手間かけさせて、ごめん」

 彼らの前には、濃いクマを作り、目を真っ赤にさせた命と、開発チームのメンバー達が揃っている。

「‥‥事前に説明した通り‥‥この試作機はまだ未調整で、本当だったらテストになんかとても出せない代物なの。
 だけど‥‥あのクソったれな重役は、それを強行した‥‥自分の手柄と利益のためにね」

――勿論、命達も黙ってそれを見ていた訳では無い。
 限られた時間で可能な限りテスト中止を要請し、それと同時に、試作機のトラブルを防ぐ手段をありったけ講じて来た。

「――けど‥‥時間が足りなくて‥‥予想出来る主なトラブルの予想と、その発生率の減少‥‥そして、その対策ぐらいしか取れなかった‥‥っ!!」

 命が血も滲まんばかりに‥‥いや、実際に拳から血を垂らしながら、拳を握り締める。
 クルメタルの室長も、正式な抗議を出してテスト中止を進言してくれたが‥‥それはある意味「アッシェンプッツェルは技術的問題を抱えている」と吹聴する事に等しく、流石に国外の軍を動かす程の影響力も無かったため、最低限にしか働きかける事は出来ず、結局テスト自体を止める事は出来なかった。

「情けないけど‥‥私に出来る事はここまで‥‥後は、アンタ達に‥‥任せるしかないのっ!!」

 顔をグシャグシャにして泣き出す命――だがそれは彼女だけでは無い。
 開発チームの誰もが、瞳に涙を浮かべている。
 悔しいのは命だけでは無い‥‥彼ら全員にとって、アッシェンプッツェルは自らが腹を痛めて生んだ我が子同然の存在なのだから。

「ようやく完成した『この子』を‥‥シンデレラになれた『この子』の魔法を‥‥解かせないで‥‥おね、がい‥‥よ‥‥!!」

 庸兵達は、泣き崩れる命の肩を励ますように叩くと、機体に乗り込んでいく。
 決して、この凛々しき『灰被り』に、舞踏会で恥をかかせる訳にはいかない。


――まだ、十二時の鐘が鳴るのは早すぎるのだから。

●参加者一覧

水上・未早(ga0049
20歳・♀・JG
セラ・インフィールド(ga1889
23歳・♂・AA
刃金 仁(ga3052
55歳・♂・ST
龍深城・我斬(ga8283
21歳・♂・AA
リヴァル・クロウ(gb2337
26歳・♂・GD
ハミル・ジャウザール(gb4773
22歳・♂・HG
賢木 幸介(gb5011
12歳・♂・EL
セリアフィーナ(gc3083
14歳・♀・HD

●リプレイ本文

『――それでは、これより英国王立兵器工廠とクルメタルによる合作新型KV「アッシェンプッツェル」の公開評価試験を開始させて頂きます』

 この日の為に演習地の一画に設けられた観覧席に、オペレーターのアナウンスが響き渡る。
 そのアナウンスを聞きながら、傭兵達は自らに課せられた役目を果たさんが為に動き出した。

「自己の利益の為に無理やり実戦テストって、失敗したらそいつに損ねえの?
 それとも、リスク計算も出来ない馬鹿なのか?」

 呆れ半分、怒り半分と言った表情で、龍深城・我斬(ga8283)は頭をガリガリと掻き毟った。

「どうやらあの幹部は自分の立ち居地をまるで理解していないボンクラらしいの。
 英国工廠衰退の原因はアレのような奴では無いのか? 幹部というよりは患部じゃ」

 刃金 仁(ga3052)が肩を竦めてフン、と鼻を鳴らす。

「‥‥アッシェンプッツェルが売れれば、その幹部を含めた英国工廠が儲かる‥‥まるでシンデレラがお嫁に行ったら王国から意地悪な継母に支度金が支払われた、かの様なこの状況、納得は行かないのですが‥‥」

 普段は穏やかなセリアフィーナ(gc3083)も、少し憤慨したような様子で眉根を寄せた。
 しかし、今まで接してきた英国の技術者達は気の良い人物達ばかりであり、彼らの為にも、必ずや成功させなければならないとも思っている。

