タイトル:【AP】誰得の背徳マスター:敦賀イコ

シナリオ形態: ショート
難易度: 易しい
参加人数: 6 人
サポート人数: 0 人
リプレイ完成日時:
2010/04/13 23:36

●オープニング本文


※このシナリオはエイプリルフールシナリオです。実際のWTRPGの世界観に一切関係はありません。
※BL絡みの内容となっておりますので、苦手な方は今のうちに何事もなかったように本部にお戻りください。



 私の名前は山田良子(17)カンパネラ学園に通う女子高生だ。
 私は他人と少し違うところがある。それはボーイズラブが大好きだということだ。
 BLを専門に扱う第n文芸部・薔薇組のエース、曼珠院 紗華子と言えば私のことである。
 私は男二人が並んでいればそれもう普通に受け攻めで考えることが出来る。リバースも可。
 淑女の嗜みとマナーとしてそれを表立って口にすることも表情に出すこともない。すべては脳内。脳内で萌えを充填し、それを創作という形で昇華することに私は全青春をつぎ込んでいる。

 美形率の大きい学園に通うことができて、私は大変充実した毎日を送っている。
 時折、戦地へと投入されたり、実戦に向けた戦闘演習があることが玉に瑕だが、生徒・教員だけではない人材の厚さ。普通の学校生活では到底眼にすることができなかっただろう職種のいい男達の存在、萌え燃料の豊富さはそれを補って余りある。

 午後のカフェテラス、学園関係者のみならず一般来訪者にも開放されたこの場所には様々な人が訪れては去って行く。萌えネタ探しにはもってこいのこの場所に陣取った私の隣の席では今、ロズウェル・ガーサイド(gz0252)研究員が同僚の男性研究員となにやら話しあっている。
 ブランドスーツに身を固めたガーサイド研究員と比較的カジュアルな格好の上に白衣を羽織った金髪メガネ(エリックと仮称する)の組み合わせはかなりオイシイと言える。
 おあつらえ向きに両人共それなりにイケメンだ。しかもメガネだ。メガネ祭りだ。スーツx白衣、白衣xスーツどっちでもイケる。
 これもう、好きに妄想しろという神の啓示だろう。
 私は早速、愛用の手帳を取り出すと、題材の収集にとりかかった。


 ロズウェルはどこか切なそうな表情で目を細め、咥えたままだった煙草に火をつけた。
 ジリジリと焦がされる紙巻煙草の先端を見つめながら、エリックはたどたどしく慎重に選んだ言葉を紡ぎだす。
 ポツポツとこぼれ落ちる言葉を聞いているのかいないのか、ロズウェルは遠くに目線を投げ、憂いた表情で紫煙を吐き出した。
「つまりは、遊びだった、と?」
「‥‥すまない、君を騙すつもりはなかったんだ‥‥」
「結局は――同じだろ?」


 よっしゃあ!!キタコレ!!
 ベタベタだがこれは萌えるものだ。心中でガッツポーズだ。
 ガーサイド研究員はなかなかに不幸属性が似あいそうだ。身勝手に振り回され傷つけられても、結局最後は受け入れて許してしまうタイプに加え、なかなか幸せになれないどころか、幸せになることを怖がってすらいる、というオプションがついたらさらに倍率ドン。

 ちなみに、実際の会話の内容は、グダグダになって投げ出された研究の後始末に関する話で、ガーサイド研究員にそれを丸投げすることを上司は既に了承済みで、明日にもとりかかれという命令が下るだろうということだった。あぁ、ニートにゃ拒否権ねぇもんな‥‥チクショウめ‥‥。悪ぃ、今度キャバクラ奢るからさ‥‥。という色気も糞も無いものだったが、脳内妄想フィルタを通してしまえばオイシイ題材に早変わりするものだ。


 実に楽しい。楽しすぎる。

 もっと何か、オイシイ題材は無いものか。
 私は萌えセンサーを広げて獲物を待っている。
 ついでに熱く語り合える同好の士も待っている。


●参加者一覧

森ヶ岡 誡流(gb3975
34歳・♂・BM
最上 空(gb3976
10歳・♀・EP
マルセル・ライスター(gb4909
15歳・♂・HD
桂木菜摘(gb5985
10歳・♀・FC
南桐 由(gb8174
19歳・♀・FC
汀良河 柚子(gc1084
16歳・♀・DG

●リプレイ本文


※※ この先はBL要素が大量に含まれております。 ※※
※※ あなたの健康を害する危険性がありますので、閲覧にはくれぐれもご注意ください。 ※※
※※ 尚、読後に何かに目覚めたとしても当方では一切関知いたしません。 ※※



