●リプレイ本文
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発進準備を整えるべく向かったアラートハンガーには見知った顔が合った。
先日、学園内で同好の士として一時を共有した最上 空(
gb3976)に南桐 由(
gb8174)とファタ・モルガナ(
gc0598)
「‥‥ん?良子ちゃん‥‥何か、いいことがあった‥‥?」
萌えに燃えて鼻息が荒くなっている私の様子に気付いた由が声をかけてくる。
よくぞ聞いてくれたとかくかくしかじかKV萌え要素を語れば
「ふむ、少女、少年ときたら、紳士も‥‥アリだな」
打てば響くファタ。流石だとしか言い様がない。
「R−01は知的な老紳士。S−01は渋いダーティーハリーだ」
「なるほど。おじさま萌えですね。大人の男だけが持つしっとりとした色気は大変良いものです」
空も適応力がハンパ無い。ロマンスグレー萌えを理解するあたり、外見こそょぅじょであるが、中身は絶対25超だと思う。
その場に居合わせた空間 明衣(
ga0220)も半ば首を傾げながらも同意を示した。
「まぁ確かにKVを女性扱いばかりってのはなぁ。私のこれは雄だし」
彼女の乗機には「鳳」という愛称がついているそうだ。
「鳳凰ってのはな。つがいでな鳳は雄。凰が雌なんだ‥」
朱雀や不死鳥、鳳凰の話を事細かく語るところに、一般人とは一線を画すこだわりが感じられる。萌えとはまた違った意味での情熱がそこにはあった。
出撃前に語るべき内容ではないかと思われるだろうが、そこはそれ。ともすれば緊張でギリギリになりそうな 精神状態をうまいことリラックス状態に保つことこそが、戦闘のプロとして重要な事なのだ。緊張状態を長時間保つことはどうあっても不可能なのだから、必要とされる場面まで温存しておく。有事に置いて、オンとオフの切り替えが上手く作用するかが一流と二流とを分けると言っても過言ではない。はずだ。
「‥‥私も、負けてられないかな‥‥」
由が呟く。空戦専門の小隊に所属しているという自負から来る空戦への意気込みか、萌えに対する意気込みかはわからない。
「びいえる?ぎじんか?どーじん?何かよく分かんないけど‥まずはHWをブッ飛ばさなきゃいけないんだよな!」
空戦もこなしてみせるぜ、と右手で作った拳を左の掌に打ち付け、夜刀(
gb9204)が意気込みを見せる。その天然ぶりと健全さがちょっと眩しく見えるのは私の心が薄汚れているからなのか。
「そうそう、HW‥‥はっ、そういえばKV戦って久々かも!」
頷き、夜刀に同意を示していたフェイト・グラスベル(
gb5417)は今更気が付いたように声を上げる。ナチュラルにドジッ子属性があるとはやりおる。
「えっと‥‥これもアークエンジェルを成功させるためなんだよね、頑張ろうっと」
ユウナ・F・シンクレア(
gc3168)は若干緊張した面もちで呟いた。彼女にとって今回が2度目となるKV実践ということで、油断しないようにと気を引き締めているようだ。
そんなこんなで発進準備が整い、KVが順次発進して行く。
「こちら夜十字だ。離陸する‥‥バージョンアップの馴らし相手が、中型とはな」
表情こそ見えなかったが夜十字・信人(
ga8235)はシニカルな笑みを浮かべているに違いない。
ところで、彼の機体のキャノピー横に漂う少女の幻影が私を見ているのだが。とりあえず敬礼でそれに応えておいた。同じ姓を持つものとして。
「フン、HWか‥‥猪口才な!木端雑兵風情が我らが意思を挫けるものか!さぁ、往くぞ同志リョウコ!」
気合いの乗ったファタ。それにしてもこの謎美女、ノリノリである。
「おうさ!我らの猛き熱情、思い知らせてやりましょうとも!」
