タイトル:たぶん平和を守るためマスター:敦賀イコ

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2011/05/26 22:33

●オープニング本文


 ロズウェル・ガーサイド(gz0252)は天を仰いだ。

「イケてます! イケてますよガーサイドさん!!」
「よーし、40秒くれてやるからどこがイケてるのか100字以内で答えてみせろ」

 風光明媚な海岸でアニメのキャラクターを模した衣装を身に着けたロズウェルは天を仰いでいた。

 現実でも地方の大型ショッピングセンターや遊園地にキュア情熱さんやキラッ☆の子が出没したりする昨今、コスプレをして出歩く人間がいてもそうおかしくはないといえよう。
 立ち止まってよくよく考えてみるとやっぱりおかしいんじゃね?って思うけれどそんなのは誰も気にしない。
 誰も気にしないものだ。
 コスプレしてる人間が身長185cm、体重84kgの武闘家体型のラテン系アラサー男で衣装がフリルたっぷりファンシーポップな色使いなミニ丈ワンピースでさえなければ。
 その上、顎鬚はそのまま、スカートの下から伸びる逞しい両足にはナチュラルに脛毛が生えている。

「半端無い再現度に私もびっくりです」
 フフフ、とやりきった感に満足げな表情を浮かべる山田 良子(gz0332)にすかさずツッコミを入れるロズウェル。
「いや待て。自分で言うのも何だが、こんなおぞましい造詣のアニメキャラがいるのかマジで」
「ええ。昨今、飽和状態で停滞感漂う魔法少女物の既存概念を覆すべく作成された挑戦的かつ挑発的な新機軸の『燃え』系魔法少女アニメ『相打ち御免! あるてミ♪らぐなロック』のらぐなです。ちなみに二人組みの魔法少女が活躍する話なんですが、魔法なんて飾りです。肉弾戦闘こそ王者の技よ!」
「新機軸どころか魔法少女って概念が最初っから崩壊してんじゃねーか」
「らぐなは女子レスリングの選手に憧れて、毎日の筋トレとプロテイン摂取に余念の無い花の女子高二年生です。鍛えすぎと独自配合しちゃったプロテインと男性ホルモン注射の副作用で見た目がおっさんになってしまったのが玉に瑕」
「それ誰をターゲットにしてんの」
「相棒のあるては前世が三国志の関羽だと信じて疑わないピュア電波系豪放漢女(おとめ)で、チャームポイントは烏の濡れ羽色のさらさらストレートロングヘアー。190cmを越える長身に鍛え抜かれた鋼の肉体から繰り出される唐竹チョップは見るものを戦慄させる威力」
「こっちももれなくマッスルおっさんなのかよ」
「でも、二人とも内面は誰よりも乙女チックな淑女で将来の夢は綺麗なお嫁さんになることなんです。ギャップ萌えを楽しむ作品ですね」
「ギャップにも程があるよね?」
「地方ローカルTVの深夜アニメなので知名度がまったくないところが残念なんですが」
「全国ネットでその設定だったら大問題だろ。いろんな意味で」
 ロズウェルが視聴したら間違いなく過労で倒れるだろう。ツッコミのしすぎで。

 そもそも、何でロズウェルが特殊すぎるコスプレをしているのかと言えば、かねてよりここ、四国は香川県、津田の松原付近にはコスプレをしている人間を優先的に襲うという特性を持つキメラが出没していた。
 三匹いるキメラは大型の猿に酷似しており、コスプレをしている人間を見つけては何処からか現れ、衣装をズタボロにして去って行くという。衣装の制作に魂をこめるコスプレイヤーにとっては不倶戴天の敵である。
 その特殊性から被害こそ軽微であったが、同人乙女である良子が文化否定ともとれるキメラの所業を看過することはできず、学園のニートことロズウェルを巻き込んで四国まで乗り込んだのだった。
 しかし何故津田の松原。何故コスプレ。ここが東京の秋葉原であるなら理由無く納得できる話であるのだが、ともあれともかくその辺はお察しください。

 穏やかな瀬戸内の青い海を目前に、白浜に立つコスプレおっさん。
「‥‥チクショウ、こんなん、知り合いの誰かに見られでもしたら腹切って死にたくなるな」
「ああ、そう思って、予め傭兵に応援をお願いしてもらえるよう先生に言っておきました」
「テメェの血は何色だぁぁ!!?!」
 良子は爽やかな笑顔でサムズアップをして見せた。

