タイトル:【GR】らす☆くり【WF】マスター:敦賀イコ

シナリオ形態: ショート
難易度: 普通
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/12/11 00:17

●オープニング本文


●GR鉄道計画
 その計画は、カンパネラ学園の関係者を集め、チューレ基地跡を利用する形で、行われる事になった。
 残骸と化した基地は、言い換えれば資材の宝庫でもある。そして、上手い具合に空いた土地を放って置くのも勿体無いだろうと言う事で、話はまとまっていた。
 しかし、かの地にはまだ、敵も多い。
 莫大な資金のかかる事業に、極北と言う観点から工事を請け負ったのは、かつてシベリアに鉄道を通したプチロフ。
 その代表マルスコイ・ボーブルは、作業員達の安全確保を、その条件に求めた。
 さもありなんと頷いた学園側の総責任者は、ウォルター・マクスウェル卿。
 加えて、会長でもある龍堂院聖那、技術部門の責任者はキャスター・プロイセン准将と、それぞれの関係者が、それぞれの役目を持って、再び極北の地へと赴く事になる。

 グリーンランドに鉄道を。

 基地を作り、街を作り、それを結ぶ。絆と‥‥共に。




 オッス! オラ警備兵!
 みんな元気にしてっか? ゴッドホープは今、冬まっさかりで一面の銀世界だぞ。
 なに? グリーンランドは一年中三百六十五日銀世界だろうって?
 HAHAHA! 沿岸部なら春夏にはちょっと雪が溶けて黒い地面が顔を出すものなのさ。傍目にはちょっとした違いだが、通年単身赴任してる身からすればこの差は大きいものなんだZE!
 さて、丁度、クリスマスまであと一ヶ月と言ったところだが、坊ちゃん嬢ちゃん達はいい人が見つかったかい?
 リア充もげろぼっち嫉妬乙なんてさもしい事は言いっこなしにしようじゃないか。
 一人でも二人でも祭日は祭日さ。楽しんだ者勝ちだ。
 巷ではウィンター・フェアリーなんて名前の付いたイベントで盛り上がってるようだしな。
 ただ、グリーンランドでフェアリーといったら『名状しがたいもの』が真っ先に出てきちまうんだが、ま、過去のことは忘れよう。綺麗さっぱり忘れよう。それが世界平和のためってやつだ。

 そうそう、クリスマスといえばサンタクロースだよな。
 俺の目の前にも今、サンタクロースがいる。一ヶ月も前だってのに呼んでもいないのにやってきた慌てんぼうのサンタクロースだよ。
 しかも三匹。きっと名前は「メルキオール」「バルタザール」「カスパー」とか言うんだぜ。特にカスパーは娘を裏切るような気がする。旧劇場版で。
 話がそれたが、サンタはHO-HOHOHOなんて声を出して陽気に笑ってる。その声のせいか、獣型のキメラがわんさかわんさか集まってきてる。
 で、キメラに向かってサンタが袋からフライドチキン(のようなもの)を取り出しては投げつけて餌付けを始めた。
 フライドチキンには強壮効果があるらしく、それを食らったキメラの体が一回り大きくなっていった。
 イタリア系兄弟配管工がキノコを貪り食って大型化するのと同じような現象なんだろうな。

 俺の目の前には今、サンタx3と大型化したキメラがわんさかわんさか。
 このままだと死亡フラグ立てる前に死ねる。死亡フラグなんて無くても人って簡単に死地に迷い込めるもんなんだな。
 と言うわけで誰か助けてくださいお願いします。



●参加者一覧

弓亜 石榴(ga0468
19歳・♀・GP
北柴 航三郎(ga4410
33歳・♂・ER
雨霧 零(ga4508
24歳・♀・SN
エイミー・H・メイヤー(gb5994
18歳・♀・AA
夢守 ルキア(gb9436
15歳・♀・SF
シクル・ハーツ(gc1986
19歳・♀・PN
住吉(gc6879
15歳・♀・ER
フール・エイプリル(gc6965
27歳・♀・EL

●リプレイ本文


 警備兵は困惑した。
 敵にサンタがいれば味方にもまたサンタがいたのだ。

 これで敵が混乱してくれれば、と、赤マントを身につけ帽子を被り、即席のサンタモドキに扮した弓亜 石榴(ga0468)、付け髭とサンタ帽子を装着した雨霧 零(ga4508)、そして、黒いサンタクロースの衣装に気合の半ズボンといういでたちの夢守 ルキア(gb9436
「すっごく寒いケド、ショタっ子はイメージ商売だもん!」
 とは彼女の言。

