●リプレイ本文
●名簿
赤崎羽矢子(
gb2140)
ハイン・ヴィーグリーズ(
gb3522)
橘川 海(
gb4179)
フローネ・バルクホルン(
gb4744)
ハミル・ジャウザール(
gb4773)
鷹谷 隼人(
gb6184)
ピアース・空木(
gb6362)
海東 静馬(
gb6988)
以上、8名の傭兵達でキメラの殲滅に向かう事とする。
●赤き空と傭兵達
傭兵達はまず高速艇に乗り、基地へと向かった。
基地に到着する頃には空は赤く染まり、夕方を迎えていた。
基地に着くと、見張りをしていた兵士が彼らに声を掛けてきた。
「依頼を受けた傭兵の方達ですね?」
その問いに彼らは頷く。
「会議室にお通しするよう言われています。付いてきてください」
ハキハキとした口調でそう言うと、兵士は彼らを連れ基地へと入る。
基地の中はそれほど広くなく、軍事施設として必要最低限の設備があるだけであった。
会議室と書かれた札のあるドアを兵士が叩く。
「依頼を受けた傭兵達が着ました」
「通せ」
兵士がドアを開け、彼らを中に進むよう促す。
会議室は意外と広く、プロジェクターやホワイトボード等、必要なものは全てあった。
また、ホワイトボードには兵士が作った今回のキメラのデータが貼り付けてある。
そのホワイトボード前に兵士たちの上官と思われる軍服姿の男が座っていた。
年はそう若くなく、威厳のある厳しい顔が彼らを睨むように見つめる。
「座ってくれ」
男は必要以上の事は言わない性格らしく、傭兵達が全員座るのを待った。
彼らは男と向かい合うように横一列になり座る。
ドアを開けていた兵士も中に入り、プロジェクターを用意する。
「わざわざ呼び出してすまない。本来ならば自分達でどうにかすべき事だが、この基地にある武装ではどうする事も出来んのだ」
男は淡々とそう語る。表情に変化もない。
「キメラのデータについては一緒に送ったから分かると思うが、もう一度現場の写真と共に説明させてもらう」
そう言うと、男は兵士に合図を送る。
兵士はプロジェクターを起動すると、部屋の電気を消し、スクリーンのスイッチを入れた。
スクリーンが下がると、プロジェクターに現場写真が綺麗に投影される。
兵士の遺体は映されてなかったが、血だまりがあり、そこに遺体があったのは容易に想像できた。
「これが一枚目の現場写真だ。殺されたのは私の部下だ」
男の顔はやはり無表情でそう語る。
次の写真は血痕が点々と続いており、その血痕は奥の茂みに続いていった。
「おそらく、部下を殺したキメラのものだろう。奴らは茂みを使って狩りをするようだな」
「ふむ、敵もなかなか良い着眼をしているな。群れで狩をする。知能も高いのであれば、かなり厄介な相手になりそうだな」
フローネがそう呟くと、
「素早い相手‥‥頭も良いし‥‥難しいですね‥‥」
ハミルも相槌を打つかのように小さな声で呟いた。
その他にも何枚かの写真が映し出され、説明を受ける。
全てが終わるとスクリーンが元の位置に戻り、兵士が今度はホワイトボードを移動する。
「ここに作成した全てのデータがある。これも見ながら作戦を立ててほしい」
男はそう言い終えると、帽子を被り、傭兵達に敬礼をすると、部屋から出て行こうとしたが、
「仇は、とりますね」
と橘川の言った言葉に足を止める。
だが、返事をせずに兵士と共に部屋から出て行った。
「部下のために何も出来ない自分が恨めしいな‥‥」
随伴する兵士に聞こえない声で彼はそう言った。
●月下の攻防戦
夜の草原は静寂に包まれ、虫の声だけが聞こえてくる。
気温も人間が過ごすには丁度よく、綺麗な月が見えていた。