●参加者一覧

大泰司 慈海(ga0173
47歳・♂・ER
弓亜 石榴(ga0468
19歳・♀・GP
御巫 雫(ga8942
19歳・♀・SN
白銀 楓(gb1539
17歳・♀・HD
如月・菫(gb1886
18歳・♀・HD
相賀翡翠(gb6789
21歳・♂・JG
南桐 由(gb8174
19歳・♀・FC
ゼンラー(gb8572
27歳・♂・ER

●リプレイ本文


 今回、特筆すべきはこの場にいる全員がコスプレをしている事だろう。
 のどかな初夏の浜辺が異界化していた。

「ダチのピンチは助けてやんねぇとなぁ。‥にしても、凄ぇ姿になっ、ぷっ、はははは!」
 哀れなロズウェル(以下ニート)を前に笑うまい、と心に決めてきたが、どうにも耐え切れず爆笑する相賀翡翠(gb6789
「よく素直に着たなぁ。相変わらずお人好しそうで、あんたらしいな」
 ひとしきり笑った後、励ますようにニートの肩を軽く叩く。
『闇社会を舞台にした妙にリアルダーティなゲームの主人公』のコスプレをした翡翠は、着崩したダーク系のスーツにサングラス、髪型はオールバックという姿。
 煙草を斜めに銜え、喧嘩上等といった迫力を漂わせ立つ彼はどこぞの本職さんと見間違わんばかりだった。元レディース副隊長だった母親からの指導の賜物である。
 それでも、結婚指輪とペアアクセサリーは外していないあたりリア充もげろと言わざるを得ない。
「しかし‥ニートが狙われんのを軽減するとはいえ‥海でこの格好もどうかと思うんだぜ」
「それは気にしない! どこからどう見てもコスプレ撮影会の一団だしね!」
 動き易い衣装を身につけリュックにポスターソードを差込み、首からはカメラを下げた弓亜 石榴(ga0468)が朗らかに笑う。
『相打ち御免! あるてミ♪らぐなロック』(以下『あらグロ』)に登場する『おっかけ君』のコスプレであった。
 武装は全部リュックの中に入っているので有事の際でもすぐに対応できる。
「この格好で実際に撮影もすれば、ロズウェルさんも変態じゃなく、ただのコスプレ趣味のおっさんに見せ掛けられるという寸法だよ♪」
「変態でも趣味でもねーよ!?」
「ガーサイドさん‥嬉しそうだけど‥これは‥お仕事だよ?」
「嬉しくないし!?」
 新番組のプロモ撮影と聞いてやってきた南桐 由(gb8174)の姿は『あらグロ』に登場する助っ人魔法少女であった。
 普段はいかにも魔女っぽい格好をしており、戦闘に入ると衣服を大きなお友達向けのサービスっぽく脱ぎ捨てる。が、お色気担当ではなく、服の下はガッチガチのフルアーマーという、鎧フェチな漢達に向けの燃えキャラだ。作品中、最後の最後まで顔は明らかにならなかったという。
「『あらグロ』は9話が神回だな。キューティ轟凱との壮絶な無駄毛処理合戦は熱かった。町が一つ消滅したし。しかし、轟凱が生き別れの母であったとは‥。胸が熱くなるな」
 サブカルチャーなら任せろー。と言わんばかりに御巫 雫(ga8942)が語る。
 その姿は肩まで肌蹴たミニスカート丈の浴衣、下に着込んでいるのはスク水。成長を続けるバディは胸の谷間がどーんというお色気ぶり。
 雫は『ピキピキ♯(シャープ)脳殺ちゃん☆』という、ギャグ系美少女アニメの主人公で悪魔である脳殺ちゃんのコスプレをしていた。
 キメ台詞は「おまん脳死確定じゃ! 臓器提供さすぜよ!」という些かブラックなもので、悪人の脳を破壊して闇ルートで臓(お察しください)
 今現在では第二期の『グッジョブ♭(フラット)絞殺ちゃん☆』という探偵推理モノが放送中。
「久しぶりだな。息災なようで何よりだ」
「ああ、久しぶり‥息災なんかねぇ‥俺‥」
 柔和な笑みを向けられ、うっかり熱くなった目頭を押さえるニート。
「まっちょばでぃなおっさんが必要と聞いてっ☆来たよっ!」
「あるて役は、拙僧達のためにあったといって過言じゃないよねぃ‥!」
「うわ、うわぁあ!?」
 振り向いたニートの視線の先では大泰司 慈海(ga0173)とゼンラー(gb8572)がそれぞれポージングをキメていた。
「初めまして。ニートくんっていうんだ、変わった名前だね?」
「え、あ‥」
 大迫力の肉の壁x2を目の当たりにして声も出ないニート。
 両名とも身長を出すためにシークレットブーツを履き、頭には烏の濡れ羽色のストレートロングヘアーのカツラを被っている。
 彼らは作品後半、実は双子であることが判明する『あるて』をリアルに再現していた。ファン垂涎の出来映えである。
 慈海とゼンラーはお互いに初対面だとは思えない縁、絆のようなものを感じ取り、がっしりと肩を組んで爽やかな笑顔を浮かべた。
「拙僧は、今、赤く燃えているよぅ! ねぃ! 慈海さん‥いや! あるてよぅ!!」
「二人で立派に、あるて役をやり遂げようっ☆」
【OR】超機械「油」のボディオイルを全身に塗り、筋肉をより美しく演出する彼らの肉☆体☆美!は眩し過ぎた。眩し過ぎて見る者の眩暈を誘った。SAN値直葬モノだった。
「‥お久しぶり‥です。いつも‥(妄想の具として)ありがとう‥です」
「どういたしまして、だよぅ」
 彼らの美に怖気づくこともなく、由が面と向かって日ごろの感謝を口にし、ゼンラーが笑み崩れた。思惑がどうあれ少女に感謝されて悪い気のする者はいまい。

