タイトル:【授業】四国キャンプマスター:敦賀イコ

シナリオ形態: ショート
難易度: やや易
参加人数: 8 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/06/30 00:19

●オープニング本文


     キャンプのお知らせ

 自然の中で生きる力を磨くべく、四国山中で一泊二日のキャンプ合宿を行います。

 持ち込み許可品は通常装備品の他、以下三点
  ・水筒
  ・飯ごう
  ・キャンプ用テント
  ※上記以外の物品を携帯していた際には没収のうえ、後日、補習が課せられます。

 米と調味料は必要分提供されます。
 それ以外は自力で現地調達してください。

 また、競合地帯でもある四国にはキメラが存在する可能性もありますので、各自、装備を持ち込んで自衛してください。
 尚、必要以上の環境破壊には賠償金が課せられます。


 夏を目前に控えた六月。ジューンブライドの季節は若者が恋に目覚めはじめる季節でもある。
 そんな季節にこんな学校行事。
 キャンプというよりサバイバル合宿だが、意中のあの子にカッコいいところを見せ付けたり、協力して困難を乗り越えて急接近とか、ひと夏の思い出にと思い切って告白したりするにはうってつけのチャンスでもあった。
 無論、純粋にサバイバル技術を磨くも良し。自然の中で野生に帰るのも良し。

 いつ果てるとも知れない生命を悔いなく燃やし尽くすため、命短しはじけよ傭兵。

●参加者一覧

如月・菫(gb1886
18歳・♀・HD
天小路桜子(gb1928
15歳・♀・DG
ヨグ=ニグラス(gb1949
15歳・♂・HD
シルバーラッシュ(gb1998
20歳・♂・HD
八葉 白雪(gb2228
20歳・♀・AA
最上 空(gb3976
10歳・♀・EP
ダグ・ノルシュトレーム(gb9397
15歳・♂・SF
八葉 白珠(gc0899
10歳・♀・ST

●リプレイ本文


 梅雨の晴れ間。
 夜のうちに雲が風に運ばれ、すっきりと青く晴れ渡る空には太陽が燦々と輝いている。
 曇天続きの日々の間にすっかり夏のものとなった日差しの下、草の生い茂る獣道を一行は歩いていた。

 人里離れた山中、耳に届くのはすべて天然自然が奏でる静かな音色。
 自ずと厳粛な心持ちになってくるのか、ヨグ=ニグラス(gb1949)はぐっと拳を握る。
「この自然の中で心を磨かねばなりませんっ!」
 ヨグは請け負った依頼で強かに打ちのめされており、気分の一新と共に修行を積む必要があると考えていた。
「聞いた話じゃ、キメラの跋扈する恐るべき土地らしいからな。鈍った身体を鍛え直すにゃ丁度いい。生きるか死ぬかのギリギリのラインを体験できる機会は、そう多くは無ぇ筈だ」
 己の限界を超えるために、デッド・オア・アライブの領域に挑むのだ、と、シルバーラッシュ(gb1998)がチャラい外見とは裏腹に硬派な意気込みとやる気を漲らせ、爛々と瞳を光らせている。
「色々とありそうな予感ですが‥‥まっ、面白そうですので良いですわ」
 やる気を出した男子二人の様子を見守りながら、ほのぼのとした微笑を浮かべる天小路桜子(gb1928
 お嬢様育ちの桜子とキャンプというのは些か不釣り合いにも思えるが、彼女は学校行事になかなか顔を出すことができなかったため、丁度、都合がついたということで今回の合宿に参加していた。
 如月・菫(gb1886)も似たような理由での参加だったが、こちらは少々自業自得である。
「うぼぁー、授業めんどー‥でも、これ受けないと単位が‥‥」
 どうやら単位が危うくなるほどサボっていたらしい。
「仕方がないからズルしてでも、何とかするのです」
 にゅふふ、と不敵な笑みを浮かべる菫の懐にはレーションが隠されていた。
「ここが今回の目的地?結構山の中なんだね」
 周囲の自然の様子を楽しみながら八葉 白雪(gb2228)はのんびりと歩を進める。
(そうねぇ。空気が良くて心地いいわ)
 白雪の心中に宿る双子の姉、真白もそれに同意を示す。
 その横では彼女らの妹である八葉 白珠(gc0899)が、入りすぎた気合いと緊張に表情をやや固くしていた。
(‥はじめての‥サバイバル合宿。足を引っ張らないように頑張らないと‥)
 その心を知ってか知らずか、白雪はどこかのほほんと声をかける。
「少し休憩しよっか?たまちゃん!こっち来て休憩しようよ!」
「‥‥ぇ‥?は、はい!」
 驚きながらも素直に従う白珠。