 春の暖かな日差しが燦々と降り注ぐカフェテラス。
 庭に植えられた桜の木がこんもりと薄紅色の花を咲かせ、気まぐれな風がはらはらと花弁をまき散らす。

 そんな夢のような午後のひととき。
 私のいるテーブルには同志達が集まってきていた。彼女らを同志、と呼ばせて貰おう。萌エ腐スキー同志だ。

「ええ、やはりニート(=ロズウェル・ガーサイド(gz0252))さんの様にヘタレは総受けで無理矢理強引っと言った役割に限ると思うんですよ!まぁ、ヘタレ攻めによる下克上もありと言えばありですが、空的にはありえません!」
 最上 空(gb3976)がテーブルに身を乗り出し拳を握って力説する。
 美幼女がBLを語るというのはなんという世紀末的光景か。
 しかし、能力者の外見ほど当てにならないものはない。外見年齢が10歳程度だとしても中身が成人している場合も無きにもあらず。この際、空の中身はOver25だとでも思っておこう。
「ガーサイドさんですか‥。確かに彼は受けの素質十分ですね」
 手作りのケーゼクーヘン(ドイツ風チーズケーキ)と紅茶を手に、現れたのはマルセル・ライスター(gb4909
 空の意見に同意を示しながらごくさりげなく席に着く。ああ、これが腐男子というものか。
「‥リバースもイケる‥むしろリバースのほうが萌える」
 テーブルに両肘を突き、組んだ両手で軽く緩めた口元を隠すゲンドウポーズで思慮する南桐 由(gb8174)は春の日差しにメガネを輝かせている。
「はいっ、『王道のリバ』が一番美味しく頂けると思います」
 納豆にはラー油を一滴たらすタイプの中学生、汀良河 柚子(gc1084)もこの場に同席していた。
 彼女は失恋の痛手を癒すために気晴らしに来たというのだが、その痛手が悪化しないよう祈りたい。

「王道と言えばやはり、ニートさんの上司×ニートさんによるリーマンラヴですね!」
「ガーサイドさんと上司によるリーマンもの‥。無理難題押し付ける上司の鬼畜攻め‥‥」
 我が意を得たり、と空がマルセルに向かって良い笑顔でサムズアップ。
 ちなみにリーマンというのはサラリーマンの略であり、世界恐慌の原因となったどこぞの証券会社のことではない。
「そうです、普段から無理難題を言う上司にかっとなって反論したら、ダンディーで鬼畜な笑みを浮かべたまま、ニートさんのネクタイを取り、そのまま手首を縛り上げ‥‥、羞恥と未知なる感覚になすがままのニートさん!そして上司が耳元で『普段は反抗的なのに、カラダは正直なんだな』っとニヒルな笑みを浮かべるベタな展開とか!やはり、リーマンラヴにはネクタイがキーアイテムですね!」
「‥ああ、ネクタイって色々便利ですよね」
 ワンブレスで言い切る空にうっとりと同意するマルセル。
 スーツにネクタイ。男の戦闘服の色気がわかるとはなかなかやりおる。
「‥いや、意外にガーサイドさんの誘い受けの感も否めません。上司は実はツンデレで、ガーサイドさんに厳しくあたりつつ、内心では彼のことが大好き。ガーサイドさんはその事を知りつつ、嫌がったフリをして、上司の素直になれない気持ちを揺さぶり、弄んでいる‥っ」
 頬を上気させ、ややうわずった声でマルセルが新たな可能性を提示するが、空は僅かに首を傾げた。
「ふむ、実に素晴らしいですが、ニートさんにそんな高度な駆け引きが出来るかがネックですね」
「あ、そこまでのヘタレなんですか?」
 ヘタレのようです。
 それにしてもこの手作りケーキが美味しいとか何なの。料理上手な俺の嫁気取り?マルセルはいろんな意味でオイシイポジションの美少年である。
「‥今思いついたんだけど‥ニートさんが行為の最中で眼鏡を外すと‥一転強気キャラになって‥そこから主従逆転とか‥」
 ゲンドウポーズの由がメガネをきらりと光らせた。
 全員がばっと一斉に由に視線を向け、同時に深く頷いた。
 そ れ も あ り だ。
「‥‥マルセルさんxニートで‥マルセルさんが弱気でも攻めていたんだけど‥ニートが眼鏡を外して立場逆転‥美味しい」
 本人を目の前にしてこの発言である。大人しく見えるが由はかなりの大人物なのではなかろうか。
 当のマルセルは「へぇ。それは興味深いですね」直ぐ側で笑顔を浮かべながら紅茶を飲んでいる。黒さが見え隠れしているのは気のせいではないはず。どうやら被害者でなくなるには、加害者になればいい的発想のようだ。平素の苦労が忍ばれる。
『狂気に堕ちなければっ、常軌を逸脱してなきゃ、勝ちへの道は開かれないっ!』
 そんな心の声が聞こえた気がした。