「昔、イベントに連れてってくれた友達も衣装作りとかすごい頑張ってたんです。そんな人達の気持ちを踏みにじるキメラ‥許しませんっ!」
 メイプル・プラティナム(gb1539)は、如月・菫(gb1886)と合わせた某有名魔法少女物のコスプレ衣装に身を包み、キメラへの怒りを顕わに拳を硬く握り締めた。
 銃で戦う黄色の先輩のコスプレであり、割と胸が強調される衣装だったが特に問題なく着こなしている。ちなみに衣装合わせの際、
「なんだか体が軽くなったような気が‥もう何も怖‥え、あれ?」
 と、うっかりフラグを立てていたが何のフラグかは言及しない。
「‥改めて見ると‥凄い濃い集団ですよねこれ‥」
「変態が一杯いる気がするのは気のせいですかねぇ」
 濃厚なカオス空間にメイプルは若干引き気味に、菫は白目で「わけがわからないよ」とまともな感想を呟く。
 菫は幼馴染に恋心を抱くあたしってほんとバカ‥的なキャラのコスプレをしているが、当の本人とキャラの性格がまるで正反対な気がするのは、この際気にしないほうが良いだろう。白い外道珍獣が好きなのだそうだが、さすがに着ぐるみは用意できなかったようだ。
 気まずそうなニートと気持ち悪いものをみるような菫の目線がぶつかる。
「‥似合ってるな、それ。似合ってるだけにすげぇ残念」
 中身は韮だもんな、と嘆息するニート。
「君たちはいつもそうだね。決まって同じ反応をする‥」
 その足を、菫は例の外道珍獣の台詞を呟きながらちょっと強めに踏みつけた。

「それにしても見事な脛毛だ。9話の再現がしてみたくなるんだが」
「ヘッ!?」
 雫に詰め寄られ思わず声が裏返るニート。その肩を慈海ががっしりと押さえつける。
「そうだね、らぐなは内面が淑女‥なのに、このスネゲはいただけないよねっ!」
 シャキーンと擬音つきで慈海が取り出したのは、荒縄と剃刀。
「全身つるっつるに剃ってあげるよ! 俺って優しいな!」
「なにこれ、何の罰ゲームぅ!?」
 奇妙な悲鳴が海岸にこだまする。
「荒縄を打たれ、強引に無駄毛処理‥」
「‥う‥ちょっと‥今からのことを‥想像したら‥萌え汁(鼻血)が‥本番はこれからなのに‥!」
「先輩、しっかりっ!」
「フフ‥山田ちゃん‥今日は‥がんばろうね‥!」
 チーム腐女子は今日も絶好調だった。