傭兵達はまず、囮と待ち伏せに別れ、行動していた。
待ち伏せ班は更に二つに別れている。
囮である橘川と赤崎が草原を歩く。赤崎は依頼前に傷を負っていた部分の包帯を解き、そこから血が滲み出ていた。
血の匂いで敵をおびき寄せる作戦のようだ。
橘川は暗視スコープで敵の存在を察知しようと茂みを見ている。
待ち伏せ班も自分達の用意を済ませると無線に耳を傾けて待機する。
「夜間戦な、まっ、じっくりといこうや」
待ち伏せ班の静馬が呟く。
橘川と赤崎は茂みに注意しつつ、奥へ奥へと進んでいく。
すると、突然、前方の茂みが揺れた。
二人に緊張が走る。
中からぴょんと何かが出てきた。
野うさぎだ。
野うさぎは二人を見つめると、首をかしげるようなしぐさをし、ぴょんぴょんと他の茂みへと入っていった。
二人はお互いの顔を見つめると、少しだけ笑い、再びキメラの探索を行う。
不意に何かが降ってきた。
それは先ほどの野うさぎの頭であり、二人は野うさぎが入っていった茂みを見た。
何かが茂みの中へと引っ込む。
敵の存在を認識した二人はすぐに行動に移らず、様子を伺う。
敵はまだ一体しか確認できておらず、このままでは全てのキメラは倒せないと判断したからだ。
兵士が襲われた状況と今の状況は似ていた。が、彼女達は戻ろうとせず、留まる。
逃走するための脱出口を確保するため、二人は背後も警戒する。
敵は未だに動きを見せない。
いつの間にか、虫達の鳴き声もやんでいた。
先ほどの茂みからラプトルが頭を出す。
と、その動きを合図にしたように4頭のラプトルが他の茂みから飛び出してきた。
赤崎は瞬足縮地で間合いを取る。
橘川はAUKVをバイク形態にすると、赤崎を乗せ、走り出した。
合計5匹のラプトルがバイクに追いつこうと全力疾走する。
赤崎はバイクに乗りながら、ペイント弾を発射する。
バイクに乗った状態なので撃ちづらく、何発かは外れたが、5匹全部にマーキングできた。
マーキングした直後、ラプトル達の動きが鈍る。
ダメージは無いが、フォースフィールドを貫通し、自分達に何かをつけたのが分かったのだろう。
しかし、ラプトル達はかまわず前進した。
もしかしたら、赤崎の血の匂いがラプトル達の判断を狂わせているのかもしれない。所詮は猛獣である。
橘川は事前に閃光手榴弾を設置した場所にラプトル達を誘導する。
だが、彼女のトラップは見抜かれていた。
閃光手榴弾が設置してある少し前の所でラプトル3体が待ち伏せていた。
赤崎が飛び降りて道を開けようと考えたがそれより早く、橘川がバイクを傾け、激突しないように曲がる。
起爆するタイミングを失い、トラップは発動せずに終わった。
合計8体になったラプトルが押し寄せてくる。
赤崎は無線を手に取ると、
「お客さんが来るから歓迎の準備よろしく!」
と待ち伏せ班に連絡した。
待ってましたとばかりに待ち伏せ班である、ハイン、静馬、隼人が敵を囲むために配置につく。
フローネも、サポートをするべく配置につく。
彼らの前方に橘川と赤崎が見えると、
「来たか。まずは、頼むぞ、ハイン、静馬、隼人」
と、声を掛ける。
それぞれ頷くと、武器を構える。
橘川のAUKVが待ち伏せ班の前方でクルンと回り、止まる。赤崎がAUKVから降り、橘川は生身で銃を取った。
それまで固まって橘川を狙っていたラプトル達は他の敵の存在を認識すると、バラけながらそれぞれに突撃してきた。
フローネがまず、練成強化を掛け、暗視スコープを装備していたハミルと橘川がそれぞれ真デヴァステイターと瑠璃瓶を構え、ラプトル二体に攻撃を仕掛けた。
ハミルの足を狙った射撃は命中し、ラプトルが転ぶ。が、また立ち上がり迫ってくる。