私もノリノリになんで問題は無いのだが。
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さて、ここからひとまず第三者視点で語ろう。
青一色の世界を魚鱗陣で進むHWを確認した傭兵達は迎撃体勢を整える。
フェイトは攻撃が被り過ぎることを避けるためにHWをナンバリングしてデータを各機に転送する。
前衛と後衛とを役割を分担し、即座にそれぞれの獲物を定めて火蓋が落ちるその瞬間に備えた。
「どこぞの時空要塞並にド派手なミサイルの雨を見せてやるぞ!」
先手を打ったファタはHWが射程内に入るやストームブリンガーAを起動、エンジン出力を瞬間的に高めるとK−02小型ホーミングミサイルを一気に全弾発射した。
『ぺルグランデ・ティグリス』から放たれた、言葉通りのミサイルの雨がHWに降り注ぐ。
「さぁ!序幕のベルは高らかに鳴った!ファルスに付き合って貰うぞ!狩るのは私。狩られるのは貴様等だ!」
更には『鳳』から放たれた、200発もの鳥の羽根を模った小型ミサイルが蒼穹を舞う。
次々に襲い来るミサイルの群にHWは泡を食ったように回避行動を行い、三々五々、散り散りになって行くが前衛に躍り出た明衣は、出遅れまごついたHWに食らいついて離さない。
『ぺルグランデ・ティグリス』の支援射撃がそれを助ける。
HWは錯乱したようにプロトン砲を発射するが、明衣にとってそれは脅威どころか隙を狙う格好のチャンスでしかなかった。
「露骨にそんな熱く滾ったシロモノを私等にぶち込むつもり?いやらしい!」
攻撃に備え、警戒していたファタも直線状に迸った光線を回避。どちらが?という疑念は放り捨てておく方が正しかろう。
プロトン砲発射後、自分の武器の威力に硬直せざるを得なかったHWへと『鳳』が迫る。
「これでも喰らえ!あの世でも悪夢を見続けろ!」
『SES−200』オーバーブーストAと空中変形スタビライザーA・Bで一気に近づき変形するや否や、プロトン砲目掛け、凶悪なうなり声を上げる金曜日の悪夢を一気に振り下ろした。
禍々しい音と火花を散らしながらHWは両断され、爆発炎上しながら海へと真っ逆様に落ちて行く。
「今回はフロントか、偶には悪くない」
優雅さすら感じさせる機動を描き、信人はHWを翻弄していた。
小隊の仲間であり、信人がフェイという愛称でもって可愛がっている妹分からの援護がそれを支える。試作型「スラスターライフル」がHWの回避先に打ち込まれ隙や死角を巧みに埋めて行く。
信人はPRMシステム・改を起動、シュテルン最大の特徴である十二枚の翼と四つの推力可変ノズルが状況に最も適した形態へと変形する。
「ちと強引だが、ダイエットさせてやる。受け取れ」
D−03ミサイルポッドをブラフとしてばらまき、慌てふためくHWに本命である試作型クロムライフルのバースト射撃を加え、HWの追加外骨格を砕きさる。
「誘導システム起動・・・・ファイア!」
間髪入れず、フェイトが新型複合式ミサイル誘導システムを起動させ、K−02小型ホーミングミサイルを発射する。従来の兵器に比べてミサイルの追尾パターンが壮大美麗なものへと進化した、カプロイア社こだわりの一品は青空というキャンバスに白の軌跡をいくつも描き出していった。追撃のホーミングミサイルFI−04がひときわ大きい軌跡を残す。
ここが戦場でさえなければあまりにも現実離れしたお伽話のような光景に、誰もが心を奪われることだろう。
『幽霊憑き』はその軌跡を突き抜けてHWに更に接近
「此処まで寄らば、確実に仕留めるっ!」
ソードウイングが死に体のHWを切り裂いた。
「そんじゃ、修行のお相手になって頂きますか!」