 そうそう。
 ニートと我々のいる席は隣同士ではあるが、会話の内容がニート本人の耳に入らないように気を使っている。
 いくら私と言えども、BL談義を題材にした本人に聞かれると言う特殊プレイなど萌えの範囲外であるし、普通の人達がいる中で特殊嗜好を声高に語る恥知らずな真似などできるものか。
 紳士淑女として気を使いつつ盛り上がっている最中、ニートの同僚エリック(仮)が呼び出され慌ただしく帰っていった。
 入れ替わりでそこに現れたのが、笑顔の素敵なナイスガイ、森ヶ岡 誡流(gb3975)。手にしたトレーに山盛りの食料とスイーツ。食いしん坊属性とはなかなかやりおる。
 降って湧いたような筋肉担当の登場に我々のテンションは鰻登りだ。

「お〜! 久しぶり‥‥え〜と、ロズウェルさんだったよな?」
「ん?おう。この間はドウモネー」
 両者は知り合いであるらしい。
「なんか元気ないな?ちゃんと食ったほうがいいぞ、ほれ」
 小皿に盛られたドーナツの山をニートにすすめ、自らも幸せそうに食事をとりはじめる。
 体躯の通りおおらかな性質であるらしい。

 Yes!YESS!YEEESSS!
 この間ってどの間だ。気になるじゃないか。
 先日、誡流は学園内での依頼で地下施設の床を破って落下したことがあり、そこがちょうどニートの研究室だったそうだが、そんな事情は知らない私と同志達なので、勝手に妄想するけどかまいませんね!

「王道で行くならば‥‥偶然廊下ですれ違った際にぶつかってしまって、軽く謝罪を述べたのに、態度が気に入らないと因縁を付けられ反論するものの、普段から温室栽培のモヤシっ子のニートさんは力尽くで組み敷かれてしまい、『仕方無いなカラダに直接教えてやるよ』っと覚醒し強引に荒々しく、ニートさんの唇から順番に文字通り喰らって行く、というのは‥‥」
 空が先陣を切って論じる。
 なかなか大胆かつ具体的な内容に、マルセルは赤く染まった頬を手で覆いながら俯き、柚子は瞳を輝かせ、由は静かに笑みを深める。
「裏設定として実は以前からニートさんを狙っていたとか‥‥後は、まぁ空の趣味では無いですが、実はニートさんが故意にぶつかってこの状況を作り出した、誘い受けだったとかですかね」
 短時間でここまで考えるなんて‥‥空、恐ろしい子!!
 この萌え話に触発されたらしい由は顔を上げ、訥々と切り出す。
「‥よし、思い切って歴史物‥‥時は戦国‥比叡山で繰り広げられる秘め事‥」
 時空を越えたよ。越えちゃったよ。
「‥寺の僧である筋肉(森ヶ岡)さんと‥ニートしすぎて寺に小姓として送られてきたガーサイドさん…BLが衆道として‥一般的な時代であっても‥一応は隠れて行う行為‥僧衣を使って、とか‥神聖な場所での行為に背徳感で悶えるニートさんとか‥興奮するよね‥」
 僧兵x寺小姓ですねよくわかります。
 愉悦はいつだってタブーの先にあるのです。
「‥萌える‥今よりもよりフリーダムな時代に生まれて来たかった‥。ちなみに‥この行為をODAがみて‥比叡山・延暦寺焼き討ちを決意したのはほんとの事だよ‥」
 フリーダムにも程があるっつーかおいいいいいいい何やってんのODAAAAAAAAA!
 ‥‥。
 ‥‥。
 ぬう、しまった、私としたことが萌えよりもツッコミを先に入れてしまうとは。
 精進が足らないようだ。
 しかしこれはとんだNOBUNAGAの野望だ。詳細なイベントスチルを所望する。
 柚子は胸の前で両手を組み、何度も頷きながら頬を上気させて瞳を潤ませていた。
「あぁ、筋肉ってオイシイですよね。筋肉が言葉と頭脳で巧みに攻められる展開なんてどうでしょうっ!『お前の自慢の筋肉で俺を楽しませてみろよ』『いいだろう、結ぶぞ!その筋肉!』『どうした?お前の筋肉ってのはそんなモンなのか?』『なんだとぉっ!?』ってカンジで」
 ニート誘い受けか。さっきからヘタレだったり一発逆転だったり汎用性高すぎだろニート。
 というより、同志達の妄想力がとんでもなく豊かであると言った方が正しい気がするが。
「このままだと面白みに欠けるんですが、その後体力の尽きたニが筋に攻められる逆転展開に『どうした?減らず口に体がついていけてねぇぜ?』『う、うるせぇ‥っ』 コレ、これが柚子的には一番おいしいと思うんです!」
 テーマ曲は『挿し挿されラバーズ』歌:腐音ユズで決まりですね!とビジュアルどころか音楽まで決定しているとは、まことに末恐ろしいチーズケーキはスフレ派の中学生だ。
「でも、どんなカプでも割と美味しく頂けます。あらゆる可能性、あらゆるカプがあってこそのBLですよね」
 人によっては「悪食」「無節操」と、取られるかもしれないが、それは違うだろう。彼女は博愛主義者なのだ。