 そんなこんなで。

「モデルは恥かしがらずに! 愛を持って成りきる事がコスプレの真髄、って偉い人も言ってた♪」
 石榴はノリノリで一眼レフのシャッターを切りまくる。
 松林で戦闘は猿の有利になるだろう、ということで、海に誘き寄せることを提案した慈海は自ら率先して波打ち際へと走り出す。
「俺‥いや、私‥海が大好きっ★ 海と言えば、波打ち際で戯れるのが淑女の務め‥ッ! さ、砂浜に出てキャッキャウフフするわよっ!」
「合点承知だよぅ!」
 慈海とゼンラーの間に挟まれ引きずられるニート。その様子は宛らFBIに拘束されたリトルグレイのようであった。
 海風にたなびく艶やかな黒髪(ヅラ)が初夏の日差しを受けて輝く。
 悪戯な風がひらふわスカートを舞い上がらせ、水面に映る漢女たちのぱんてぃー。(内訳:トランクス、きわどいビキニパンツ、モザイク)
 その一瞬のシャッターチャンスを石榴は逃さない。
「肌が水を弾かないのは勘弁してね☆」
 慈海のウィンクが飛ぶ。
「‥俺が異常なのかと錯覚しかけるな」
 なんだかんだやんややんやと盛り上がるその場のノリと空気に置き去りにされた翡翠はやや呆然と成り行きを見守るしかなかった。


 こんな愉快なコスプレ祭りに誘われたのか、三匹の猿が姿を現した。
 キーキーとけたたましく鳴きながら傭兵達を物色する。

「出やがったか。息の根は確実に止めねぇとな」
 見通しの良い場所に陣取り、キメラの出現を警戒していた翡翠が真っ先に気づき、得物を手にしキャラになりきったダークな笑みを浮かべる。
「きたわね! コスプレイヤーの敵! 逝くわよ、らぐな!あるて! 肉体美をお披露目する時は今!」
「ぬぅふぅ‥この関羽の生まれくぁわりである拙s‥私達にぃ‥! 逆らおうとはイイ度胸だねぃ!」
 慈海がサイドトライセップスを決め、ゼンラーがフロントダブルバイセップスで応じた。
「じゃ、ロズウェルさんを護らないと♪」
 キメラはコスプレしてる人を襲う習性がある。つまりは、ニートが衣装を脱げば万事解決である。
 そんな二段論法を組み立てた石榴はドヤ顔しつつ、目にも留まらない速度でニートを押し倒し、力尽くで衣装を引っぺがした。
「恥ずかしいけど、アナタを護る為なの‥判ってくれるよね」
「どういうこと!? ほんとどういうことなのッ!?」
 一瞬の早業に成す術もなく身包みはがされたニート。大人の事情によりトランクスだけはどうにかセーフ。
「ふふん。全く貴様は、いつもこうだな」
 護衛のために雫がニートの前に立つ。
「丸腰では話になるまい。武器がある」
 と、目線で示したのは太股に装備している【OR】レッグホルスターに【OR】ダブル・デリンジャー。
「手が塞がっている。すなまいが、セルフで頼む」
 そして雫の手は冷刀「鮪」と秋刀「魚」で塞がっていた。
 つまりは太股の内側に手を突っこんで取れと。トランクス一丁のアラサー男にそれをやれと。
「お前なぁ!? そんな破廉恥なことを言うような子に育てた覚えはないぞ!」
「む!? 貴様に育てられた覚えなどない!」
「ええい! 年頃の娘としてもっと慎みをだな!」
 妙なところで父性に目覚めるニートであった。
「えっと‥」
 やいのやいのと言い合いを始めた二人に呆気にとられたメイプルだったが、気を取り直してマスケット銃に見立てたライフルを構える。
「ま、まあいいです。これ以上悲しむレイヤーさんを出させません!」
 覚醒し熱血分が増量したメイプルの射撃が猿を威嚇する。その間に機械剣βの刃を煌かせながら猿へと切り込む菫。
「もう何も怖くない!」
「はい! 速攻で決めちゃいましょうっ!」
 不敗の黄金龍。エミタに負荷をかけ、瞬間的な爆発力を生み出すスキルの発動。
 菫とメイプルの胸の前面に浮かび上がった竜の紋章が黄金色に眩い輝きを放つ。
 白砂青松の名勝に二対の黄金龍が光臨した。
「これが最後の一撃‥フィナーレ!」
 盛大な爆発。
 ハイパーモードのぶっぱx2に雑魚キメラが耐えられるはずもなく。
 黄金の輝きが霧散すると同時に標的となった猿Aは跡形もなく消えていた。
 発動に残りすべての錬力が必要となるスキルだっただけに、通常状態に戻った二人は素早く前線から退く。
「すみませーん。皆さん、頑張ってくださーい!」