 白雪の休憩の提案に一行は歩を止め、各々手頃な場所を見つけて腰を下ろした。
 谷底から沸き上がり、木の葉をざわざわと揺らしながら斜面を登ってくる風は、熱気を払い爽やかな空気を運んでくる。

「童心に返るのも楽しいものですね」
「返るも何も空さんは童女だったかと思うのですが」
 最上 空(gb3976)とダグ・ノルシュトレーム(gb9397)が微妙な距離で隣り合って座り、これまた微妙な会話を交わす。
 二人は宿敵とかいて友と読む間柄の仲良しであった。
「んと、ガーさんの山中ルックはさすがにスーツじゃないですね」
 水筒の水を口にしつつ、思い出したようにロズウェル・ガーサイド(gz0252)(以下ニート)に目線を向けるヨグ。
「ナイスガイになってたらどうしよって思ってました」
「おかっぱ頭で緑の全身タイツにサバイバルベスト、橙のレッグウォーマーで来て欲しかったですね」
「すごく‥ナイス・ガイです」
 ヨグの言葉に反応する空とダグ。ベクトルが似通っている三人であった。



 小休止を終え、キャンプの設置場所を探す一行。

「んと、テント張るのにもちゃんとした所じゃないと痛くて寝れないので、ここら辺の事を調べておきましたです」
 意外と抜け目のないヨグが事前に収集した情報によれば、付近にキャンプに適した場所があるという。
 獣道を歩くことしばらく、その言葉通りに山林の中、ぽっかりと抜けたように平らな草地が広がっていた。
「この辺が開けてていい感じだね」
「そうですね、もってこいでしょう」
 白雪の言葉にダグが頷き、荷物を下ろす。
「雪姉さま‥ここにテントを立てればいいんですね!」
 即、行動に移った白珠が作業に取りかかる。
(もう張り切って準備しだしてるわよ?)
 慣れない手つきでテントを組み立てだした白珠に真白がくすりと笑う。
「その前に草を刈った方がいいですよ。下に石が隠れているかも知れません」
「は、はいっ」
 ダグの言葉にも白珠は素直に従う。
「で、ダグは何もしないんですか?」
「適材適所ですよ。俺は頭脳労働専門なので」
 空の問いにしれっと答えるダグだった。

「よーし、そっち持ってて!」
「こちらですね」
「そちらのペグは打ち込めましたか?」
「はい、しっかりと!」
「たまちゃん、楽しそうね」(ええ、何よりだわ)
 女子が協力しあって各々のテントを設置する。
 その一方で「お前ら、このラインからこっち来たらただじゃおかないと思えよ!」と菫の手により地面に引かれたラインの向こう側ではお寒い光景が広がっていた。
 黙々着々と自分のテントを設置するヨグ。
 テントで寝るなんてのは、夜行性のキメラに襲ってくれって言うようなものだ。とこっそり持ち込んだ快眠ハンモックを立木の間につり下げるシルバーラッシュ。
 荷物に寄りかかりへばっているニート。
 そもそもテントを設置するつもりがないダグ。
「え、やだ何この差」
「気にしたら負け?みてぇな?」
「お前、補習決定な‥‥」
「ちょ、何でだよ!?」
 ニートに掴みかからんばかりの勢いで詰め寄るシルバーラッシュを横目に、ヨグはちゃっかりハンモックに潜り込んで寝心地を確かめていた。



 テントの設置が終われば、次は食材収集が待っている。
 食材を求めて各々が山中に分け入る中、残ったのはダグ。

 ダグは適度な大きさの石を積み上げて簡易の竈を作り上げ、薪をその傍らに用意。さらに、ヒキリ棒とヒキリ板、火口を用意し、錐揉式で発火させようと試みる。
 数分後、額に大粒の汗を滲ませダグは空を見上げた。
 ヒキリ板には焦げたオガクズが出来ていたが発火にまで到っていない。
「覚醒すれば楽勝でしょうが、それだと頭脳労働派の俺としては、ちょっと負けた気分ですね‥」
 それならば、と、緩やかに弧を描いたしなやかな枝と蔦で作った紐を用意すると、器用に弓錐式の発火装置を作りだした。
「ふむ‥回転速度と、ヒキリ板に掛ける圧力はこんなものか」
 そうしてできあがった火種を素早く火口に移して竈に入れると、その上に枯れ枝を置き火勢を強めた。
 折角熾った火を消してしまわないよう、様子を見ながら薪を追加して行く。
「こんなもんですかね」
 ぱちぱちと音を立てて燃える薪を見ながら、ダグは満足そうに頷いた。