 アンファンテリブルの可能性をまざまざと見せつけられ、BL界の将来はこれで安泰だと安心している中、隣のテーブルでは誡流が時折、身を震わせて周囲を見回している。
 野生の勘で何かを察しているのだろうか。
 元凶として申し訳ない気持ちがないでもない。だが私は謝らない。

 と、そんなこんな中、ニートの元へピンク色のリボンを揺らしながら少女、桂木菜摘(gb5985)がやってきた。
「ガー兄さん♪お久しぶりなのですっ」
「よぅ、なっちゃん」
 元気にぴょい、とジャンピング抱きつきを敢行する。
 ニートの方も予め椅子から立ち上がり手を広げて待ちかまえているあたり、紳士なのかどうなのか。
「この間はお疲れ様なのですよ〜。ところでメロンさん(=メカメロン。二足歩行のメロン型ロボット。ニート謹製)がどこに行ったか知らないですか?」
「おう、ありがとさん。アレなら今頃中庭じゃねぇかな」
 元気良く親愛ぶりを隠さず示す姿が大変可愛らしい。
 心和む微笑ましい光景にアンダーグラウンドな空気が一掃された。
 ほのぼのしてしまうじゃないか。ほのぼのしてしまうが駄菓子菓子。
 ここで速攻魔法発動!ヤーマーダー腐ィルター!!現実を全て捨て効果発動!
「どうかな?頑張って可愛くしてみたんだ♪ 女の子には負けないよっ」
 女装ショタな弟が、大好きなお兄ちゃんに絡んでいる麗しい光景に変換!
 ‥‥。
 ‥‥。
 駄目だ。どうしても罪悪感が先に立つ。
「なっちゃんは本当にメカメロンが好きなのですねー」
 同志達も毒気が抜かれたように清々しい表情を浮かべている。
 正真正銘、汚れのない少女を妄想の毒牙にかけるほど落ちぶれちゃいない、というより、そんなこと普通に人として出来ん。

 そこへメカメロンが通りかかる。
「あっ、メロンさーん!」
 駆け出そうとしたなっちゃんが足を滑らせてバランスを崩す、咄嗟に手をさしのべたニートも敢え無くバランスを崩す。
 両者共倒れかと思ったその時、誡流がしっかりニートを支えているではないか。しかも片手で。
 そして何を思ったか、なっちゃんを抱えたニートを軽々と抱き上げた。俗に言う姫だっこというやつである。
「ちょっとあれ何これちょっと」
「わぁっ、ガー兄さんを持ち上げちゃうなんて!おじちゃん、すごいですっ!」
「はっはっは、おじさんは力持ちなんだぞーぅ」
 なっちゃんの純粋な憧れに気をよくしたのか、誡流は朗らかに笑いながらその場で回転してみせた。
 楽しそうに喜ぶなっちゃんとは対照的にニートの顔が見る間に青ざめる。
「ちょおおおお下ろしてくれえええ!?」
「何、遠慮するな」
「遠慮とかじゃねぇぇぇからああああ!?!」

 周囲に舞い散る祝福のライスシャワーの幻が見える。
「「「「「さえないやもめニートを筋肉がやや強引に嫁にする展開ktkr!」」」」」
 全員の声がきれいにハモったのは最早言うまでもない。

 王道リーマン鬼畜上司ヘタレメガネ一発逆転戦国ファンタジー筋肉ウェディングハッピーエンド。
 豪勢すぎるフルコース。
 ほんっとにもう、萌える。萌えで死ねそうな気がする。今日が私の命日か。
 萌えで死ぬると言うのであればよかろう、本望である。
 どうせ畳の上での大往生など到底出来ぬと悟った身。ここで萌えの露と消えても一辺の悔いもなし。
 いつだって全力投球。倒れるときは前のめりでありたいものだ。

「皆さん、本日はどうもありがとうございました」
 不肖、山田良子、感謝の言葉しか出てこない。
 ああ、今日は萌えすぎて水芸の如く耳から血が出そうだ。
 鼻から出血など生ぬるいものではない。
「今年の夏はビッグウェーブに乗れそうです!!」

 萌えネタ120%超え充填できた私に最早怖いものなど無い。
 私たちを導く中心的な力とは萌えである。腐と萌えの旗の元、革命的精神でBLの楽園目指して突き進んで行こうではないか!

 さ あ ── 往 く ぞ、 諸 君