 クリスマスと言う行事に対するイメージ、もみの木、ジングルベル、トナカイ、サンタ‥‥全世界レベルで伝播していった情報が齎した共同原型は、育ってきた地域環境風習、一切係わり合いの無い人物同士での並列化をこうしていとも容易く実現させてしまう。
「これは‥‥スーパーフラットなアーキテクチュアが生み出すアヘ顔マスターピース!」
「そう、あのキメラは、この時期になると毎年街角に立ってカップルにケーキを売りつけてる奴らと同じ組織員なのは確実! そして年末恒例の行事が昔からあった事とあわせると‥‥バグアのリア充滅亡計画は既に大昔から始まっていたんだよ!」
「な、なんだってー!? リア充が滅んでしまったら、世界はぼっちだらけの暗黒時代に突入してしまう!!」
「私達は気付くのが遅すぎたんだ‥‥!」
 石榴と警備兵がどこかの電波を受信しているその横で、
「パーティー用チキンなんて、ここ数年来買ったことないよ! 今年もサンタになれない僕へのあてつけか!」
 北柴 航三郎(ga4410)が彼女らの論説を裏付けるように、独身男の特有の哀愁を漂わせていた。

「サンタ、サンタですか〜‥‥。子供の頃は無邪気に信じて靴下をぶら下げて‥‥どうすれば袋ごとプレゼントを奪い取って、一人占め出来るか色々と企んでおりましたね〜」
 住吉(gc6879)は在りし日の思い出をいい笑顔とともに語る。
「ありがたくないサンタもいたものだな。しかも、時期的にフライングか‥」
 嘆息とともにシクル・ハーツ(gc1986)が呟いた。
 サンタの姿かたちではあっても、幸福ではなく災禍を齎すキメラなのだから歓迎できようはずも無い。
「聖人の姿のキメラだなんて‥‥不敬極まりないな! 主に替わって成敗だ!」
 敬虔な信徒である、エイミー・H・メイヤー(gb5994)は憤慨やるかたなし、と蛍火を鞘から抜き放った。
「後は私達が相手をする。時間を稼ぐから、今のうちに引いてくれ」
 シクルは警備兵に退避を呼びかけ、風鳥を手に前衛へと躍り出る。
 後はよろしくと頭を下げながら基地へと戻ろうとする姿にルキアが提案を投げかけた。
「オシゴトしたら、パーティーしようよ。クリスマスパーティー」
「あ、いいッスねー。ちょっと官舎の食堂貸切にしてみますわー」
 その提案に警備兵は軽い調子で頷き、力強く親指を立てて見せた。




「人の夢をぶち壊す偽物サンタめ! このサンタクロース・レイが怒りの鉄槌を下してやろうじゃないか!」
 零がジャッジメントを構えれば
「新年のご来光の使者が、悪しき聖夜の使いに天罰を下す!」
 石榴がマントと帽子を取り去ってハゴイタソードを正眼に構えた。

 二人のカッコイイ名乗りが気を引いたのか、キメラが一斉に傭兵達に目を向ける。

「司令塔はあのサンタか。あいつを先に倒してしまえば‥!」
 警備兵の撤退を確認したシクルは、一度後方に下がり武器を持ち変える。
 サンタキメラを狙い矢を放つが、その前にいた獣キメラに突き立った。
 軍用双眼鏡で敵の位置取り、相対距離を確認したルキアは僅かに眉を顰める。
(サンタを何とかしないと、終わらないんだよね)
 出来ることであれば、早めにカタをつけたいと考えていたが、サンタに直接攻撃を行うには、獣キメラという障害物があり些か遠い。

 まずは獣の排除が先決だろうと共通の認識を得た傭兵達が動く。

 攻撃回避を優先とし、後衛へと退いたルキアは拡張練成強化を展開し、仲間の武器を強化。
「セベク神の御加護がありますように」
 自らが信奉する神に祈りを捧げると、フール・エイプリル(gc6965)は強化を受け、淡く光を放つピクシスアックスを携え、白熊キメラに狙いを定め氷床を蹴る。
「斧捌きを見せてあげましょう」
 急所を狙って袈裟懸けに振り下ろされた斧の一撃に、白熊はたたらを踏んで後ろに下がり、その身体を一回り縮こめた。
 斧を支える腕に白い光を纏わせ、間髪入れずに白熊の息の根を止める。
「てぇい! もう、20日くらい寝るとお正月!」
 跳躍しながら襲い掛かってくる兎キメラを石榴がハゴイタソードで次から次へと叩き落して行く。
「ハァッ!」
 エイミーは鋭い気合と共に蛍火を振るい、サンタの傍をうろつく白熊に向かって衝撃波を放った。
 前衛に立ちながら、仲間の射線を確保する事を意識し、サンタ付近の獣の排除を重点的に行う。