 その頃。

「よっしゃー、ドンとこーい! ‥って突撃は勘弁な!」
 猪を仕留めに向かった一行、遭遇した巨大猪を前に菫は自信満々であったが、いきなり突進をかまされ悲鳴を上げて逃走。
 その近くで山菜や蔓草の採集をしていた桜子の後ろに回り込むと、盾にするかのように背中を押す。
「え?えぇぇ!?」
 突然のことに驚く桜子。目の前に鼻息の荒い猪。
 同行していた白雪(真白)、白珠が武器を手に体勢を整える。
「真白姉さま、何かわたしにできること──」
「──しらたまは‥離れて待機!」
「は‥え、わかりました‥‥じっと見てますっ」
 白雪(真白)が猪の眉間を狙って銃を発砲。見事命中しうなり声を上げて後ずさる。
 その隙に、我に返った桜子が夜刀神を鞘から抜き放って地を蹴り、裂帛の気合いとともに一刀のもと斬り捨てた。
 巨体を横にして倒れた猪は、2,3度痙攣した後にただの肉塊と化した。


 さらにその頃。

 シルバーラッシュとヨグの寮管理部コンビは筍キメラの退治にきていた。
 この極限状況下(?)必要となるのはエネルギー、即ち、食料だと考えているシルバーラッシュ。
「猪はヤベェ。あいつはでけぇし、俺の経験から言うとゾディアック級の強さを持っている。ドクダミ草もダメだ。奴は名前の通り毒を持ってるからな。応急手当ができねぇ以上、食らうわけにゃいかねえ。よって正しい選択肢は筍だ。頭を出したところをフライパンで攻撃してやるぜ」
 今、惜しむらくはツッコミ。
 どこかのそんな嘆きを余所に、ヨグは地面に不自然な穴が開いていないか地面を注視しつつ歩いている。すると、竹が自生している緩やかな斜面にそれを見つけた。
「そっち行きますですっ」
「おうよ!」
 ぴょこぴょこと穴から顔を出す筍をヨグが誘導し、シルバーラッシュが仕留める。
 この連携の前に為す術もなくフライパンに強かに打たれた筍たちは次々と穴から飛び出し地面に落ちていった。
 二人は立派な筍を手にすると、誇らしげに天に掲げる。
「捕ったどー!」
 雄叫びが山肌に木霊した。


 またその頃。

 空は一足早くドクダミ草の採集を終えてキャンプ地点に戻ってきていた。
 なぜドクダミ草の採集に向かったのかといえば、本人曰く「美幼女にピッタリな雅な感じがしますので」ということだった。
 実際のところ、生身で戦闘を行うどころか身体を動かすのが久しぶりで覚醒の仕方を忘れかけ、ドクダミ草の触手の餌食になって吊され、逆ギレて勝利してきたという、なんとも雅さの欠片もない状況だったのだが、そんなことはなかったぜ!と空は鼻歌混じりに飯ごうで湧かした湯の中に切り刻んだドクダミの葉っぱを放り込んでいる。
 しばらくすると鼻を突く独特の匂いが周囲に立ちこめ、飯ごうの中身は限りなく黒に近い茶に変色していた。
「さ、お疲れのニートさんに毒‥‥味見して貰いましょうかね!」
「今明らかに毒って言った!?毒って!?」
「何を言うんです、空の真心の一杯ですよ!」
 逃げ場のないニート。迫る空。一部始終を見ていたダグはただ一言「うわあ」とだけ漏らした。そして冥福を祈った。



「おら、働け! そんなんだからニートとか言われんだぞ!」
 木陰にて倒れ込んでいたニートに猪狩りから戻ってきた菫のエルボードロップが炸裂する。女の子が働いているのに大の男が木陰に引きこもっていたというのがカンに障ったらしい。
 ニートはその一撃に身体を痙攣させていたが、やがて動かなくなった。
「ん?打ち所が悪かったか?」
 首を傾げる菫に野草を仕分けていたダグが声をかける。
「‥おい韮。誰を毒殺するつもりだ」
「韮言うんじゃねー!」
 猪狩りで良いところの無かった菫はせめて、と手当たり次第に野草を採取してきていたがその中に毒性の高いものが混じっていた。むしろ大半が毒物だった。
「ふん、まあいい。こういうときのためのレ──」
 こっそり持ち込んでいた虎の子のレーションを手にした菫の右肩を、復活したニートが軽く叩く。
「──お前、補習確定な」
「こ、これは保険であって、使うつもりじゃあぁあー持ってかないで補習は勘弁してー!!」