夜刀は後衛の射程範囲に気を配りながらもプロトン砲を発射しようとしていた一機に狙いを付け、勢い良く『抜都』を加速させる。
由のスピリットゴーストは夜刀の援護を行うべく『抜都』の斜め後方に付き、GPSh−30mm重機関砲を用いて回避行動をとろうとしていたHWの出鼻を挫く。
「援護サンキューな!‥さて、格好悪いトコは見せられねぇや‥!」
体勢を崩したHWへと照準を合わせパニッシュメント・フォースを発動、エネルギーを付与され通常よりも威力を増した150mm対戦車砲の弾丸がHWの追加外骨格を穿ち砕く。
爆発四散したHWの陰から逃げ出すように一機のHWが飛び出した。由はそれを見逃さず、冷静に照準を定める。
「‥センターにロック‥F・S起動‥撃ちます」
AIで直接解析された機体の射撃制御と敵機の進路。ロックオンの速度と精度が一時的ではあるが飛躍的に向上したスピリットゴーストから逃れる術などHWにはない。そして、スピリットゴーストそのものと言える固定武装の200mm4連キャノン砲が火を噴き、由は一気に勝負を決めていた。
ユウナは自身の経験不足を謙虚に受け止め、指示を仰ぎ聞きながら、基本に則った堅実な戦法を重ねていた。
援護についた空の「当てる事を優先」した援護牽制射と合わせ、短距離高速型AAMで狙いを付けたHWを集中攻撃し、徐々に間合いを詰めて行く。
空は試作型対バグアロックオンキャンセラーを起動させ、重力波を乱しHWの重力波レーダーを攪乱させる。HWは一瞬、傭兵達の姿を見失い、あらぬ方向へと収束フェザー砲を乱射する。
その隙に、ユウナは機体をHWに肉薄させ、ヘビーガトリング砲のトリガーを引いた。
「どんなに装甲が固くても、こんだけ攻撃受けたら意味ないでしょ?」
言葉の通り、前段階でミサイルとの集中攻撃に晒されていたHWの装甲は、ガトリングの弾丸が着弾するごとに砕け散って行く。
こうして虫の息となったHWへと『ザミエル』から放たれたホーミングミサイルJN−06、女神の姿が描かれたそれが迫り、爆発し、残骸となったHWは敢え無く海へと落ちていった。
手負いのHWが一機、ミサイルと爆炎の中から抜け出し、せめて道連れに、と後方で待機していた山田機に迫るが、戦うKVの姿を間近で見てテンションの上がりまくっていた彼女にあっさり撃ち落とされた。
「ヒャッハー!バグアは殲滅だああああ!」
火焔放射器を手にしたモヒカン男性のような台詞が響いたとか響かなかったとか。
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こうして地中海の平和は取り戻された。
ここで再び山田視点に戻る。
「KVの擬人化フィギュアで少年がないとか言い出したら次は擬人化コスプレし出す奴が出るな。うん」
明衣はまだ敵が出てくる可能性を考慮して警戒を解かずに飛行を続けているが、回線をオープンにして雑談を始めるあたり、かなりの大物なのではないだろうか。
「KV少年を作るとして誰が作るんだ?KV少女シリーズって製作者の熱意あってのものだろうからそれと同様の熱意のある製作者がいないと始まらないと思うが」
「今度、コンペでも開催いたしましょうか」
この会話に怪訝そうな声色をした信人が食いついてくる。
「KV少年‥‥? フ、こう見えて、少女漫画家の端くれだ。そのような美学が、女子だけのものとは思ってくれるな」
クールになんとも心強い言葉が出てきた。
「いいか、俺のシュテルンはな、気が弱く、小柄で女の子にもみえるメガネの美少年で後輩系キャラなのだ」
淡々と静かに熱く語る信人。原稿用紙に描き出されたシュテルン擬人化想像図を目にするのは基地に帰還してからの話になるのだが、無駄に巧かったということを先に言っておこう。