 攻防の中、トナカイキメラが数頭横並びになって一斉にアイスブレスを吐き出した。
 噴出した冷気が空気を軋ませながら傭兵達に襲い掛かる。
 咄嗟に横へと跳び退くエイミー。予め自らの肉体組織を活性化させ、抵抗力を高めていたエイプリルは影響を最低限に抑えていた。
「ええい、小癪な!」
 零がトナカイへと仕返しとばかりに銃撃を行う。

(情報によると体が大きくなってるキメラが強化されてるんだね。攻撃能力的にはトナカイと白熊が厄介かな‥‥)
 航三郎はキメラを攻撃する仲間が倒し易くなるようにと、自らの精神力を高め、シャドウオーブを手に、強化されたキメラへと特殊効果をかき消す妨害電波を放つ。
 青白い電波に撃たれたトナカイが一度の痙攣の後に身体を縮ませる。
 続いて白熊、兎とが電波に撃たれて行く。
 ルキアも同様にして妨害電波を放ち、多くのキメラが次々と強壮効果を失っていった。
 サンタキメラもこれに負けじとフライドチキンを四方八方に投げ出すが
「させるか!」
 シクルが弾頭矢を番え、チキンを宙で爆破、微塵に砕いた。
 爆風を受け弧を描いて宙を舞うチキンを石榴はハゴイタソードで打ち返す。
「これが聖夜を越える新年のパワー!」
 スライス気味に回転のかかったチキンはサンタの眼前のFFにクリーンヒットして地に落ちた。
 零とエイミーもそれぞれチキンを狙い撃ち落す。
「いっきますよー」
 住吉が天狗の団扇を振えば、巻き起こった旋風がキメラとチキンをまとめて吹き飛ばす。
 強壮効果とともに密集陣形を崩されたキメラが右往左往する中、住吉は乙女桜を手に疾風迅雷と斬り込む。
「ふふふ、住吉サンタさん参上です。普段からお利口なキメラちゃんに鉛弾をプレゼントしに来ましたよ〜♪」
 白熊に斬りつけ怯ませた後、瞬時に武器を持ち替え、ショットガン20の銃口を至近距離に据え引き金を引く。
「とりあえず‥零距離‥とったぞ〜♪」
 成す術もなく散弾に倒れる白熊。

 傭兵達の猛攻を受けキメラの数は眼に見えて減っていったが、サンタが笑えばどこからともなくやって新手が来る。
 キメラはどこから来るのか、プラントがあるならその方角がわかるか、などを行動しながら観察していた航三郎だったが、集まってくるキメラに規則性はなく、グリーンランドに散らばっていた野良が呼び寄せられているのではないかという結論に至った。

「次から次へと‥このままではジリ貧だな。多少強引にでも切り込んだほうがよさそうだ」
 シクルが再び風鳥を手に、迅雷でサンタの懐めがけて一気に飛び込む。
 それに併せ、零が強化も回復もさせぬと超機械ザフィエルでもってサンタの袋を焼き焦がし、さらには豊かな白髭にも黒焦げに焼きを入れた。
「ふふん、ヒゲが無くなればただのキメラだっ!」
 トレードマークを奪われ、ただのキメラと化したサンタは、その直後にシクルの目にも留まらぬ連撃を受け、敢え無く地に崩れ落ちた。
「色々出される前に退治しちゃいましょう」
 ここぞと航三郎がサンタへと錬成弱体を施せば、瞬天速で駆けた石榴がサンタを切り裂く。
「これぞ神社開運パワー!」
 残り一体、ルキアの援護射撃を受けながら、エイミーがサンタに迫る。
「偽サンタにはおしおきですよ」
 正面接近から瞬時に側面へと回りこみ、蛍火を振りぬく。

 こうしてサンタは全て倒され、残るキメラも難なく退治されていった。
「次はパーティーですね」
 斧を収め、息を吐いたエイプリルの一言に傭兵達は気合を入れなおす。
 彼女らの本番はこれからだ。




 パーティーのため、と官舎の食堂と厨房を借りて準備をすすめる傭兵達。

 獣キメラは戦闘中から鍋の材料と決定していたのか、エイプリルの手によって捌きやすいようにある程度までバラされていた。
 持ち帰ってきた獣肉を鍋料理の具材にと、皮を剥ぎ、骨を取り除き、食べ易いように細かくばらして加工する。
 一連の作業を淡々と続けるエイプリルの姿に、手伝いとして香味野菜を刻んでいた航三郎は手を止め、唸るように呟く。
「‥‥何と言うか‥逞しいな‥‥」
 ある種の畏敬の念を覚えたのは間違いない。

「それじゃあ‥クリスマスには少し早いけど、おっきなケーキを作るね」
 調理用の白衣を借り、腕をまくりながらシクルが意気込む。
「‥‥料理の方は任せるね」
「任せて貰おう」
 ウィンクでシクルに応えるエイミー。
 彼女は予め用意してきた冷凍ターキーにハーブソルトで味付けし、十分に予熱したグリルに入れる。
 その焼き上がりを待つ間に、ポテトフライやサラダや、サンドウィッチなどのパーティーらしい軽食と、シチューやスープなどの身体を暖めるメニューの調理を進める。料理が得意であるだけに、その手際は淀みなかった。