「涙ぐましい話じゃねぇか‥‥完成形、見てみてぇな」

 賢木 幸介(gb5011)が純白の衣装を纏う、凛々しきシンデレラを見上げながら呟く。

「厳しい状況‥‥ですね‥‥せっかく良い機体ですから‥‥何とかクリアさせましょう‥‥!」
「必ずや、この子達に魔法をかけて見せましょう」

 それらの障害を乗り越えるためにも、ハミル・ジャウザール(gb4773)とセラ・インフィールド(ga1889)は共に試作機を前にして決意を新たにした。

「さて‥‥雑談はその辺にして、行こうか皆」

 リヴァル・クロウ(gb2337)がパンパン、と手を叩いて仲間達に呼び掛ける。
 それに従い、傭兵達は各々の割り当てられた場所へと移動していった。

「ごめん、恥ずかしい所見せちゃったわね‥‥後はお願い。
 インターバルの整備は任せて」

 涙を拭い、立ち直った命がその背に向かって声を投げかける。

「‥‥培ってきたもの全てを使って性能を出し切り、かつノントラブルで戻って来られるよう最大限努力します。
 出来る事を全力で、がモットーですから」

 それに自信を漲らせた微笑で応えると、水上・未早(ga0049)はリフトに飛び乗り、試作機の中へと乗り込んでいった。



――事前に命達から説明を受けたため、あらかじめ各試作機が抱えた欠陥は頭に入っている。
 それぞれA機にセリア、B機に水上、C機にセラ、D機にリヴァルが搭乗し、機体のチェックを行い、起動させる。

「A、B機共にパリングとツヴェルフのどっちか使える方で知覚防御は出来るんだな?」
「――うん、二機とも不調が起きてるのは片一方だけ。
 不調の起こってない特殊能力だったら、今すぐ実戦に放り込んでも行けるわ」
「ふむ、それは重畳。模擬戦の時に参考にさせて貰おうかの」

 各機のコンディションを命達が操作するモニターで眺めつつ、龍深城と刃金は各機の状態について次々と質問をぶつけ、それを搭乗している者達に伝えていった。

『それでは第一試験――試験用ターゲットへの、PCによる突撃試験を行います』

 試験開始を告げるアナウンスが響き渡る――それに従い、セリアの乗るA機が歩みを進める。

「‥‥うん‥‥洗練されているけれど‥‥基本はパラディンと変わりません、行けます!」

 機体の各部を動かしつつ、感触を確かめたセリアは、しっかりとした足取りで演習場へと向かって行った。

「では‥‥僕達も‥‥行きましょうか‥‥」
「おう。さーて‥‥俺達は模擬戦までは見学にしゃれこむとするか」

 ハミルの声に応えて観覧席へと向かいながら、大地を踏みしめるAPを見つめる賢木。
 その目は、冷静に性能を見極める研究者のものでありながら、ワクワクとした年齢相応の少年の光を宿していた。



 閲覧席には、各国・企業の関係者、そして技術者達がAPの性能を見極めんと目を光らせていた。
 格納庫から姿を現したAPを見て、その洗練された美しさにおお、と声が上がる。


――そして、それ以上に彼らの目を引いたのは、目立つ肩の装甲部分に燦然と輝くクルメタルのロゴであった。


『‥‥貴様どういう事だ。勝手な事を――』
「あら? 何ですか? ‥‥ただの装甲版ですよ?」

 その瞬間、通信機から押し殺した神経質な幹部の声が聞こえるが、セリアはツン、と澄ました笑顔でそれを受け流した。
 この機体は確かに英国から発売されるが、確かにその中にはクルメタルの魂も息づいている‥‥そんな、彼女の悪戯心だった。



 演習場に置かれた、廃棄されたKVを使用したターゲットや、装甲版が一直線に、150mに渡って配置されている。
 その正面に立つと、セリアはヴィヴィアンを構え、大地を踏みしめるかの如く重心を低くした。



――エンジンがオーバーロードを起こし、金切り音と共に早鐘の如きビートで機体を揺らす。



 そしてそれが最高潮に達した時‥‥セリアはパラディンを操縦する時と同じくスロットルを全開にして踏み込んだ。
 ただ、一心に打ち貫き進む事を目指して。


――ガガガガガガガガガガァッ!!


 演習場の土を削り取りながら、試作機が猛烈な勢いで突き進む。
 そしてエンジンや機体の各所から排熱による陽炎を漂わせながら試作機が止まった時、立ち塞がっていたターゲットは、全て弾き飛ばされ、貫かれ、無残な残骸を散らせていた。

「ふむ、確かに威力は大幅に上がっているな」
「――しかし、消費は相当大きくなっているようですが‥‥」
「何、これだけ威力が上がっていればお釣りが来ますよ。それにどうせ一度だけの発動ですからね」

 観覧席の関係者達からは、かなり好意的な意見と共に拍手が巻き起こる。

「‥‥良かった」

 セリアはそれを見ながら安堵した――パラディンで培った経験は、このAPにも通じたのだ。



 そしてA機は模擬戦に向けての整備のために一旦格納庫へと退場していった。
 次に現れたのは、セラの乗るC機、リヴァルの乗るD機。
 その視線の先には、こちらに砲口を向ける剣呑な光を放つレーザーとロケットランチャーがあった。