「ふむむー、KV少年ですかー。私はKV少女でも良いと思うですよー。ふふん‥‥だって彼女さんがいますから!」
フェイトが堂々と何か凄いことをさらっと言った。どうツッコミを入れるべきか悩んでいるところに夜刀の声が届く。
「なぁなぁ、ぎじんかって何なんだ?」
あれ、そっからなんだ。
かくしかと概要を説明してみれば、納得がいったようないかないような曖昧な返事が返ってくる。
「ふーん‥だったらこの『抜都』はどんなキャラなんだろ‥‥逆三角体型の色黒髭マッチョかな?」
自分とは無関係の事なのだと思っているのか、特に抵抗感もないようで。自ら擬人化ネタを振ってくる。
若干ずれてる独特な発想が新鮮すぎる。
「萌えとかは分からないけど…KV少年とかKV青年って、特撮みたいでカッコ良いよな」
夜刀が想像してるのはAUーKVの軽装備版みたいなものだろう。方向が違いますとは口に出せない私ガイル。
「んー、よく分かんないけど‥電子戦機なら眼鏡をかけた知性派とかそういう事?」
ユウナも若干戸惑いつつ話題に入ってくる。戸惑いつつも正当にして王道を突いてくる素晴らしさだ。
「とりあえず『ウーフーは細身のダンディーなドイツ人』ってイメージがちょっとだけした」
「由の‥愛機のSGは‥きっとガチムチ系だよ‥陸の王者がゼカリアなら‥空飛ぶ王者はSGなんだ‥‥きっとほら‥動けるデブみたいな」
おっとりうっとりとした由の声がこれまた濃い想像を伝えてくる。きっとまたゲンドウポーズでメガネを光らせているに違いない。
「あとは‥シュテルンはきっと完璧系で‥実はとっさの出来事に弱いとか‥そんな感じ‥‥最近話題の‥オーガは‥謎の転校生とか‥転入生で‥噂だと‥双子の兄(某PC氏専用機)がいるとか‥そんなのはどうかな?ワイバーンは草食系男子‥子犬系‥最近まで存在が忘れられていたけど‥動きはすっごく早くて実は元気一杯な子」
内容が濃い。濃いですよ由同志。師匠と呼んで良いですか?さりげに酷いこと言ってる気がしたがそこはあえて触れないのがマナーという物だろう。
「さて、空は愛機のザミエルを擬人化させてみますかね。やはり色が金色なので、12歳位の金髪で良家のお坊ちゃまで、傲岸不遜で自信家で自分以外は全て見下している、小生意気な半ズボンの少年的なイメージですかね、
ええ、やはり金髪ショタには、半ズボンが重要です!必須です!」
擬人化と言いつつ力一杯ショタ萌えを語るょぅじょ。
「あっ、ちなみに夜寝る時には、幼少の頃に母親から貰った、クマのぬいぐるみが無いと寝られない裏設定が!そして、『HWなど、僕の敵では無い!』と敵に挑むが、荒くれ者のHWにあっと言う間に蹂躙され、その純真無垢で穢れを知らない半ズボン天国(パラダイス)を良いように弄ばれてしまうんですよ!!空的には半ズボンは当然最後まで脱がさないとして、靴下も最後まで脱がせないのが好きです!」
なんというディープなこだわりか。パネェ。でも空の外見は10歳つるぺたょぅじょである。
うん、もう、胸に七つの傷を持つ救世主が現れても良いくらい世紀末だと思うんだ。
「簡単所ではアンジェリカやサイファーか‥‥女性型‥‥ノゥ。男の娘」
ファタがトレンドを織り交ぜライト層にもとっつきやすい擬人化を提案する。
「イヌッ子アヌビス。さわやかバイクメンヘルヘブン。ぶっきらぼうなガテン系ロジーナ‥‥同志リョウコ。この路線は当たりだと思うよ。夏か次の冬辺りは、こういうので?」
「ええ、新ジャンルを開拓してやりましょうず」
KV少年はまだまだ可能性を秘めている。百花繚乱豪華絢爛、十人十色の萌えが誕生してもいいはずだ。
「次回はバグアなどに邪魔されずに、存分に萌えの開拓をいたしましょう!皆々様、よろしくお願い申し上げる!!」
私たちの萌えはまだこれからだ!