 厨房で調理が進むのと同時に、会場となる食堂のセッティングが行われていた。
 石榴は各テーブルにソフトドリンクを並べ、零は長机にクリスマスソングを奏でるオルゴールを据え置き、ルキアは余興に使うトランプの準備に余念がない。住吉は【OR】ティーセットトランクを広げ、仲間に振舞うハーブティーを入念に選んでいる。


 やがて、準備は滞りなく完了し、兵士だけではなく、鉄道工事に携わる人間をも招待したパーティーが開催される運びとなった。
「我々だけで無く警備兵や周囲の者も呼ぶぞ、楽しんだ者勝ちだからね! 人々の士気も上がるだろうし、そのぶん鉄道も早く完成するしでいいことづくめじゃないか!!」
 とは零の言。
 その通り、娯楽の少ない基地ではパーティーの開催は一切の反発もなく、歓迎とともに受け入れられていた。

 食事は最大の娯楽でもある。
 テーブルにはパーティーメニューや滋養たっぷりの鍋物が所狭しと並べられ、そのどれもが出来たての熱々、味も折り紙つきというものなのだから、参加者のテンションは鰻登りだった。
 食事の供として用意されたソフトドリンクや、住吉特製ハーブティーの優しい味わいが更なる至福へと誘う。

 オルゴールの柔らかな音色をBGMに、賑やかながらも穏やかなひと時が流れる。

 ルキアが頃合を見てトランプを使用したマジックを披露、皆の持ってるカードを当ててみせ、そのトランプがマシュマロになるなど、本職もかくやと言う技の数々に拍手が沸きあがる。
「お見事です」
 エイプリルも鍋を取り分ける手を止め、惜しみなく拍手を送った。

「ケーキ、出来たよ。口に合うといいんだけど‥‥沢山あるからどんどん食べてね」
 クリスマス仕様の着物に着替えたシクルが、特大いちごケーキをカートに乗せて会場に現れれば、どよめきと歓声が各所から上がった。
「おお、なかなか壮観だね」
 一番の目玉として楽しみにしていたケーキの登場に零が笑み崩れる。
「北柴君ー、お茶をくれるかな?」
「はいはい」
 傭兵の中では唯一の男である航三郎。色々と頑張ってくれるという話を聴いていた零は早速、彼を頼りにしていた。
 クリスマスパーティーらしさの演出として、真っ赤なお鼻をつけた航三郎が住吉の元へと赴く。
「ケーキに合うお茶ってあります?」
「では、こちらですねー」
 手馴れた様子でハーブティーをカップに注ぎ淹れる住吉。
 その傍では天使の仮装をしたエイミーが、紳士的に甲斐甲斐しく給仕役を務めていた。(ただし女性限定)
 余興を終え、ターキーを頬張っているルキアの元へとエイミーが優雅な足取りで近づく。
「ルキア嬢、ケーキはいかがかな?」
「うん、ありがとう」
 ケーキの乗った小皿を受け取り目を輝かせるルキア。
「シクル君のケーキ、おーいしー!」
 一口、ケーキを口にして幸福そうに破顔一笑する。

 宴もたけなわ、少女達の笑顔を横に、参加者と数度目かの乾杯をしながら、航三郎は幸せを噛み締めていた。
「美人さん達の手料理ですよ。神様っているんだね‥‥」
 感極まって天を仰ぐ航三郎の肩を、兵士が叩く。
「北柴君、これも何かの縁だ。男同士、親交を深めようじゃないか」
 いつの間にか男性兵士に囲まれていた航三郎。
 その様子に石榴は満足げに頷き、ケーキを頬張る。
「うんうん、これでクリスマスにはリア充化間違いなしだね」
 彼女は今回、参加した傭兵の中で唯一の男性である航三郎へのサービスとして、基地の男性隊員達に「北柴さんは彼氏募集中らしいよ」と宣伝していたのだ。
「え、ちょ、リア充ってそういう‥」
 男性兵士にがっしりと肩を組まれた航三郎がクリスマスにリア充化したのかどうかは、本人だけが知っている。


 そして。

 宴が終わり、会場の片づけをしながらシクルが呟いた。
「GR鉄道‥規模が大きいから仕方ないけど、よく襲われるね。でも、大切なものだし、最後までちゃんと守らないとだね」
 その言葉に傭兵達は思いを新たに、静かに力強く頷いた。

 GR鉄道。
 極北の大地に絆を繋ぐレールが完成するまで、あともう少し。