 残り二匹。
 退避する二人を援護するように翡翠が銃撃を打ち込む。
「ダチのよしみで助けてやんぜ。大人しく回避行動でもしてろよ」
 猿の行動を鈍らせるよう的確に急所を狙い、弾丸を浴びせながら、肩越しにニートを一瞥しクールに言い放った。
 その様に盛り上がる二名。
「王子様ktkr!」
「‥だね‥ヘタレを颯爽と助ける‥王子様‥」
 言うまでもないが脳内はそりゃもうすごいことになっている。
 腐女子☆美ジョンの発動を察し翡翠が身を震わせた。
「‥なんか悪寒が‥」
「何やってんだお前ら」
 菫は林檎をかじりながら、爛れたピンク色のオーラを放つ腐女子二人に怪訝そうに話しかけた。
「フフ、男と男のお肌とお肌のぶつかり合いについて‥興味はおありですか?」
 ぎらん、と怪しい眼光を放つ良子の視線を受け、菫は口中に湧き上がる唾を林檎の欠片とともに飲み込んだ。冥腐への扉が開いた瞬間だった。
 と、そこへ空気を読まない猿が一匹襲い掛かってきたが、由が機械剣と銃を手に一歩進み出る。
「‥この魔法剣と魔法銃の錆‥に‥なりなさい!」
 台詞をビシっと決めた後、何故か機械剣と銃をしまいメタルナックルを装備。物理で殴り出した。レベルを上げて(スキル付与して)物理で殴る。
 KOTY2010大賞に敬意を表した物理攻撃の前に、猿は敢え無く永遠に沈黙する。

 残りは一匹。
 仲間が消え、キョドる猿の目の前に魂の共有で一心同体となったゼンラーと慈海が立ち塞がる。
 キレにキレている肉体美を惜しみなく見せ付けながら、繰り出す唐竹チョップは超機械により発光する程度の威力。
 滴り落ちるほどアブラギッシュに艶やかな肉体から繰り出されるかかと落としは視聴者を戦慄させる程度の視覚効果。
 時折、コスプレ元キャラらしく恥らいの仕草を取り入れている演出が心憎い。
 猿がもういろんな意味で弱ってきた頃合を見て、とどめの必殺技をぶちかますべく、ゼンラーは腰を落とし気合を入れる。
「喝ーーッ!!」
 野太い大喝が響き渡るその背後では、梵字が浮かび上がっては消えて行くのだがどんな原理によるものなのかは解明されていない。
「行くわよぅ! あるてぃ!!」
「電波増強で、漲る私の心ぶつける!」
 アブドミナル&サイをキメた慈海が気合十分に腹から声を出す。
「現代に蘇る関羽の魂ェ‥! いくよぅ! 唐竹! ちょーーっぷ!!」
 愛と友情のツープラトン。
 目の前で繰り広げられたあまりの光景に竦みあがり、まったく動けなくなっていた猿へと夢のダブル唐竹チョップが炸裂した。
 その美しさは罪ッ!



 こうして、異星からの侵略者の手先は排除され、浜辺に平和が訪れる。
「砲火後‥じゃなくて戦闘後のティータイムはいいですねー」
 松の木陰にレジャーシートを広げ、プチお茶会を開いたメイプルはほのぼのと呟く。
 お呼ばれした傭兵達は各々に寛ぎながら会話を弾ませている。
 そんな中でニートは遠い目をして初夏の空を見上げていた。
「‥完全自殺マニュアルってまだ売ってるかな」
 さすがに哀れと思ったのか、メイプルが煤けた背中に向かって声をかける。
「えっと‥だ、大丈夫ですっ! たぶんそのうちいいことありますよ!」

 後日、今回の事件の顛末として、石榴の撮影した写真がカンパネラ学園の掲示板に張り出され、結果、ニートがンン日間自室篭城したのだが特に誰も気にしなかった。