橘川の射撃は当たらなかった。
隠密先行で隠れていた静馬と隼人も同時に攻撃を加える。
二人の存在に気づかなかったラプトルは驚き、一瞬動きを止める。
鋭角狙撃と急所付きを使用した隼人の一撃が動きを止めたラプトルの一体を捕らえる。
「悪いけど‥鷹は‥獲物を逃がさない‥」
ラプトルの眉間に彼の一撃が決まる。
頭を撃ち抜かれたラプトルは動かなくなった。
静馬はAUKVのライトを頼りに近くのラプトルを狙った。
「どでかいの食わせてやんよ?きっと不味いぞ?、まぁだが、それくらいがてめぇらにはお似合いだ!」
彼は狙撃眼と二連射+貫通弾でラプトルを撃ち抜いた。
二体もやられたラプトル達は正気を取り戻したのか、再び突撃を仕掛ける。
再び近づいてくるラプトルを迎え撃つようにピアースが前に出る。
疾風を使用した彼の素早さはラプトルに勝るとも劣らなかった。
「援護頼むぜ、お2人さん♪俺にゃ当てンなよ?」
ハインと隼人にそう言うと、二人は彼を援護するため射撃する。
「さぁて☆逆に狩らせて貰うぜっ♪」
そう言うと彼は一体のラプトルの眼前に立ち塞がるとルベウスで攻撃を仕掛ける。
ラプトルも負けじと鉤爪で応戦しようと引っかく。
だが、ラプトルの鉤爪以上に立派な爪であるルベウスはその爪を切断する。
そして、フォースフィールドをいとも容易く破るとルベウスを胴体に突き刺す。
ルベウスは返しがついているため逃げようと足掻くが逃げ出せない。
ピアースに噛み付こうとラプトルがバツンバツンと口を動かすが届かない。
そんなラプトルを余裕のある顔で眺めると、ラプトルの体をルベウスで真っ二つに引き裂いた。
ピアースに飛びつこうとしていたラプトルもいたが、援護射撃で思うように動けず、そちらに攻撃を仕掛ける事にした。
だが、それらを迎え撃つように赤崎が飛び込む。
彼女は円閃でなぎ払うかのようにラプトル達を食い止める。
彼女を囲むようにラプトルが吹き飛ぶ。
吹き飛んだラプトルの一体を彼女が追撃する。
ハミングバードを突き刺すと、ラプトルは断末魔の叫びを上げ息絶えた。
吹っ飛ばされたそれぞれのラプトルもハイン、静馬、ハミル、隼人が追撃し、倒した。
戦闘は意外にもあっけなく傭兵達の勝利で終わった。
●夜明けと共に
傭兵達が基地に戻る頃には夜が明けようとしていた。
ラプトルを倒した後、彼らは基地に連絡を入れると、すぐに兵士達が走ってきた。
キメラを埋葬しようとしていた隼人だったが、軍の規約に則り、キメラの死骸は兵士達が処理する事になった。
処理をする最中、予想もしなかったハプニングが起こった。
なんと、数体のキメラは死んだフリをしており、兵士達に襲いかかったのだ。
だが、噛む力や引っかく力はもはや弱く、少し血が出たものの、残っていた傭兵達の手で大きな問題も無く、処理された。
フローネは一応、練成治療で兵士達を治療した。
基地に戻ると、最初に会った上官の軍人が彼らを迎える。
その顔はやはり厳しく、彼らを睨むように見つめる。
少しの間、彼らを見つめると敬礼をし、
「傭兵諸君の働きに感謝する!」
と、大きな声で言った。
その言葉と共に彼の眼から涙が流れ、彼はそれを拭おうともせず、傭兵達が帰るまで敬礼し続けた。
●レポート
結果報告:事件解決
キメラデータ:ヴェロキラプトル型キメラ。移動速度は速く、AUKVのバイクにも負けていない。
集団で狩りを行うが、それぞれの個体はそれほど強くなく、脆い。が、死んだフリをするため確実に頭を撃ちぬいて倒さなければ復活の恐れあり。
攻撃方法は爪と牙だが、リーチが短いため、傭兵ではなく一般兵士を襲う奇襲型キメラである。