「ええと、猪肉と集めた山菜と炒める等も良いでしょうか。他の食材とも合わせればバリエーションも豊富ですし、調味料の工夫で風味はいろいろと楽しめるでしょう」
 菫の悲鳴を余所に、真白がさばいた猪の肉を前にした桜子が楽しそうにメニューを思案する。
 また、猪という食材を調理したことのない白雪、白珠の代わりに真白が調理を担当する。その横では白珠が役に立ちたい一心で細々と立ち働いているが、動きすぎを窘められていた。

 竈ではシルバーラッシュが筍を焼き、火の通ったところで醤油を一垂らししてヨグに差し出す。
 筍は焼いても、白米と一緒に炊き込んでも良いが、何せ初めての食材、それをいきなり口にするというのは危険すぎる。まずはヨグに味見をさせようと考えていたシルバーラッシュ。
 差し出された筍を何の疑いもなく口に入れるヨグ。
「美味しいですっ」
「そりゃよかった」

「ふむ、何だかんだありましたが豪華な夕食となりそうですね」
 空は腕を組んで仁王立ち、うんうんと頷く。
 彼女は料理調理には一切関わらないことを決めていた。けっして、面倒臭いとか、暑くて動きたくないという訳ではなく、自分自身の『逆方向に神懸かった』料理スキルを把握しているが故、手伝わないことが協力になる、という判断が働いたのである。


 そうしてしばらくの後に野性味溢れる食事が出来上がる。
 各々が工夫を凝らした料理に舌鼓を打ち、空腹を満たした頃、空には満天の星空が広がっていた。
 都会では見ることの出来ない密度の濃い星空。闇夜の天蓋に散りばめられた無数の光の粒がさんざめく。

 心が洗われるような光景の下でヨグはおやつのプリンを抜くという苦行に耐えていた。
「これが兵糧攻め‥‥いえ、これも心を鍛えるためですっ」

 冷え込む山の空気に身震いをした空の肩にダグのジャケットが被せられる。
「馬鹿に風邪を引かれると調子が狂いますからね」
「ダグは素直ではありませんね。空は素直なのでありがとうとお礼を言いますよ」

 焚き火を枝でつつきながら白雪は先ほどの料理の出来栄えに、自分と姉との差を思い知り落ち込んでいた。
「‥まあお姉ちゃんはね‥何でも出来るもんね‥」
(ほらほら、腐らない腐らない)
「雪姉さまも真白姉さまと違って‥その‥あの‥凄いです!とにかく凄いです!!」
 落ち込んだ白雪を慰めようとする白珠だったが、フォローには到らなかった。



 夜が更ける。

 空は「お肌の為に毎日早寝早起きを心掛けています」とそそくさと就寝し、風呂に入れないことへの不満を騒いでいた菫も、電池が切れたようにテントに潜り込んで寝てしまった。
 不慣れな山中に疲れを覚えたのか、桜子も口元を隠して小さな欠伸をもらして目をこする。眠気には敵わない、と自分のテントへと向かう。
「不埒な事をなさった方はこの蔓草で縛り上げますからね‥?」
 穏やかな中に言い知れぬ迫力のある笑顔を前に首を縦に振るしかない男子一同だった。

「んと、明日は管理部長へのお土産にお花とか採っていきましょう」
「おう」
 よろこんでくれるといいですね、そうだな、とヨグとシルバーラッシュの二人は笑い合い、それから眠りに就く。

 焚き火の側に残ったのはダグと白雪(真白)、白珠。
「どうしたのしらたま。まだ眠らないの?白雪はもう休んだわよ?」
「いえ‥真白姉さまが眠るまでずっと起きてます‥」
「そ‥?でも‥いつまで我慢出来るのかしらね?」
 ほんの少し意地悪く笑う真白。白珠は頑張って不寝番をしようとしているようだったが、うとうとと船をこぎ出しそのうちに眠り込んでしまった。
 真白は白珠の頭を膝に乗せ、夜が明けるのを待つ。
 ダグはただ黙って、火に薪を足していた。


 そして。
 夜が明ければ、またこの日も快晴で、雲一つない青空が頭上に広がっていた。
 山中に身を置き、ほんの少し逞しくなった彼と彼女らは、晴れ晴れとした表情で山を下りていった。