『試験用とは言え、殺傷力はホンモノよ。
 二人の乗ってる機体なら問題は無いと思うけど‥‥くれぐれも注意して』
「はい、ありがとうございます」
「君達の努力に感謝する。後は、我々が請け負う」

 命の通信に、二人ははっきりと頷いて見せた。
 まず、セラ機に照準を向けるレーザー――それから身を隠すかのように、セラはヴィヴィアンを両手で持ち、待ち構える。
 大型エンジンの余剰電力を溜めたバッテリーが唸りを上げ、護拳部の装甲に紫電が走り、光が覆って行く。

『カウント開始‥‥3、2、1‥‥ファイア!!』

 オペレーターの声と共に放たれる光条――それは一直線にセラが構えたヴィヴィアンの護拳部へと直撃し、その表面のフィールドに弾かれて周囲に光の粒子を撒き散らした。
 それは一見ただ攻撃を防御したという単純な行為に見える。

「これは‥‥中々に快感ですね」



――しかし、それはKVが非物理攻撃をフィールドで減衰させたり、コーティングで弾くのでは無く、『盾で防御する』という初めての光景であった。



 次はリヴァルが機体を進める。
 照準を向けるレーザーとロケットランチャー‥‥しかし、リヴァルは敢えて棒立ちのまま待ち構えた。

『カウント開始‥‥3、2、1‥‥ファイア!!』

 放たれるレーザーと砲弾――それらが着弾するのとほぼ同時に、試作機の装甲からも爆炎が吹き上がり、腰に取り付けられたジェネレーターから光の粒子が吹き上がった。


――轟音と土煙が収まった後には、少々煤で汚れているものの、殆ど無傷の純白の機体がそこにある。


「成程、やはり中々に使えるな」

 その効果はありふれているものの、物理・非物理攻撃を同時に防御したという点はかなりの高評価であった。



「よく動くな。良い出来ではないか。頑張ったようだの」
「‥‥上手くいったせいか‥‥皆さんの評判も‥‥上々のようですね‥‥」

 拍手しながら、刃金とハミルが笑顔を浮かべる。

「――あいつらの努力、無駄にしない為にも‥‥行こうぜ、皆!!」
「おう、鋼の令嬢の実力、見せて貰うぜ!!」

 賢木の呼び掛けに、龍深城が拳を打ち付けて応えた。



 数十分後、演習場で正対し合う、試作機四機と、刃金のゼカリア、龍深城のガンスリンガー、ハミルのS−01H、賢木のフェニックスの四機。

『それではこれより実戦形式の模擬戦を開始致します――カウント開始‥‥』
「さて、負けてやらんからな‥‥覚悟しろい」

 カウントが進む中、刃金が不敵な笑みを浮かべる。

『‥‥3、2、1‥‥状況開始!!』

 オペレーターの言葉と共に、青に変わるシグナル――それと同時に、八機のKVは一斉に飛び出した。
 A、B、D機を前衛に置き、C機がその支援を行うという陣形を取る試作機チームに対し、射撃をメインに攻めて行く仮想敵チーム。

「まずはこいつだ!!」

 まず刃金が前進しつつツングースカで牽制し、前衛の三機が散開したのを見計らい、龍深城がΔレーザーライフルを、D機のリヴァル目掛けてバレットファストを発動させつつ乱射した。

「甘い!!」

 リヴァルはそれをEPで受けると、サイドステップで追撃をかわすと同時に後方にいたセラのC機の射線を開ける。

「龍深城さん、勝負です!!」

 そして20mm高性能バルカンと、ショルダーレーザーキャノンで攻撃・知覚を切り替えつつを次々とガンスリンガー目掛けて放った。

「チッ!! そう簡単に刺し合いで負けるかよ!!」

 龍深城もアクロバティックな動きでそれらをかわすと、素早く反撃する。
 両者の間で交わされる射撃の応酬――試作機は回避型のガンスリンガーに匹敵する回避力を見せ、同時にEPとツヴェルフウァロイテンを駆使して防御を行う。
 それは、強襲・接近戦を重視したAPであるが、射撃戦も十分に行える事を関係者に示す事に成功していた。



 そしてセラが龍深城を抑えている間に、アタッカーを務めるセリアのA機が賢木へと肉薄する。

「喰らえっ!!」
「そうは行きません!!」

 賢木はそれをレーザーカノンで迎撃するが、セリアはEPで受けると、即座に双機刀に持ち替え、矢継ぎ早に繰り出した。
 賢木はトゥインクルブレードで迎え撃ち、オーバーブーストを使って押し込んで行く。
 セリアも再び機盾槍を構え、激しく打ち合う。

「援護します!!」

 だが、そこに水上のB機が飛び出し、バルカンを乱射しつつ接近する。

「うわっ!? この!!」

 咄嗟にレーザーカノンを放つものの、水上はツヴェルフウァロイテンでそれを受け切ると、トラブルを抱えた機盾槍では無く、ディフェンダーで切りかかった。
 そして、程無く、賢木には撃墜判定が下される事となった。



 一方、龍深城と差し合っていたセラは、次第に命中率の差から押し込まれていく。

「‥‥悪く思わんでくれ?」

 更に、リヴァルの追撃をかわしつつの刃金の420mmキャノンの砲撃が放たれる。

「くっ‥‥!!」

 咄嗟にツヴェルフウァロイテンを発動し、防御するセラ――しかし、一度押し込まれた形勢は変わらず、とうとう撃墜判定が下される。
 しかし、彼の機体はゼカリアによる砲撃を耐え切り、撃墜したのは龍深城のレーザーであった。

「‥‥流石は‥‥ゼカリアに次ぐ‥‥耐久力ですね‥‥」

 感嘆の声を漏らすハミル――ならば、これにも耐えてくれる筈だ。
 S−01Hが構えたのは荷電粒子砲‥‥知覚武装の中でも、最高クラスの威力を持つ兵器だ。
 彼はその照準をリヴァルに合わせると、すぐさま引き鉄を引く。

――放たれる光の奔流。

「貰ってはやれん!!」

 リヴァルはそれをRPとツヴェルフを同時に発動する事で受ける。
 その甲斐あって、どうにか耐え切るD機だったが――、

「ジェネレーターに異常発生か‥‥!!」

 予想以上の負荷に、とうとう隠れていた不調が顔を出してしまった。

「ならば、装甲の強度試験と思えばいい!!」

 しかし、リヴァルは構わず前進し、降り注ぐ攻撃をEPと装甲で受け止めると、水上やセリアと協力し、ハミルの機体に撃墜判定を下す。
 不利を悟った龍深城は、後退しつつ射撃するが、バレットファスト用のエネルギーが尽き、リロードを余儀無くされる。

「‥‥今です!!」

 それを見計らい、試作機チームは水上の号令に合わせ、PCを一斉に発動させた。
 その進路上には刃金と龍深城の二人が並んでいる。

「‥‥お手柔らかに頼むぜ?」

 リロードを切らす『フリ』を演じた龍深城は、迫り来る三機のAPを見ながら肩を竦める。
 そして、三機は彼のガンスリンガーを吹き飛ばし、更にゼカリアへと迫った。

「ふむ‥‥見事じゃ」

 そして、三機の穂先はコクピットを貫く寸前で止まっていた。
 非常用の停止コマンドと共に下される撃墜判定――結果は、試作機チームの勝利に終わった。


「散見されたと思う欠陥は、最前線の厳しい整備状況等を考慮し、意図的に残したものである。
 諸兄も御覧の通り、欠陥の有無に関わらず当機の運用性の高さは最前線に耐えうるものである。
 最後に当機が、かの御伽話の様に人々の希望の象徴たる存在として戦場に現れる事を望み本試験を終了する」

 そして、リヴァルのそんな言葉を最後に模擬戦は終了する。
 それは模擬戦中に現れた欠陥を補うと共に、APの有用性を声高に主張するものであった。



「ふむ、素晴らしい。これならば、世に出しても英国の名を汚す事は絶対にあるまい。
‥‥良くやってくれた」

 模擬戦の一部始終を見つめていた英国工廠の社長は、拍手しながら立ち上がった。

「いえいえ‥‥それほどのものではありません」
(どの口で‥‥!!)

 それに、幹部は普段では考えられないほどヘコヘコしながら応える。
 命はそれを不快そうに見つめていた。

「何を勘違いしている――君に言った覚えは無いぞ?」
「‥‥は?」

 しかし、社長は幹部にぴしゃりと言い放つと、一冊の資料を彼に手渡す。
 それを見た瞬間‥‥幹部の顔が真っ青に変わった。

「クルメタルの『知人』が色々と教えてくれたよ――君の行為は、ジョンブルにあるまじきものだ。
 そんなに金勘定が好きならば、経理部にでも行って伝票の計算でもしていたまえ」

 容赦無い降格の宣言に、がくり、と膝を突く幹部。
 それを無視して、社長は命ら技術者達に歩み寄る。

「済まなかった‥‥そして、ここまであの機体を組み上げてくれてありがとう。
 英国を代表して、例を言わせて欲しい」

 そして命の手を握り、がっちりと握手してくる。

「これからも、頑張ってくれたまえ」
「はい‥‥はい‥‥っ!!」

 ようやく報われた気がして、命はボロボロと涙を零した。